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スニーズ・シンクス 2 0 2 4 [b l o g]



  • いずれこの馬は、マリア・カボックラの夫と同じように、私を叩くようになる。だが私は、もう自分は変わったと感じ、男は怖くなくなっていた。私はドナーナの孫、サルーの娘、どちらも男たちに、二人で話すときは言葉に気をつけさせる存在だった。/ 彼が壁にもたれかかり、腰かけが後ろに傾いた。私は床を見て、きっと彼は私が即座に片づけるのを待っているのだろうと想像したが、散らかったアンドゥ〔キマメ〕と鶏のホーロー皿の上を飛び越えた。服で手を拭き、裏口から外に出ると、トマトと葉ネギの畑を掘りはじめた。追いかけてくるのを、勇敢に待った。手を上げたいのなら叩けばいい。家から、私が馬鹿だと叫ぶのが聞こえた。口もきけない、舌無しだと。彼の口から聞こえてくる罵声の一つひとつを呑みこんだ。大地を力いっぱい叩きつけ、大地から大きな土塊をえぐりだした。襲いかかってくる勇気があるなら、あんたの肉にも同じことをしてやる、たった一発で顔をえぐってやる。どんな男であろうと、私を叩くことにした奴は、その前に手でも頭でも捥いでやる、私の怒りを甘く見るな。
    イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール『曲がった鋤』


  • 2024年(2023・12~2024・11)、スニンクス(sknynx)は72本の記事をアップした。月6本の内訳はメイン記事3本(1日・11日・21日)と別館ミニ・ブログの1カ月分を纏めた 「スニ ーズ・ラブ」(26日)、一覧リストや企画ものなど2本(6日・16日)。回文シリーズは新年恒例の「回文かるた」を含めて5本。「ネコ・ログ」 は4本。ミュージックは年間ベスト・アルバム(rewind)や新譜の紹介など4本、石ノ森シリーズは4本。猫ゆりシリーズはネコード〈子猫のリル・バブ〉、ネコ本〈猫のベレン〉の2本、「折々のねことば」 を2本をアップした。5月の連休明けに報じられた米インディ・ロック界の必殺録音請負人 「スティーヴ・アルビニ(Steve Albini)の急死」 はショックだった。6月末に初文庫化された『百年の孤独』(新潮社 2024)は売れまくったが、単行本(1999)の表紙に使われたメキシコに亡命したシュルレアリスム画家レメディオス・バロと作中人物レメディオス(小町娘)の関連が明らかになったのは嬉しい。「キュビスム展」 や 「デ・キリコ展」 などの記事も愉しく書けた。


    今年もサイドバーで随時更新されるアルバムやブックスやヴィデオを纏めた 「FAVORITE」 シリーズが 「トップ10記事」(Page View)の上位を占めた。面白味に欠けるリストになってしま ったのは理由がある。昨年と同じく、単独記事の閲覧数が少ないのは拙ブログの更新情報がGoogleなどの検索エンジンに通知されないことが大きい。上記の 「お気に入り記事ベスト10」 に挙げた〈欲望という名のアルバム〉〈壁街ロマン〉〈キュービック・キューブ〉〈微に入るアルビニ〉〈しくじり忸怩〉〈謎秘めたキリコ〉〈小町娘レメディオス・バロ〉などはタイトル(それぞれ 「欲望という名の電車」 「風街ろまん」 「ルービック ・キューブ」 「ビニール(Vinyl)アルビニ」 「メタフィジカル・キリコ」 「レメディオス(小町娘)とレメディオス・バロ」 の語呂合わせやモジリになっている)も内容も気に入っているだけに、記事タイトルが検索結果に反映されないのは残念だ。「トップ10記事」 との重複は〈小町娘レメディオス・バロ〉〈微に入るアルビニ〉〈折々のねことば 16〉の3本。


