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変態仮面ロサリア(2 0 2 2) [r e w i n d]



  • ◎ DRAGON NEW WARM MOUNTAIN I BELIVE IN YOU*(4AD)Big Thief
  • 米SSWエイドリアン・レンカー(Adrianne Lenker)の3rdソロ・アルバム《Songs And Instrumentals》(2020)は2CD(LPはバラ売り)だったが、Big Thiefの5thアルバムは2CDではなく、CD1枚(LPは2枚組)に収録されている。彼女が描いたカヴァ・イラストの動物たち、恐竜(ティラノサウルス)、インコ、ギターを弾くクマ、フクロウは4人のメンバー、Adrianne(ヴォーカル、ギター)、Buck Meek(ギター)、James Krivchenia (ドラムス)、Max Oleartchik(ベース)を表徴しているという。レイドバックしたフォーク・ソング〈Change〉、パーカッシヴなアルペジオ・シンセの〈Time Escaping〉、「彼女は体の中に毒を持つ。 ヘビと話して、彼らは彼女を導く」 と歌われる〈Sparrow〉、Buck Meekのギターが奔流のように迸る〈Little Things〉、ギターのフィードバック・ノイズが渦巻く〈Flower Of Blood〉など、4つのスタジオ(NY、カリフォルニア、コロラド、アリゾナ)で録音した45曲から選ばれた全20曲・80分(というヴォリュームは「ホワイト・アルバム」を想起させなくもない)。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。
  • ◎ SEMENTE CRIOULA(Independente)Leopoldina
  • ブラジル・ミナスのSSWレオポルディーナ(Leopoldina)の2ndアルバム。2021年11月のリリースだが、4カ月遅れで日本に入荷して来た。「クレオール種子」 というアルバム・タイトルは新ミナス派というよりも、ノルデスチ(北東部)までを含めた地域的な広がりがあって、スティール・ギターやアコーディオン、ウクレレなどを混じえた汎愛的なサウンドの種子は南米からカリブ海を渡って、北米まで飛来して開花するかのようだ。ペダル・スティールが優しく奏でられる〈Girassóis〉、ロックっぽいギター・ポリリズムの〈Folia de Reis para Deus Menino〉、ポエトリー・リーディングのタイトル曲〈Semente Crioula〉、ウクレレや口笛(assovio)が軽やかに鳴り響く〈O Que Eu Tenho Pra Te Dar〉など、全12曲・49分、見開き三面紙ジャケ仕様。歌詞ブックレット(28頁)にはギター・コードと画家でもある彼女自身が描いた、各曲をイメージしたイラスト(12葉)も添えられているので、音楽だけでなくヴィジュアル面でも愉しめる。

  • ◎ MOTOMAMI(Columbia)ROSALIA
  • 挑発的なカヴァに目を奪われるロサリア(Rosalia Vila Tobella)ちゃんの3rdアルバム。黒い防護マスクだけを着装した全裸の女体はコロナ禍に参上した 「けっこう仮面」(「どこの誰かは知らないけれど / 誰もがみんな知っている」 という主題歌で知られる「月光仮面」のパロディ。ちなみに 「けっこう仮面」 の歌詞は 「顔はだれかは知らないけれど / カラダはみんな知っている」)みたいではないか。インナーにも修正されたヌード写真が満載されている。〈Chicken Teriyaki〉〈Hentai〉〈Sakura〉など、クール・ジャパンを想わせる曲名も目を惹く。ラップ・ヒップホップも濃厚で、エレクトロ・フラメンコ、デンボウ(Dembow) 、レゲトン(Reggaeton)など、アフリカ系カリブ音楽のリズムが大爆発。MV〈Chicken Teriyaki〉の可愛いダンスの振り付けはネコの仕草を真似ている。 「teriyaki」 「kawasaki」 とラップで韻を踏むのは窓ガラスを破って飛び込んで来た 「照り焼きチキン」 の猫耳宅配バイクが川崎車だったからでしょうか。全16曲・42分。歌詞ブックレット(20頁)付き。

