SSブログ

戸惑うトマト [p a l i n d r o m e]



  • 中学生になってから、「すごい本に出会ってしまった‥‥!」 とドキドキしている本があります。それが、村上春樹さんの『騎士団長殺し』(新潮社)です。/『騎士団長殺し』の発売日、私は小学6年生だったのですが、その人気ぶりをニュースとかでも見ていました。発売前から「村上春樹の新刊が出る!」と話題になっていたし、発売されると、書店の入口や目立つ店頭にその本が積み上げられるように並べられたりしていたのも覚えています。/ でもちょっと大人の人の本かなって感じもして、これまで一冊も村上春樹さんの本を読んだことがなかったんです。/ 私が読んでもいいのかな?という何だか敷居の高さがあったし、『騎士団長殺し』は上下巻あってしかも一冊の厚さが何センチもあるような分厚さ。簡単に読み込める本ではないなあって圧倒されて手に取ってみようとはなかなか思えなかったのです。
    芦田 愛菜 『まなの本棚』


  • □ ぶっかけうどん、お魚は生、出汁あご。芦田愛菜、花笠音頭、受けカップ
    愛菜ちゃんは本を読むのが大好きな中学生少女。昨夜も『倒立する塔の殺人』(理論社)を読み始めたら、面白くてページを捲る手が止まらない。夜更かししちゃったのは読書だけでなくて、明日の「クラス対抗ダンス大会」のことが気懸かりだったから。本の中に没頭することで不安を払拭したかったのに、気分が高揚して逆に眠れなくなってしまったのだ。愛菜ちゃんは「ミステリーYA!」の著者と同じく、幼少時から本の虫で、運動も苦手だった。寝つけない時は眠れない理由を考えてみることにしている。精神的な不安や昂奮状態、肉体的な痛みなど、その原因が分かれば安堵して眠れるかも?‥‥決戦の朝、アスリートや受験生は験を担いでカツ丼やトンカツを食べるらしいけれど、愛菜の勝負飯は大好物の「飛魚出汁ぶっかけうどん」とマグロの刺身。愛菜のクラスは「花笠音頭」を踊った。放課後の特訓の成果が出たのか「ダンス大会」を見事勝ち抜いて、愛菜ちゃんは優勝カップを手にした。

    □ ルナ、黒い霧、靄、晴れればヤモリ黄色くなる
    2020年のハロウィン(10/31)は46年振りの満月、しかも「ブルームーン」だった。ひと月に巡って来る2度目の満月をブルームーンと呼ぶ。10月は2日と31日が満月だった。2回目の満月が青く見えるわけではないけれど、冷たく澄んだ夜空に凛と光る小さな月は一際美しかった。「青い月の夜」 の人形たちは月の光を浴びると一晩だけ動いたり話したり出来るようになる。少女アコが月に向かって呪文を唱えると、不思議の国のアリスのように躰が小さくなった。ネズミに攫われた少女は再び呪文を口にして元の大きさに戻ろうとするが、空高く昇った月は黒い雲の陰に隠れてしまう‥‥女占師・月乃ルナは月の満ち欠けで未来や運命を占う。クリスマス・イヴの夜、東京の月(月齢 9.4)はコロナ禍の深刻な現状を反映しているかのように、不吉な黒い霧に覆われるだろう。もし霧や靄が晴れれば、月の光に照らされたヤモリは黄色く発光するという。黄色いヤモリは吉兆か、それとも凶兆か?

    □「鹿子のキノコは木箱のキノコか?」
    「お前たちは毒がないから、人間どもに食べられてしまうのだ。俺たちのような毒キノコになれば、誰にも穫られなくなるのだ」という毒キノコの主張に誰も反応出来なかった。「きのこ会議」 の毒茸最強生存説とは裏腹に、大きい鹿子の木に棲息していた自称「毒キノコ」は男たちに根刮ぎ穫られてしまった。自分たちが幻覚作用のあるマジック・マッシュルームとは夢にも思わなかったのだ。早朝、村に帰って来たキノコ狩りの男たちは早速、生野菜と合えたサラダ、素焼き、キノコ汁などに調理したマジック・マッシュルームを試食してみた。ところが数分どころか数時間経っても、幻覚症状は表われない。「変だな、幻のカゴノキダケに間違いないんだが」 と首を傾げるリーダー格の男が独り言つ。穫って来たカゴノキダケを他のキノコと間違えないように、籠から木箱に移し替えたのだが、その際に誰かに掏り替えられたのではないかという疑念が湧いて来た。籠に入れて運んで来た仲間の1人が一番怪しい。独り占めしているのではないか?‥‥そもそも男の呂律が回っていないではないか!

