民放TVの週一連ドラは放映中(3ヵ月間)に必ず1〜2回は見逃してしまうので──榮倉奈々主演『ダンドリ。』(CX)の最終回を見逃してしまった!──、ヴィデオに録画してまで視る気も元々ないし‥‥毎週見続けることは殆どないのだが、深夜枠で再放映されていたりすると、つい最終回まで視てしまう。気怠い昼下がりに週日再放送されている「2時間ドラマ」も深夜帯だと妙な臨場感があって、内容がクダラナイほど逆に笑えたりするから不思議です。『QUIZ』(TBS 2000)も小学生の連続誘拐事件だけで1クール引っ張るのは幾ら何でもキビシ〜なぁと想いながらも結局最後まで見続けてしまった(でも、このオチは無いんじゃないの!‥‥刑事役の生瀬勝久と温水洋一の演技は際立っていたけれど)。「クイズです」に比べれば、『池袋ウエストゲートパーク』(IWGP)の方が遙かに面白かったと言わねばならないでしょう。

『池袋ウエストゲートパーク』(TBS 2000)の原作は読んでないけれど、舞台がホームグラウンドの「池袋」ということもあって見始めたらストーリィも映像も破天荒!‥‥「民放のプライム帯で、こんな過激な連ドラを毎週やっていたのか!」と遅蒔きながら吃驚しました。池袋西口の果物屋「真島フルーツ」のバカ息子マコト(長瀬智也)とGーBOYSの頭キングことタカシ(窪塚洋介)を中心にブクロのカラーギャング抗争をコミカル&シリアスに描いているのだが、恋人のヒカル(加藤あい)、友人のマサ(佐藤隆太)、アニメ・オタクの高校生シュン(山下智久)、ヤクザの同級生サル(妻夫木聡)、ドーベルマン山井(坂口憲二)、保育園の保母・加奈(小雪)‥‥と、今では主役級の若手俳優陣が顔を揃える。主人公のブッ飛んだ母親リツコ(森下愛子!)、唯一浮いた存在の新任エリート署長・横山(渡辺謙)、その部下きたろう、駐在の阿部サダヲ、という配役も絶妙。元バレーダンサーの京一(西島千博)、引きこもり→情報屋の和範(高橋一生)、盗聴マニアの電波くん(須藤公一)、援交コギャルのリカ(酒井若菜)、風俗嬢の千秋(矢沢心)、ボーリング場の受付嬢カオル(安藤裕子)‥‥など、今日的な「病理キャラ」も満載で実に愉しい。

カラーギャング抗争の裏で本物のヤクザも暗躍し、警察も治安維持のために取り締まりを強化する一方で、そもそもの発端の殺人事件が次第にサイコ・ミステリィ的な色彩を強めていく──「ツイン・ピークス」風サイコパス絞殺魔?──、真犯人探しの暗黒面もあって、ドラマの終盤は深い闇がドロドロと渦巻くようで結構怖い。主人公のマコトが「あ〜メンドクせ〜」と苛立ちながらも終始ヤヤコしい事件に巻き込まれていく様は、「アッシには拘りのねぇことでござんす‥‥」と嘯きながら難事(降り掛かる火の粉?)に拘らざるを得なかったアンチ・ヒーロ、木枯し紋次郎(古い!)的なニュートラルな1匹狼を彷佛させる。ボーリングの天才にして何故か大の焼きソバ+マヨネーズ好き(伊賀野カバ丸?)という設定も無性に可笑しい。マコトに付かず離れずの相棒役マサも憎めない白金髪天パーキャラだ。

『白線流し』(CX 1996)の定時制高校生役が好印象だった長瀬智也──セーラ服&ブルマ姿の酒井美紀さんも初々しかったよね!──のバカ丸キャラは兎も角、妙にヘナヘナした軟弱男という負イメージしかなかった窪塚洋介の演技には舌を巻いた。このタカシ(キング)役は誰が見ても往年のJohnny Rotten(→John Lydon)のパロディそのものだ。実際のJ・Rが、こんな立ち振る舞いの人物なのかは措くとして、彼が画面に出て来て始終ラリってるみたいにクネクネ動き回るするだけで大爆笑。この奇抜なアイディアが「原作」なのか「脚本」なのか、役者自身に拠るものなのかは判らないけれど、全国ネットの連ドラにパンク〜オルタナ時代の伝説ヒーロの生き写し(魔界転生?)が20数年後に堂々と登場しちゃうのは、TV50年史上前代未聞の快挙でしょう。

