SEGUNDO (Blabla 2000) Juana Molina
FELT MOUNTAIN (Mute 2000) Goldfrapp
VESPERTINE (One Little Indian 2001) Bjork
ENDLESS SUMMER (Mego 2001) Fennesz
OI (Sorte 2003) Laura Finocchiaro
CHUVA EM PO (Zonk 2004) Think Of One
TEKITOI (Wrasse 2004) Rachid Taha
FUNERAL (Merge 2004) Arcade Fire
ILLINOISE (Asthmatic Kitty 2005) Sufjan Stevens
FEELS (Fat Cat 2005) Animal Collective
RETURN TO COOKIE MOUNTAIN (4AD 2006) TV On The Radio
FRIEND OPPORTUNITY (Kill Rock Stars 2007) Deerhoof
UNTRUE (Hyperdub 2007) Burial
EDIT (Clippled Dick Hot Wax! 2008) Mark Stewart
FLEET FOXES (Sub Pop 2008) Fleet Foxes
BITTE ORCA (Domino 2009) Dirty Projectors
HU HU HU (Sony Music 2009) Natalia Lafourcade
HUNTING MY DRESS (Last Laugh 2009) Jesca Hoop
モンロー、マドンナ、ナブラチロワ、キム・ゴードン‥‥白人女性でも天然ブロンド・ヘアの人は案外少ないらしい。ヘアダイも何色か使って斑状に染めないと、自然な「金髪」にならない。Juana Molinaの髪は天然パツキン風ですね。金髪に覆われた横顔に惹かれてジャケ買いしちゃいました。アルバム・タイトルの「セグンド」は2ndのこと。「アルゼンチン音響派の歌姫」というキャッチ・コピーは、このアルバムから生まれた。Suzanne Vega風にプロデュースされたデビュー作...#01
GoldfrappはWill GregoryとAlison Goldfrappの男女ユニット。フランケンシュタイン博士が貴方の首を欲しがっているというゴシック・ロマン風の〈Lovely Head〉は、ウス気味悪いB級ホラー映画としてではなく、ファンタスティックな夢物語のように歌われる(ゴシック趣味はトリップホップに欠かせない要素の1つだし、Portisheadを揶揄しているような愉しさもある)。〈Deer Stop〉はイコライザ加工されたヴォイスがBjork風の捩じ曲がった幻惑的世界にリスナーを否応な...#02
《Vespertine》は不思議な親和力に満ち溢れている。今までの外部への執拗な攻撃・破壊性は暴風雨後の凪のように影を潜め、Bjorkの新たな冒険は内面ヘ向かう。いつの間にか、どこか人間離れした近寄り難い存在になってしまった彼女は、昆虫が完全変態の過程で「蛹」になるような劇的変貌を遂げつつあるらしい。内向性と言っても、それは自閉症的な「引きこもり」でも、自らを傷つける行為でもなく、むしろ逆に親密な、Bjorkという「繭」に包まれる ──彼女の中に溶け込む...#03
「終わらない夏」──1年中常夏の第3新東京のような、レトロ・フューチャーな日常と超現実的な暴力世界。2001年の夏の終わりの心象風景としてのFennesz。海面をオレンジ色に染める夕焼け空。夏の思い出にメジャー7thコードの甘い響きは良く似合う‥‥なぁんて感傷的な気分に浸ってしまうのは、思春期にインプットされたポップ・ソングのメロディ──実際はヴァーチャルで擬似的なノスタルジーに過ぎないのだが──が甘酸っぱい記憶と共に甦って来るからだろうか。「♪So...#04
そのタイトルと「タイムトンネル」みたいな渦巻き状の赤黒い孔の前に佇む全身黒ずくめの男装の麗人に怖れを成して尻込みしている人も少なくないLaura Finocchiaroは、ハードコア・パンクでもSF懐古趣味のタカラジェンヌ宙組でもなかった。一風変わった彼女の音楽を言い表わすのに一番手っ取り早い方法はFernanda Abreuとの比較だろう。F・Aがヒップホップ寄りのファンクだとすると、L・F嬢の方はクラブ / エレクトロ系、声質も(男勝りで硬質なF・Aに対し)フェミニン...#05
