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ネコ・ログ #76 [c a t a l o g]

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  • 人間と猫が目と目を合わせるコミュニケーションには、興味深い要素がもうひとつある。「スローブリンク」 と呼ばれるゆっくりとしたまばたきだ。〔‥‥‥〕ある研究によると、人間が自分の飼い猫に向かってゆっくりとまばたきすると、猫もお返しにゆっくりまばたきすることが多く、それが飼い主の猫に対する愛情表現の助けになる。この研究ではまた、猫は、知らない人がゆっくりまばたきするとその人に近づく可能性が高くなることもわかった。おそらくはゆっくりまばたきすることで、怖がる必要はないということが猫に伝わるのかもしれない。/ スローブリンクをする猫は、初めは無表情だ。それから猫は上まぶたを半分閉じて目を細めてから、再びゆっくりと開く。研究者は、猫がゆっくりまばたきするのは機嫌が良いときで、それは信頼と愛情のしるしであると考えている。猫が何かを不安そうに見つめたり何かに警戒しているときの、非常の集中した目つきとはまるで違う──スローブリンクはおだやかでのんびりしており、その人間を信頼していることを示しているのである。
    クレア・ベサント 『ネコ学』


  • #676│ゼロ│ノラ猫 ── ネコと自転車 5
    駐車場に2匹のネコがいた。マズルと胸、前肢が白い茶トラは人懐っこく、自ら近寄って来るけれど、耳と頭、胴体の一部が茶色の白ネコは人見知りで、近づくと一定の距離をとって遠ざかってしまう。閑話休題。『サイボーグ009 トリビュート』(河出書房新社 2024)は石ノ森章太郎のSF作品 「サイボーグ009」(1964)の誕生60周年を記念した書き下ろしオリジナル・アンソロジー。「9人の戦鬼」(辻真先、斜線堂有紀、高野史緒、酉島伝法、池澤春菜、長谷敏司 、斧田小夜)が9つの物語を紡ぎ出す。フランソワ・アルヌール(003)、イワン・ウイスキー(001)、ジェット・リンク(002)、アルベルト・ハインリヒ(004) 、張々湖(006)、グレート・ブリテン(007)、ピュンマ(008)を主人公にした〈ゼロゼロ・ナイン・ストーリーズ〉だが、島村ジョー(009)の出番は少ない。「トリビュート」 にネコは出て来ないけれど、アニメ制作会社「スタジオ ・ゼロ」に原案を発注したことから生まれたTVアニメ 「レインボー戦隊ロビン」(1966)に牝猫ロボのベルちゃんが登場する。

    #677│デレ│ノラ猫 ── 遅れて来たネコ
    駐車場のネコは危険と隣り合わせだが、駐輪場のネコは比較的安全だ。ネコが自転車に轢き殺されるリスクはクルマよりも少ないから。近頃良く見かける電動自転車はネコよりもヒトにとって脅威なのかもしれない。2017年12月、左耳にイヤホン、左手にスマホ、右手に飲料カップを持って電動式自転車に乗っていた 「ながらスマホ」 の女子大生が女性高齢者(77歳)と衝突して2日後に死亡させた事故があった。2021年7月、遮断機の前で立ち止まっていた 「歩きスマホ」 の女性(31歳)が電車に撥ねられて死亡した。踏切の遮断機は線路の手前と向かいに2つある。スマホを見つめていて、自分が線路内の遮断機前にいることに気づかなかったのか。「歩きスマホ」 をしている輩は注意喚起のアナウンスも完全無視だし、路上のネコにも気づかない。先日、デレちゃんをスマホで撮っていた女性は自転車に乗って帰って行った。もし彼女が 「ながらスマホ」 をしていたら、ネコの存在に気づかなかったかも?

    #678│サイ│ノラ猫 ── 落ち葉のメロディ
    10年以上撮って来た長毛種の 「ロンちゃん」 が虹の橋を渡ってから早一年余り。彼女の後を執拗に追い回していたサイちゃんもライヴァルがいなくなって、さぞかし手持ち無沙汰のではないかと勝手に想像してみたりする。ロンちゃん亡き後、図書館裏の遊歩道へ行く張り合いも愉しみも消え去って、次第に足も遠のくようになってしまった。ペットロスならぬ、ノラロスなのだろうか。久しぶりに裏手を歩いていたら、珍しくサイちゃんが鳴きながら植え込みから出て来た。どうやら夕食を運んで来るネコ・ヴォランティアの夫婦を待ち侘びていたらしい。もう少ししたら自転車に乗った2人が来るからねと話しかけながら写真を撮ったら、いつの間にか目の表情から剣が消えて可愛く柔和になっていた。縄張り争いする相手がいなくなって、安堵したのだろうか。ロンちゃんかいなくなって寂しいと思うのは人間(ネコ・ウォッチャー)の方だったのかもしれない。

