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スニーズ・コメンツ #76 [c o m m e n t s]



  • ニコは真っ青だった。胸がムカムカして、死にそうだ。テレポーテーションはちょうど、巨大なジェットコースターに乗っているような感覚だった。〔‥‥〕イリーナはニコの腕を取った。ニコは無言でCICの長い廊下を歩いた。とりあえず、どこかに座りたい。このテレポーテーションの酔いがおさまるまで。/ そのとき、何かにあとをつけられているような気がして、ニコは振り返った。見覚えのある影だ。まちがいない。3つの鍵の扉をくぐったときに出くわした、あの逃げ足の速い猫だ。/ 「あれ、きみの猫?」 / ニコはイリーナに聞いた。/ 「あら、こんなところに! 私の猫じゃないわ。シュレーディンガーの猫よ。ぱっとあらわれて、一瞬だから、しっぽの先ぐらいしか見えないけど」 / イリーナの言葉どおり、猫はすぐに姿を消した。ニコはびっくりして目を見開いた。ところが、イリーナはおどろいた様子もなく歩きつづけた。まるで、あらわれては消えるのが当然かのように!
    ソニア・フェルナンデス=ビダル 『3つの鍵の扉』


  • b サイボーグ009 60年前の表紙 ── 009トリビュート
  • 高額で転売される古本屋よりも、「京都国際マンガミュージアム」 や 「石ノ森萬画館」 に寄贈した方が良いのではないかと思います。009の誕生60周年を記念して『サイボーグ009トリビュート』(河出文庫 2024)が出ました。TVアニメ・シリーズの最終回(第26話)をノヴェライズした辻真先から、池澤春菜(池澤夏樹の娘)、円城塔まで、"9人の戦鬼" が参戦した書き下ろしアンソロジー。ゼロゼロ・ナンバーへの愛が溢れる渾身の力作揃いです。
    by sknys (2024-09-03 12:07:56)

  • b 豊田市美術館「エッシャー 不思議のヒミツ」展
  • 混雑する展覧会こそ、予約制に欲しいと思います。エッシャーの作品を最初に目にしたのは 「少年マガジン」 の表紙でした。まだ子供だったので、アートとして鑑賞するという意識はなかったなぁ。後年見つけた澁澤龍彦の『夢の宇宙誌』は表紙も内容も鮮烈でした。どこでエ ッシャー展を観たのかは記憶が曖昧です。Bunkamura ザ・ミュージアム(2006)だったかな?‥‥「Fire-Ball」(1979)の扉絵で《写像球体を持つ手》をオマージュしている大友克洋は西武美術館(1976)で観ているはずなんですが。
    レメディオス・ヴァロは新宿・伊勢丹美術館(1999)で観ました。僅か16日間の開催でしたが、今でも強く印象に残っています。「フリーダ・カーロとその時代」(Bunkamura ザ・ミュージアム 2003)にも数点出展されていました。
    by sknys (2024-09-25 22:22)

  • b ■近況
  • 9月は節約して6枚のアルバムを購入しました。5枚は未開封中古CDだったのですが、中古盤(盤質A)が一番高かった。市場が円高に振れても、輸入盤の価格が少しも下がらないのは隔靴掻痒です。フィジカル(LP・CD)がデジタル配信から、数カ月から1年近く遅延するのも苛つくわ。
    『百年の孤独』(新潮社 2024)が新宿の書店(紀伊國屋書店?)で3000冊売れたとか、B**区立図書館の予約待ちが300人とか、もの凄いことになっています。単行本(1999)や全集版(2006)も出版されているのに。「この世には不思議なことなど何もないのだよ、S**君」 と京極堂に諭されそうですが、関西方面でも売れまくっているのかしら?
    フーベル(Rubel)の3rdアルバムも1年以上遅れてCD化しました。ドラ・モレレンバウム(Dora Morelenbaum)がコーラスで参加しているだけでなく、アカペラで1曲歌っています。彼女の1stソロ・アルバム《Pique》(Mr Bongo 2024)が来週(10/18)リリースされるようなので、今から愉しみです(註:10/23にアルバムを購入しました)。
    by sknys (2024-10-04 12:01)

  • b 1984年の音楽アルバム
  • 毎回、「HOT VOICE」 をご愛読いたたきありがとうございます。
    また、今回の 「H.V.映画情報係」(7/22掲載)には さっそくご応募いただき、ありがとうございました。
    抽選の結果、あなたが当選されましたので、賞品の バウスシアター招待券をお贈りいたします。
    朝日新聞東京本社広告局 昭和60年8月5日

