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スニーズ・コメンツ #70 [c o m m e n t s]



  • とら猫のマロリーは完全に消えてしまい、どうなったのか説明はまったくない。いなくなった原因は謎のままだ。だが一つだけ確かなことがある。この二匹〔引用者註:マロリーとシベリアン・ハスキー犬のヒラリー〕の歴史について、はほとんど関与していないということだ。/ 事件が起きたのは1990年8月11日、ウィル・ネイヴィッドソンが内密に廊下を探検した一週間後のことだ。土曜の朝のアニメの声がキッチンのテレビから流れ、チャドとデイジーは朝食をむしゃむしゃやり、カレンは外でタバコを吸いながら、電話でオードリー・マカロフと、あの本棚作りの仲間と話をしている。話題は風水のこと、それがことごとく失敗したことだった。「いくら陶器の亀や木のアヒルや金魚や天界の竜や青銅のライオンをの中に置いても、やっぱりはエネルギーを放射しつづけるのよ。こうなったら超能力者でも見つけてこなくちゃ。それともエクソシストを。さもなければ本当に腕のいい不動産屋ね」 そのあいだ居間ではトムがウィル・ネイヴィッドソンの助手になり、二人でストロボを焚いて廊下の写真を撮っていた。
    マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の


  • b シュバルツとヴァイス(本好きの下克上より)
  • 月から飛来した宇宙ウサギみたいです。ミステリアスな兎型シュミラクラでしょうか?‥‥ガース・ウィリアムズの絵本『しろいうさぎとくろいうさぎ』(福音館書店 1965)ですね。アランは「復活」したけれど、オカルトちっくな展開に先が読めません。薔薇の根に拘束されて地下に囚われているバリーの兄フォンティーンも気になるし。
    by sknys (2023-03-14 22:03)

  • b 大江健三郎
  • 「50年前から、書きたい時は、今もやっぱり「投稿」です」とインタヴューで語っているように、高崎女子高時代の金井美恵子(16歳)は「斎木ひみ子」というペンネームで投稿していた。どこかで聞いたことのある名前だなぁと思ったら、『日常生活の冒険』(1964)の主人公・斎木斎吉の元妻の名前だった。毒舌の作家にしては珍しく、金井は大江の 「セヴンティーン」(1963)をベタ褒めしている。「歯医者」 という名前のオレンジ色の縞猫が登場する 「日常生活の冒険」 を携行していたら、ネコ好きの女性と 「大江は良く読んだ。三島よりも好きだわ」 という話になり、『芽むしり仔撃ち』(1958)が素晴しいということで意見が一致した。トマス・ピンチョンは 『V.』(1963)を26歳で発表したが、23歳で 「芽むしり仔撃ち」 を書いた大江も凄すぎる。合掌。
    by sknys (2023-03-25 15:28)

  • b 真鶴半島
  • アルバムは《音楽図鑑》(1984)しか所有していませんが、教授のサンスト(NHK-FM)は毎週聴いていました。大江健三郎と坂本龍一の逝去はボディブローのように効いています。28歳の短い生涯だったエゴン・シーレに比べれば、長生きしたのでしょうが‥‥。「デヴィッド・ボウイ(1947-2016)は、シーレを被写体とする一連の写真のなかの一枚をはっきりと露骨なまでに模倣するしぐさでそのレコード・ジャケットを飾った」と水沢勉書いていますが、どのアルバムなのかしら?
    by sknys (2023-04-07 20:15)

  • b 追悼■坂本龍一
  • 「戦メリ」は劇場公開時に映画館で観ました。大島渚監督、デビッド・ボウイ、坂本龍一さんが亡くなって、俺だけになってしまったと、ビートたけしはコメントしたけれど、故・内田裕也やジョニー大倉なども出演していましたよね。故人の政治的な発言や活動(反核や反原発、環境問題)に対する言説ばかりがSNSで目立つのは腑に落ちません。本当に追悼する気があるのなら、大江健三郎なら文学、坂本龍一なら音楽について深静に語るべきではないかと思ったりして。
    by sknys (2023-04-07 20:22)

  • b 東京都美術館「エゴン・シーレ展」
  • 夜間開館日(3月31日)に行きました。当日券(トビカンのチケットカウンター)は待たされるのかと思って、近所のコンビニで発券予約してみました。「国内30年ぶりのシーレ展」 と謳っているけれど、レオポルド美術館から出品されたエゴン・シーレの作品は42点。クリムトやオスカー・ココシュカなど、ウィーン分離派の作品も多数展示されていて、ちょっと肩透かしを喰らいました。「運命の画家エゴン・シーレ展」(西武美術館 1979)にも行きましたよ。
    by sknys (2023-04-21 12:59)

