• 敵機が低空飛行してきたな! と思った瞬間、ドカ〜〜ン! と爆弾が落ちて、爆風とともに左腕に痛みが走った。「やられた!」と思っているうちに痛みはだんだんひどくなり、やがてモノが言えないくらいになってきた。世の中にこんな痛いことってあるのだろうか、というほどだ。/ 衛星兵が来て止血してくれたが、血はバケツ2杯ほども出たような気がした。「輸血したほうがいい」と言ってぼくに血液型を聞いたが、ぼくは頭がもうろうとしてわからなくなっていた。そこで輸血はやめたが、このままでは命が危ういと言う。/ 翌日、軍医が来て、軍用の七徳ナイフのようなもので腕を切断した。ぼくは意識を失った。/ 気がついたのは、あくる日の午後だった。/ 軍医は目医者だったが、親切だった。しかし、薬も足りなければ栄養状態も悪かったので、腕を切ったあとはなかなかよくならなかった。/ わずかに残った短い左腕は顔よりも大きくはれあがり、ウジ虫がわいて大変だった。/「これでマラリヤが発症したら終わりだ」と言われた。
    「水木 しげる のんのん人生」


  • □ 逃げた石原さとみ。シジミとさらば、椎茸煮
    昨夜は酒を少し呑み過ぎたらしい。ビールとワイン、ハイボールまでは覚えているけれど、その後の記憶が一切ない。頭痛もするし、吐き気もある。二日酔いの朝はシジミ汁を飲むことに決めている。シジミに含まれるオルニチン(アミノ酸)が体内のアルコールを分解してくれるからだ。何となく健康にも良い気がして、体調も回復していたように思っていたのだが、単なるプラシーボ効果だったのかしら?‥‥先日、某TV番組に出演して「シジミ健康法」を紹介したら、シジミ汁1杯分の摂取量では殆ど効果がないと医師に宣告されてしまったからだ。さらに衝撃的な新事実を知らされた。医者曰く「シジミよりもシイタケの方が何十倍も二日酔いに効く」。そして世にも怖しい、真っ黒に煮染められた「椎茸の甘辛煮」が目の前に出て来た。「ギャッ!」と叫んで、収録中のスタジオから逃げ出した。私はシイタケが大嫌いなのだ。

    □ 靴履く神父、ゴソゴソ5分、四苦八苦
    結婚式の当日、自宅を出ようとした神父は冠婚葬祭用の靴の片方がないことに気づいた。昨晩、念入りに磨いておいた革靴の左だけが、不思議なことに見つからない。飼い犬のシューが咥えて中庭のどこかへ隠してしまったのだろうか?‥‥子犬の頃はスリッパが室内から消えてしまったことが良くあったけれど、重い革靴が無くなったのは初めてだった。綺麗に磨き過ぎたのが逆効果だったのかもしれない。挙式の時刻が迫っている。挙式のリハーサルも行なわなければならないし、一刻の猶予のままならない。探すのを諦めた神父は仕方なく靴箱の奥から以前履いていた革靴を取り出した。ところが久しく履いていなかったからか、革が固くなっていて両足がスムーズに入らない。数年振りに靴ベラを使わなければならなかった。神父は玄関で5分間、古靴と悪銭格闘することになった。

    □ 既読スルー、彼キレ、ガールズ口説き
    ツイッターやフェイスブック、ラインなどのSNSは世界に開かれた最新のネット・メディアだと思っていたが、日本ではイジメや仲間外れ、リベンジ・ポルノなどが横行する偏狭な村社会と化している。自由でグローバルな世界のはずなのに、ドメスティックで閉鎖的な空間になってしまった。本来フリーなインターネットが資本主義に乗っ取られたように、現実世界の閉塞感がネット内にも色濃く反映されているわけだ。お互いに顔の見えないヴァーチャルな関係が言動を過激にしているという側面もあるかもしれない。読んだら即座に返信しなければならないという暗黙のルールも、相互監視システムが張り巡らされているようで気味が悪い。私が「既読スルー」したことに彼氏がキレて、手当り次第に複数の「女友達」を口説き出したのには唖然とした。こんなにも料簡の狭い自己チューで浮気性のクズ野郎だったのか、私の目は節穴だったのか!‥‥と憤怒して落ち込む。これも現実世界の過剰な投影なのかしら?