    #679│スワ│飼い猫 ── 必殺ネコ・パンチ
    攻撃的なネコ・パンチと親愛的な戯れつきの見極めは意外に難しい。前肢の爪を出しているか、引っ込めているかの違いだが、後者のネコでも爪を出していることがあるからだ。引っ掻くだけならば未だしも、鋭い爪が掌や手の甲に刺さったまま抜けなくなってしまうこともある。そんな時のネコの表情は少し困惑しているように見えなくもない。そんな時には前肢を掴んで爪を抜き、肉球に触って爪を引っ込めるように促す。《猫の爪はつま先の骨の先端と靱帯によって結ばれていて、普段はほとんど見えない。猫が歩くとき、寝ているとき、リラックスしているときは、鋭い爪は皮膚の中に引っ込んでいる。それによって猫は音をさせずに歩くことができ、鋭い爪の先が何かに引っかかったり鈍くなったりしないのである。普段は爪は格納されているが、猫が使いたいときには、足先の筋肉と腱がつま先の骨を引っ張り下げ、それによって爪は外に押し出されて一直線になり、爪はしっかりと固定される。爪が外に出ている状態から引っ込めるのは自動的に起きるが、爪を出すのは意識的な決定だ》

    #680│サカ│飼い猫 ── 足招き猫
    人懐っこいサカちゃんが毛繕いを始めた。難しいヨガのようなポースで一心不乱に毛並みを舐め続ける。グルーミングしていたネコが正面を見つめて一瞬動きが止まる。右後肢を 「招き猫」 みたいに上げているところを撮った。ネコの人を招くような仕草が福を呼ぶとされる起源は中国唐代の古典 「酉陽雑俎」 に記されている 「猫が顔を洗って、その手が耳よりも上に出ると客が来る」 という俗信にあるらしい。「人を招く猫」 という《逸話の舞台は、現在の東京・世田谷にある豪徳寺。住職の飼い猫が、鷹狩りで門前を通りかかった彦根藩主・井伊直孝の前で 「手招き」 した。直孝が寺へ入って住職と話していると突然、雷雨が襲う。直孝は猫に導かれたお陰で難を逃れたと気づいた。それ以来、寺は井伊家の庇護を受け、住職は以後もこの猫を大事に飼い、墓も建てた》と言い伝えられている。「右手はお金を招く猫、左手は人を招く猫」 と言われているが、右足は何を招いているのだろうか。

    #681│ペタ│飼い猫 ── 「ねことば」 で話す
    三毛の母猫から産まれた白茶ブチのペタちゃんの尻尾は長く、黒白ブチのスワちゃんは短いジャパニーズ・ボブテイルだ。いつものように白茶ブチのペタちゃんの柔らかい毛並みを撫でていたら、突然低い唸り声を上げて手の甲に咬みついて来た。何か気に障ったのか、虫の居処が悪かったのかは分らない。唯一思い当たるのは長い尻尾を触っていた右腕で無意識に圧迫していたかもしれないということぐらいである。ところが意外なことが起こった。それを見ていた黒白ブチのスワちゃんが瞬時にペタを威嚇して取っ組み合いになったのだ。ペタは身を翻して逃げて行く。スワは何事もなかったように平静さを取り戻している。いつものスワちゃんはペタと仲睦まじくしているのが気に入らないらしく、邪魔しに来ることがあるけれど、今回は危険を察知して助けてくれたのかと思わざるを得なかった。フォトジェニックなペタちゃんは何を見つめて、何を考えているのか思案顔である。

    #682│ソフィ│飼い猫 ── ツンディレンガーの猫
    子供向け素粒子論入門書『3つの鍵の扉』(晶文社 2013)に登場するシュレディンガーの猫は逃げ足が早い。少年ニコの前にパッと現われたと思うや否や、一瞬で消え去ってしまう。都電A**線駅裏の民家の前にいたネコと目が合った。ゆっくりと瞬きをする 「スローブリンク」 も効果がない。遠距離から撮って近寄ろうとすると、身を翻して門扉の向こうへ行ってしまった。ヒトが容易に入り込めない障害物が間にあると、近づいてもネコは逃げ去ったりはしない。ここが安全地帯であることを認識しているのだ。門扉の隙間から2枚目を撮った。人見知りで警戒しているように見えるけれど、何度か通って顔馴染みになれば、ペタち ゃんのように自ら懐いて来る可能性は少なくない。シュレディンガーの黒猫は一瞬で消えてしまったが、ツンディレンガーの猫は現実世界に生きているのだ。

    #683│ゴト│飼い猫 ── 三毛猫の日
    モノトーンの白・黒ネコはどこから撮っても同じ色合いで面白味に欠けるが、撮るアングルによって模様が変化する三毛ネコは愉しい。この写真の角度から見ると、マズルから胸、左前肢の白い毛並みが余り目立たず、黒いタキシードを羽織ったような三毛ネコに見えなくもない。ゴトちゃんはサカちゃんのように人懐っこくないので、自分の方から近寄って来ることは稀である。先日出会った時は小走りに動き回って、シャッターチャンスを全く与えてくれなかった。何を思ったのか、急に塀伝いにヴェランダに飛び乗ったかと思う間もなく、屋根の上に姿を消してしまった(隣家の2階のヴェランダに茶トラがいた)。「インターナショナル・キャットケアの最高責任者を28年にわたって務めた」 クレア・ベサントによると、人間に懐かないネコは仔猫時代にヒトと接触したことがあるかどうかで決まるというが、その後の飼主との親密なコミュニケーションによって改善することもあるらしい。

