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スニーズ・ラブ 77 [s k n y s - l a b]

  • ♭ 一度きりの子猫の話(2021-06-05)
  • 1971年秋、萩尾望都はキャベツ畑で1匹の子猫を拾う。まだ目も開いていなくて、ピーピーと鳴いていた。長屋(大泉サロン)で飼うことになった子猫は「バタ」と命名された。モーさまは「バタ」をモデルに 「毛糸玉にじゃれないで」(1972)という高校受験を控えた女子中学生の話を描いたが、小中学校は戦後のベビーブームで産まれた子供たちで溢れていた。《大量の生徒と大量のテスト。大量に生産されたものに個性はありません》‥‥受験勉強で疲れた中3時代のことを描きながら、「やはり日本を舞台にしたものは辛いなあ」 と思った。厳しかった両親のことを思い出してしまうので家族を描くのも辛かったと述懐している。50年前はネコに対する飼主の意識も低く、知識も乏しかった。キャットフードも一般に普及していなかった。空前のネコブームの今日のように、ネコを家族の一員として迎えて一緒に暮らすということも少なかったのではないか。萩尾望都が牛乳で育て、竹宮惠子が炊きたてのご飯に鰹節を乗せた「ねこまんま」を食べさせていたことは責められない。

  • ♭ ゆめこ縮緬(2021-06-12)
  • 大正から昭和初期の中州を巡る幻想小説集『ゆめこ縮緬』(集英社 1998)。中州の病院に入院している友人・弓村を見舞いに来た書生・時夫が煙草屋の老人と中年女(嫁)、若い女(珠江)の仁侠沙汰に巻き込まれる「文月の使者」。ある寺の天井画を描く仕事を知人から紹介された絵師が道に迷い那須野の旅宿に泊まり、部屋の板戸越しに女と「玉藻前」の会話を交わす「影つづれ」。ねえや(初江)に連れて行かれた周也が九段招魂社の見世物小屋で見た綱渡り女・桔梗が父の妾だった「桔梗闇」。産婦人科医の家に嫁いだ佳耶と義妹の毬子と会話し、隣家に居候する白系露人ヴァレンシアの奏でるヴァイオリンを聴く「花溶け」。舞踏家(新興流派の家元)の母と千鶴、網元の娘ミツと漁師の子・勝男の現在と過去が交錯する「玉虫抄」。軍人の家に生まれた馨と自裁した異母兄、乳母の実子文乃と娘の千緒が織りなす「胡蝶塚」。大家Nの紹介で富崎玉緒の洋館を訪れた挿絵画家(舟さん)が陸軍士官(長兄)の肖像画を描く「青火童女」。父方の伯父の家(蛇屋)に里子に出されたチャーち ゃん(わたし)が書き溜めた〈お話〉の紙束を庭の焚火に焼べて燃やす「ゆめこ縮緬」。

  • ♭ 庭猫と家猫(2021-06-19)
  • 《実家の庭は、野良猫の通り道になっている。長いあいには、さまざまな猫がやって来た。なかでも今いるニ匹の白いネコは、とりわけ興味深い。2匹はいつも一緒に過ごし、空腹になると飛びあがって網戸に張りつき、家のなかを覗き込んでは食事の催促をする》‥‥安彦家の飼い猫親子も登場するけれど、写真集『庭猫』(パイ インターナショナル 2015)の主役はノラ猫のアフとサブ。家猫と庭猫の間には見えない境界が存在する。『庭猫スンスンと家猫くまの日日』(小学館 2021)はネコと暮らした17年間を回顧した写真集(巻末にエッセイを収録)。安彦家の庭に来るようになった雄猫は鼻炎で鼻を鳴らしていることからスンスンと名づけられる。友人たちと共同生活していた家に棲み着いた雌猫は熊笹の茂みから現われたので「くま」と呼ばれていた。友人が保護して、「くま」 と一緒に暮らすことになった子猫ピーヤ、タローとミニミニ兄妹(ミニミニは友人に引き取られる)。近所の家の庭で9カ月後に亡くなったスンスンは火葬されて実家の庭に埋められた。2階の寝室で息を引き取 った「くま」の遺骨もスンスン畑に埋葬されて「スンスン大根くま大根」に生まれ変わる。