  • ◎ GROWING UP*(Epitaph)The Linda Lindas
  • ザ・リンダ・リンダズ(The Linda Lindas)は2018年、米ロサンゼルスで結成されたアジア・ラテン系女子4人組のパンク・バンド。いわゆるガールズ・ロックだが、驚くべきはメンバー全員が十代(11~17歳)だということ。コロナ・ウイルスの感染拡大でロックダウンする直前に、クラスメートが行った人種差別的な体験に基づいた〈Racist, Sexist Boy〉ではエロイーズ・ウォン(Eloise Wong)の絶叫ヴォーカルが炸裂!‥‥ライオット・ガル ーの遺伝子が脈々と継承されている。ロサンゼルス公立図書館(LA Public Library)のライヴで、最年少のミラ・デラガーザ(Mila de la Garza)は「Bikini Kill」のTシャツを着ているのだ。〈Nino〉は年長のベラ・サラザール(Bela Salazar)が飼っているシャム猫ちゃんの歌。ルシア・デラガーザ(Lucia de la Garza)が歌う〈Growing Up〉のMVには彼女たちの飼い猫4匹もペルソナとして登場する。デビュー・アルバムは全10曲・26分。見開き紙ジャケ仕様、6つ折り歌詞カード付き。猫(耳)カヴァ・イラストもクールにゃん。

  • ◎ SUPERNOVA*(Marshall)Nova Twins
  • 2014年英ロンドンで結成されたノヴァ・ツインズ(Nova Twins)はAmy Love(ベース)とGeorgia South(ヴォーカル、ギター)による女性デュオ。彼女たちは自らを「歪んだマイクを通して叫び、捩れたベース・リフを弾く2人の混血娘」と称している。2ndアルバムはラップ・ヒップホップ、ノイズ、インダストリアル、パンクなど、ライオット・ガルーなミクスチャ・ロックが大爆発。鉄拳、バイオハザード、ウンジャマ・ラミーのギター・バトルみたいなMV〈Choose Your Fighter〉にキュン死。ボーイフレンドを殺す〈K.M.B.〉。猫撫で声から力強いヴォイスに豹変する〈A Dark Place For Somewhere Beautiful〉、ゼップの〈Kashmir〉のストリングスを髣髴させる〈Enemy〉‥‥ド派手なメイクやビッチ風のコスチューム、チェアリーディングのボンボンみたいなツイン・テールなど、ヴィジュアルもインパクトありすぎ。2022年上半期最大の衝撃波かもしれません。全11曲・31分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。

  • ◎ SOMETIMES, FOREVER(Loma Vista)Soccer Mommy
  • サッカー・マミー(Sophie Allison)の3rdアルバムは前2作をプロデュースしていたGabe Waxに代わって、Daniel Lopatin(Oneohtrix Point Never)が手掛けている。この変貌ぶりは激肥りした体型以上の驚きではないかしら。「風船ガムの甘いメロディ(hooks)で最も暗い夢を隠匿し、砂糖でコーティングしたヴォーカルで塩の混入を偽装したかのような不協和音を身に纏う」 と評されるソフィー・アリソンとレトロフューチャリストの邂逅は刺戟的で胸躍る。ダビーで不穏な重低音が響く〈Unholy Affliction〉「私は散弾銃の弾丸が発砲される音を待っている」(I'm a bullet in a shotgun waiting to sound)と歌う(元総理大臣の射殺を数カ月前に預言したかのような)〈Shotgun〉、Portisheadを想わせる耽美的な〈Darkness Forever〉、シューゲイズ・ノイジー・ギターの壁で覆われる〈Don't Ask Me〉など、全11曲・43分。歌詞ブックレット(16頁)付き。なぜか国内盤もリリースされていないし、輸入盤も高かったので、中古CDを入手しました。

