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ネコ・ログ #63 [c a t a l o g]

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  • 私の虫好きの理由に、意思の疎通ができないからということがあります。まったくコミュニケーションをとることがかなわず、お互いまったく分かり合えないけれど、それでも同じ地球で共生していること、そこが素晴らしい。/ 意思の疎通ができないからいい、という点では、我が家には特定の人以外の前には決して姿を見せない、イリオモテヤマネコのような "幻のネコ" がいます。私もそんなネコを手なずけようとは思わず、「人間に媚びなくていい」 「人間の顔色なんて読まないネコになれ」 という姿勢を保っているので、ネコのほうも私にじゃれたりせず、「いるな」 という感じで、漫画を描いたり家の掃除をしたりしている私を見つめているだけ。寡黙な人間観察者です。お互いまったく違うことをしながら同じ家の中で生きているのですが、私にはそれがとても心地よいのです。生き物というシンプルな次元でのリスペクトだけがお互いあれば、相手の期待するような行動をとらなくとも、大事な存在でいられるのです。
    ヤマザキマリ 「さるとびエッちゃん」


  • #559│ケイ│地域猫 ── 4丁目公園のネコたち 4
    茶トラが公園の鉄柵の外で人待ちしている。自転車に乗って、夕食を運んでくるネコおばさんを待っているのだろうか。左耳先カットが痛々しいけれど、本人は意に介していないようだ。耳先カット(不妊手術)はノラネコの個体数を増やさないためには有効な対策だと思うが、その結果として捕獲し難いノラだけが繁殖して、人懐っこいネコの系統が絶えてしまうことを危惧する動物行動学者もいる。警戒心が強くて用心深いネコだらけになっては、ネコ写真を撮る愉しみも減退する。ところが遺伝子学だけでは解明出来ないこともある。三毛猫が産んだ近所の3匹のネコたち(白黒のジャパニーズ・ボブテイル2、白茶の長シッポ)は子猫時代から人馴れせずに逃げ回っていたのに、成猫になってから暫くして急に人懐っこくなった。今では姿は見えなくても「猫語」で呼ぶと飛んで来て、擦り寄るようになった。この突然の変化は環境によるものなのだろうか?‥‥ネコの生態は今も謎に包まれている。

    #560│ジル│飼い猫? ── 日向ぼっこにゃん
    道端で気持ち良さそうに日向ぼっこしているネコを撮った。暖かな陽射しを顔面に受けているので、緑色の目も明るく映っている。順光写真としては上手く撮れているのではないかと自画自賛していたが、「NyAERA 2021」(AERA増刊)を読んで驚いた。 「岩合光昭さんの特別カメラレッスン」 の中で、「うぬぼれ逆光」 で撮ることを推奨していたからだ。ネコを逆光で撮ると、躰の輪郭は際立つけれど、顔が影になって暗く写ってしまう。逆光撮影には明るいレンズが必須ではないか。岩合さんは夜間の撮影は一切行わない。フラッシュがネコの目に悪影響を与えるからだと思われる。本来アウトドア派の岩合さんもコロナ禍の影響で、ステイホームを余儀なくされた。『岩合さんちのネコ兄弟』(クレヴィス 2020)は2匹の飼い猫(子ネコ兄弟タマとトモ)を自宅で室内撮りした写真集。最新刊『ボス猫』(ジーウォ ーク 2021)では岩合さん好みのデカ顔ネコたちが「うぬぼれ逆光」で写っている。

    #561│バル│飼い猫 ── ブルーカラー・キャット
    バルちゃんがフラワー・スタンド(鉢置き台)の奥に隠れていた。青いエリザベスカラーを着けているので動き難いのか、いつもの敏捷な動きを封じられて大人しくしている(ブルーカラーに影響されたのか、全体が青っぽく写ってしまった)。飼主に訊いていないので分からないけれど、怪我をしたのか手術直後なのか、心無しか元気なさそうにも見える。カメラのシャッター音にもビクッと反応するくらい感受性の強いネコで、その行動パターンは予測不可能。最初出会った頃は逃げられていたが、漸く顔を覚えられたのか、最近は一度だけ挨拶しに来て、躰を触られてくれるようになった。毛並みを撫でても嫌がらない。バルちゃんのチャーム・ポイントは目にある。アーモンド型というよりも楕円形に近いツリ目は魅惑的で愛敬がある。エリザベスカラーが早く外れて、元気になった姿を見せて欲しい。

