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折々のねことば 13 [c a t 's c r a d l e]




  • 折々のねことば sknys 121

    先生の顔にヒゲが生えて来たの! 黒くて長い、ちょうどネコ(kat)のヒゲみたいに、とっても大きな。その生える速さったら! あたしたちが考える間もなく、先生の両耳の先まで伸びたのよ。
    ロアルド・ダール


  • 怒り心頭に発すると、右手の人差し指から光線が飛び出す魔法少女(あたし)の童話。 近所に住むグレックさん一が森で鹿狩りや鳥撃ちをしていることに腹が立って、族を小鳥に変えてしまう。ある日、担任のウィンター先生がクラスの生徒たちに英語のスペルを教えていた。「立って、キャット(cat)と綴りなさい」 と指された少女が 「そんなの簡単よ、キャット(K-a-t)です」 と答えると、「バカな娘ね」 と先生が言った。「あたしはバカじゃないわ! とっても良い子なんだから」 と叫ぶと、「教室の角へ行って、立っていなさい」 と言われた。逆ギレして、怒りで目の前が真っ赤になった少女がウィンタ ー先生を強く指差すと、ビックリ仰天!‥‥何が起こったかって?『魔法のゆび』から。
    2009・4・21


  • 折々のねことば sknys 122

    アリスはぶつぶついいながら、猫のキティをお供に裏庭を横切り、陽射しを避けて樫の木陰にすわり込みました。キティの頭をなでなから、しばらくぼーっとしていると、目の片隅に赤いものと白いものと黒いものが見えているのに気がつきました。
    飯沢 耕太郎


  • 少女アリスは退屈していた。「不思議の国」 や 「鏡の中」 の冒険は過去の話。庭教師のグランディ夫人にラテン語や数学や行儀作法の勉強を強いられる日々。初夏だというのに川で舟遊びをする暇さえなかった。黒猫キティと裏庭を横切り、樫の木陰に座り込んでいると、大好きなキノコが目の片隅に入った。赤白黒のキノコを見つめていると、体が縮んで小さくなってしまった。キノコの傘の上に座って煙管を吹かしている芋虫に助けを求めると、「白モグラに聞くといい」 と言い残して草叢の中に消えて行く。アカチシオタケの根元にシルクハットを被って燕尾服を着た白モグラがいた。一瞬アリスと目を合わせたモグラが横穴に飛び込む。下ネタ系大人の絵本『きのこの国のアリス』から。
    2022・11・21


  • 折々のねことば sknys 123

    タビー・マクマンガス、真菌デブっちょ / 斑紋伝染病をみんなにばらまいた!
    模造毛皮でめかしこみ、 はげっちょろげも野放しに、 どんだけ動物に移したか?
    モリー・タンザー& ジェシー・ブリントン


  • 縞猫マクマンガスはロンドン・セントジェームジズ・ストリートの意匠陰毛細工師(マ ーキン・メーカー)。ネコ宮廷では下半身を豪華絢爛に飾る「ヘア・ウィグ」が流行していた。チェスター二世の主催するマッド動物園祭りで、エドウィン大尉とドロン卿は復活祭の舞踏会までにイタリアのセニョール・チアーザとマクマンガスのどちらが見事な意匠陰毛を作れるかという賭けをする。レディー・ウィンダーシンズが披露した展示動物トリュファロの美しさに魅惑されたマクマンガスは厩舎に忍び込んで「皮膚全体に燐光の渦巻きが脈動し、緑色がかった斑紋があちこちで煌めいている」粉塵と顎髭の毛を盗み出す。デブ猫が主人公の笑劇「タビー・マクマンガス、真菌デブっちょ」から。
    2022・11・21


  • 折々のねことば sknys 124

    はととった
    こともあったな
    いまはむり
    南 伸坊


  • ビールを注いでもらう茶白ネコの表紙カヴァなので、「ねこ杯」 かと思ったら「ねこ俳」だった。しかもネコを詠んだ俳句ではなく、ネコが詠んだ俳句である。「まえがき」 に書いてあるように、著者がネコになり切って作った俳句に、カラー・イラストを添えた絵本。白茶、黒白、三毛、灰、黒、白、縞など‥‥どのネコも太々しくユーモラスで憎めない。良い加減に脱力しているので、読者の心身も弛緩(リラックス)してしまうが、「ねこ俳」 を詠んだ白い壁に、ピカソの絵画・ポスター〈鳥を捕らえた猫〉(Cat Catching A Bird 1939)が貼ってあったりするので油断がならない。青林工藝舎刊 「ねこはい」(2013)と 「ねこはいに」(2016)を合本、加筆・修正した文庫版『ねこはい』から。
    2023・2・11