  • b スーパーグループとして理想的な傑作
  • ボーイジーニアス(boygenius)はJulien Bakerが楽屋でヘンリー・ジェームズの『ある婦人の肖像』を読んでいるLucy Dacusを見つけたことから生まれたスーパー・グループ。「天才少年」 という逆説的なバンド名には幼い頃から褒め称されて育つ少年に対する少女からの冷ややかな視線が感じられます。Phoebe Bridgersの〈Not Strong Enough〉はSheryl Crowの〈Strong Enough〉(1994)にインスパイアされた曲。MVは南カリフォルニア・サンタモニカの遊園地や美術館、ミニ・ゴルフやバッティング・センターで遊んだ1日をPhoebe Bridgersの弟Jacksonが撮っています。Bridgersが 「台所にブラックホールが出現した」(彼女もDacusの愛読書、マーク・ダニエレブスキーの『紙葉の家』を読んだのかしら?)、BakerがThe Cureの 「〈Boys Don't Cry〉を口ずさむ」、Dacusが「いつだって天使や神には成れない」と歌う歌詞は20代後半女子の愉しげな映像とは裏腹に内省的ですね。
    by sknys (2023-05-05 21:21)

  • b 夕日が綺麗 ── 青と赤のコントラスト
  • 1年に数回、風光明媚な夕焼けに遭遇することがあります。「2021年8月5日の夕焼け」 には目を奪われました。青と赤のコントラストというか、グラディエーションが幻想的で、倒立したムンクの「叫び」みたいな?
    by sknys (2023-05-07 20:06:35)

  • b 映画「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(2021年イギリス)
  • クリス・ビートルズ『ルイス・ウェインのネコたち』(青土社 2023)の序文をベネディクト・カンバーバッチが書いています。松ケン似のウィル・シャープ(Will Sharpe)監督は 「SHERLOCK」(BBC 2012)に出演していましたが、H・G・ウェルズ役のニック・ケイヴ(Nick Cave)との繋がりが分かりません。豪州の町田康もネコ好きだったりして?
    by sknys (2023-05-11 22:47:46)

  • b 坂本龍一■追悼本
  • 高橋健太郎の追悼文(ミュージック・マガジン6月号)は出色でした。「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」(The Electrical Life of Louis Wain 2021)を観に行ったら、予告編前の館内告知中に〈きみについて〉が流れていました。こんなところでも追悼しているのかと思うと、胸が熱くなっちゃった。教授の後を追うように4月21日急逝したマーク・スチュワ ート(Mark Stewart)がDavid SylvianとRyuichi Sakamotoの〈Forbidden Colours〉 (1983)をカヴァしています。三田格は教授の「サンスト」で、《お気に入りだというスリッツの曲をかける際に「ザ・ポップ・グループの兄弟バンド、いや、姉妹バンドです」と紹介し、ザ・ポップ・グループについてはなんの説明もなかった。第1回目の放送にもかかわらず、彼のラジオを聞いているリスナーはザ・ポップ・グループのことは知っていて当たり前といった雰囲気だった》と 「R.I.P. Mark Stewart」 に書いています。
    by sknys (2023-05-25 00:06)

  • b チコの夢〜名前のない猫
  • 『迷い猫あずかってます』(中公文庫 2023)は金井美恵子の 「純文学的ネコバカエッセイ」(荒川千尋)。ある日、金井姉妹の住んでいるマンションに、1匹の仔猫が迷い込んで来た。「迷い猫あずかってます。12月18日の昼ごろから、この近辺で迷子になって泣いていました」 という文面に猫のイラストを添えたポスターを近隣に張り出すが、音沙汰なし‥‥。数年前に「猫を探しています」というチラシが朝刊に挿まれていました。「2020年6月30日にS**駅付近の自宅から外に出てしまい行方不明」 近所の電柱にも同じ貼り紙が‥‥「保護または保護に至る情報を頂いた方には15万円謝礼致します」。迷い猫を保護した作家と失踪した愛猫を探す飼主。保護した子猫が里親の元に帰ることになって、本当に良かったなぁ。
    by sknys (2023-05-29 23:34)

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    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第70集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)をして、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2023/3/01~2023/5/31)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。今期の話題は「ジャニーK**の性虐待」でしょう。3月7日に英BBCドキュメンタリーが 「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(The Secret Scandal of J-Pop)を報道し、4月12日に元ジャニーズJr.が日本外国特派員協会で記者会見を開いたのに、民放TV局は黙殺。新聞各紙(朝日新聞朝刊 4・13)は記事を掲載したけれど、TVはNHKが夕方4時のニュースで2分間だけ報じたという。自社に都合の悪いことを「報道しない自由」などとネットで揶揄されているメディアのウス気味悪さ。「なんでこんなに言いたいことが言えない国になっちゃったのか」(坂本龍一)。