  • 渋谷タワレコで買ったプリンスのLP《Purple Rain》が初回盤のパープルではなく、黒だったのは残念でした。トーキング・ヘッズの映画 「Stop Making Sense」 は吉祥寺バウスシアターで観ました。『サイボーグ009 トリビュート』(河出書房新社 2024)という 「ナイン・ストーリーズ」 を読んでいたら、ジェット(002)が 「レーガン大統領のそっくりさんとチェルネンコ書記長のそっくりさんが、高価なスーツを着たまま泥レスリングする」 MVをTVで見る場面が出て来ました。FGTH(Frankie Goes To Hollywood)の〈Two Tribes〉(1984)じゃん。1984年といえば村上春樹の『1Q84』ではなく、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』でしょうか。2024年のノーベル文学賞は解説を書いたトマス・ピンチョンに受賞して欲しいけれど、意外にも金井美恵子だったりして?(註:2024年度ノーベル文学賞作家は韓国のハン・ガン氏でした)
    by sknys (2024-10-06 12:21)

  • b ミイが屋根から落ちて
  • ミイちゃんも、しーちゃんも、ダンナさんも大厄日でしたね。身のこなしが敏捷なネコも高いところから落ちると重傷を負う。屋根から屋根へ飛び越えようと思って、ジャンプに失敗したのかな。ネコは地上に重力がある(垂直に落下する)ことを先天的に認識しているそうですが。室内飼いの方がリスクは少ないけれど、外に出たがるネコを閉じ込めるのは逆にストレスになっちゃうし、難しい判断です。ミイちゃんが救かって良かった。しーちゃんに早期発見されなかったらと思うと、背筋がゾっと寒くなります。高額な治療費にはペット保険に入るという選択もあるようですが、どうなのかな? 快復して、ネコじゃらしで遊べるようになって欲しい。
    by sknys (2024-10-18 21:55)

  • b 冤罪で牢獄に繋がれた男の歌── Bob Dylan《Desire》(Columbia 1967)
  • ディランは苦手なんですが、〈Hurricane〉を聴きたくてアルバム(LP)を購入しました。このプロテスト・ソングもノーベル文学賞(2016)の受賞に繋がったのかと思ったり‥‥。英覆面ユニットSAULTの《UNTITLED (Black Is) 》《UNTITLED (Rise) 》(Forever Living Originals 2020)もジョージ・フロイド事件に端を発したBLM(Black Lives Matter)を象徴するアルバムとして大きな話題になりました。
    by sknys (2024-10-21 21:41)

  • b 市街地ギャオ『メメントラブドール』
  • 「太宰治賞 2024」(筑摩書房 2024)で、受賞作を読んでみました。本名ならば兎も角、芸名ならばゾラ・ジーザス(Zola Jesus)とか、キティ・エンパイア(Kitty Empire)とか、恣意的に名乗れるわけです。これだけ横文字が頻出するのなら、単行本は左開き横書きレイアウトの方がリーダブルではないかしら。
    忠岡柊太(私)が女装のゲイなのは分かるけれど、小鳥遊練無や葛形くんとは人種が違うらしい。選考委員の荒川洋治は 「この作品を鑑賞する気力はない」 と困惑しています。
    金井美恵子が 「愛の生活」(1968)で太宰治賞次席になった時、選考委員の言葉を思い出しました。夷斎先生は何と言ったんだっけ?
    Cindy Leeの《Diamond Jubilee》がフィジカル・リリース(2025・2・21)されるのは嬉しい。年間ベスト・アルバム(2024)に選べないのは残念ですが。Deux Filles(Simon Fisher Turner & Colin Lloyd Tucker)、Lovely Little Girls(Gregory Jacobsen)、Sophie(Sophie Xeon)など、文学よりも音楽の方が直截的で心に響いたりして。
    by sknys (2024-10-25 20:29)

  • b 鳥羽耕史『安部公房 —消しゴムで書く—』
  • NECのワープロ『文豪』は、安部公房が使うということでその名前がついたと聞いています。まだ縦型だった製品を試作品、モニターのような形で手に入れていました。何年かたってノート型のワープロもいただいていましたね。実際におカネを払ったかどうかは知りません(笑)。
    山口 果林 「安部公房とわたし」 の真実

