♭ 谷中のメグちゃん(2020-07-04)西日暮里方面から諏訪台通りを登り、夕やけだんだんを降りて左折する。台東区立中央図書館
「谷中分室」(谷中防災コミュニティセンター3F)は書架への立ち入りと閲覧席の利用は禁止されていたが(6/19から再開された)、予約資料の受け取りや返却は受け付けている。エントランス前の防災広場「初音の森」では多くの家族連れや子供たちが遊んでいた。夕やけだんだんを昇って日暮里駅へ向かう途中、延命院の門柱の上でキジトラが気持ち良さそうに睡っていた。ちょっとした撮影スポットになっていて、通りがかった人たちが立ち止ってスマホを翳している。首輪のネコ型チャームに、名前(メグ)と連絡先(8桁の電話番号)が記されている。睡眠時は無防備になるので、出来るだけ人目を避けた場所に身を隠すはずなのに、メグちゃんは人通りの多い門柱の上で動じることなく睡っている。人馴れしているのだろうか?‥‥人気モデルであることを意識しているかのような振る舞いである。「谷中 メグ」で画像検索すると、数多くの写真がヒットする‥‥
「谷中のアイドル猫」らしい。
♭ 愛しのタマちゃん(2020-07-11)『タマ、帰っておいで』(講談社 2020)は横尾家の家族の一員として15年暮らした愛猫タマ(本名タマゴ)の画文集。見開き左頁にタマの肖像画(90点)、右頁に文(日記)で構成されているが、必ずしも絵と文が対応しているわけではない。タマの死(2014年5月31日)に始まり、生前(2004年7月6日〜)の日記もあるが、死後(〜2018年6月1日)の記述が3分の2を占める。肖像画はタマの死後に描かれている。表現主義風の肖像画はセザンヌやマティスを想わせたりもする。瀕死の重傷を負ったタマが快復して、「世田谷区動物フェスティバル」から表彰される。1週間の失踪事件。裏庭の棕櫚の樹の下の「タマ霊園」。瀬戸内寂聴から送られた2体の土仏。オノ・ヨーコの来訪。タマの夢‥‥横尾忠則(ぼく)はタマを描くことで、ペットロスから治癒したけれど、タマ(私)は巻末の「タダノリ君へ」宛てた手紙の中で「君のやっている芸術とかは空洞を埋めようとしています。空洞は空洞としてスカスカでいいのです。今の芸術はつめ過ぎです」と書いている。空洞を抱えて、ネコのように生きて行く。そこはネコの霊が帰って来る場所でもある。
♭ フジモトマサル(2020-07-18)『フジモトマサルの仕事』(平凡社 2020)は「全仕事」のダイジェスト版ムック(コロナ ・ブックス)。フジモトマサル氏の画業は回文、なぞなぞ、コミック、装幀、装画、エッセイなど多岐に渡るが、ネコ、キツネ、タヌキ、ヒツジ、ウサギ、イタチ、カワウソ、クマ、バク、ペンギン、スカンク、カモノハシなどのキャラは直立二足歩行する擬人化動物として描かれる。人間を動物に置換したデペイズマンによってシュールな空間に豹変させ、内省的な会話や独白が不条理世界を増幅させる。
『長めのいい部屋』(1998)、
『ウール100%』『スコットくん』(2001)、
『こぐまのガドガド』(2002)、
『テーブルの上のファーブル』『ダンスがすんだ』(2004)などの著作から抜粋、単行本未収録コミックやエッセイ、ロングインタヴュー(2012)も再録。巻頭エッセイ「フジモトマサルさんのこと」で書いているように、村上春樹とのコラボは短期間(フジモト氏は2015年11月、白血病で死去)で終わってしまったが、お互いに面識はなくてもネコと回文で繋がっていた。「(回文)はきれいにできすぎていて破綻がないと、感心するばかりで終わってしまうんですよね」。
♭ レメディオス・ヴァロ(2020-07-25)『夢魔のレシピ』(工作舎 1999)はシュルレアリスム女性画家ヴァロ(Remedios Varo 1908-1963)による「眠れぬ夜のための断片集」。レシピと夢の記述・自動記述「夢のレシピ」、手紙と劇の草案など「魔女のテクスト」、自作解説「イメージの実験室」、インタヴューと手紙「地球の想い出」、訳者・野中雅代の解説「メキシコの魔法の庭」の全5章で構成されている。カタロニア生まれのバロは結婚後パリへ移住する。バルセロナに戻ったものの、スペイン内戦から逃れて再びパリに渡り、第二次大戦下メキシコへ亡命した。同じような境遇のレオノーラ・キャリントンと仲良くなる。「レメディオス・バロ展」(伊勢丹美術館 1999)と呼応するように出版された本書にもキャリントンとの親密な交遊が描かれている。皆川博子は