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    しろいうさぎとくろいうさぎ

    しろいうさぎとくろいうさぎ

    • 著者:ガース・ウイリアムズ(Garth Williams)/ まつおか きょうこ(訳)
    • 出版社:福音館書店
    • 発売日:1965/06/01
    • メディア:大型本(世界傑作絵本シリーズ)
    • 内容:しろいうさぎとくろいうさぎは、毎日いっしょに遊んでいました。でも、くろいうさぎはときおり悲しそうな顔で考えこんでいます。心配になったしろいうさぎがたずねると「ぼく、ねがいごとをしているんだよ」と、くろいうさぎはこたえます。くろいうさぎが願っていたのは、しろいうさぎといつまでも一緒にられることでした。それを知った...


    日常生活の冒険

    日常生活の冒険

    • 著者:大江 健三郎
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:1971/08/27
    • メディア:文庫(新潮文庫)
    • 内容:たぐい稀なモラリストにして性の修験者斎木犀吉──彼は十八歳でナセル義勇軍に志願したのを手始めに、このおよそ冒険の可能性なき現代をあくまで冒険的に生き、最後は火星の共和国かと思われるほど遠い見知らぬ場所で、不意の自殺を遂げた。二十世紀後半を生きる青年にとって冒険的であるとは、どういうことなのであろうか? 友人の若い小説家が...


    芽むしり仔撃ち

    芽むしり仔撃ち

    • 著者:大江 健三郎
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:1997/08/01
    • メディア:文庫(新潮文庫)
    • 目次:到着 / 最初の小さな作業 / 襲いかかる疫病と村人の退去 / 閉鎖 / 見棄てられた者の協力 / 愛 / 猟と雪のなかの祭り / 不意の発病と恐慌 / 村人の復帰と兵士の殺害 / 審判と追放 / 解説・平野 謙


    エゴン・シーレ まなざしの痛み

    エゴン・シーレ まなざしの痛み

    • 著者:水沢 勉
    • 出版社:東京美術
    • 発売日:2023/02/02
    • メディア:単行本(ToBi selection)
    • 目次:自画像 / ジャポニズムとエゴン・シーレ / 肖像写真 / 風景 / コレクターとしてのシーレ / 人物 / シーレの仲間たち / 寓意 / 版画とグラフィックデザイン / 室内 / シーレの受容 / 年譜 / 作品リスト / ブックガイド


    音楽図鑑(2015 Edition)

    音楽図鑑(2015 Edition)

    • アーティスト: 坂本 龍一
    • レーベル:ミディ
    • 発売日:2015/03/25
    • メディア:Audio CD(2CD)
    • 曲目:TIBETAN DANCE / ETUDE / PARADISE LOST / SELF PORTRAIT / 旅の極北 / M.A.Y. IN THE BACKYARD / 羽の林で / 森の人 / A TRIBUTE TO N.J.P. / REPLICA / マ・メール・ロワ / きみについて……。/ 夜のガスパール / 青ペンキの中の僕の涙 / TIBETAN DANCE (VERSION) / M2 BILL / M4 TO...


    the record

    the record

    • Artist: boygenius
    • Label: Interscope Records
    • Date: 2023/03/31
    • Media: Audio CD
    • Songs: Without You Without Them / $20 / Emily I'm Sorry / True Blue / Cool About It / Not Strong Enough / Revolution 0 / Leonard Cohen / Satanist / We're In Love / Anti-Curse / Letter To An Old Poet


    ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

    ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

    • 監督:ウィル・シャープ(Will Sharpe)
    • 出演:ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)/ クレア・フォイ(Claire Foy)/ アンドレア・ライズボロー(Andrea Riseborough)
    • 配給:キノフィルムズ
    • 公開:2022/12/01
    • 上映時間:111分
    • 内容:君とネコの思い出が、永遠に僕を守ってくれる。夏目漱石にも影響を与え、英国で爆発的な人気を博したネコ画家ルイス・ウェイン。彼を守り続けた妻とネコとの愛の物語


    迷い猫あずかってます

    迷い猫あずかってます

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日: 2023/03/23
    • メディア:文庫(中公文庫 か 15-4)
    • 目次:トラ! トラ! トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 /「トラー」とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には7軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖する物体としての本 / 猫の爪...

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