  • 折々のねことば sknys 125

    メリキャットのかたわらに寄り添うジョナスは、困ったときの慰め手であり、しばしば彼女の気分を映し出す──幸せな日は庭を走りまわり、ストレスがあるときは隅に身をひそめ──物語そのものの牽引役となる。メリキャットを修行中の魔女と位置づけるなら、もちろんジョナスは使い魔の役どころだ。
    ジュディス・ロビンソン / スコット・パック


  • 『名作には猫がいる』(Literary Cats 2022)は大英図書館で開催された 「本の中の猫展」(2018)に付随するイヴェントのテーマ(英米圏以外の文学)から生まれた。「長靴をはいた猫」、「ティファニーで朝食を」 の名無し猫、「老女と猫」 のティビー、「黒猫」 のプルートー、「荒涼館」 のレディ・ジェーン、「巨匠とマルガリータ」 のベヘモート、「ペ ット・セマタリー」 のチャーチ、「跳躍者の時空」 のガミッチ、「ずっとお城で暮らしてる」 のジョナス、「三人の魔女」 のグリーボ、「テイルチェイサーの歌」 のフリッティなどの 「有名な猫」 を皮切りに、「古典の猫」 「詩の猫」 「児童文学の猫」 「しゃべる猫」 「作とその猫」 「SFの猫」 「ノンフィクションの猫」 「英米文学以外の猫」 たちが総登場する。
    2023・3・01


  • 折々のねことば sknys 126

    見たこともないさまざまな動物たちの中で、一対の金色の瞳が、ダヤンの目に飛びこんできました。
    猫です。猫がいたのです。
    池田 あきこ


  • 嵐の夜、稲妻の光と共に産まれた縞猫のダヤン。母猫のトムは車道を横切ろうとした子猫ジュダとカシスを守ろうとしてバスに轢かれてしまい、少女リーマがダヤンの母親代わりとなる。ある日、ダヤンを連れてベルおばあちゃん(高祖母)のへ遊びに行く。百歳を超えているベルは『もうひとつの国』で魔法使いをしていたと親戚たちに噂される変わり者だった。リーマの誕生日、招待された子供たちに追い回されたダヤンは割れた窓から、雪の降りしきる外へ飛び出す。T字路に突き当たるはずの坂道が先に続いている。突然明るくなった前方から聞こえて来た楽しげな音楽に思わず踊り出す。緑の扉の前に二本足で立つ。「わちふぃーるど」 への入り口だった。『猫のダヤン 1』から。
    2023・3・11


  • 折々のねことば sknys 127

    「音楽の時間は、レオくんが泣いていなくて、レオくんと歌えたら、楽しいだろうなァと思います」
    萩尾 望都


  • 絵本や童話、アニメやマンガなどに登場する動物は2つのタイプに分けられる。擬人化された動物とリアルな動物。前者は人語を話して二足歩行する。縞猫レオくん(2歳)も小学校に入学したり、人間の女性とお見合いしたり、少女マンガ家のアシスタントまでするけれど、人よりも知能の劣る「ネコ」として描かれているので、ドジって叱られたりする。人とのコミュニケーションも日常会話レヴェルでは意志疏通しているが、女飼主ヒビキさんや隣のタツル君(小学1年生)はレオくんが学校に行きたい本当の理由(向学心に目覚めたのではなく、給食のプリンが食べたいだけ)を知らないし、レオくんも1年2組の同級生ヤマトちゃんの恋心に気づかない。猫マンガ『レオくん』から。
    2010・5・1


  • 折々のねことば sknys 128

    ネコのように謎めいた作品が書けたらなあ。
    I wish I could write as mysterious as a cat.
    エドガー・アラン・ポー


  • 「黒猫」の作者が言いそうな言葉だが、「CHECKYOURFACT」 によると 「ポーのねことば」 は虚偽(False)だった。ウェブサイトに載っているポーの全作品を検索しても、一致するものは見つからなかったという。「ミステリアス」(mysterious)という形容詞も非文法的らしい。このような発言をポーはしたかもしれないけれど、文書として残っていないということか。ネコに纏わる名言や諺など、全138篇を蒐集した『幸せを語るネコ』から。お口直しに、エッセイ「本能vs.理性──黒い猫について」 から引用しておこう。《筆者は黒い猫を飼っている。これが世にもめずらしい黒猫で──と言っただけで、大変なことを言っている。そもそも黒猫はどれもこれも魔女だからだ》(小林高義訳)
    2023・2・11


  • 折々のねことば sknys 129

    かわいいにゃんこの写真を眺めていたら、なぜか突然、臥薪嘗胆とか、眉目秀麗とか、自縄自爆といった四字熟語が頭に浮かんできた。
    西川 清史


  • 純真無垢・品行方正・油断大敵・隠忍自重・鼓舞激励・乳母日傘・前代未聞・大驚失色 ・吃驚仰天・興味津々など、今までもヒトからネコに改変した猫諺やパロディ四字猫語を創作した類似本はあったけれど、シンプル・イズ・ベストというか、単純明快。一見安直そうで、深思熟考。読者は四字熟語と写真の組み合わせから立ち現われるショート ・ストーリを想像して破顔一笑するのだ。ネットに溢れている膨大なネコ画像の中から四字熟語に相応しい写真を見つけ出すのに、多くの時間を費やしたことは想像に難くない。著者の艱難辛苦、苦心惨憺、七転八倒、粒粒辛苦の賜物である。中国伝来、日本由来の四字熟語(全99語)に、ネコ画像を添えた写真集『にゃんこ四字熟語辞典』から。
    2022・10・8