    #562│ベル│ノラ猫 ── 毛繕いにゃん
    車道から隘路に入る。曲がりくねった裏道を歩く。小さな白茶ネコと目が合うと、走り寄ってきて足許に戯れついた。初対面なのに、こんなに人懐っこいネコは珍しい。ところが屈んで毛並みを撫で、写真を撮ろうとする間もなく、走り去ってしまった。挨拶は済んだということなのだろうか。路地を左に曲がると民家の前に2匹のネコがいた。白黒は精悍な面構え、片目の白ネコを見て驚いた。10年以上前に撮ったことのある長毛種のオッドアイ(マミー)ではないか。辛い目に遭ったかもしれないが、大通り沿いから流れ着いて終の住処を見つけたようだ。世話をしている女性が帰宅すると、2匹は鳴いて食事を強請るのだ。中庭でキジトラ(チョコ)を撮ったことのある民家の向かいで、縞ネコが毛繕いをしていた。お気に入りの場所らしく、良く見かける。子供や青年が毛並みを撫でていることもある。

    #563│ユカ│飼い猫 ── 駐輪場の三毛にゃん
    都内は新型コロナウイルス対策に伴う4度目の緊急事態宣言発令中だった。度重なる「緊急事態宣言」に慣れてしまったのか、感染者や重症者や死者数が増えても、人流は減っていない。巣鴨駅前も多くの通勤・通学者や買い物客が行き来している。ネコたちが棲む界隈は休業している飲食店もあって閑散としていた。コロナ禍が外ネコたちに与えた影響について考える。駅構内や駅前は混雑しているが、飲食店が櫛比している路地は人通りも少ない。コロナ以前と同じように食事は出来ているのだろうか。この環境はネコにとって暮らしやすいのか、それとも生活し難いのか。この変化を全く感知せずに行動しているのか、それとも何か天変地異のような異変を感じているのか?‥‥営業している飲食店の前にいた三毛ネコを駐輪場で撮った。Y食堂の看板ネコらしい。

    #564│ヤマ│ノラ猫? ── 尻尾は黒いにゃん
    4丁目公園の近くの歩道に白ネコがいた。良く見ると真っ白ではなく、左目の付け根と尻尾だけが黒い。黒猫、茶トラ、三毛など、公園にいるネコたちとは距離を置いているようなので、もしかしたら飼い猫なのかもしれない。目の色や毛並みと同じく、ネコの性格も千差万別で 「平凡なネコなんていない」(コレット)。ヤマザキマリの飼っている「特定の人以外の前には決して姿を見せない、イリオモテヤマネコのような "幻のネコ"」とはベレン君(ベンガル種)のことで、「NyAERA 2021」 にインタヴューが掲載されている。彼女が虫を愛でるのは意思の疎通が出来ないから。お互いに分かり合えなくても同じ地球で共生している。意思の疎通が出来ないネコを手懐けようとは思わないし、「人間に媚びなくていい」 「人間の顔色なんて読まないネコになれ」 という姿勢でいる。ベンガル君もクールに見つめているだけの寡黙な人間観察者。全く違うことをしながら、同じ家の中で暮らしているのが心地良いと「さるとびエッちゃん」の中で語っている。

    #565│アサ│飼い猫 ── 交差点のネコ
    K日通りとS忍通りの交差点にある蕎麦屋さんの前に見目麗しい茶白ネコがいた。女店主らしい人が見守っている。承諾を得て写真を撮らせてもらう。老齢らしいが、ヒトと違ってネコの年齢は容姿からは分かり難い。薄緑色の目が若々しく煌めいている。初対面で撮れるネコと、何度通っても撮れないネコがいる。近寄ると踵を返して逃げてしまうような用心深く人馴れしていないネコは兎も角、落ち着きがなく動き回り、動作が素速いネコは写真に撮り難い。逆に人懐っこく擦り寄ってくるネコも容易でない。活溌な子猫よりも大人しい成猫の方が被写体としては撮りやすい。後日、交差点を渡ると店先に看板ネコがした。カメラを向けるとシャーッと威嚇してから、店内に引っ込んでしまった。マスクを着けているし、まだ2度目なので不審者だと思ったのかもしれない。女店主に先日撮った写真を手渡すと、お礼に「岩塚のにいがたぬれせんべい」をくれた。

    #566│アン│ノラ猫 ── ニャミー1000
    「ブログ記事1000本記念」のネコはアンちゃんに飾ってもらった。彼女はI袋駅前公園で暮らす可愛い三毛猫で、気が向けば膝の上に乗ります。〈猫のミャーオ〉で紹介した手塚治虫の 「シャミー1000」(高1コース 1968)は地球へ調査に来たネコ型異星人シャミーと男子高生の恋愛を描いた異色SF。数百年前、ネコに似たシャミーをペットにして合理化された生活の慰めとしていた人間が擬人化しようとして改良すると、主従が逆転してシャミーが人間を支配するようになったという。シャミー族は科学文明生活の中で唯一欠けているもの、「愛の形態」 を調査・研究するために「猫の惑星?」(未来の地球という設定にはなっていない)から地球へ飛来したのだった。特派調査員1000号は高校生の四村と触れ合う中で、「愛」 という感情に次第に目覚めて行く。ちなみに「シャミー1000」は三味線の駄洒落である。