  • 女性週刊誌的には山口果林さんでしょうが、新潮社のPR誌 「波」 に連載されていたエッセイ 「周辺飛行」の中で、田中邦衛の演技を大絶賛していたことを憶えています。今年文庫化された『飛ぶ男』と『死に急ぐ鯨たち・もぐら日記』を読みました。「飛ぶ男」 はスプーン曲げの少年マリ・ジャンプ(腹違いの弟?)、「さまざまな父」 の父親は透明人間になったりしますが、未完なのが残念! 「もぐら日記」 は 「予想していた以上に難解な内容」 と著者自ら述べています。初めてワープロで書いた日本人作家らしく、エッセイやインタヴューは40年近く経 っても全く古びません。
    by sknys (2024-11-04 14:01)

  • b 無料ブログサービスの状況がけっこう変わっていた
  • SSブログをご利用いただき、ありがとうございます。
    この度、2025年3月31日(月)12時をもちましてSSブログをサービス終了させていただくこととなりました。
    ご利用の皆様にはご不便をおかけすることとなり誠に申し訳ございません。また、長年のご愛顧に深く感謝申し上げます。
    SSブログサービス終了のお知らせ

  • つこんぽさんの予想通り、SSブログも2025年3月31日に終了するそうです。ブログからSNSへという時勢の潮流(安易な方へ流れる)は仕方がないと思いますが、英紙ガーディアンがX(旧ツイッタ)から撤退、WordPressも不穏な空気と、ネットも昨今の現実世界を反映するように、きな臭くなって来ました。
    気懸かりなのはSeesaaブログへの移行がスムースに行われるのかどうか? 泥縄式にカスタマイズ(CSS)しているので心配です。
    by sknys (2024-11-16 16:55)

  • b 黒猫の日
  • 吾輩は猫である。猫のくせにどうして主人の心中をかく精密に記述し得るかと疑うものがあるかも知れんが、この位な事は猫にとって何でもない。吾輩はこれで読心術を心得ている。
    夏目 漱石『吾輩ハ猫デアル』

  • 一人称視点の小説は客観描写が出来ません。苦沙弥先生の心理描写が可能なのは 「吾輩」 にテレパシーがあるから。森茉莉の 「黒猫ジュリエットの話」 では《魔利の外出先の出来事も書くので、千里眼の猫かと怪しむ人もあるかも知れないが、魔利は、その日その日の出来事、又彼女の心にあることは殆ど独り言で喋りちらす癖を持っている》という設定〔‥‥〕。
    グウェン・クーパーの『幸せは見えないけれど』(早川書房 2010)は盲目の黒猫ホーマーを飼うことになった女性による感涙ノンフィクション。ナタリー・セメニークの『魅惑の黒猫』(グラフィック社 2015)はシャ・ノワール(Chat Noir)の魅力を丸ごと詰め込んだ大型本で、造本・装幀も黒ネコのように全身黒ずくめ。黒猫モモちゃんがオバケを退治するミニ・ゲーム 「Halloween 2024」 は難易度高し!‥‥愛しのソランちゃん(RIP)
    by sknys (2024-11-18 21:23)

                        *

    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第76集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載。事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)をして、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2024・9・1~11・30)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。Dora Morelenbaumの1stアルバムをプロデュースしたのはAna Frango Elétrico。「ゼロゼロ・ナイン・ストーリーズ」 はジルベルト・ジルみたいな老ピュンマ(008)が宇宙遊泳する第8話 「海はどこにでも」 が白眉。映画 「Stop Making Sense」(1984)が日本で初公開されたのは1985年です(書留の消印は 「日本橋 60.8.6 12-18」)。バナーは34歳で急逝したソフィー(Sophie Xeon)の誕生日(38歳)を祝う 「Google Doodles」(Sep 17, 2024) から借用しました。

                        *


    3つの鍵の扉: ニコの素粒子をめぐる冒険

    3つの鍵の扉 ニコの素粒子をめぐる冒険

    • 著者:ソニア・フェルナンデス=ビダル(Sonia Fernández-Vidal)/ 轟 志津香(訳)
    • 出版社:晶文社
    • 発売日:2013/11/04
    • メディア:単行本
    • 目次:謎のメッセージ / 3つの鍵の家 / 物質と反物質 / トンネルの術 / 量子界の妖精 / 相対時間工房 / 双子 / 標準模型 / テレポーテーション / 量子知能センター / スーパーポジシ ョン / ゼン・オー師匠 / シュレディンガーの猫 / ボス・ヒッグス / 宇宙最強の吸血鬼 / 量子界のクリプテックス / 迷宮 / 迷宮の入口 / 真実の道 / 3つの道 / シャンブラ / 最優秀...

