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折々のねことば 15 [c a t 's c r a d l e]




  • 折々のねことば sknys 141

    マンションの軒先でひろったので、名前は「のきこ」とつけました。
    樹村 みのり


  • 仕事明けの脚本家・南川真理子さんが浴槽に水を溜め、缶ビールを買いに行こうとして玄関ドアを開けると、親子ネコがいた。帰宅した時も、まだ階段のところでウロウロしていた。痩せて空腹そうな子猫を部屋の中に招き入れて、ミルクと水に浸した鰹節パックを与えた。母猫のことが気になってドアを開けると姿が消えていた。ある時、2日ほど留守にした仕事の打ち上げティーパーティで、守護霊が見えるというスタッフ仲間の女性から、あなたの膝のところで丸くなっている猫が見えると言われる。「その猫、前世はおかっぱの髪の人間の女の子だったんですよ」一人暮らしのオールドミスと子猫の同居生活を描く。コミック短篇集『ジョーン・Bの夏』所収「ひとりと一匹の日々」から。
    2007・6・26


  • 折々のねことば sknys 142

    「虐待されて濡れた猫みたいにスキゾフレニックになった」
    カート・コベイン


  • 「27 Club」 とは27歳で鬼籍に入ったミュージシャン50人の死者名簿である。『27クラブ』(2013)の著者ハワード・スーンズはブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、カート・コベイン、エイミー・ワインハウスの6人、特にエイミー(原題:Amy, 27)に光を当てて、なぜ彼らが早世しなければならなかったかを解き明かす。6人それぞれの独立した章立てではなく、「生」 と 「死」 の二部構成。彼らの短い生涯を時系列順に並列することで、「死の舞踏」 へ申し合わせたように一丸となって突き進んで行く筆致は圧巻。「統合失調症」(schizophrenia)で猟銃自殺したカート・コベイン(Nirvana)も成功して名声を得たが、幸せではなかった。
    2023・9・16


  • 折々のねことば sknys 143

    「ぼくたち、にてますね」
    ガリア・バーンスタイン


  • 丸まると太った灰黒縞猫のサイモンが親愛を込めて言うと、5頭の大型ネコ科動物は驚いて大笑いする。ライオンは鬣と尻尾の房を持つ百獣の王、チーターは世界最速の足、ピューマはマウンテンライオンと呼ばれるほどの勇敢さ、クロヒョウはジャングルの木の上で寝る習性、トラは大きくて強く美しい黄色と黒の縞模様など、自分たちの長所を自慢げに語って、小さな毛玉ネコとの違いを強調する。それでも意気消沈したサイモンのことを気遣ったのか、ネコ科動物たちはお互いを仔細に見比べた。高感度の耳、立派なヒゲと長い尻尾、鋭い歯と尖った爪、暗闇でも良く見える大きな目など‥‥彼らの特徴を小さなサイモンも悉く兼ね備えていたのだ。絵本『サイモンは、ねこである』から。
    2021・9・6


  • 折々のねことば sknys 144

    「なーお! ねこは みーんな ばけるんだぜ。
    こんや、おまえに おそいかかってくるぜ」
    石黒 亜矢子


  • 飼い猫トンを苛めていた悪ガキ(おれ)は母親に「いつかネコに仕返しされるよ」と叱られる。広場に逃げると、88匹もの不穏なノラ猫たちに囲繞された。その夜、寝ている 「おれ」 の前に化け猫になったトンが現われて、化け猫たちが襲って来ると警告する。急いで外へ飛び出すと、妖怪にゃっぺふほふ、ぶるぶるねこ、ねこぼうずに襲われる。誰もいない商店街に逃げ込むと、50匹以上の妖怪が徘徊していた。化け猫たちの百鬼夜行だった。親玉ねこかしゃに見つかってしまうが、主人公の母親のことを大好きなトンに救われる。作者曰く《化け猫には、妖怪としての恐ろしさと猫の可愛さが絶妙なさじ加減でミックスされている。そこに魅力を感じます》。絵本『ばけねこぞろぞろ』から。
    2023・3・16


  • 折々のねことば sknys 145

    色っぽいと言ってももともと美少年のような美少女のバーキンのこと、〈猫にマタタビ 、ペニスに裸女〉のようなパターンに収まる色っぽさではない。
    松浦 理英子


  • 映画 「地中海殺人事件」(1982)に出演した女優ついて、作家は俳優、南欧の風物、スト ーリ、スタッフの技術まで喰って際立っていたジェーン・Bのことを語らずば女がすたる。「夫の女癖の悪さを悲しむ繊細な人妻(を装う悪女)の役なのだが、何の必然性もないのに滅法色っぽい」 と書く。微妙に歪んだ形に開く特徴ある唇の動きが 「下品でも白痴的でもなく、一種扇情的な幼さ、危うさに感じられるのが不思議だ」。眉や眼の表情、身のこなしにも〈洗練された大人の所作ではない不安定さ〉が見られる。「これは人生のごく早い時期に(世界の向こう半分の生々しい相貌を見るなどして)立ち止まったきり動けなくなった者のイグジスタンス・アピールだ」 と。『優しい去勢のために』 から。
    2023・9・6


