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ゼロゼロ指令 3 [c o m i c]



  • 石森章太郎のマンガは、あるときはタブローの面白さに、あるときは物語性の興味にと、自由に飛躍する。この本に収録される「ゼロゼロ指令」は、どちらかといえば物語性の興味に重点を置いた、サービスのゆきとどいた作品である。左右両陣営のハザマにある日本の科学者の発見した画期的な秘密兵器をめぐる争斗がその主題であるが、このハードボイルド風のマンガの結末が、科学者の妻による秘密の破棄という形で示されるのは、かつて、「少年同盟」や「サイボーグ009」で示された人間と科学の確執というテーマと同一線上にあるといえるだろう。そして、ふつうのばあいならば、ハードボイルドタッチの劇画は、故意に残酷な描写を展開して、読者の視覚にこびるのであるが、石森章太郎のそれは、ひどく健康で、わざとらしく病的にしないのが特徴である。
    森 秀人 「石森マンガの "健康さ" にふれて」


  • ■ ゼロゼロ指令(少年ブック 1963-64)石森 章太郎
  • 「ゼロゼロ指令」は60年代に大ヒットしたショーン・コネリー主演のスパイ・アクション映画「007シリーズ」を想わせるハードボイルド・マンガ。「007 ドクター・ノオ」(1962)の日本初公開は1963年6月なので、石森章太郎も連載する前に映画を観ているはずである。イアン・フレミングの小説を読んでいた可能性も高い。いずれにしても早すぎた作品で、原作を忠実に劇画化したという意味では、親友さいとう・たかをの「007シリーズ」(1968)の方が優れている。「第1話 世界をポケットに」の消えた設計図と研究者を追うというストーリも凡庸で、作画も垢抜けていないが、コマ(絵)とナレーション(文)を分けたり、スローモーションのコマ送りなど斬新な画面構成で魅せる(コマ割りが不自然に拡大・縮小するのは掲載誌の判型違いなのか?)。ところが読者からの人気を得られなかったらしく、第2話以降は当時の忍者ブームを反映したSFものに路線変更されてしまった。第1話の「ミサイル自動制御逆転装置」は「大侵略」(少年マガジン 1969)に再登場することになる。

  • 第1話 世界をポケットに
  • 《現在アメリカには、ソ連のスパイが約三十万人いるといわれています。もちろん、ソ連領内にもアメリカのスパイが、たくさん潜入していることでしょう。たとえば、二年ほどまえにさわがれたU2型機のバワース大尉の事件などがそれです。これは、そうした秘密情報員──スパイの物語です》(作者のことば)。スポーツカーを乗り回す美人をクルマで尾行する黒サングラスの男(オレ)。佐々島博士の夫人が喫茶店に入って出て来る。再び走り出したオープンカーに黒いセダンが近寄って爆弾を投げ込む。爆発して激突、炎上した車内から女性を救出する。喫茶店で夫人と入れ替わった女性は「さがさないで、平和を‥‥」という謎の言葉を遺して息絶えた。その直後「オレ」は黒服の2人組にピストルで脅される。プロの殺し屋との銃撃戦で左肩を負傷した「オレ」に黒いセダンが近づく。クルマを降りた女にクロロホルムを嗅がされて意識を失う。病室のベッドの上で目醒めると、目の前にミサコと名乗る看護婦姿の女がいた。2人の刑事が事情を聞きに訪れるが、ニセモノだと見破る。

    秘密情報員003号(オレ)はベッドに横たわって回想する‥‥今朝早く、指令官(おやじ)に電話で呼び出されて、秘密の研究所から消えた「ミサイル自動制御逆転装置」の設計図と発明者の工学博士・佐々島英樹の行方を追うように指令されたことを。真夜中にミサコが来て、病院から脱け出す手引きをする。盗聴され、猛犬に追われた2人はマンホールから下水道に逃れるが、この脱出劇はミサコたちが仕組んだ計略だった。芝居がバレたミサコは服毒自殺を謀る。003号が腕時計型の通信器で指令官に連絡すると、佐々島博士夫人がサイゴン行きに切符を買ったと告げられた。翌朝、003号はインドシナ航空機206便に夫人と共に同乗していたが、黒服の男たちにハイジャックされてしまう。服毒自殺したと思われていたミサコも乗っていた。一時的に仮死状態になっていただけで、解毒剤を注射されて蘇生したのだ。ハイジャック犯は乗客の中に佐々島博士がいると思っていたが、指令官と003号の通話を盗み聞きしていたミサコからの情報が間違っていた。