    □ 茄子・味噌・白滝・鱈・紫蘇・水菜
    NNK「きょうの料理」は寒い冬に絶好の温か鍋だった。美玲之ラビ(料理愛好家)が作る特製「茄子と水菜の鍋」。今日のレシピはとっても簡単だ。土鍋に水を入れて、鱈、白滝、茄子、水菜、紫蘇‥‥の具材を投入するだけ。味つけも味噌だけのシンプルな鍋である。「茄子と水菜の鍋」は美玲之家に代々伝わる鍋料理だという。1人娘ラビの父親は著名な仏文学者だったが、その祖父が料理研究家だったことは余り世に知られていない。「茄子と水菜の鍋」も祖父が考案した創作料理の1つだと伝え聞く(番組の収録時間が余ったのか、ラビの早口弁舌が止まらない)。幼い頃、お爺ちゃんに「茄子と水菜の鍋」を作ってもらった記憶がラビにはある。その祖父には回文作家としての意外な一面もあった。創作料理の大半は回文から思いついたという珍説もあるほどである。

    □ 敵機、水木しげる見る景色、澄み切って‥‥
    水木サン(武良茂)は大正11年3月8日、大阪の西成郡粉浜村で生まれた。「茂」という名前は曾爺さんの「茂三郎」から1字もらって名付けられたという。生後1カ月後、武良一家は鳥取県境港市へ引っ越す。ある日、食いしん坊(ズイボ)の水木少年は国民の祝日に立てて飾る日の丸の先端に付いている金色の玉を食べて気分が悪くなり、気絶したところを家の手伝いをしていた「のんのんばあ」に介抱される。老婆から聞かされた妖怪の話や奇妙な体験が後の「鬼太郎」などの作品に生かされることになる。昭和18年、召集令状が届いて水木サンは入営する。2カ月後にラッパ卒となるが、上手く吹けない。人事係の軍曹にラッパ吹きを辞めたいと直訴すると、南方への野戦行きを命じられてしまう‥‥。敵機が低空飛行して爆弾を投下する。爆風と共に左腕に痛みが走った。大量の出血。衛生兵に止血してもらったが、頭が朦朧としていて血液型が分からず、輸血は行なわれなかった。翌日、軍医が来て軍用ナイフで腕を切断!‥‥麻酔なしの外科手術に水木サンは意識を失った。

    □ さだめ、路地裏の子ネコ、野良、後ろめたさ
    都会で暮らすネコたちを撮っている写真家のS氏は憂慮していた。最近、街中で見かけるネコの個体数が減って来たように思うからだ。東京23区ではネコやウサギやハトなどの小動物が惨殺される猟奇事件が頻発している。危機感を持った飼主は飼いネコを外へ出さなくなった。地域ネコに施される耳先カット効果も影響しているのかもしれない。それでも近所を散策していて、顔馴染みのネコに出会うと安堵する。ある日、路地裏に1匹に子ネコが佇んでいた。ミャーミャーと鳴いて頻りに何かを訴えている。ネコ好きの人ならば即座に保護するところだが、S氏は躊躇する。自宅マンションではネコやイヌなどのペットを飼えない規則になっている。様子を見ながら写真を撮っていると、奥の細い路地から母親らしきネコが姿を現わした。鋭い眼光でS氏を睨む。「良かった、母ネコと一緒だった!」‥‥多少の後ろめたさを感じながら、S氏は路地裏を後にした。

    □「ハロウィン、危ないな」‥‥不安、言う驢馬
    2015年10月31日、渋谷駅周辺は仮装・コスプレした若者たちで埋め尽くされていた。ハチ公前のスクランブル交差点が渡れない(交通警察官が規制線を張っていた)。スーパーマリオ、セーラームーン、ゾンビ・ナース、ミニスカ・ポリス、囚人、綾波レイ、キグルミン‥‥ゲームやアニメのキャラたちで溢れるセンター街。ラッシュアワー並みの混雑で身動きが取れない。記念写真(プリクラ)を撮るためなのか、ゲームセンターの前には長蛇の列が出来ていた。JRの改札を通ってハチ公前に出たロバくんは身の危険を感じて、地下通路へ避難することに。ヒカリエ経由で「エル・スール・レコーズ」(築62年の幽霊マンション10階)に漸く辿り着く。店主にハロウィンの大混雑ぶりを伝えると、iMacで渋谷の様子を確認する。狭い店内はCDやレコードなどで溢れている。幸いゾンビやモンスターはいなかった。帰途も地下街から渋谷駅へ向かう。ゾンビ青年が東急のれん街で食料品を物色していたのには笑っちゃいましたが。