  • ◎ TRESOR*(Heavenly)Gwenno
  • グウェノー(Gwenno Mererid Saunders)は英ウェールズ・カーディフ生まれのSSW。レトロ・ポップ・ガールズ・グループ、ピペッツ(The Pipettes)の元メンバーだったが、母親はウェールズの活動家で、父親がコーニッシュ詩人であることから、2010年に国連がレッドリストの「絶滅」から 「絶滅寸前」(critically endangered)に引き上げたコーンウォール語で歌うようになった。《Y Dydd Olaf》(2014)、《Le Kov》(2018)に続く、3rdアルバムもウェールズ語の〈N.Y.C.A.W.〉(「Nid yw Cymru ar Werth」 の略で「ウェールズは非売品」という意味)以外の歌詞はコーニッシュである。「難解な実験主義者」(esoteric experimentalist)の歌詞を読み解くのは難しいけれど、親密で暖かいドリ ームポップなので聴きやすい。ピッチフォーク(Pitchfoork)も 「歌詞を理解するリスナーは殆どいない。翻訳する必要も全くない」 と、レヴューしています。全10曲・43分。見開き紙ジャケ仕様、8つ折り歌詞ポスター付き。

  • ◎ CONSOLATION(Sos Sage)Pomme
  • 白い椅子に座って大きなキノコ笠を被ったカヴァ・アートに驚天動地。林檎少女がキノコ娘に変身した(少女から大人になった?)仏SSWポム(Claire Pommet)の3rdアルバムだった。カナダ・ケベックのサン・ゼノンで録音されたアルバム 「慰め」(consolation)にはタイトルに相応しい「処方箋」も付いている。モントリオール・サン・ドニ通りのマイコブテ ィック(Mycoboutique)で 「チャーガ・マッシュルームとメープル・ミルク・キャップ」(champignons chaga & lactaire érable)のハーブティ(JANATのポムダムールじゃなくて?)を飲みながらアルバムを聴くという趣向の〈22:51〉で始まるのだ。ケベックの作家ネリー・アルカン(Nelly Arcan)に捧げた〈Nelly〉、エレクトロ・ポップの〈bleu〉、英語で歌われる〈When I c u〉、シンセ・ベースが不穏な低音を奏でる〈Tombeau〉、ブルネットの婦人バルバラ(Barbara)にオマージュした〈B.〉など、全12曲・37分。見開き三面紙ジャケ仕様。絵本作家クロード・ポンティ(Claude Ponti)のイラスト(16頁)に、半透明紙に刷られた歌詞(12頁)を挿んだブックレット(28頁)付き。

  • ◎ FOSSORA*(One Little Independent)Bjork
  • ビョーク5年ぶりの10thアルバムはマイコフィリア(mycophilia)を喜ばせそうだ。コロナ禍でNYから故郷レイキャヴィークに引き籠って、「きのこのアルバム」 を作ったのだから。90年代オランダのテクノ・ビート、ガバ(gabber)の爆走、6本のバス・クラリネットの地響き、2018年に亡くなった母親へのオマージュ。ビョークはアナグマのように穴を掘って、地下コロニーで繁殖する菌類(fungi)を発見する。アルバム・タイトルの 「Fossora」 はラテン語の 「穴掘り人」(fossore)を女性名詞化した造語。カヴァ・アートにはコバルトブルーの衣裳(Jisoo Baik)を纏ったビョークと妖しげな形態の菌類が写っている。環境活動家だった母親、Hildur Rúna Hauksdóttirに捧げた〈Sorrowful Soil〉〈Ancestress〉。インドネシアのガムラン・ガバ・ユニットGabber Modus Operandiの叩き出すビートが凄まじい〈Atopos〉、サーペントウィズフィート(Serpentwithfeet)と共演した〈Fungal City〉など、全13曲・54分。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(16頁)付き。

  • ◎ BLUE REV*(Transgressive)Alvvays
  • カナダ・プリンス・エドワード・アイランド州シャーロットタウンで結成された男女混成5人組バンド、オールウェイズ( 「Always」 ではなく 「Alvvays」 と表記する)の3rdアルバム。Molly Rankinのソプラノ・ヴォイスとAlec O'Hanleyのギター・サウンドを活かしたインディ・ポップだったが、3rdアルバムではシューゲイザーに変貌している。このアルバムを聴いていると、ドリーム・ポップがシューゲイズの進化形であることが良く分かる。マイブラ(MBV)のDNAを継承した〈Pharmacist〉、意味深なタイトルの〈Tom Verlaine〉、The Smithsの疾走感を髣髴させる〈Pressed〉、村上春樹の 「神の子どもたちはみな踊る」(2000)に触発されたという〈After The Earthquake〉、Belinda Carlisleの〈Heaven Is A Place On Earth〉に言及したオマージュ〈Belinda Says〉(ちなみにアルバム・タイトルの「Blue Rev」はMolly RankinとKerri MacLellan(キーボード)が十代の頃に飲んでいたウォッカ入りコーラ飲料(アルコール度数7%)のことで、歌詞の中にも出て来る)などを含む全14曲・39分。紙ジャケ仕様、4つ折り歌詞・ポスター付き。