    着陸に失敗した旅客機から脱出した003号と佐々島夫人は中国人スパイの乗るジープを奪って逃走する。銃声でスパイたちを陽動した仲間の009号は射殺された。逃走中の車内で夫人から、夫婦がソ連のスパイだったこと、夫が消息を絶ったのは設計図を誰の手にも渡したくなかったから、自分だけの研究室(お金)が欲しかったこと、5日後にアンコール・ワットで落ち合うこと‥‥を聞き出す。夫人の身代わりに死んだ女性は研究室の助手だった。彼女が今際の際に遺した謎の言葉は「佐々島先生をさがさないで‥‥先生は世界の平和を考えて逃げたしたのです」という意味だった。2人はジープを乗り捨てて、ジャングルを歩く。谷まで野宿していると、ベトコン(ベトナム共産党のゲリラ)に包囲される。中国人のスパイが助かる方法を2つ提示する。夫人がササジマ博士の居場所を教えること、サカザキ(003号)が自分を倒すこと‥‥少林寺拳法の闘いに勝ったサカザキと夫人は泥深い水溜りの中に身を隠して追手から逃れた。

    2時間後、河岸に辿り着いた003号と佐々島夫人は小舟に乗って、2日後ベトナム共和国の主都サイゴンに到着する。サイゴンは地獄だった。「5月8日ベトナムの古都ユエで多勢の仏教徒が政府の宗教差別に対する抗議集会を行っていた時、カトリック信者から成る政府軍が、このデモ隊に発砲し、婦人子どもをふくむ11人を殺した」「6月11日ティチクアンドクという70歳の老僧がガソリンを自分の僧服にかけ、火だるまになって死んだ」‥‥2人の目前で「11人の若い僧が火につつまれて死んでいった」。現地人に変装してサイゴンからプノンペンまで飛行機で移動し、汽車で丸1日、プルサト・トレンサーブ湖を経てアンコール ・ワットに辿り着く。まさに佐々島博士と夫人が会う約束をした「5日後」の午後だった。ところがスパイに銃撃された博士は石塀から落下して絶命する。夫に駆け寄った夫人も撃たれた。博士の死体が中国のスパイによってヘリで持ち去られる。夫人は003号に設計図のマイクロフィルムを差し出す。彼女の最期の願いを聞き入れた「オレ」は帰国する飛行機のトイレで焼き捨てる。

  • 第2話 忍者よみがえる
  • 昭和3X年8月、石川県黒部渓谷。仲間と逸れた男は雷雨の中、落雷による倒木で開いた洞穴の中に避難する。暗い岩戸の奥から現われた黒装束の忍者ナガレボシ、黒眼帯の頭領‥‥少年忍者トンビが明かりを灯すと、洞窟の岩棚に眠っていた忍者たちが目を覚ます。12月、秘密情報機関本部で指令官が坂崎(003)に新入り情報員009を紹介する。中国スパイとの銃撃戦で命を落とした009の息子だった。003と009は地下室で射撃練習を行なう。ナガレボシが「豊臣秀吉が亡くなってから何年になる?」と遭難した男に問う。忍者たちは300年もの長きに渡って眠っていたのだ。指令官(真鍋五郎)が坂崎に気懸かりな心配事を打ち明ける。「社長一家五人殺し」「一家七人焼死」「一家四人刺殺」‥‥指令官が見せた新聞の三面記事は真鍋家の血を引く親戚が殺害される連続事件を報じていた。真鍋一族の子孫を皆殺しにするために「人工冬眠」していた風魔一族の仕業だった。

    風魔一族の頭領は男に金縛りの術をかけて解放する。外出した指令官が忍者に手裏剣で狙われ、客に変装した男にバーで刺される。坂崎が銃で忍者に応戦し、刺客を取り押さえるが、舌を噛み切って自殺した。坂崎は指令官を襲った忍者のことを警視庁に報告し、病院に見舞うが、真鍋五郎は面会謝絶の重体だった。マナベ商事(00部隊本部)に戻った坂崎は宿直の007、地下で射撃訓練していた009と協力して、謎の忍者たちのことを調査する。年が明けた196X年。正月に009の家を訪れた003は室内に忍び込んでいた忍者に襲われる。坂崎は007からの電話で、警官から拳銃を奪おうとした男が逃げる際に自動車に撥ねられて病院に搬送されたことを知る。意識を取り戻した男は忍者にピストルを盗めと命令されたこと、催眠術をかけられて操られていたことを話す。その直後、ベッドが宙に浮き上がって病室の窓から外に飛び出し、病棟の壁に激突して男は死ぬ。