全11回の数字に引っ掛けた各回のタイトル・アイコン──1. イチゴ、2. ニンジン、3. みかん、4. しいたけ、5. ゴリラ、6. i(TBS)、7. 洋七、8. 洋八、9. 九州、10. 十手、11. 士(サムライ)──が飛び回るオープニング・ロールも面白い。果物屋だけにフルーツネタと想わせて野菜シリーズ〜動物、6チャンネル‥‥と落とす。各アイテムが「小道具」として登場する他、「もみじ饅頭」で有名な往年の漫才コンビも客演、最終回の「侍」はクドカン本人である。ゲスト出演者も、イケメン歯科医・早乙女(羽賀研二)、ヤクの売人ヘビーE(古田新太)、TV人生相談のコメンテータ吉村ちづる(銀粉蝶)、その夫でヤクザの組長・多田(白龍)、マルチ商法「ドリームコネクション」の女教祖イザベラ内藤(未唯)、京極会の蓮沼(KORN)、ヒカルの母親・和子(杉田かおる)、川崎麻世(本人)‥‥と一癖も二癖もある配役となっている。

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2003年3月末、2時間スペシャル版として放映された『池袋ウエストゲートパーク スープの回』(TBS 2003)は「カラーギャング抗争」から3年後のブクロを描く。立ち退きを迫られて移動販売を余儀なくされた真島フルーツ。何故かラーメン店を開業した元CG団同士の「ラーメン対決」が表向きのストーリィ。その一方でブクロのホームレスたちが暴行されて骨折するという怪事件が続発する。今回の特番はRIZEやクレイジーケンバンドなど、ゲスト・ミュージシャンのライヴ / 出演もあり、それがストーリィ上の重要な伏線にもなっている。但しキング店長が「究極のスープ」を求めて放浪の旅に出ているという設定のために、後半からしか窪塚洋介の出番がないのは惜しい。その中で、主要登場人物たちの3年後──売れっ子作家に転身したヒカル、刑務所内のドーベルマン山井、若頭の斎藤サル、昇進した吉岡(きたろう)&浜口(阿部サダヲ)‥‥の後日談が『アメリカン・グラフィティ』のエピローグ風に点描されて行く。もちろん死んでしまったキャラ(役者)たちは2度と出て来ないのだが‥‥。

主なロケ現場は東京芸術劇場前の西口広場周辺だが、ゴミ焼却処理場の天高く聳え立つオベリスク塔(煙突)をバックにしたJR線高架歩道橋(池袋大橋)でのロケ・シーンは実際に渡って歩いたりしているので架空のドラマとはいえ、ご当地ならではの不思議な既視感に襲われる。数年前、池袋方面からの帰り道、JR某駅付近の公道(◯△銀座!)でのロケ現場に出喰わしたことがある。夜8時時半頃だっただろうか、主演の木村佳乃が書店から駆け出して来るだけのシーン(1カット)に見物し始めてからだけでも優に20〜30分以上は掛かっていた。リハ、カメラ・テスト、本番‥‥と、その度毎に車両や通行人を止めての地道な作業。往来でのロケは本当に大変ですね。その時のドラマのオンエアは残念ながら見逃してしまったけれど、「寂れた商店街の本屋」というロケ現場設定には涙を誘うものがあります。そんな事があったから、池袋西口でのロケの困難さも容易に想像出来るわけです。

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『木更津キャッツアイ』(TBS 2002)は千葉県木更津市を舞台に繰り広げられる元高校野球部OB仲間5人──ぶっさん(岡田准一)、バンビ(櫻井翔)、アニ(塚本高史)、マスター(佐藤隆太)、うっちー(岡田義徳)──が結成した「怪盗団」の巻き起こすスラップスティック・コメディで、法律的には犯罪行為であるにも拘らず、常にもっと悪い奴らが絡んで来て結果的には大団円(一切お咎めなしのネズミ小僧的義賊団?)で、毎回四方八方丸く収まってしまう超お気楽ストーリィ。おまけに主人公・ぶっさんはガンで余命6ヵ月というハチャメチャな設定。野球試合に見立てて毎回表・裏があり、逆回し映像でタイム・スリップ〜ザッピング風に時間を遡って隠されていたウラ・ストーリィを「裏の回」で謎解きする凝った仕掛け。キャッツアイ5人衆の中の味噌っ滓的存在、モヒカン刈りのうっちーがジョーカ役。美礼先生(薬師丸ひろ子)も危ない一触即発キャラ。巨乳パー娘のモー子(酒井若菜)は「させ子」なのに処女だった!?