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  • ● 猫のゆりかご〈子猫のリル・バブ〉〈猫のベレン〉
  • 〈子猫のリル・バブ〉は 「猫ジャケ」 10枚を紹介するネコード・シリーズ第15集。先行シングル〈ボクの愛猫〉(Joyful Noise 2022)が2019年12月1日に亡くなった永遠の子猫リル ・バブ(Lil BUB)ちゃんに捧げられていることから、〈子猫のリル・バブ〉というタイトルにした。Deerhoofの19thアルバム《奇跡のレベル》(2023)をプロデュースしたのがリル・バブの元飼主マイク・ブリダヴスキー(Mike Bridavsky)だったことも泣かせる。ダニー・エルフマン(Danny Elfman)率いるOingo Boingoのベスト・アルバム《Best O' Boingo》(MCA 1991)は魑魅魍魎たちが蝟集するカヴァの下から〈ルイス・ウェインの猫〉が顔を覗かせる。〈猫のベレン〉はネコ本10冊を紹介する 「猫ゆり」 シリーズ第17集。記事タイトルはヤマザキマリの愛猫ベレン(ベンガル種の雌猫)から。石黒亜矢子の絵本『ばけねこぞろぞろ』(あかね書房 2015)は強烈で子供たちが読んだらトラウマになっち ゃうもしれない。 松本英子の『かけ湯くん 旅する温泉漫画』(河出書房新社 2018)の主人公は白茶ブチの雄ネコ(女性マンガ家のアバター)なのに女湯に入るのだ。

  • ● アート〈キュービック・キューブ〉〈謎秘めたキリコ〉〈小町娘レメディオス・バロ〉
  • アート関連書は『キュビスム芸術史』(名古屋大学出版 2019)、『ジョルジョ・デ・キリコ』(水声社 2020)などを読んだ。どちらも学術論文を纏めた論考だが、松井裕美の 「ダイアグラムとしての表象空間」 は少し難解、長尾天の「生の無意味の形而上絵画」 は平易で分かりやすい。翻訳本の刊行から52年を経て初文庫化された『百年の孤独』を端緒とするレメディオス(小町娘)とレメディオス・バロの関連性を探索する旅はスリリングだった。ネットで見つけた美術史博士・作家アンパロ・セラーノ・デ・ハロの 「レメディオス・バロの作品における言葉と絵画」(emgramma 2017)で、レメディオス(小町娘)がガブリエル・ガルシア=マルケスのバロへのオマージュであること、ジャネット・A・カプランの『レメディオス・バロ』(リブロポート 1992)で、バロが猫好きだったこと知って嬉しくなった。メイン記事にはならなかったが、別館ミニ・ブログの〈アキラックス〉に書いた 「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」(東京オペラシティ アートギャラリー 2024)も愉しかった。

  • ● 折々のねことば(#16〜17)
  • 「折々のことば」(朝日新聞朝刊の連載コラム)のパロディ版「ねことば」は2本(20篇)をアップして170篇になった。マイケル・スタイプ(R.E.M.)の歌詞は難解だが、〈Swan Swan H〉の深淵には入植者たちによるネイティヴ・アメリカンの虐殺、〈Cuyahoga〉には環境問題(河川汚染)が暗渠のように流れていて、皆川博子の『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』(早川書房 2021)にも通じる。フーベル(Rubel)の〈Torto Arado〉から、イタマール・ヴィエイラ・ジュニオールの同名小説『曲がった鋤』(水声社 2023)を読み、今もブラジルに残る奴隷制の過酷さを知った。『百年の孤独』に猫は1匹も登場しないけれど、レメディオス(小町娘)がレメディオス・バロへのオマージュだったこと、バロの浩瀚な伝記を読んで彼女が良く捨て猫を拾っていたことを知った。T**区立谷中分室の 「リサイクル本ワゴン」 で見つけたソニア・フェルナンデス=ビダルの『3つの鍵の扉』(晶文社 2013)との出合いも偶然だった。