    □ 毛繕い、奇しくも子猫も櫛、黄色く柘植
    お尻を軽く叩くと、ネコは尻尾を高く上げてヨガのポーズのような姿勢になる。母ネコならば肛門を舐めてあげるところだが、そこまでヒトは慈愛に溢れていない。病原菌やウイルス感染のリスクを考慮すれば尚更だ(お尻を触るという同じ行為でも、お触りするヒトによってはセクハラになっちゃうところが人間関係の難しいところです)。デングリ返りして、お腹を撫でてくれと催促するネコ。膝に乗って、居心地良さそうに眠るネコ。道端の雑草を必死に食べているネコ。舌で毛並みを舐めて、一心不乱に毛繕いするネコ‥‥クリーム・イエローの子猫は櫛を見ると一目散に跳んで来て、毛並みを梳かして欲しいと強請る。ヒトだって恋人に髪の毛を優しく触られたり、美容院で髪を丁寧にブラッシングされたら気持ちが良いのだから、全身毛だらけのネコには想像を絶する快感なのかもしれない。お気に入りの柘植の櫛で子猫の毛並みを梳かす。黄色い櫛が黄色い毛に保護色のように融け込んで、日向のように暖かい。ネコもヒトも幸せな気分になります。

    □ キャバクラ「庵」‥‥老い落馬、山羊
    世間を騒がせる文春砲は兎も角、大手新聞や出版社の老舗週刊誌は軒並み「老人雑誌」に様変わりしている。主な購読者たちも長き年月を経て高齢化し、取り挙げるテーマも健康、病気、介護、遺言、年金、お墓など‥‥爺臭い文言が新聞広告の紙面を踊る。「死ぬまでセックス」 「下流老人」 という扇情的な言葉も編み出した。若年層の少子化と高齢者の増加という現状を反映し、コロナ禍の影響もあって歓楽街のゲームセンターは廃業、年金支給日のパチンコ店は老人たちで溢れている。若い男女客が激減したキャバクラやホストクラブもジジババをターゲットに営業転換、リニューアルしている。「オレオレ詐欺」 でも顕著のように、日本の高齢者は多額の金を溜め込んでいるのに、悲しいかな使い道が分からない。反ボケ状態で正常な判断能力にも欠け、好奇心や感受性も著しく減退している。今月駅前に新装オープンした「庵」は老人向けのキャバクラ店。愛馬に跨がって意気揚揚と来店した山羊爺さんは店の前で降りる際、足を引っかけて落馬した。高齢動物の「夜遊び」も今や命懸けである。

    □ 夜折り紙、すね齧り男、4〜5通り、鹿・鼠・雁‥‥折るよ
    オリガミ王子は多くの人々が寝静まった深夜に黒いオリガミを折る。親にパラサイトした典型的なニート、すね齧りの引き籠もり青年だったが、ここ数年来「引きこもり」への理解も深まって、世間から批判を浴びることも見当違いの偏見も少なくなった。全国調査の結果、100万人も潜在していることが判明して、政府も社会も看過出来なくなったからだ。コロナ禍の影響もあって昨今のリモートやオンラインを見聞きした青年は趣味の創作オリガミの写真や実演映像をSNSや動画投稿サイトに挙げるや否や、瞬く間にバズってネットの人気者となった。オリガミ王子は毎週4〜5個の新作オリガミを「ブラック・オリガミ」にアップする。今週も鹿、鼠、雁、象など、精緻な動物を折って見せた。その繊細な指使い、手際の良さ、スピード感、完成したオリガミの美しさに誰もが感嘆する。たった1枚の紙片から折ったとは思えない立体的な動物たちが平面から立ち現われるのだ。「ブラック・オリガミ」 というサイト名はジェイリン(Jlin)のアルバム《Black Origami》(Planet Mu)に由来する。

    □「くそっ!」新ドラフト会議、大きい蛾飛ぶ、ラドン失速
    ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ、キングコング、ガメラ、ギャオス、ガッパ、ギララ、ビオランテ、ゴモラ‥‥歴代の大怪獣たちが東西に別れて闘う大晦日恒例の「オールスター対抗怪獣大決戦」は試合前に行なわれた「新ドラフト会議」から荒れ模様だった。東西の主将ゴジラとガメラが互にライヴァル心を燃やして地上で睨み合う。空の大怪獣ラドンが飛来して東西両チームに猛アピール。「オレ様が大空の王者だ」 と謂わんばかりに、新国立競技場の上空を旋回している。ところが南方から突如現われたモスラがラドンの出鼻を挫く。「天空の女王は私よ」 と啖呵を切ってラドンを挑発したからだ。早くも空中バトルの前哨戦が始まってしまった。モスラの羽搏きで撒き散らされた毒鱗粉を大量に浴びたラドンは遭えなく失速、失墜!‥‥競技場のグラウンドに舞い降りたラドンは悔し紛れに悪態を吐いた。その醜態に競技場を埋め尽くした観客から失笑が湧き、落胆の溜め息が漏れたのだった。