    #684│オリ│飼い猫 ── 塀の上のネコ 2
    塀、門柱、屋根、樹の上など、ネコは高いところが大好きだ。どこか高貴な気品のあったソンちゃんは筋斗雲に乗る孫悟空から命名された。ありし日のロンちゃんも軽々と樹に駆け上がったり、塀から屋根へ飛び乗っていた。桜の樹に登ったまま降りられなくなって、夕暮れ時にニャーニャー鳴いていたネコを力ずくで下に降ろしたこともある(思いっきり両手を引 っ掻かれた)。S**開運稲荷裏の空き地にオリちゃんがいた。首輪のチャームに本名と連絡先(電話番号)が記されている飼い猫である。居心地が良いのか、近寄って見上げ、カメラを向けても塀の上から微動だにしない。いつも数匹のネコたちが屯していたのに、この日はオリちゃん1匹だけしか見かけなかった。久しぶりの訪問なので、たまたまネコたちが不在だったのか、それともS**コミュニティ広場からいなくなってしまったのかは不明だ。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第76集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに680匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第76集の常連ネコはサイ、スワ、ペタ、サカ、ゴトちゃん。撮れるのは同じ地域に棲む同じネコばかり。ヒトの少子化と同じく、外ネコの減少化にも歯止めが効きません。今年(2025)も新顔ネコに出会える機会は望み薄なので、過去に撮ったアーカイヴ・キャットの出番が多くなりそうです。クレア・ベサントの『ネコ学』(築地書館 2024)は『ネコ学入門』(2014)の改訂版ですが、20年余り後の出版なので、より実践的なネコとヒトのコミュニケーションに重きを置いています。「ゆっくりとしたまばたきは信頼の証」 など、現在猫を飼っている人だけでなく、これから猫を飼いたいと思っている人への有益なアドヴァイスになっています。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました

    • 「701匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました

    • 「猫の爪」 については『ネコ学』(築地書館 2024)、「招き猫」 については 「はじまりを歩く」(朝日新聞 be 2024・10・12)から引用しました
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    ネコ学: あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    ネコ学 あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2024/11/08
    • メディア:単行本
    • 目次:はじめに / 猫の 「エッセンス」 / 人間と暮らす猫の行動に影響を与えるもの / あなたの猫の性格を知る / 人は猫に何をしてほしいのか?/ 猫のニーズと欲求は人が猫のために求めるものと違うのか?/ 猫好きとはどういう人たちか? 猫は猫好きをどう思うのか? / 私たちは猫を利用している?/ 猫との対話 / 我が家の猫の場合──私たちはどうやって会話するか


    ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    ネコ学入門 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2014/09/16
    • メディア:単行本
    • 目次:違う世界 / 猫の言語 / 猫と暮らす / 猫との関係 / 猫の性格 / 知能と訓練 / 問題解決法 / 訳者あとがき / 索引

    ナイン・ストーリーズ

    ナイン・ストーリーズ

    • 著者: J・D・サリンジャー(J. D. Salinger) / 柴田 元幸(訳)
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日: 2024/01/10
    • メディア:文庫(河出文庫 サ 8-1)
    • 目次:コネチカットのアンクル・ウィギリー / エスキモーとの戦争前夜 / 笑い男 / ディンギーで / エズメに、愛と悲惨をこめて / 可憐なる口もと緑なる君が瞳 / ド・ドーミエ=スミスの青の時代 / テディ / 訳者あとがき

    サイボーグ009 トリビュート

    サイボーグ009 トリビュート

    • 著者:辻 真先 / 斜線堂 有紀 / 高野 史緒 / 酉島 伝法 / 池澤 春菜 / 長谷 敏司 / 斧田 小夜 / 藤井 太洋 / 円城 塔
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2024/07/08
    • メディア:文庫(河出文庫 い 42-2)
    • 目次:序 / 平和の戦士は死なず / アプローズ、アプローズ / 孤独な耳 / 八つの部屋 / アルテミス・コーリング / wash / 食火炭 / 海はどこにでも / クーブラ・カーン / 編集後記


    3つの鍵の扉: ニコの素粒子をめぐる冒険

    3つの鍵の扉 ニコの素粒子をめぐる冒険

    • 著者:ソニア・フェルナンデス=ビダル(Sonia Fernández-Vidal)/ 轟 志津香(訳)
    • 出版社:晶文社
    • 発売日:2013/11/04
    • メディア:単行本
    • 目次:謎のメッセージ / 3つの鍵の家 / 物質と反物質 / トンネルの術 / 量子界の妖精 / 相対時間工房 / 双子 / 標準模型 / テレポーテーション / 量子知能センター / スーパーポジシ ョン / ゼン・オー師匠 / シュレディンガーの猫 / ボス・ヒッグス / 宇宙最強の吸血鬼 / 量子界のクリプテックス / 迷宮 / 迷宮の入口 / 真実の道 / 3つの道 / シャンブラ / 最優秀...

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