  • ● ブックス〈壁街ロマン〉〈ゼロゼロ・ナイン・ストーリーズ〉
  • 村上春樹の『街とその不確かな壁』(新潮社 2023)は単行本未収録の中編 「街と、その不確かな壁」(1980)を大幅に拡張して書き直した三部構成の長編。異なる2つのストーリが並行して交互に進行する第一部は 「ぼく」 と恋に落ちた 「きみ」 が消息不明となって、「ぼく」 は壁に囲まれた街の図書館の〈夢読み〉(私)となる。第二部は書籍取次会社を早期退職して北陸の私立図書館長となった 「私」 が生年月日から生まれた曜日を即座に言い当てるという特技を持つ少年M**と出合う。主人公(私)は 「苦しいことだらけの」 水曜日生まれ。ちなみに 「僕」(村上春樹)も 「私」(sknys)も水曜日生まれだった。『サイボーグ009 トリビュート』(河出書房新社 2024)は石ノ森章太郎のSF作品 「サイボーグ009」(1964)の誕生60周年を記念した小説アンソロジー。9人の作家が異なる主人公による9つの物語を書き下ろすが、必ずしもナイン・ストーリーズとゼロゼロ・ナンバー9人が対応しているわけではない。白眉は老ピュンマ(008)が宇宙遊泳する 「海はどこにでも」(藤井太洋) 。

  • ● 回文〈不意投げナイフ〉〈竜の子乗った〉〈震災大惨事〉〈しくじり忸怩〉〈外苑映画〉
  • 輪島、震災関連死、ウラガネ、キックバック、マイナカードなど、辰年も世相を反映した回文が並ぶ。人名回文はラナ・デル・レイ、プリゴジン氏、ドナルド・ダック、ryuchell、仲間由紀恵、ロビン・フッド、広末涼子、紀比呂子、キム・ゴードン、レメディオス・バロ(小町娘)、スティーヴ・アルビニなど。5つ星回文は〈「名乗れ乙女よ。嫁と俺の名!」〉〈ryuchell(りゅうちぇる)降られ涸れ折れ。彼ら震え地雨、百合〉〈まさかサツマイモ落ち、重い。真っ逆さま〉〈森ガールズ、聞き耳。危機スルー、狩りも〉〈脱毛母子戯け化け、わたし棒持った〉〈憩い、泊まり富山。雨宿り、惑い恋〉。天声人語の 「当世ウラガネ回文」 と 「当世ウラガネ回文第2集」 には苦笑した。〈退官不意か? 根から膿み闇。「ウラガネ回文」 書いた〉執筆者の’論説委員も与党(自民・公明)が過半数割れに陥った衆院選の結果に溜飲を下げたんじゃないの。「私の怒りを甘く見るな」 とかね。

  • ● ネコ・ログ(#72〜75)
  • 年々外ネコに出会う機会が減り続けている。第74集にノラネコの写真が1枚もないのは「ネコ・ログ」で初めてのことだった。交通事故やウイルス感染を恐れて、飼主がネコを外に出さなくなったのは分かるけれど、その一方でノラネコの耳先カット(TNR)が容赦なく徹底されると、近い将来に日本から外ネコの姿が消えてしまうのではないかと危惧せざるを得ない。『岩合光昭のご当地ねこ』(クレヴィス 2024)はコロナ禍(新型コロナウイルス感染症)で、2020年から約3年ほど海外へ出られなかった動物写真家の「日本ネコ歩き」。北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、九州・沖縄、47都道府県を巡る183点。風景の中に溶け込み、映えるネコたちの姿に安堵する。外ネコが一掃されたら、さぞかし殺風景な日本になってしまうことか。「日本ネコ覗き」 みたいになっちゃうのは不審者として警察に通報された寺山修司みたいで嫌だなぁ。

  • ● コミック(石ノ森シリーズ #55~58)
  • 〈大侵略者〉は 「スカルマン」(1970)と同じく、100ページ読み切り掲載されたSFサスペンス核戦記 「大侵略」(週刊少年マガジン 1969)。〈ダーク・ウィンド〉は60年代に大ブームとなった忍者もの 「闇の風」(週刊少年サンデー 1969)と人気マンガ家10人(堀江卓、藤子不二雄A、松本零士、古城武司、桑田次郎、一峰大ニ、白土三平、小沢さとる、石ノ森章太郎、横山光輝)が全10話で競作した忍者コミックス 『忍法十番勝負』(秋田書店 1966)の 「九番勝負」。〈ブラック・ウィンド〉の 「黒い風」(冒険王 1961)と 「新・黒い風」(少年 1966-67)も 「大忍者ブーム」 の影響下に描かれた時代劇だが、前者は戦国時代、後者は幕末を舞台にした全く別々の物語になっている。〈探偵ガイ・パンチ〉は 「ルパン3世」(モンキー・パンチ)のパロディ風SF活劇 「ガイ・パンチ シリーズ」(平凡パンチ 1968-69)と 「ガイ・パンチ&アン・ドール」(HEIBONパンチデラックス 1968)で、60年代後半のスパイ・ブームや謎解きミステリ、GS(ビートルズ)旋風などが反映されている。

