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F A V O R I T E ー B O O K S 2 1 [f a v o r i t e s]

  • 風配図(河出書房新社 2023)皆川 博子408




  • 猫路地(日本出版社 2006)東 雅夫・編407


  • 「猫ファンタジー競作集」 と銘打ったネコ・アンソロジー(猫路地=ネコロジー?)は全作書き下ろし。新旧日本作家20名が架空の猫熟語をタイトルにした20篇を寄稿している。編者は「猫たちによって誘われる「異界」を描いた物語と、異界への書き手の導き手である「猫」たちの玄妙なる生態を描いた物語」の2種類に大別されると解説しているが、いわゆる幻想猫小説と私猫小説に二分される。皆川博子の「蜜猫」は部屋が増殖して行く幻想掌篇。私小説風に始まって、ラストに失踪した飼い猫ヨモが幻影として顕われる森真沙子の「四方猫」など



  • 猫を描く(現代書館 2022)多胡 吉郎406


  • 古今東西の名画の中に描かれた猫を探す「猫画集」だが、その手の類書とは一線を劃す。某誌に美術エッセイを連載している筆者(私)の見解を猫に関しては博覧強記の「猫姫」と称する女性が補完する構成なのだから。絵画、エッセイ、小説(猫姫は架空人物?)が混然一体となった1冊で三度愉しめる猫本なのだ。ルーヴェンスやフェデリコ ・バロッチなど泰西名画の 「受胎告知」、猫画家ルイス・ウェイン、江戸の猫絵師・歌川国芳や歌川広重、「源氏物語」 など浮世絵の美人画、「吾輩は猫である」 の挿絵、ルノアールやボナールの猫たちも登場する



  • ルイス・ウェインのネコたち(青土社 2023)クリス・ビートルズ405


  • 英美術ディーラーが蒐集したエドワード7世時代の猫画家ルイス・ウェイン(Louis Wain 1860-1939)の大型画集。絵画、絵本、ポスター、絵葉書、陶器の動物(未来派の招福マスコット猫)などの図版約300点。擬人化した二立歩行の可愛いネコたちが意地悪く、気味悪く、怖しく、抽象化して行く過程が愉しめる。序文は映画 「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」(The Electrical Life of Louis Wain 2021)に主演したベネディクト・カンバーバッチ。帯イラストは猫画家ヒグチユウコ



  • ねこ22(ベネッセコーポレーション 2022)岩合 光昭404


  • 直販誌「ねこのきもち」に連載中の「岩合さんのネコこよみ」から厳選した写真集。ノルウェー・アルタのキアーラ、イタリア・シチリア島のドメニコ、アメリカ・ニューオリンズのスイート、ブラジル・コパカバーナのシキンニョ、アメリカ・キーウエストのキャプテン・トニー、クロアチア・ドゥブロヴニクのビリー、スペイン・シエラネバダのパパライオン、ブルガリア・プロブディフのシメオンなど、岩合さんのTVや写真展や写真集で馴染み深い世界のネコたち22匹が総登場。再録なので新鮮味は薄いけれど、短いエッセイが添えられている



  • エーディトとエゴン・シーレ(朔北社 2023)ハリエット・ヴァン・レーク403


  • ハーグ市立美術館蔵の〈エーディトの肖像〉(1915)からインスピレーションを得て描いた女性と画家の物語。アデーレとエーディト姉妹は向かいの家に住む貧乏画家のことが好きだったが、シーレが求婚したのは妹の方だった。アトリエの縞模様のカーテンで作った花嫁衣装、エーディトとシーレの結婚式、夜汽車のヨーロッパ新婚旅行、シーレの従軍、エーディトの飼い犬ロルト、シーレの帰還 、スペイン風邪などが水彩画で淡々と描かれる。オランダの美術館が唯一所蔵するエゴン・シーレの絵画から紡ぎ出された絵本である



  • ネコはここまで考えている(慶應義塾大学出版会 2022)高木 佐保402


  • 大学3年生の時にネコを飼い始めたという動物心理学者による学術論文。『知りたい!ネコごころ』(岩波書店 2020)は一般読者向けに書かれた入門編だが、本書は専門的な内容になっている。著者は言葉を介さないネコの思考能力を検証する実験を10年間行なって来た。家庭ネコとカフェネコの聴覚と視覚、記憶と推理力を調査する 「期待違反法」(予測したことと違うことが起きると、普通よりも長く見つめてしまう動物の習性を使って調べる実験方法)で、ネコの優れた認知・思考能力を解明する。週刊朝日の 「ネコ特集号」(2022・12・23)を参照



  • 失踪願望。コロナふらふら格闘編(集英社 2022)椎名 誠401


  • 目黒考二は鬼籍に入ったが、椎名誠は生還した。出版元のウェブサイトに連載している 「日記」(2021・7・7~2022・10・12)に、書き下ろし2篇を加えたエッセイ集。多くの読者の関心は2021年6月、自宅で意識を失って緊急搬送された「新型コロナ感染記」にあると思われるが、肝は「三人の兄たち」‥‥六歳上の実兄、会社の先輩・山森さん、野田知佑への鎮魂歌である。「新型コロナ感染記」 では妻・渡辺一枝の存在もクローズアップされている。池袋・芳林堂書店で薄くてペラペラの「本の雑誌」バックナンバーに魅入った日々を懐かしく思い出す


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