W杯の決勝トーナメントは1次リーグA〜H8組の上位2ヵ国16チームがA組1位×B組2位、B組1位×A組2位‥‥というように、隣り合わせのグループが襷がけで対戦する。決勝T1回戦でベスト8、2回戦(準々決勝)でベスト4、つまり全64試合中、3位決定戦も含めて残りは16試合しかない。前・後半90分で勝負が着かない場合は15分ハーフの延長戦を行ない、それでも決着しない時はPK戦になる。サッカーは例外的に得点が入り難い球技なので、スコアレスドロー(0 ─ 0)や同点(1 ─ 1)の試合も少なくない。決勝Tは引き分け試合に敢えて勝敗を着けなければならないというジレンマを抱えている。どちらのチームも運や心理状態に左右されるPK戦は避けたいところだが、120分間グラウンドを走り回った選手たちの疲労度を慮ると、PK戦は止むを得ないレギュレーションなのかもしれない。たとえPK戦で敗れたとしても、公式記録は引き分けである。
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- ○ ウルグアイ 2 ─ 1 韓国(6/28 ポートエリザベス) 前半8分、FWフォルランが左からのセンタリングを韓国DFとGKの間へ通す。角度のない右サイドからFWスアレスがサイドキックでゴールに突き刺した。鮮やかなウルグアイの先取点だった。雨模様となった後半戦はサイド攻撃を仕掛る韓国のペースで進む。後半23分、FKをMFイ・チョンヨンがヘッドで入れて同点に追い着くものの、同35分、反撃に出たウルグアイの右CKのクリアボールを再びスアレスに決められる(左45度から右足でカーヴをかけたボールが右ポストに当たってゴール内に入った!)。韓国にも決定的なチャンスは何度かあったが、シュートは悉くゴールを大きく外れた。確実にゴールを決めたストライカー、スアレスとの差は大きい。シュートの決定力はトレーニングによって上がるのか、それとも選手の天性のものなのか?‥‥海外の一流選手のシュートは、たとえGKに阻まれることはあってもゴールの枠内を外さない。角度のない至近距離からも豪快に蹴り入れる。当たり前のことだが、サッカーはゴールを決めなければ勝てないのだ。
- ● アメリカ 1(延長 0 ─ 1)2 ガーナ(6/27 ルステンブルグ) 前半5分、本大会前にガーナ国籍を得て(FA杯決勝でドイツ代表MFバラックを負傷させてW杯欠場に追い込んだ)FWケヴィン=プリンス・ボアテングがドリブルからの個人技で先制。アメリカは後半17分にMFドノヴァンのPKで同点に追い着くのが精一杯だった。延長前半3分にDFのクリアボールを拾ったMFアンドレ・アイェウからの縦パスを受けたFWギャンがDFを振り切って決勝点を奪う。米元大統領ビル・クリントンやミック・ジャガーが観客席で見守る中でのアメリカの敗退。アメリカは1次リーグを1位通過した8ヵ国中、決勝T1回戦で負けた唯一のチーム、ガーナは決勝Tに進出した唯一のアフリカ・チームだった。しかもFWエッシェン(チェルシー)は膝の負傷で本大会に出場していない。延長戦に突入した時、真っ先に思ったのはPK戦決着にならないければ良いけれど‥‥という不安だった。それだけに延長早々にギャンが左足でGKハワードの頭上を抜いた瞬間は興奮しましたね。
- ○ ドイツ 4 ─ 1 イングランド(6/27 ブルームフォンテーン) 前半20分、GKノイアーのロングキックをFWクローゼ、同32分にはMFポドロスキーにゴールを奪われるが、イングランドは同37分、MFジェラードのクロスにDFアプソンがヘッドで合わせて1点差、そしてクロスバーを叩いてゴールを割ったMFランパードのミドルシュートで同点に追い着くはずだった。しかし、主審の判定は「ノー・ゴール」‥‥本大会初の「幻のゴール」となってしまった。遠くからの肉眼では分かり難かったが、ヴィデオ・スロー映像ではクロスバーを直撃したボールはゴール内に入っていた。痛恨のミス・ジャッジ!‥‥誤審に気落ちしたのかイングランドは後半22、25分、MFミュラーのゴールで立て続けに2失点した。オフサイド判定やハンド反則は兎も角、微妙なゴール判定だけはヴィデオを導入した方が良いのではないか。ゲームを止めて主審が直接ヴィデオを確認するとか、第5の審判がヴィデオをチェックするとか、主審に携帯端末を持たせるとか?‥‥色々と方法はあるはずだ。より精確なジャッジが出来るならば、数分間の中断は許容範囲内だと思う。