  • ● ミュージック
  • 〈欲望という名のアルバム(2023)〉は年間ベスト・アルバム10枚を選出するリワインド ・シリーズ。記事タイトルはキャロライン・ポラチェック(Caroline Polachek)の2ndアルバム《Desire, I Want To Turn Into You》(Perpetual Novice)から。〈21世紀の女性ヴォーカル・アルバム〉は 「ミュージック・マガジン」(2024年3月号)の特集 「21世紀のヴォーカル・アルバム100」 に肖って、2001年以降にリリースされた女性SSWのアルバム20枚を選んだ。〈微に入るアルビニ〉は5月7日に急死した米インディ・ロック界の必殺録音請負人スティーヴ・アルビニのバンド、Big Black、Rapeman、Shellacのアルバム・レヴューを纏めて哀悼した(キティ・エンパイアが追悼文に綴った 「Fuck death」 は 「fuck digital」 のモジリ)。〈ディレイド・アルバム〉は遅延したフィジカル・アルバム(LP・CD)とリリース時に買い逃したブラジル、アルゼンチン、フランスのアルバムを紹介した。

  • ● スニーズ・ラブ EX
  • 別館スニーズ・ラブ(sknys-lab)は原稿用紙400字を目安にしたミニ・ブログ。毎週土曜日にアップしているが、日々タイムリーな短文記事を書き続けているうちに次第に溜まって来た。賞味期限切れになって反故になるのも忍びないので、エクストラ(EX)として本ブログ(sknynx)に纏めて順次掲載している。〈猫と呼んでね〉は獰猛そうな二頭の虎が描かれているアナ・フランゴ・エレトリコの3rdアルバム《Me Chama De Gato Que Eu Sou Sua》(Mr Bongo 2023)と可愛い仕草の虎が表紙になった大型ネコ科動物写真集『ほぼねこ』(辰巳出版 2023)のシンクロニシティ、〈ぴんくのぞう〉はケイトNVとエンジェル・デラドゥーリアンのプロジェクト(Decisive Pink)と、その由来となったカンディンスキーの絵画(Decisive Pink 1932)、〈飛ぶ男と透明人間〉は安部公房生誕100年に初文庫化された(死後ワープロのフロッピー・デ ィスクに遺されていた未完の小説)『飛ぶ男』(新潮社 2024)と併録された短篇 「さまざまな父」、〈ふしぎな日〉はトノバン(加藤和彦)の名曲〈不思議な日〉の他、それぞれ4〜5篇の記事を掲載している。

  • ● アイドル〈カワイレナ生誕祭 2023〉〈野音の手羽セン〉
  • 「カワイレナ生誕祭 2023」(1000 CLUB 2023・11・24)はメールしても返信がなかったので、当日アポなしで横浜まで出かけた(コロナが終熄して、都内での会場確保が難しいという)。11月下旬とは思えない季節外れのポカポカ陽気(東京は最高気温24.2°C)で上着いらずだった。「手羽先センセーション7thワンマンライブ」(日比谷野外音楽堂 2024・1・27)は 「生誕祭」 とは真逆の寒さ。抜けるような青空の快晴で、時折吹く北風が冷たい。陽が落ちてから、急に肌寒くなった。真冬の夜の野音で、2時間超のライヴは厳しいにゃん。上半身裸で踊っている熱狂的なファンも前列にいたけれど。暫く放ったらかしだったが、久々に手羽センの公式サイトを覗いたら、新メンバー(宮代柚花)が加入して、新5人体制になっていた。「カワイレナ生誕祭2024」(harevutai 2024・11・22)が池袋で開催されたのは嬉しい。豊島公会堂(旧跡地)で、J**小学校の学芸会を行った記憶があるから。

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