  • 折々のねことば sknys 146

    猫の名づけはやっかいだ
     休日の気晴らしとはいかない
    猫には三つの名前が必要、と言ったら
    頭がどうかしていると思われそう
    T.S. エリオット


  • 家族が日々、呼ぶ名前、ピーター、オーガスタス、アロンゾー、ジェームズ、ヴィクタ ー、ジョナサン、ジョージ、ビル・ベイリー。響きが素敵で雅びな名前、プラトン、アドメートス、エレクトラ、デーメーテールと威厳のある固有名詞、マンクストラップ、クワクソウ、コリコパット、ボムバルリーナ、ジェリローラム。そして猫自身が沈思黙考した、人間には思いつかない 「深遠で不可解な名前」。《本書を読むのに理屈はいらない。ユーモアやナンセンスを味わいながら、それぞれの猫の詩を楽しめばいい。そうしていると、知らぬ間に猫の世界に身を置き、いっとき、人間であることを忘れるかもしれない》(訳者あとがき)。『オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集』から。
    2023・9・16


  • 折々のねことば sknys 147

    タマは廊下からするすると縁側に出、沓脱ぎ石づたいに音もなく地面に降り立つと、一目散に猫の木を目指して駆けて行った。
    大濱 普美子


  • 老夫婦の住む古い木造平屋建ての母屋の離れに、「私」 と飼い猫タマが引っ越して来る。前庭の一番背が高く細長い木の名前を老人に尋ねると、「猫の木」 の下に代々の猫たちが埋葬されているという。野分け過ぎの日曜日、朝風呂から上がって、四畳半の畳の上に座って足の爪を切っていた時に鈴の音を聞く。縁側に面したガラス戸を開けようと立ち上がった時に足の裏に爪の切れ端が刺さる。いつの間にか忍び寄って来たタマが獲物に襲いかかる狩猟者の姿勢で伏せていた。六畳間で掃除をしていると、いつもは騒音を嫌 って隠れてしまうタマが駆けて来て廊下に出た。掃除機を止めると無数の鈴が鳴り響いている。タマが木の後方の灌木の茂みの中に潜り込んで行く。「猫の木のある庭」 から。
    2023・10・1


  • 折々のねことば sknys 148

    そして一斉に、まるで身を寄せ合って暖を取るかのように、みんな横になりました──クローバー、ミュリエル、ベンジャミン、ウシたち、ヒツジたち、ガチョウやニワトリみんなの群れ──まさに全員です。ただしナポレオンが動物たちに招集をかける直前に突然姿を消したネコだけは別でした。
    ジョージ・オーウェル


  • ナポレオンは追放したスノーボールが農場主ジョーンズの秘密スパイだったことを動物たちに明かした4日後の午後遅く、裏切り者たちを粛清した。彼が日曜の会合を廃止した時に抗議した4匹のブタは風車の破壊をスノーボールと共謀して動物農場をフレデリックに引き渡す約束を取り交わし、卵をめぐる反乱未遂で主導役となったメンドリ3羽は夢に現われたスノーボールからナポレオンの命令に逆らうように唆され、1羽のガチョウが昨年収穫されたトウモロコシを6本隠匿して夜中に食べ、ヒツジが水飲み場に小便をして、他のヒツジ2匹は老牡ヒツジを殺したと告白して、その場で全員処刑された。血の臭いが重く立ち籠める庭から立ち去った動物たちは震撼して惨めだった。『動物農場』 から。
    2019-08-01


  • 折々のねことば sknys 149

    盲目の白い群猫、ミオとその仲間たち。怒りにピンと立った耳をいっせいに前方へ向け 、憎しみをあらわにした彼らはギャーギャーと叫びながらバクーに近づく。
    筒井 康隆


  • 大都会の地下深く、直径何十メートルもの地下水道の最深地下。今では廃坑となった誰も知らない巨大な下水道。黒い腐った水が溜まった光のない世界にミオたちは棲息していた。盲目の白い猫たちはテレパシーで交感しながら、閉ざされた闇の地下世界に君臨する盲目の白い巨大な鰐バクーに闘いを挑む。幾世代にも渡る捕食者と非捕食者の宿命的な対決。地下水道に辿り着いた2匹の野良猫はドブ鼠たちの安逸な生活を恐怖の淵へ追い込み、動物園の鰐舎の排水口から転げ落ちて廃坑に流れ込んで来た5個の卵から孵化した3匹の鰐の生き残りが猫たちを餌食にする究極の弱肉強食世界。復讐心に燃え、憎悪に身を焦がす群猫と獰猛な鰐、ミオたちとバクーの死闘が始まる。SF短篇「群猫」から。
    2023・9・16