  • ◎ CAPRISONGS(Young)FKA twigs
  • 2022年1月にリリースされたFKA twigs(Tahliah Debrett Barnett)のミックステープが9月にフィジカル化(LP・CD)された。ミックステープ(Mixtape)は本来DJがヒップホップやレゲエの未発表・既発曲をリミックスした非合法カセットテープのことだが、メジャー ・レーベルから公式リリースされている(既発のUS盤はCD-Rだったらしい)のだから、カセットテープという媒体に捉われず、ニュー・アルバムと看做しても良さそうだ。彼女のホ ーム・パーティに招待されたゲストたちよろしく、Pa Salieu、The Weeknd、Shygirl、Dystopia、Rema、Daniel Caesar、Jorja SmithとUnknown Tが〈Honda〉〈Tears In The Club〉〈Papi Bones〉 〈Which Way〉〈Jealousy〉〈Careless〉〈Darjeeling〉に、それぞれヴォーカルなどでコラボしている。〈Christi Interlude〉は占星術愛好家の調香師クリスティ・ミシェル(Christi Meshell)のナレーション。〈Thank You Song〉はArcaのプロデュース。全17曲・48分。デジパック仕様、ブックレット(16頁)付き。

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    2022年最大の懸案は長引くコロナ禍やウクライナ戦争、急激な円安などで、異常なインフレ社会になってしまったこと。国産生産の食料品や生活必需品は内容量を減らすなどして値上げ幅を最小に抑えられるが、直輸入品は為替の変動が直ちに反映される。1枚2千円前後だ った輸入盤(CD)の価格が2〜3割増しになってしまった。今まで10枚買えたアルバムが7〜8枚に減少、フィジカル盤のリリースが発売日(デジタル配信)から数カ月遅れということも少なくなく、洋楽リスナーにとってはストレスの溜まる1年だった。次点はAoife O'Donovan、Burial、Marta Arpini、Manuel Linhares、Animal Collective、Cate Le Bon、Black Country, New Road、Aldous Harding、Porridge Radio、Horsegirl、Tim Bernardes、Florist、Jockstrap、Dry Cleaning、Skullcrusher、Julia Jacklin、Witch Fever、The Beths、Leopoldina、Panda Bear & Sonic Boomなど。11月1日から5日間限定で、英覆面ユニットSAULTがニュー・アルバム5枚をフリーDLしたのは快挙だった。

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    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • The Linda Lindas、Nova Twins、Soccer Mommy、Pomme、Bjorkは再録です

    • 輸入盤のリリース〜入手順(国内盤・国内流通仕様盤には *マークを付けました)

    • 選出した 「年間ベスト・アルバム 2022」(輸入CD)は全て自腹で購入しました^^;

    • Natalia Lafourcadeの《De Todas Las Flores》は高すぎて買えましぇん 。>﹏<。
    • 「誰もが孤独の時代 人間性失わないで」 アレクシエービッチ(朝日新聞 2023・1・1)
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    MOTOMAMI

    MOTOMAMI

    • Artist: ROSALIA
    • Label: Columbia
    • Date: 2022/03/18
    • Media: Audio CD
    • Songs: Såoko / Candy / La Fama / Bulerías / Chicken Teriyaki / Hentai / Bizcochito / G3 N15 / Motomami / Diablo / Delirio de Grandeza / CUUUUuuuuuute / Como un G / Abcdefg / La Combi Versace / Sakura


    Dragon New Warm Mountain I Believe in YouGrowing UpSupernova

    Sometimes, ForeverTresorConsolation

    fossoraBlue RevCaprisongs
    AntidawnSuspensoPompeii
    Versions Of Modern Performance FloristI Love You Jennifer B
    StumpworkMil Coisas InvisiveisAnd In The Darkness, Hearts AglowDe Todas las Flores

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