サスペンス調のIWGPに比べると、ドタバタぶりが過ぎて単にウルサイだけの悪ノリ〜脱力ギャグもスベッているように見えてしまうのは仕方無いとしても、芸達者の個性派俳優たち──阿部サダヲ、古田新太、小日向文世、山口智充、森下愛子、渡辺いっけい‥‥が脇を固めている分だけ、所謂ジャニーズ系タレントの大根役者ぶりは目に余る。ジャニーズ系って歌も演技も超下手なのに何故か人気だけは超高いんですよね。素のまんま普段着のキムタクは別格としても、もう少し何とかならないのか!‥‥きっと本人たちも自分のヘタさ加減、役者に不向きなことくらい、とっくの昔に気づいているはずなんだけどねぇ〜。ドラマや映画で、コイツ(往々にして主役を張ってたりする)がジャニーズじゃなかったらって、舌打ちすること結構多いし‥‥。

放映時の平均値聴率は10.1%(関東地区)と振るわなかったものの「放送終了後の人気が根強く」、2002年夏に発売されたDVD(5枚組)『木更津キャッツアイ DVDーBOX』やシナリオ本『木更津キャッツアイ』(角川書店 2002)の売れ行きも好調で、2003年秋に映画化された。「木更津」の前に「池袋」の方を映画化して欲しかったが、あえなく殺されて青い睛の「地蔵」と化してしまったオジー(古田新太)が一体どう甦るのかは、熱心なファンならずとも気になるところ。毎回ドラマに華(徒花?)を添える何の脈絡もないゲスト陣──きたろう、ケーシー高峰、増田恵子、ピエール瀧、哀川翔(本人役)、YOU‥‥も笑えるけれど、クドカン本人が演出した7回表・裏の氣志團と加藤鷹(AV男優)の攻防は、どこまでマジなんだかギャグなんだか全く分からない〈クドカン・ワールド〉の真骨頂でした。

劇場公開版『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(2003)は哀川翔主演映画1000本記念作品で幕を開ける。2033年、中年男女と化したメンバー5人──バンビ(中尾彬)、モー子(伊佐山ひろ子)──が30年前の夏を回想する趣向。オジー復活の謎、ぶっさんが韓国パブのホステス・ユッケ(ユンソナ)に一目惚れ、氣志團と木更津キャッツのライヴ、ローズ(森下愛子)の出産、美礼先生と村田ジョージ(内村光良)の関係、ニセ新札騒動‥‥と、1回から延長10回までトリッキーな表・裏の攻防が続く。IWGPに比べると登場人物像は小粒な印象。無意味なハイテンション、脱力ギャグも空回り、一番笑ったのは山口先輩(山口智充)と猫田(阿部サダヲ)の吉川晃司&布袋(?)のモノマネ・バトルだったが、肝腎のストーリィ(脚本)の方はメンバー5人が南の島に流されて、黒モー子&アマゾネス軍団と遭遇する辺りからファンタジー化して行く。木更津港に怪獣ゴミンゴ現わる!‥‥「2時間ドラマの帝王」がオカリナを奏でるオチは意味深ですね。黒モー子のエピソードとゴミンゴのエピローグは蛇足だったと思う観客も少なくないでしょう。

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  • 日本シリーズよりも、欧州CLに燃える秋?

  • 映画化するならIWGPと思っていたのに、KCEワールド・シリーズが開幕するのね

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池袋ウエストゲートパーク DVDーBOX

  • 出演:長瀬 智也 / 加藤あい / 窪塚 洋介 / 山下 智久 / 妻夫木 聡 / 坂口 憲二 / 矢沢 心 / 佐藤 隆太 / 小雪 / きたろう / 森下 愛子 / 渡辺 謙
  • メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
  • 発売日:2000/10/25
  • メディア:DVD(6DVD)


木更津キャッツアイ DVDーBOX

  • 出演:岡田 准一 / 桜井 翔 / 酒井 若菜 / 岡田 義徳 / 佐藤 隆太 / 塚本 高史 / 阿部 サダヲ / 山口 智充 / 古田 新太 / 森下 愛子 / 小日向 文世 / 薬師丸 ひろ子
  • メーカー:メディアファクトリー
  • 発売日:2002/06/28
  • メディア:DVD(5DVD)