Still House Plants(SHP)は2015年、英グラスゴー美術学校で出会った3人、Jess Hickie -Kallenbach(ヴォーカル)、David Kennedy(ドラムス) 、Finlay Clark(ギター)が結成したエクスペリメンタル系のポスト・ロック・バンド。3rdアルバムはスネア、バスドラ、ハイハットだけのドラムス、胸に抱えた左利きストラトキャスター、そして性別を超えたヒッキー・カレンバックのソウルフルなヴォーカルに圧倒される(メンバーの写真を見た時には眼鏡とポニーテールの女性が歌っているとは思いもしなかった)。どこまでが決め事(ルーティン)で、どこからが即興(アドリブ)なのか分からないほど息の合った緩急自在でスリリングな展開に息を飲む。2/3分割された画面の左は強風に靡く青いパーカーを羽織 った人物、右1/3に走る車窓から撮った風景が下から上に縦スクロールする緊張感を孕むMVも強烈な〈M M M〉を含む全11曲・46分。オレンジ色のレヴァを押すと、CD盤がスライドするトリガー・ケース(ejector e-slimcase)仕様の限定CD。
米カリフォルニア生まれのジェシカ・プラットの4thアルバムは60年代の 「LAのヒッピー時代の終焉」 にインスパイアされている。ハッピーで愉しい 「夢のカリフォルニア」 にならなかったのは 「ダークサイドを象徴する人物に取り憑かれた」 結果だという。「あなたが歌いたいと思っていること、それは知っている曲なのです」 というレナード・コーエンの言葉をインナーに引用しているように、どこかで聴いたことのあるような妖しいヴォーカルと懐かしいメロディに幻惑される 「催眠的フォーク」(hypnagogic folk)集。Ryley Walker(ギタ ー)が参加した〈Life Is〉、米SSWケイト・ボリンジャー(Kate Bollinger)が撮ったMVも印象深い〈World On A String〉、ボサノヴァ風の〈Get Your Head Out〉、共同プロデュースしたAl Carlson(ピアノ)の伴奏で歌う〈Empires Never Know〉など、全9曲・27分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞は無記載。
「ちょっとハチャメチャで、パーティ好きで、時々バカなことを言う女の子。気分は良いし落ち込むこともあるけど、パーティで吹っ切る。真面目で、ぶっきらぼうで、少し気紛れで、バカなこともやらかす‥‥それがブラット」(Charli XCX)。異常気象の今夏は暑く長かったが、「ブラット・サマー」(Brat Summer)は短命だった。彼女がカマラ・ハリスを 「brat」 と呼んだことで終焉したのだから。それでもアルバムのカヴァを彩るライムグリーンのミームは拡散された。6thアルバムはA. G. Cookがプロデュースしていることもあってか、Hydの1stアルバム《Clearing》(PC Music 2023)のメジャー・アップデート版のように聴こえなくもない。4カ月後にリリースしたリミックス・アルバム《Brat And It's Completely Different But Also Still Brat》はBillie Eilishとコラボした〈Guess〉など3曲を追加した《Brat》を同梱した2CD仕様、全34曲・98分。タイトル、アーティスト、歌詞、レーベルなど、バーコード以外の全てが(横尾忠則の 「アート書評」 みたいに)反転した鏡文字にな っている。「鏡の国のアリス」 みたいな 「悪ガキの秋」 である。
Songs: 360 / Club Classics / Sympathy Is A Knife / I Might Say Something Stupid / Talk Talk / Von Dutch / Everything Is Romantic / Rewind / So I / Girl, So Confusing / Apple / B2B / Mean Girls / I Think About It All The Time / 365
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