2003年の春、CDショップの試聴コーナで前作《Marrakech Emballages Ensemble 3》を調子に乗って聴き入っているうちに、気分が悪くなって来た。Brian Jonesのプロデュースしたアルバムを聴いていて忌わしい「幻覚」に襲われたという中島らも氏の若き日のエッセイを一瞬思い出したが、ニセモノ・紛いものの〈ワールド・ミュージック〉とはいえ、時には本物(コピー)を拾って来てしまうことも絶対ないとは言い切れない。ベルギーの異種混交音楽集団の新作は、北アフリカ...#06
アンビエント夥多のSteve Hillageプロデュースには長い間、食傷気味だったけれど、あの《Barbes》(1990)から14年、《Made In Medina》(2000)から4年振りに怒れるフレンチ野郎が還って来た。アラブ・ミクスチャー・ロック大爆発‥‥Christian Olivier(Tetes Raides)とのラップ・デュエット曲〈Tekitoi〉、言わずと知れたThe Clashのヒット曲〈Rock The Casbah〉のアラビック・カヴァ(Brian Enoがシンセ&コーラス参加)。この冒頭の2曲がアルバムを...#07
アルバム名が『葬式』、グループ名が「アーケードの火」というカナダの大所帯(6人+α)バンド。地球に墜ちて来た男がRoxy Musicを従えて歌っている1曲目〈Neighborhood #1 (Tunnels)〉、David Byrne 〜〈Pretty In Pink〉な2曲目〈Neighborhood #2(Laika)〉に殺られる。クレイジー極まりない歌詞。アコーディオン、サキソフォン、ヴァイオリン、チェロ、ハープ等が鳴り響く分厚いサウンドが薄くなる瞬間に鳥肌が立つ。後期Talking Heads的アプローチの〈Ha...#08
アメリカ50州をテーマにしたアルバム(全50枚?)の第2弾。衝撃度ではシリーズ1作目の《Michigan》(2003)に譲るものの、より稠密なコンセプト・アルバムになっている。ピアノ曲やバンジョー弾き語り、得意の奇数拍曲や「1人ステレオラブ状態」と、今作も20種類以上の楽器を器用に弾き熟すスフ ィアン君のパノラマ・ワールドを堪能出来る。新種のSSWという点から後述のDevendra Banhartと比較されることもあったが、新作は奇しくも両者共に「22曲74分!」対決と...#09
口腔や眼窩から紫色の血を流す少年少女。今まさに首を斬り落された少年の胴体部分から血が吹き出す‥‥。一見牧歌的な日常の奥に潜む猟奇性を表象したコラージュ・スリーヴが現実世界を逆照射する。アニコレの音楽は良くも悪くも今の時代とシンクロしている。個人的には前作《Sung Tongs》(2004)の〈Leaf House〉と『紙葉の家』のイメージの混淆が超強烈だったが、新作はより幅広いリスナーの共感(仮令それが不吉なものであったにしても)を呼び起こすだろう。メンバ...#10
Doctor Rockit、Wishmountain、Radio Boyなど‥‥6つの顔を持つ男、Matthew Herbert。Herbert名義では《Bodily Functions》(2001)以来、5年振りのソロ作だが、前作との相違点は自ら歌っていること。と言ってもメイン・ヴォーカルにDani Scilianoを起用しているので、彼女のソロ・アルバムとの違いを見い出し難い。地と風と火の〈9月〉を引用した〈Something Isn't Right〉、シック風に洒落た〈Moving Like A Train〉、アブストラクト版Tom Tom Clubの〈...#11
「ラジオの上のTV」(TVOTR)という黒人白人混成5人組の2ndアルバム。ノイジーなギター、浮游するサンプリング・ノイズ、強靭なデジタル・ビート、清冽なピアノ、ファルセット・ヴォイス‥‥Kyp Malone & Tunde Adebimpeのヴォーカルがソウルフルに響く。ポスト・ロックの雄というよりも新しいソウル・ミュージックのように聴こえる。かつてのYAZやFYCが、そうだったように‥‥。リスナーの全身に衝撃が走る〈I Was A Lover〉、日本人女性のヴォイスをを加えた...#12
