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  • ネコが何か不思議な力をもっていることはネコを知っているヒトならだれでも気付いていることでしょう。/ 癒されるなんて甘い。そういうことではなく、やっぱりぼくたちが遙か以前に置き忘れてきたものを呼び覚まさせてくれるのがネコではないでしょうか。/ 何か物事を始めるときには、根本的なことに立ち返って考えたりしますよね。そのときに何が一番大切なことなのかと深慮します。/ ヒトが生まれ、少年少女になり、成人して結婚します。子を授かり、そして育て上げます。もちろん日々の食べ物を得るための努力は怠りません。そして、やがて年をとって死んでいく。/ 明快です。どんな暮らしであろうが、どんな裕福であろうが関係ありません。ネコは1枚の服を生涯着ています。/ 一見単純にも見えるネコの暮らしは、実は生きることへの永遠を見せてくれているのではないでしょうか。幸せも苦労もたいしたことではないと教えてくれているように思えてならないのです。
    岩合 光昭 『ねこ歩き』


  • ♯289│イチゴ│飼い猫 ── 元気になったイチゴちゃん
    久し振りに再会した三毛ネコ2重面相(顔の左右が黒と茶色に分かれているので、横顔が左右で別ネコに見える)のイチゴちゃん。1年ほど前に会った時は体調が良くなさそうだったが、今は少し肥って元気そう。小さな駐車場にいたイチゴちゃんに猫語で呼びかけると、いつもと変わりなく近寄って来た。たまたま外にいた隣家の女性(スズちゃんの飼主)と少し話す。岩合さんの「世界ネコ歩き」(NHK BS プレミアム)を見ている?‥‥と訊かれる。イチゴちゃんは人間たちのネコ話には興味がないらしく耳を貸さず、トコトコと歩いて2人から離れて行く。この絶好のチャンスを逃したら今度いつ会えるのか分からないので、女飼主との会話を早々に切り上げてイチゴちゃんの後を追う。このシチュエーションではネコを撮ることが最優先されるのだ。まさに「日本ネコ歩き」というか、スニーズの「東京23区ネコ歩き」である。

    ♯290│マリヤ│飼い猫 ── 引っ込み思案
    近づくとビックリして家の中に隠れちゃう引っ込み思案のマリヤちゃん。それでも玄関ドアの隙間から外の様子を興味深そうに窺い、少し経つと何事もなかったように再び出て来る。好奇心旺盛で活溌なサイちゃんと好対照のマリヤさんですが、2匹の仲は良さそうだ。腰を屈めて写真を撮っていると肩や頭の上に乗って降りて来ない(見晴しが良いのだろうか?)ヤンチャなサイちゃんは兎も角、臆病なマリヤさんはリードで繋ぎ置かなくても逃げ出す心配はないのではないかと思う。顔や声を憶えてくれたのか、最近は近づいても逃げ隠れしないで、躰にも触らせてくれるようになった。茶トラ縞で目の色も飴色(茶系のイエロー)、左右の目の大きさと明度が異なっている(左目の方が小さくて暗い)。マリヤさんの背後で合わせ鏡のように寝転がっている灰色ネコがサイちゃんです。

    ♯291│サビ│ノラ猫 ── 世渡り上手?
    民家の玄関の前で物欲しそうに鳴いてゴハンを強請るサビくん。要領が良いというか、世渡り上手というか、全く物怖じしない性格。悟りを開いた托鉢僧のような自然体で日々生活している。複数の民家でゴハンを食べているので、痩せ細った禁欲的な修行僧というよりはメタボ体型の破戒僧(生臭坊主?)を想わせなくもない。人懐っこいのでヒトには好かれる反面、気の強かった生前のトミーちゃんには嫌われていた。ヒトに媚びるサビくんの行動を快く思わないネコたちもいるようだ。新入りのレイちゃんや三毛ネコのマープルちゃんも古参のサビくんとは一定の距離を保っている。近隣の家の前に座って、ラムちゃんの飼主からゴハンを貰っていることもあったが、最近見かけなくなったのは気懸かりです。どこか別の家の前で、ご相伴に預かっているのでしょうか。