    003、007、009の3人は有名な忍術研究家・黒土三平の家を訪れる。ベッドを動かしたのは男に催眠術をかけた忍者の「観念動力」ではないかと説明される。人口冬眠研究家・星進一博士の家を訪問する。理論的には可能だが、現代の科学では人間を何百年も「人工冬眠」させることは不可能と諭される。原始的な精神力と超現代的な科学力を持った忍者たち‥‥山岳仲間の2人(藤子不二雄?)から、去年の夏に黒部で道に迷った男のことを聞き出す。気を失って倒れていたところを木樵に発見されたという。003たちが黒部渓谷へ捜索に向かう。天正10年6月2日、明智光秀は本能寺で織田信長を暗殺するが、羽柴筑前守秀吉の反撃に遭う。羽柴方に味方した真鍋時貞は阿部左馬介の城を落とすために風魔一族を雇った。ところが秀吉は信長の忍者抹殺政策を推し進め、それを見習った真鍋時貞も風魔一族の集落を襲って皆殺しにした。00部隊と風魔一族の決戦が始まる。形勢不利となった頭領が「観念動力」で雪崩を起こすが、その震動で忍者たちも巻き込まれてしまう。

  • 第3話 忍者ナガレボシ
  • 黒部峡谷の山奥で忍者たちが雪崩に遭ってから3カ月‥‥秘密情報機関員の003は死体を確認するために黒部に登った。不思議なことに死体は一体も発見されなかった。元ヤクザの社長・真鍋彦九郎が忍者に襲われる。00部隊本部では、007がT大ロケット研究室から最新型ロケットの設計図が盗まれたことを指令官に報告していた。守衛によると、空を飛ぶ怪人が3人組の強盗からラムダ5型ロケットの設計図を強奪したという。友人が黒部で撮ったという巨大ロボットの写真を009が003に見せる。ロボットが黒部第5ダム建設現場から鉄材を奪っていた。忍者トンビとコマドリが頭領に知らせようとすると、3カ月以上も姿を消していたナガレボシが姿を現わす。2人は頭領の命令でナガレボシを殺そうとする。頭領が忍法クモの糸縛りでナガレボシの動きを止め、マサカリを振り上げる。ショックガンで撃たれたトンビとコマドリの意識が戻る。ナガレボシが呼んだ巨大ロボット(アールA)が飛来して術が解ける。逃げ出した2人はアールAに捕まり、ナガレボシと頭領が一騎討ちが始まる。頭領は忍法マサカリカガミでナガレボシを倒すが、アールAに背後から迫られて逃げ去る。

    ゼロゼロ部隊本部では009が指令官と007に、黒部第5ダム建設現場から鉄材や建材などを奪っている巨大ロボット、T大ロケット研究室からラムダ5型ロケットの設計図を盗み出した空飛ぶ怪人、現代科学でも不可能な長時間の冷凍睡眠などから、高度な科学知識を持った忍者がいるのではないかと推理する。不動産会社社長・真鍋彦九郎の用心棒に雇われた003が襲撃して来た忍者たちと闘う。忍者の放った手裏剣で社長は殺され、頭領の「観念動力」で社屋も破壊される。本部へ引き上げて009の推理を聞いた003は再び黒部峡谷へ登り、忍者たちとの最後の決戦に挑む。洞窟への入口を発見した003たちはトンビを捕らえる。焚火の煙に気づいたナガレボシとコマドリ‥‥頭領が「観念動力」でトンビを救出する。ナガレボシは超音波銃で頭領の脳波を乱すとダムが決壊してしまう。空を飛行して難を逃れたナガレボシとトンビはコマドリと共にロケットで脱出する。ナガレボシは300年前、未知の惑星から地球へ飛来した宇宙人だったのか?

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    • 「石ノ森章太郎萬画大全集 11-10~11」(角川書店 2008)をテクストに使いました

    • スパイ、忍者、巨大ロボ、宇宙人?‥‥1963年にして、石森ワールド全開です^^;
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    ゼロゼロ指令 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-10

    ゼロゼロ指令 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-10

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2008/08/29
    • メディア:コミック
    • 目次:世界をポケットに / 忍者よみがえる


    ゼロゼロ指令 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-11

    ゼロゼロ指令 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-11

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2008/08/29
    • メディア:コミック
    • 目次:忍者ナガレボシ // マタンゴ / 棺桶が追いかけてくる / たのまれた危険 / タカの羽根


    ゼロゼロ指令 I ── 石森章太郎選書 第18巻

    ゼロゼロ指令 I ── 石森章太郎選書 第18巻

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:虫プロ商事
    • 発売日:1970/03/15
    • メディア:単行本
    • 目次:世界をポケットに // 霧の彼方より / わたしだけのあなた / 作品批評・森 秀人「石森マンガの "健康さ" にふれて」/ 作品メモ


    ゼロゼロ指令 II ── 石森章太郎選集 第19巻

    ゼロゼロ指令 II ── 石森章太郎選集 第19巻

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:虫プロ商事
    • 発売日:1970/04/15
    • メディア:コミック
    • 目次:忍者よみがえる / 忍者ナガレボシ // 迷子 / 作品批評・菊池 浅次郎「うらみの重さと展開の構造」/ 作品メモ

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