    #567│アリス│飼い猫 ── 黒猫アリス
    「聖書・マザーグース・シェイクスピア」は英語圏の文化を理解するための3大教養といわれる。この知識があるという前提で鉤括弧なしに引用されるので、精通していない人には何のことだか分からない。英インディ・ロック・バンド、Wolf Aliceの〈The Beach〉は 「マクベス」 の引用から始まる。「いつまた会おう、三人で? / 雷、稲妻、雨の中?」(松岡和子訳)という3人の魔女が再会の約束をしている冒頭のシーンには灰ネコ(Graymalkin)とカエル(Paddock)も登場する。「パドック」 の日本語訳はヒキガエル一色だが、「グレマルキン」 は灰色猫、虎猫、グレマルキン、お化け猫、黒猫、老いぼれ猫など種々色々‥‥文字通りの意味ならば「灰色猫」、魔女の使い魔ならば「黒猫」が妥当はないかと思われる。路地裏で出合った黒ネコは少女エミリー(ザ・ストレンジ)の飼い猫ミステリーのように、「超ミステリアス」 だった。ちょっと警戒しているようですが。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第63集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。今までに560匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第63集の常連ネコはバルとアンちゃん。バルは青いエリザベス・カラーを着けられて元気なさそう、アンちゃんは相変わらず愛らしい。『果てしなき 石ノ森章太郎』(NHK出版 2021)は2018年に放送されたEテレ「NHK100分de名著」スペシャル版第6弾に追加取材を重ねて刊行されたムック版。「さるとびエッちゃん」 』をヤマザキマリ、「サイボーグ009」 を名越康文、「佐武と市捕物控」 を夏目房之介、「仮面ライダー」 を宇野常寛が語る。竹宮惠子と島本和彦のインタヴューも掲載されています。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました

    • 「マクベス」 の日本語訳は「マクベス」特集(一幕一場編)どう訳す?あの名セリフ」を参照しました
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    別冊NHK100分de名著 果てしなき 石ノ森章太郎

    別冊NHK100分de名著 果てしなき 石ノ森章太郎

    • 著者:ヤマザキマリ / 名越 康文 / 夏目 房之介 / 宇野 常寛
    • 出版社:NHK出版
    • 発売日:2021/07/26
    • メディア:ムック(教養・文化シリーズ 別冊NHK100分de名著)
    • 目次:はじめに──石ノ森章太郎の「残留思念」が私たちを形作った /『さるとびエッちゃん』/ 竹宮惠子インタビュー / 27歳で上梓した『マンガ家入門』/『サイボーグ009』/ 島本和彦インタビュー /『佐武と市捕物控』/ 石ノ森章太郎略年譜 /『仮面ライダー』


    NyAERA  2021(AERA増刊)

    NyAERA 2021(AERA増刊)

    • 巻頭特集:猫との出会いが人生を変えていた
    • 出版社:朝日新聞出版
    • 発売日:2021/02/17
    • メディア:雑誌
    • 目次:インタビュー(ヤマザキマリ)/ 現代のニャン像 / 時代を読む / 岩合光昭さんの特別カメラレッスン / 猫風邪から猫コロナ、新型コロナウイルスまで / 健康長寿は食からつくる / 特別付録(沖 昌之さんニャレンダー)


    アバンチュール21

    アバンチュール21

    • 著者:手塚 治虫
    • 出版社:講談社コミッククリエイト
    • 発売日:2011/05/13
    • メディア:文庫(手塚治虫文庫全集)
    • 目次:アバンチュール21 / シャミー1000 / 緑の果て / 7日の恐怖 / 月世界の人間 / ジャムボ / 解説・森 晴路


    エミリーの記憶喪失ワンダーランド

    エミリーの記憶喪失ワンダーランド

    • 著者:ロブ・リーガー(Rob Reger)/ ジェシカ・グルーナー(Jessica Gruner)/ バズ・パーカー(Buzz Parker)/ 西田 佳子(訳)
    • 出版社:理論社
    • 発売日: 2010/02
    • メディア:単行本
    • 『エミリーの記憶喪失‥‥』を読み解くための13の鍵:謎 / イケてるゴーレム / 高性能パチンコ / 4匹の黒猫 / 記憶喪失 / 不幸のポーカー / 歯をむくポニー / 怪しい補導員 / リストはいつも13項目 / 砂嵐発生機 / 他人の空似か生霊か / 極秘のミッション / ハサミムシ

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