    ♯292│ボス│ノラ猫 ── 午年もよろしくにゃん
    赤剥けた鼻面は百戦錬磨の証なのか、それとも薮蚊に刺された痕なのか?‥‥その堂々とした面構えに「ネコ番長」の風格が漂う。転がって寝返りを打つゴロニャンや匂い付けをするスリスリなど、ネコには幾つかの魅惑的な行動やポーズがあるけれど、前肢をクルリと胸毛の奥に隠してリラックスしている「香箱座り」には誰もが魅了される。同じ腹這い状態でも獲物を狙う一触即発の臨戦態勢ではない。前肢を隠す(直ぐに攻撃出来ない)ことで、敵意はないと暗に示しているのかもしれない。夕陽を背にした順光で撮っているので、被写体の背後の景色が水玉模様のようにフワフワと浮遊して輝いている。一眼レフ(ミラーレス)特有の柔らかなボケ具合いがネコの精悍な表情を対照的に際立たせて、いつまでも見飽きることがない。いわゆる「懐手」した前肢も緊張感を緩和している。

    ♯293│ソラン│飼い猫 ── お気に入りの場所で
    身も凍る冬の日、白い雪が道端や屋根に積もっていても自分のテリトリ内を律儀にパトロールするソランちゃん。周囲にネコの気配はなくてもソランが外回りしている時は、猫語で呼びかければ必ず姿を現わす。今日も縁石や門柱に躰を擦り付けたり、植え込みや雑草の葉っぱを食べたり、木肌や板塀で爪を研いだり、バイクや自転車のタイヤ(ゴム)の匂いを嗅いだり、一心不乱に毛繕いをしたり‥‥色々と忙しい。前後左右を見渡して異常がないかどうかチェックすることも怠らない。そんなに動き回っていて疲れないのかと思うけれど、それがネコ本来の習性というか、行動パターンなのだろう。一通り見回りを終えて気が済んだのか、お気に入りの場所で漸く休憩タイム‥‥白い室外機の上で寛ぐ。やっと、シャッター・チャンスが巡って来た。「東京ネコ歩き」はヒトもネコも疲れるにゃん。

    ♯294│ラム│飼い猫 ── 病み上がりにゃんこ
    大病したらしく痩せ細ってしまったラムちゃん。飼主の家から出て来て、外界の空気に触れている。病み上がりなので表情も険しく動作も緩慢だが、不用意に躰を撫でようとすると繰り出されるネコパンチは健在だ(躰に触れようとした女性がパンチ攻撃に見舞われた)。たまたま遊びに来たサビくんのメタボ体型に比べると、余計にラムちゃんの痩身痩躯が目立ってしまう。ラムとサビを交互に撮る。思い詰めたような表情は痛々しい気もするけれど、兎に角、生きていて良かった、再び会うことが出来て嬉しく思う。もしノラ猫だったらば死んでいたかもしれない。動物やペットは人間のように躰の不調を訴えたりしないし、自ら病院に行ったりもしないから。家ネコでも飼主や家族が注意深く見守っていないと手遅れになることが少なくないらしい。後日再会したラムちゃんは少し肥って元気そうだった。

    ♯295│ハンナ│ノラ猫 ── 魅惑のポーズ
    チェシャ猫のように笑う三毛ネコのロリちゃんと同じく、I袋駅前公園に棲息するネコたちは別れ際に魅惑のポーズでアピールすることがある。最初は挨拶に来るものの、その後は知らんぷりということも少なくなかったのに、今まで素っ気ない態度だったのに帰ろうとした途端、人懐っこいネコに豹変するのだ。ゴロニャンして綺麗なエメラルド色の目で誘惑するハンナちゃん。もっと遊んで欲しいのか、それとも躰を撫でて欲しいのだろうか?‥‥恐らくヒトには想像もつかないネコなりの理由があるのかもしれない。もちろん、それは人馴れしているネコたちに見られる行動で、植え込みの陰に隠れて公園の様子を窺っている用心深いネコたちが自ら近寄ってくることは決してないし、「魅惑のポーズ」で引き止めたりもしない。その違いは一体どこから来るのだろう。生来の性格、育った環境?‥‥謎に満ちたネコたちへの興味は尽きない。