  • 折々のねことば sknys 130

    とら猫のマロリーは完全に消えてしまい、どうなったのか説明はまったくない。いなくなった原因は謎のままだ。だが一つだけ確かなことがある。この二匹〔引用者註:マロリーとシベリアン・ハスキーのヒラリー〕の歴史について、はほとんど関与していないということだ。
    マーク・Z・ダニエレブスキー


  • 1990年4月、写真ウィル・ネイヴィッドソンと妻カレン・グリーン(元モデル)、チ ャド(8歳)とデイジー(5歳)はヴァージニア州アッシュ・ツリー・レーンの古い屋敷に引っ越した。結婚という形式を採らない2人の関係修復、和解を題材にしたドキュメント作品を撮る目的をも含めて、田舎での新たな生活の拠点になるはずだった。ところが6月、知人の結婚式に出席してシアトルから4日振りにへ帰ると、屋内は一変していた。2階の主寝室の奥、子供たちの寝室との間にウォークイン・クローゼットのような空間が出現していたのだ。この有機体めいた「捩れ屋敷」に恐怖を抱いたネイヴィッドソンは8年ほど疎遠だったニ卵生双生児の弟トムに救けを請うが‥‥『紙葉のから。
    2006・3・11

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    朝日新聞の朝刊コラム「折々のことば」(鷲田清一)のネコ版パロディ「折々のねことば」第13集です。引用した言葉に解説文(171字以内)を添えるという〈折々のことば〉のフォーマットを踏襲しつつ、ブログ記事らしく字数(312字以内)を増やして、出典や紹介文へのリンクも張りました。「魔法のゆび」(拙訳)のリンク先が〈ネメシスターズの逆襲〉になっているのはキャット(kat)がKat Bjelland(Babes In Toyland)を連想させたから。「きのこの国のアリス」 と「タビー・マクマンガス、真菌デブっちょ」は〈マイコフィリア〉から。英ウォリック大学図書館がSNS(Facebook)に投稿した「ポーのねことば」はファクトチェックで虚偽情報(False information)と判定された。『紙葉の(ソニー・マガジンズ 2002)の詳細な索引には「マロリー」や「猫」という項目まである。「にゃんこ四字熟語辞典」 は好評らしく、『にゃんこ四字熟語辞典 2』(飛鳥新社 2022)も出版された。

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    • 「折々のねことば 101~130」 は引用・紹介文、出典名はアマゾンにリンクしました
    • 「CATWORDEX」(折々のねことば 2005 - 2023)を更新しました
    • 先生の顔に、ひげが生えはじめたの! ピンととんがってて、細長くて、黒くて、ちょうどネコのひげみたい。その生え方の速いこと。見る見るうちに、先生の耳の先まで伸びちゃった!「魔法のゆび」(宮下嶺夫訳)
    • Whiskers began growing out of her face! They were long black whiskers, just like the ones you see on a kat, only much bigger. And how fast they grew! Before we had time to think, they were out to her ears. 「The Magic Finger」 Roald Dahl
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    紙葉の家

    紙葉の

    • 著者:マーク・Z・ダニエレブスキー (Mark Z. Danielewski) / 嶋田 洋一(訳)
    • 出版社:ソニー・マガジンズ
    • 発売日:2002/12/20
    • メディア:単行本
    • 目次:はしがき / 序文 / ネイヴィッドソン記録 / 証拠1〜6 / 付属書 ザンパノ A 概要と章題、B 断、C 片、D 編集者の手紙、E 「ケサダとモリノの唄」、F 詩 / 付属書II ジョニー・トルーアント A スケッチとポラロイド写真、B ペリカン詩、C コラージュ、D 死亡記事、E スリー・アティック・ホエールズトゥからの手紙、F 各種引用 / 付属書III / 反証 ...
    名作には猫がいる

    名作には猫がいる

    • 著者:ジュディス・ロビンソン(Judith-Robinson)/ スコット・パック(Scott Pack)
    • 出版社:原書房
    • 発売日:2022/12/20
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:はじめに / 有名な猫 / 古典の猫 / 詩の猫 / 児童文学の猫 / しゃべる猫 / 作家とその猫 / SFの猫 / ノンフィクションの猫 / 英米文学以外の猫 / おわりに / 訳者あとがき / 注 / 参考文献 / 索引

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