  • ♭ ナタリアとポムちゃん(2021-06-26)
  • 2カ月半振りの渋谷。ハチ公前の改札を出て驚いた。地面が見えないほどの大混雑ぶりではないか。人混みを擦り抜けて一路「EL SUR」へ向かう。冷えた緑茶を出してくれた店主のHさんと暫し雑談して、アルバム(CD)を2枚購入した。《Un Canto Por Mexico Vol. 2》(Sony 2021)はNatalia Lafourcadeによる「メキシコ歌謡集 Vol.1」の続編。Caetano Veloso、Ruben Blades、Jorge Drexlerなどとデュエットした名曲やセルフ・カヴァを含む全11曲。ナタリアちゃん、Jorge Drexlerの元妻Ana Laan(Rita Calypso)、Ruben Bladesの奥さんLuba Masonは猫ジャケ・アルバム(ネコード)をリリースしていた。《A Peu Pres》(Poydor 2017)は林檎ちゃん(Pomme)のデビュー・アルバム。 自共作は全13曲中5曲と少ないけれど、2nd《Les failles》(2019)のように、阿漕な「増補盤」でリイシューされる可能性は低そうだ。渋谷駅に戻るのは怖いので、公園通り〜代々木公園(なぜか芝生で寝転がっている人多し!)〜原宿駅経由で早々に退散しました。

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    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの1カ月分(2021-06)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
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    一度きりの大泉の話

    一度きりの大泉の話

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2021/04/21
    • メディア:単行本
    • 目次:前書き / 出会いのこと 1969年~1970年 / 大泉の始まり 1970年10月 / 竹宮惠子先生のこと / 増山さんと「少年愛」/『悲しみの天使(寄宿舎)』/『11月のギムナジウム』/ 1971年〜1972年 ささやななえこさんを訪ねる / 1972年『ポーの一族』/ 海外旅行 1972年9月 / 下井草の話 1972年末~1973年4月末頃 /『小鳥の巣』を描く 1973年2月~3月...


    ゆめこ縮緬

    ゆめこ縮緬

    • 著者:皆川 博子
    • 出版社:KADOKAWA
    • 発売日:2019/09/21
    • メディア:文庫(角川文庫)
    • 目次:文月の使者 / 影つづれ / 桔梗闇 / 花溶け / 玉虫抄 / 胡蝶塚 / 青火童女 / ゆめこ縮緬 / 解説・葉山 響 /「皆川博子には足がない」久世光彦 / 編者改題・日下三蔵


    庭猫

    庭猫

    • 著者:安彦 幸枝
    • 出版社:パイインターナショナル
    • 発売日:2015/09/11
    • メディア:単行本
    • 内容:庭の常駐猫、アフとサブ。ある日振り返ると、網戸に張り付いていた。「ご飯はまだか」。その日を境に、毎日欠かさず張り付くようになり…。家で飼う猫と庭に住み着いた猫、飼い主の日常。家族と猫たちの、ちょっと奇妙でせつない写真集

    庭猫スンスンと家猫くまの日日

    庭猫スンスンと家猫くまの日日

    • 著者:安彦 幸枝
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2021/01/22
    • メディア:単行本
    • 目次:くま / スンスン / スンスン大根くま大根 / スンスン / くま

    Un Canto Por Mexico Vol. 2

    Un Canto Por Mexico Vol. 2

    • Artist: Natalia Lafourcade
    • Label Sony Import
    • Date: 2021/05/28
    • Media: Audio CD
    • Songs: La llorona / Cien Años / Alma Mía/Tú Me/Acostumbraste / Soledad y Mar / Luz De Luna / La Trenza/Amor Completo / Nada Es Verdad / Recuérdame / La llorona / Soy Lo Prohibido / Tú Si Sabes Quererme / Para Que Sufrir


    A Peu Pres

    A Peu Pres

    • Artst: Pomme
    • Label: Polydor
    • Label: 2017/10/13
    • Media: Audio CD
    • Songs: À Peu Près / Même Robe Qu'Hier / Ce Garçon Est Une Ville / Comme Si J'y Croyais / La Gare / Adieu Mon Homme / La Lavande / De Lá-Haut / A Lonely One / Pauline / Ceux Qui Rêvent / On Brûlera / De Quoi Te Plaire

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