    サイボーグ009 トリビュート

    サイボーグ009 トリビュート

    • 著者:辻 真先 / 斜線堂 有紀 / 高野 史緒 / 酉島 伝法 / 池澤 春菜 / 長谷 敏司 / 斧田 小夜 / 藤井 太洋 / 円城 塔
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2024/07/08
    • メディア:文庫(河出文庫 い 42-2)
    • 目次:序 / 平和の戦士は死なず / アプローズ、アプローズ / 孤独な耳 / 八つの部屋 / アルテミス・コーリング / wash / 食火炭 / 海はどこにでも / クーブラ・カーン / 編集後記

    Pique

    Pique

    • Artist: Dora Morelenbaum
    • Label: Mr Bongo
    • Date: 2024/10/18
    • Media: Audio CD
    • Songs: Não Vou Te Esquecer / Venha Comigo / Sim, Não / Essa Confusão / A Melhor Saída / Caco / VW Blue / Petrico / Pique / Talvez (As Canções) / Nem te procurar

    Stop Making Sense(Deluxe Edition)

    Stop Making Sense(Deluxe Edition)

    • Artist: Talking Heads
    • Label: Rhino
    • Date: 2024/07/26
    • Media: 2CD+Blu-ray
    • Songs: Psycho Killer / Heaven / Thank You for Sending Me An Angel / Found A Job / Slippery People / Cities / Burning Down The House / Life During Wartime / Making Flippy Floppy / Swamp / What A Day That Was / This Must Be The Place (Naive Melody) / Once In A Lifetime / ...
    Stop Making Sense

    Stop Making Sense

    • Artist: Talking Heads
    • Maker: Gaga
    • Date: 2024/08/02
    • Media: Blu-ray
    • Songs: Psycho Killer / Heaven / Thank You For Sending Me An Angel / Found A Job / Slippery People / Cities / Burning Down The House / Life During Wartime / Making Flippy Floppy / Swamp / What A Day That Was / This Must Be The Place (Naive Melody) / Once In A Lifetime / Big Business / I Zimbra / Geniu...s Of Love / Girlfriend Is Better / Take Me To the River / Crosseyed And Painless

    Desire

    Desire

    • Artist: Bob Dylan
    • Label: Sony
    • Date: 2004/06/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Hurricane / Isis / IMozambique / IOne More Cup Of Coffee (Valley Below) / IOh, Sister / IJoey / IRomance in Durango / IBlack Diamond Bay / ISara

    箱男

    箱男

    • 著者:安部 公房
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2005/05/01
    • メディア:文庫(新潮文庫)
    • 内容:ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述さ...

    死に急ぐ鯨たち・もぐら日記

    死に急ぐ鯨たち・もぐら日記

    • 著者:安部 公房
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2024/08/28
    • メディア:文庫(新潮文庫 あ 4-23)
    • 目次:なぜ書くか‥‥ / シャーマンは祖国を歌う / 死に急ぐ鯨たち / 右脳閉塞症候群 / そっくり人形 / サクラは異端審問官の紋章 / タバコをやめる方法 / テヘランのドストイエフスキー / 錨なき方舟の時代 / 子午線上の綱渡り / 破滅と再生 1 / 破滅と再生 2 / 地球儀に住むガルシア・マルケス / 「明日の新聞」 を読む / 核シェルターの中の展覧会 / もぐら日記...
    太宰治賞 2024

    太宰治賞 2024

    • 出版社:筑摩書房
    • 発売日:2024/06/21
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:『太宰治賞2024』について / 第四十回太宰治賞予選通過作品 / 第四十回太宰治賞発表 / 選評 荒川洋治 / 奥泉光 / 中島京子 / 津村記久子 / 受賞の言葉 市街地ギャオ / 第四十回太宰治賞受賞作 「メメントラブドール」 市街地ギャオ / 第四十回太宰治賞最終候補作 「フ ォルムレス・ヒール」 蒼生行 / 「アニサキスと何処迄も高い月」敏伊佑季 / 「堆積するもの」 村上岳 / 太宰治賞受賞者一覧 / 第四十一回太宰治賞作品募集

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