1人メンバーが抜けてトリオ編成に戻った「鹿蹄」の7thアルバム。かつて英THE WIRE誌上で「不協和音色のキャンディ」(A candy coloured cacophony.)と評されたこともあったように、カラフルな10個のスウィート・キャンディにアヴァンポップな天然果汁やチョコレート、生乳ミルクが凝縮されている(10個目は10分以上の大飴玉!)。ポップなメロディ、可憐な少女ヴォイス、唐突なリズム・チェンジ(変拍子)、日本語、インプロヴィゼーション、予想を裏切る曲展開に...#13
カラオケ・パーティの余興で自作歌詞を披露すれば「替え歌」だが、既存曲のバックトラックで自由にラップ、勝手なメロディを乗せて歌えばヒップホップということになる。借用したブレイクビーツをサンプル〜ループ化して全く別の曲に改変してしまうのがヒップホップの方法論。他人の褌で相撲を取っているようで、伝統的な国技の土俵から逸脱した異種格闘技に変質している。ギターやピアノが弾けなくてもターンテーブル上のレコードを擦るだけで成立する「音楽」‥‥必要なの...#14
ダブはレゲエからヴォイスを消したカラオケに、エコー&ディレイ処理加工を施したインスト音楽である。そのアナーキーなサウンドが暴力的に言葉を剥奪された人間の抵抗と絶望感を想像させる。1979年にDennis Bovellのプロデュースした2枚のアルバム──The Pop Group《Y》とThe Slits《Cut》が当時のニュー・ウェイヴに与えた影響は計り知れない。その後、英国で一世を風靡するグラウンドビート〜トリップホップ〜ドラムンベースも、進化したダブの一形態と捉えることも...#15
The Pop Groupと言えば、Dennis Bovell(Matumbi)がプロデュースしたデビュー・アルバム《Y》(1979)が有名ですが、解散後のMark StewartはAdrian Sherwoodとタッグを組んで、ダブ〜ヒップホップ〜テクノ寄りのサウンドを一貫して追求して来た。《Control Data》(Mute 1996)以来、12年振りに発表されたニュー・アルバムでもAdrian Sherwoodとの共同プロデュースで健在ぶりをアピールしている。ズタズタに切り裂かれてカットアップされたレゲエ、ダブ、ヒ...#16
ピーテル・ブリューゲル父の〈ネーデルランドの諺〉(The Blue Cloak 1559)を使用したカヴァ・アートが人目を惹くFleet Foxesのデビュー・アルバムは、フリー・フォークと呼ばれるアクースティック音楽が新たな局面に入ったことを示唆している。米シアトル産の5匹の狐たちは自らを「バロック・ハーモニック・ポップ・ジャムズ」と名乗る。牧歌風のフォーク・ソングでありながら、教会内に響くゴスペルのような荘厳なイメージが広がる。広大な農村地帯ではなく山岳地方...#17
Dave Longstrethのソロ・プロジェクトから始まり、6人組となった男女混成バンドの5thアルバム。Dirty Projectorsの奇妙な音楽を文章で解説するのは難しい。不協和音が混じったような女声コーラスに魅惑される〈Cannibal Resource〉、アフリカっぽいギターの音色やリズムの揺らぎに眩惑される〈Temecula Sunrise〉、Amber Coffmanのヴォイスに魅了される〈Stillness Is The Move〉、メロディやリズムの複雑な構成に翻弄される〈Useful Chamber〉‥‥。明るく...#18
《メキシコからこにゃにゃちわ》(Epic 2003)という変タイトルの日本盤が話題になったナタリアちゃんの2ndソロ・アルバム。デビュー・アルバムをリリースした時は18歳(録音時は17歳)だったという早熟少女。作詞・作曲、ピアノやギタ ーなども弾きこなす女性SSWなのだ。垢抜けない少女アイドル風の容姿に騙されないように。バンド名義の《Casa》(20 05)はラテン・グラミー賞(最優秀グループ・ロック・アルバム部門)に輝くものの、彼女は離脱。6年振りのソロ...#19
黒地に浮かび上がるJesca Hoopの横顔‥‥紙ジャケを見開くと、紫色のチューリップが敷き詰められたインナー・スリーヴのスリットに同じデザイン(紫チューリップ)をプリントしたCDが挿まれている。デビュー・アルバム《Kismet》(Red Ink 2007)はSony傘下のメジャー・レーベルだったのに2ndアルバムがUKインディーズからの先行リリースになったのは彼女が米カリフォルニアから英マンチェスターへ活動の拠点を移したことと関係があるのだろうか。アカペラ多重唱か...#20
*
rewind 2000-2009 / 1990-1999 / sknynx / 270