  • 折々のねことば sknys 150

    「さあ、キティ。あの夢は誰が見たのか考えてみましょう。これ、まじめな問題なのよ」
    ルイス・キャロル


  • アリスが通り抜けた鏡の中は全てが反転した世界。眠っている赤のキングの見ているのは君(アリス)の夢だと双子のトウィードルディーが言う。もしキングが目醒めたらロウソクの火のようにパッと消えてしまうとトウィードルダムが言い足す。夢から覚めたアリスがテーブルの上のチェスの駒から赤のクィーンを見つけて、炉絨毯の仔猫と向かい合わせに置く。「おまえ、この姿になっていたんだと白状なさい!」 と迫るが、喉をゴロゴロ鳴らすだけ。黒猫キティが赤の女王なら、白猫スノードロップは白の女王、母猫ダイナがハンプティ・ダンプティだったのかしら?‥‥「キングは私の夢の一部分なの、もちろんよ──でも、私だってキングの夢の一部だったのよ!」『鏡の国のアリス』から。
    2023・10・21

                        *

    朝日新聞の朝刊コラム 「折々のことば」(鷲田清一)のネコ版パロディ「折々のねことば」第15集です。アメリカ生まれの英国詩人T.S. エリオットの猫詩集(Old Possum's Book of Practical 1939)は『ふしぎ猫マキャヴィティ』(大和書房 1978)や『袋鼠親爺の手練猫名簿』(評論社 2009)‥‥佐野洋子の挿画や柳瀬尚紀の翻訳で多数出版されている。『オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集』(球形工房 2023)は宇野亞喜良のカラー・イラスト(全18点)が愉しい。ドイツ在住の作家・大濱普美子の『猫の木のある庭』(河出書房新社 2023)は第1小説集『たけこのぞう』(国書刊行会 2013)の文庫版。「のっぺらぼうの平仮名書きからは、どんな内容の話なのか見当がつかず、ひ ょっとしたらまるでそぐわないイメージを与えてしまうかもしれない」 という作者の懸念から、冒頭に収録された 「猫の木のある庭」 に改題された。引用した『新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス』(青土社 2019)は高山宏(訳)と建石修志(絵)がコラボした大型本。佐々木マキ(絵)の出版150周年記念『鏡の国のアリス』(亜紀書房 2017)とは学魔の訳文が異なるにゃん。

                        *
    • 引用本のカート・コバーン(Kurt Cobain)という表記をコベインに変更しました

    • 「CATWORDEX」(折々のねことば 2005 - 2023)を更新しました^^;
                        *


    新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス

    新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス

    • 著者:ルイス・キャロル(Lewis Carroll)/ 高山 宏(訳)/ 建石 修志(絵)
    • 出版社:青土社
    • 発売日:2019/03/22
    • メディア:大型本
    • 目次:うさぎ穴を落ちる / 涙の池 / コーカス競走と長い尾はなし / うさぎはビルを呼びにやった / イモムシは忠告した / ブタとコショウ / 気がふれ茶った会 / クィーンのクーロケー試合 / 似而海亀は語った / ロブスターのカドリール / だれがパイを盗んだか / アリスは証言した / 鏡のお家 / もの言う花の庭 / 鏡の国の昆虫たち / トゥィードルダム...
    怪獣篇 群猫 / マタンゴ

    怪獣篇 群猫 / マタンゴ

    • 著者:筒井 康隆 / 眉村 卓 / 星 新一 / 福島 正実 / 小松 左京 / 日下 三蔵(編)
    • 出版社:汐文社
    • 発売日:2020/08/03
    • メディア:単行本(SFショートストーリー傑作セレクション)
    • 目次:群猫 / 仕事ください / 弱点 / マタンゴ / 黴 / 編者解説 / 著者プロフィール / 底本一覧
    オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集

    オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集

    • 著者:T. S. エリオット(Thomas Stearns Eliot)/ 宇野亞喜良(画)/ 佐藤 亨(訳)
    • 出版社:球形工房
    • 発売日:2022/10/26
    • メディア:単行本
    • 内容:ミュージカル「キャッツ」の原作として知られる世界一有名な猫詩集が、日本を代表するイラストレーター・宇野亞喜良氏の魅惑のオリジナル・カラー挿絵と、エリオット研究の泰斗・佐藤亨氏による生き生きとした訳文を得てよみがえる?
    鏡の国のアリス

    鏡の国のアリス

    • 著者:ルイス・キャロル(Lewis Carroll)高山 宏(訳)/ 佐々木 マキ(絵)
    • 出版社:亜紀書房
    • 発売日:2017/11/30
    • メディア:単行本
    • 目次:
    ジョーン・Bの夏

    ジョーン・Bの夏

    • 著者:樹村みのり
    • 出版社:東京三世社
    • 発売日:2023/10/06
    • メディア:単行本
    • 目次:ジョーン・Bの夏 / 夜の少年 / 水子の祭り / 樹村みのり全調書 / ひとりと一匹の日々 / ぷろふえっしょなるQ&A / 全作品リスト / 作品後記 / 解説・小沢瑞穂

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