    □ ギャル巨乳、揺蕩う。湯に過る山羊
    巨乳娘Qは温泉旅行が大好き。今日もリュックを背負って1人旅に出た。行き先は九州某所にある秘湯。鄙びた旅館に着いたQは早速、目的地を目指す。人気のない山道を歩くこと数十分、足取りが重くなって一服したいなぁ‥‥と思っていた矢先に目当ての秘湯があった。露天風呂に併設されている簡易脱衣場で服を脱いで、徐ろに湯の中へ入る。適度に疲れた躰に温泉が心地良い。肌の中に温かい湯が沁み込むようだ。「穴場の秘湯」と呼ばれるだけあって、辺りに人の気配が全然ない。もし覗き目的の盗撮魔が隠れていたとしても、湯煙で殆ど見えないのだが‥‥。湯の中でQの巨乳がユラユラと揺れる。耳を澄ますと野鳥や野生動物らしき鳴き声が遠くの方から聞こえて来る。全身を解放してリラックスしていると、都会の喧騒や軋轢が湯の中に解消して行くのが感じられる。湯煙の向こうで何かが動いたような気がして、Qは目を凝らす。「獰猛なクマだったら一体どうしよう」と一瞬不安になったが、鳴き声を聞いて安堵した。露天風呂を横切ったのは一頭の山羊さんだった。

    □ 隠すマイナンバー、ノーパン‥‥ない、マスクが!
    悪の組織ショッカーの「10月計画」は富士山麓の地下基地にあるスーパー・コンピュータを使って日本人をロボット化することだった(ショッカーの計画は仮面ライダーズによって阻止された)。その悪名高い国民総背番号制度が「マイナンバー」という名称で45年後に実現されようとしている。正義の味方の月よりの使者「けっこう仮面Z」も国民の個人情報を国家が管理して丸裸にするマイナンバー制の実施には断乎反対である。下半身は露出(ノーパン)しているけれど、私の「マイナンバー」は隠さなければならない。郵便配達人が届けに来た簡易書留は受け取り拒否。抗議のために役所へ走った「けっこう仮面Z」は我が身の異変を肌に感じて赤面した。激高仮面していたからなのか、赤いマフラー、グローブ、ブーツは身に着けていたのに、肝腎のマスクで顔を隠すのを忘れてしまったのだ。これでは正体バレバレのストリーキングではないか!‥‥猥褻物陳列罪で逮捕されちゃうわ。「どこの誰かは知らないけれど、体はみんな知っている。けっこう仮面Zは誰でしょう?」

    □ 異界・幻魔スナイパーはイナズマン警戒?
    「新人類帝国」から新たな刺客が放たれた。凄腕の幻魔スナイパーの標的は風田サブロウではなく、改心して「少年同盟」に寝返ったルビイである。「裏切り者には死を‥‥」というのが領主バンバからの勅令だった。もちろんイナズマンがミッション遂行の障碍として立ちはだかることは想定していた。その場合には風田サブロウも抹殺しなければならない。公園を散歩するルビイと風田サブロウを幻魔スナイパーが遠距離から狙う。M16(アサルトライフル)でルビイに標準を定めて狙撃したが外れた。引き金を引いた瞬間、風田サブロウがルビイに体当たりしたからである。右肩を負傷したサブロウは蛹になって蹲る。次に繭を破ったサナギマンが狙撃手を追う。スナイパーが再び発砲するとイナズマンに変身!‥‥幻魔スナイパーとイナズマンの2人が対峙する。風田サブロウは幻魔スナイパーの正体を見て驚いた。魔界転生したデューク東郷(ゴルゴ13)だったとは !?

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい



    • 水木しげる回文は『水木しげる のんのん人生』(大和書房 2004)を参照しました



    • イナズマン回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #42」の解答です^^



     スニンクスなぞなぞ回文 #43


     喜多嶋舞◯▽△☆◎☆△▽◯いまま下着


     回文作成:sknys


     ヒント:夜になっても遊び続けろ


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    包帯クラブ

    • 出演:石原 さとみ / 柳楽 優弥 / 田中 圭 / 貫地谷 しほり / 関 めぐみ / 佐藤 千亜妃
    • 監督:堤 幸彦
    • メーカー:ポニーキャニオン
    • 発売日:2008/02/15
    • メディア:DVD


    水木しげる のんのん人生

    • 著者:水木 しげる
    • 出版社:大和書房
    • 発売日:2004/12/10
    • メディア:単行本
    • 目次:まえがき / のんのん人生はじめのはじめ / ケンカと絵と妖怪と / 戦争はタイヘンだ / とにかくイロイロやりました / マンガ家人生も甘くない / 売れた! 倒れた! 南の島だ!/ それでも水木サンは進む