    □ たたき上げは俎板の鯛?‥‥ナマハゲ、秋田だ!
    健康上の理由(モリ ・カケ・サクラ疑惑?)で、アベ総理が突如退陣してモヤモヤしていた気分が晴れたのも束の間、〈たたき上げ秋田だ!〉と謂わんばかりに、パンケーキ好きの元官房長官が首相に就任した。イチゴ農家の長男として生まれたガースー(菅義偉)は地元の高校卒業後に上京して板橋区の段ボール製造工場に勤務したが、僅か2カ月で退職。2年後に法政大学に進学した。大学卒業後、衆議院議員の秘書となり、横浜市議、衆議院議員、総務副大臣、総務大臣、官房長官、総理大臣‥‥と出世魚のように成り上がる。「令和おじさん」 の異名もあるガースーは総理就任時には人気があって、内閣支持率も高かったが、コロナ・ウイルス感染予防対策を怠り、「GO TO キャンペーン」 を頑に続行した結果、コロナ・ウイルスを市中に蔓延させて感染者数を増大させた。内閣支持率は急落して、今や政界の出世魚は「俎板の鯉」ならぬ「俎板の(腐っても)鯛」状態に。ご面相も秋田の来訪神ナマハゲに似て来たりして?‥‥ぴえん。

    □ 威張り、嘘が過ぎ。スキー現場にパンケーキ好き「菅総理杯」
    首相官邸近くの高級レストラン・オリガミ(ORIGAMI)で頻繁に朝食(パンケーキ?)を摂るというガースー(菅義偉)は日本を「観光立国」にしようと目論んでいる。内閣官房長官時代に推進して来た観光戦略は「統合リゾートとスキー場」だった。外国人観光客の来日を見込めないコロナ禍にあって、コロナ・ウイルスが蔓延し、感染者数が増大しても「GO TO キャンペーン」を中止しないのは「観光立国」として経済を回すという強い信念があるからだ。しかし、アクセルとブレーキは同時に踏めない。「GO TO‥‥」 と「コロナ感染防止対策」がクルマの両輪であるわけがない。経済的に疲弊して自殺者が増えたのは憂うべきことだ思うが、コロナ感染症で死亡するのと同列に扱って良いものなのか?‥‥経済的な困窮者は「給付金」で救けられるが、重篤化したコロナ感染症患者は「お金」では救えない。田沢湖スキー場で開催された競技大会の表彰式で、首相自ら「総理大臣杯」を優勝者に授けた。

    □ ジロリ!‥‥驚きクロコダイル。歩いた5〜6キロ通り路地
    ある日の夕暮れ、私は散歩に出た。いつも歩き慣れているコースから外れて、今日は未知の道を散策することにした。クレヨン通りの奥にある広場のアーケードを潜って、クロコダイル路地に入り込む。道なりに進んで行くと、鬱蒼とした公園が目の前に現われた。薄暗い敷地内に人気はなかったが、ふと気配を感じて歩みを止めると、一匹の茶トラネコが足許に纏わりつく。まるで人が来るのを待ち侘びていたような人懐っこさだった。公園の奥に小さな池があった。その不吉な佇まいは「黒い沼」と呼んだ方が相応しいかもしれない。古びた木製のベンチに座っていると、淀んだ鉛色の水面が波紋を描いて、奇妙なものが現われた。私の身長の3倍もありそうな巨大な鰐だった。水辺から上がって来た鰐と視線が合う。爬虫類の冷酷な目が私を睨む。クロコダイルが大きな口を開けて威嚇する。鰐の口腔が私の視界を覆う。それは底知れぬ空洞だった。虚無、忘我、失神‥‥《気づいたとき、私は鰐の中にいた。鰐と同化していた》。それ以来、私は「鰐男」として生きることになったのだ。

                        *
    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい^^;

    • マジック・マッシュルーム回文は〈「きのこ会議」 大きい鹿子の木〉の後日譚です

    • クロコダイル回文の「ショート・ショート」ストーリはマンディアルグの「ポムレー路地」から一部借用、皆川博子の『クロコダイル路地』から一部引用しました

     スニンクスなぞなぞ回文 #61

     ◇△◎▢▽☆怒る身をラクサ☆桜を見る会☆▽▢◎△◇

     回文作成:sknys

     ヒント:5千円で賄えるの?


                        *


    まなの本棚

    まなの本棚

    • 著者:芦田 愛菜
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2019/07/18
    • メディア:単行本
    • 目次:プロローグ / 語り出したら止まらない!芦田愛菜の読書愛 / 本好きへの扉を開いた6冊 / まなの本棚から84冊リスト / 対談 山中伸弥さん(京都大学iPS細胞研究所所長・教授)/ 対談 辻村深月さん(作家)/ コラム 好きな登場人物(男性編・女性編)/ エピローグ


    倒立する塔の殺人

    倒立する塔の殺人

    • 著者:皆川 博子
    • 出版社:理論社
    • 発売日: 2007/11/01
    • メディア:単行本(ミステリーYA!)
    • 目次:倒立する塔の殺人 /『倒立』美術館 あとがきにかえて


    Black Origami

    Black Origami

    • Artist: Jlin
    • Label: Planet Mu
    • Date: 2017/05/19
    • Media: Audio CD
    • Songs: Black Origami / Enigma / Kyanite / Holy Child / Nyakinyua Rise / Hatshepsut / Calcination / Carbon 7 (161) / Nandi / 1% / Never Created, Never Destroyed / Challenge (To Be Continued)

    コメント(0)