ブラジル・ミナスのSSWレオポルディーナ(Leopoldina)の2ndアルバム。2021年11月のリリースだが、4カ月遅れで日本に入荷して来た。「クレオール種子」 というアルバム・タイトルは新ミナス派というよりも、ノルデスチ(北東部)までを含めた地域的な広がりがあって、スティール・ギターやアコーディオン、ウクレレなどを混じえた汎愛的なサウンドの種子は南米からカリブ海を渡って、北米まで飛来して開花するかのようだ。ペダル・スティールが優しく奏でられる〈Girassóis〉、ロックっぽいギター・ポリリズムの〈Folia de Reis para Deus Menino〉、ポエトリー・リーディングのタイトル曲〈Semente Crioula〉、ウクレレや口笛(assovio)が軽やかに鳴り響く〈O Que Eu Tenho Pra Te Dar〉など、全12曲・49分、見開き三面紙ジャケ仕様。歌詞ブックレット(28頁)にはギター・コードと画家でもある彼女自身が描いた、各曲をイメージしたイラスト(12葉)も添えられているので、音楽だけでなくヴィジュアル面でも愉しめる。
ザ・リンダ・リンダズ(The Linda Lindas)は2018年、米ロサンゼルスで結成されたアジア・ラテン系女子4人組のパンク・バンド。いわゆるガールズ・ロックだが、驚くべきはメンバー全員が十代(11~17歳)だということ。コロナ・ウイルスの感染拡大でロックダウンする直前に、クラスメートが行った人種差別的な体験に基づいた〈Racist, Sexist Boy〉ではエロイーズ・ウォン(Eloise Wong)の絶叫ヴォーカルが炸裂!‥‥ライオット・ガル ーの遺伝子が脈々と継承されている。ロサンゼルス公立図書館(LA Public Library)のライヴで、最年少のミラ・デラガーザ(Mila de la Garza)は「Bikini Kill」のTシャツを着ているのだ。〈Nino〉は年長のベラ・サラザール(Bela Salazar)が飼っているシャム猫ちゃんの歌。ルシア・デラガーザ(Lucia de la Garza)が歌う〈Growing Up〉のMVには彼女たちの飼い猫4匹もペルソナとして登場する。デビュー・アルバムは全10曲・26分。見開き紙ジャケ仕様、6つ折り歌詞カード付き。猫(耳)カヴァ・イラストもクールにゃん。
2014年英ロンドンで結成されたノヴァ・ツインズ(Nova Twins)はAmy Love(ベース)とGeorgia South(ヴォーカル、ギター)による女性デュオ。彼女たちは自らを「歪んだマイクを通して叫び、捩れたベース・リフを弾く2人の混血娘」と称している。2ndアルバムはラップ・ヒップホップ、ノイズ、インダストリアル、パンクなど、ライオット・ガルーなミクスチャ・ロックが大爆発。鉄拳、バイオハザード、ウンジャマ・ラミーのギター・バトルみたいなMV〈Choose Your Fighter〉にキュン死。ボーイフレンドを殺す〈K.M.B.〉。猫撫で声から力強いヴォイスに豹変する〈A Dark Place For Somewhere Beautiful〉、ゼップの〈Kashmir〉のストリングスを髣髴させる〈Enemy〉‥‥ド派手なメイクやビッチ風のコスチューム、チェアリーディングのボンボンみたいなツイン・テールなど、ヴィジュアルもインパクトありすぎ。2022年上半期最大の衝撃波かもしれません。全11曲・31分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。
サッカー・マミー(Sophie Allison)の3rdアルバムは前2作をプロデュースしていたGabe Waxに代わって、Daniel Lopatin(Oneohtrix Point Never)が手掛けている。この変貌ぶりは激肥りした体型以上の驚きではないかしら。「風船ガムの甘いメロディ(hooks)で最も暗い夢を隠匿し、砂糖でコーティングしたヴォーカルで塩の混入を偽装したかのような不協和音を身に纏う」 と評されるソフィー・アリソンとレトロフューチャリストの邂逅は刺戟的で胸躍る。ダビーで不穏な重低音が響く〈Unholy Affliction〉、「私は散弾銃の弾丸が発砲される音を待っている」(I'm a bullet in a shotgun waiting to sound)と歌う(元総理大臣の射殺を数カ月前に預言したかのような)〈Shotgun〉、Portisheadを想わせる耽美的な〈Darkness Forever〉、シューゲイズ・ノイジー・ギターの壁で覆われる〈Don't Ask Me〉など、全11曲・43分。歌詞ブックレット(16頁)付き。なぜか国内盤もリリースされていないし、輸入盤も高かったので、中古CDを入手しました。
グウェノー(Gwenno Mererid Saunders)は英ウェールズ・カーディフ生まれのSSW。レトロ・ポップ・ガールズ・グループ、ピペッツ(The Pipettes)の元メンバーだったが、母親はウェールズの活動家で、父親がコーニッシュ詩人であることから、2010年に国連がレッドリストの「絶滅」から 「絶滅寸前」(critically endangered)に引き上げたコーンウォール語で歌うようになった。《Y Dydd Olaf》(2014)、《Le Kov》(2018)に続く、3rdアルバムもウェールズ語の〈N.Y.C.A.W.〉(「Nid yw Cymru ar Werth」 の略で「ウェールズは非売品」という意味)以外の歌詞はコーニッシュである。「難解な実験主義者」(esoteric experimentalist)の歌詞を読み解くのは難しいけれど、親密で暖かいドリ ームポップなので聴きやすい。ピッチフォーク(Pitchfoork)も 「歌詞を理解するリスナーは殆どいない。翻訳する必要も全くない」 と、レヴューしています。全10曲・43分。見開き紙ジャケ仕様、8つ折り歌詞ポスター付き。
カナダ・プリンス・エドワード・アイランド州シャーロットタウンで結成された男女混成5人組バンド、オールウェイズ( 「Always」 ではなく 「Alvvays」 と表記する)の3rdアルバム。Molly Rankinのソプラノ・ヴォイスとAlec O'Hanleyのギター・サウンドを活かしたインディ・ポップだったが、3rdアルバムではシューゲイザーに変貌している。このアルバムを聴いていると、ドリーム・ポップがシューゲイズの進化形であることが良く分かる。マイブラ(MBV)のDNAを継承した〈Pharmacist〉、意味深なタイトルの〈Tom Verlaine〉、The Smithsの疾走感を髣髴させる〈Pressed〉、村上春樹の 「神の子どもたちはみな踊る」(2000)に触発されたという〈After The Earthquake〉、Belinda Carlisleの〈Heaven Is A Place On Earth〉に言及したオマージュ〈Belinda Says〉(ちなみにアルバム・タイトルの「Blue Rev」はMolly RankinとKerri MacLellan(キーボード)が十代の頃に飲んでいたウォッカ入りコーラ飲料(アルコール度数7%)のことで、歌詞の中にも出て来る)などを含む全14曲・39分。紙ジャケ仕様、4つ折り歌詞・ポスター付き。
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