- ○ アルゼンチン 3 ─ 1 メキシコ(6/28 ヨハネスブルグ) ランパードの「幻のゴール」に眩惑されたのだろうか。前半26分、MFメッシのスルーパスをGKペレスがブロック〜再びメッシの浮き玉をヘディングしたFWテヴェスのポジションは誰が見てもオフサイドだった。もちろんテヴェスに非はない。責められるべきはオフサイド判定を見逃したイタリア人審判団の凡ミスである(日韓共催では欧州以外の審判員のレヴェルの低さが批判・揶揄されたが、セリエA審判のミス・ジャッジとは皮肉だった)。同33分にFWイグアインがDFの横パスを奪って左足でシュート(本大会4点目)。後半7分には「疑惑のゴール」のテヴェスが豪快なミドルシュートを鮮やかに決めて名誉挽回した。メキシコは同26分にFWエルナンデスのDFを躱す反転シュートで一矢を報いたが、試合はアルゼンチンの圧勝。注目のメッシにゴールはなかったけれど、決定的なスルーパスや高速ドリブル、枠内シュートなどで際立っていた。
- ○ オランダ 2 ─ 1 スロヴァキア(6/28 ダーバン)
- ○ ブラジル 3 ─ 0 チリ(6/29 ヨハネスブルグ) 本大会初の南米対決は前半35分、DFフアンがDFマイコンの右CKをヘディングで合わせてブラジルが先制点。同38分にはFWロビーニョの右からのパスをMFカカが受け、FWルイス・ファヴィアーノがGKブラヴォを躱してシュート。後半14分にはMFラミレスのドリブルからのパスをロビーニョが確実に決めた。3対0というスコアだけを見ると一方的な試合だと思われるかもしれないが、優勝候補の強国相手に守備的な闘いではなく、終始果敢に攻撃的な姿勢で挑んだチリの闘いは潔かった。1次リーグでリードしている「勝ち試合」でも、チリは姑息な時間稼ぎなどは一切しないでに無心に攻め続けた。ドゥンガ監督率いるブラジルに派手さや華麗さはないけれど、守備の手堅いチームになっている。カカが入ると攻撃にマジカルな瞬間が煌めく。
- ○ パラグアイ 0 (PK 5 ─ 3) 0 日本(6/29 プレトリア) 日本が1次リーグを突破した要因の1つは本大会直前の親善試合やテスト・マッチで4連敗した後に、システムを守備的な布陣へ変更したことだった。FW岡崎とMF中村俊輔を先発メンバーから外し、MF本田をFWに抜擢してMF阿部をディフェンス前のアンカーに起用する。この急場の変更が功を奏した。パラグアイ戦も1次リーグと同じ布陣で臨んだが、前・後半90分を闘ってスコアレス・ドロー‥‥ゴールを奪って勝ちたい日本は後半20分にMF松井に代えて岡崎、同36分には中村憲剛を阿部に代えて送り込む。土壇場で岡田監督は元の攻撃的なシステムに戻したのだ。延長後半にはFW大久保に代えてFW玉田を投入するものの、途中交代出場した2人のFWは残念ながら上手く機能しなかった。ディフェンス陣はDF中沢と闘莉王、GK川島を中心に良く守った。やはり日本の課題は確実に1点を奪える決定力のあるストライカーの不在だと思う。FW森本を延長前半から出場させても面白かったのではないか。
- ○ スペイン 1 ─ 0 ポルトガル(6/30 ケープタウン) 試合開始直後、FWフェルナンド・トーレスとFWヴィジャのシュートがポルトガル・ゴールを脅かす。膠着状態のゲームが動いたのは後半18分、MFイニエスタからのパスをMFシャビがヒールで流し、ヴィジャが左足でシュート!‥‥GKエドゥアルドに阻まれたて跳ね返って来たボールを右足でゴールに蹴り込んだ。この一連の速いパス回しがスペイン・サッカーの真骨頂、イニエスタとシャビが演出した美しい展開のゴールだった。FWクリスティアーノ・ロナウドは前半28分のFK、約30mの無回転シュートで見せ場を作ったものの、GKカシージャスに弾かれた。故障明けのフェルナンド・トーレスも本調子とは言い難いので、両エース対決は不完全燃焼の痛み分けというところでしょうか。本大会前、西新宿の交差点でイニエスタ(A. INIESTA)のユニフォームを着て、信号待ちをしてる若者がいた。背番号8が「俺はサッカー通だ!」と主張している。
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