『彗星図書館』(講談社 2019)の中で、バロの絵を表紙に使用した本の1冊にトンマーゾ・ランドルフィの
『月ノ石』(河出書房新社 2004)を挙げているが、トマス・ピンチョンの
『競売ナンバー49の叫び』(サンリオ 1985)も蔵書に加えたい。
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谷中分室
- 所在地:台東区谷中5丁目6番5号
谷中防災コミュニティセンター3階
- 電話:03-3824-4041
- 開館日:2015/04/01
- 開館時間:月〜土曜(午前9時30分〜午後9時)/ 日曜日(午前9時30分〜午後5時)
- 休館日:月曜日(第2日曜日の翌日・第5月曜日は開館)/ 祝日 / 第2日曜日(10月は変更の場合あり)/ 第5月曜日の前日 / 第3木曜日(祝日にあたるときはその翌日)/ 年末年始(12月29日~1月3日)
タマ、帰っておいで
- 著者:横尾 忠則
- 出版社:講談社
- 発売日:2020/04/01
- メディア:単行本
- 内容:2014年に亡くなった愛猫「タマ」、天に召されたその日から横尾さんが描き続けたタマの絵なんと91点!そして、タマに捧げた多くの文章…、これは横尾さんの「レクイエム」の画集!
フジモトマサルの仕事(コロナ・ブックス)
- 編者:コロナブックス編集部
- 出版社:平凡社
- 発売日:2020/04/27
- メディア:単行本(ソフトカヴァ)
- 目次:フジモトマサルさんのこと(村上春樹)/ 絵の仕事 動物たちと一緒に / なぞなぞと回文の仕事 / マンガの仕事 異界へ旅立つ / 装丁と装画の仕事 / 本人の横顔 / エッセイ / 再録エッセイ / 制作風景 / コミック 単行本未収録 よりぬき かわうそ天然気分 / いろいろの仕事 / ロングインタビュー ── フジモトマサル100% / 単行本未収録エッセイ ...
テーブルの上のファーブル
- 著者:クラフト・エヴィング商會
- 出版社:筑摩書房
- 発売日:2004/05/26
- メディア:単行本
- 内容:すべては机上の空論から、すなわちテーブルの上から始まってゆきます。空に昼月、机上に昼酒。酔いがまわったら、昼寝もまたよし。雑誌のようで、絵本のようで、雑誌でも絵本でもない。あたらしい本のスタイル
夢魔のレシピ 眠れぬ夜のための断片集
- 著者:レメディオス・バロ(Remedios Varo)/ 野中 雅代(訳)
- 出版社:工作舎
- 発売日:1999/05/20
- メディア:単行本
- 目次:夢のレシピ / 魔女のテクスト / イメージの実験室 / 地球の想い出 / メキシコの魔法の庭(野中 雅代)
月ノ石
- 著者:トンマーゾ・ランドルフィ(Tommaso Landolfi )/ 中山 エツコ(訳)
- 出版社:河出書房新社
- 発売日: 2004/07/09
- メディア:単行本(Modern & Classic)
- 目次:月ノ石 / 附録 本作品に対するジャコモ・レオパルディ氏の評価から / 訳者あとがき
競売ナンバー49の叫び
- 著者:トマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)/ 志村 正雄(訳)
- 出版社:サンリオ
- 発売日:1985/10/15
- メディア:文庫(サンリオ文庫)
- 目次:競売ナンバー49の叫び / 解注 / あとがき
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