    ♯296│ダイ│ノラ猫 ── もう帰っちゃうの? 02/11
    I袋水天宮神社の石段でゴロニャン・ポーズを決めるダイちゃん。いつもは置き石の上で大人しく座っていることが多いのに、ネコジャラシで遊んでもらっているわけでもないのに、自ら転がって寝返りを打つ。いわゆる「必殺ゴロニャン」は動きが素速いのでピント合わせが難しい(ピントは被写体の目に合わせる)。もちろんマニュアルでピントを合わせている余裕はないのでAF撮影になるが、デジカメのレスポンスが遅いのか、なかなか上手く撮れない。ダイちゃんの写真も左前肢がブレている。逆に動きの少ないネコを撮る時はAFで合わせた後、DMFでピントを微調整する技が使える。この方法ならば暗くて手ブレ表示が出ても、カメラを固定して被写体が動かなければブレることはない。ミラーレス一眼は暗闇には強いが、動く被写体を撮るのには適していないのかもしれない。シャッター・スピードを速くしたり、感度(ISO)を上げたりする対処法はあるけれど。

    ♯297│シコ│ノラ猫 ── 意外と男前にゃのだ 02/21
    固肥りで尻尾の短いシコちゃんも目が合うと挨拶に来る。躰を撫でても動じないけれど、尻尾に触るとニャンと鳴いて嫌がる(それでも止めずに弄んでいると振り向いて怒るのだ)。キャットウーマンのような黒いネコ・マスクを着けたような白黒カラーで、顎髭みたいに見える黒い部分がチャーム・ポイント。ファニー・フェイスだと思っていたが、結構イケメン顔に写っている。シコちゃんのように顔の上部と下部がマズルを中心にして左右対称に色分かれしている模様を「ハチワレ」と呼ぶらしい。鉢割れ、それとも八割れ?‥‥「鉢」よりも「八」の方が末広がりの富士山みたいで縁起が良いかもしれない。白ネコが黒覆面で変装したようにも、黒い兜を被ったようにも見えなくない配色は面白い。保田明恵著『にゃん辞苑』(アスペクト 2012)には「ハチワレ」を「鼻筋から額に入った、山型の模様のこと。なだらかな山、左右で傾斜が違う山、丸っこい山、連峰のようにギザギザなど、形状はさまざま」と説明している。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第33集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ290匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第33集の常連ネコはイチゴ、ソラン、ダイ、シコちゃん。みんな元気です。シルヴィ庵の《Sleepwalker》(Samadhisound 2010)のアルバム・カヴァ(女性写真家のセルフ・ポートレイト)はキャットウーマン(Catwoman)ではなく、バットガール(Batgirl)と思い込んでいましたが、クリスタマス・クラウシュ(Kristamas Klousch)の公式サイトを見たら、「バステト」(Bastet)というタイトルが付いていた。「古代エジプトの猫の女神」だったので、遅ればせながら猫ジャケ(ネコード)と認定しました。エロティックなネコ耳娘ですね。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^



    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています



    • エピグラフは『ねこ歩き』(クレヴィス 2013)から引用しました



     スニンクスなぞなぞ回文 #36


     ◯▢△▽◯とヒーローひと◯▽△▢◯


     回文作成:sknys


     ヒント:爆弾魔が都庁に籠城!


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    Sleepwalkers

    • Artist: David Sylvian
    • Label: Samadhi Sound UK
    • Date: 2010/09/27
    • Media: Audio CD
    • Songs: Sleepwalkers / Money For All / Ballad Of A Deadman / Angels / World Citizen - I Won't Be Disappointed / Five Lines / The Day The Earth Stole Heaven / Playground Martyrs / Exit/Delete / Pure Genius / Wonderful World / Transit / The World Is Everything / Thermal / Sug...