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ネコ・ログ #74 [c a t a l o g]

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  • 六曲目 「M.A.Y. IN THE BACKYARD」〔引用者註:坂本龍一のアルバム『音楽図鑑』解説〕はゲストなし、デジタルで再現されたマリンバが主役のスティーブ・ライヒ的なミニマル電子音楽で、この頃に日本でも流行していた環境音楽の雰囲気もあるが、強迫的なシンセが安穏を打ち破る。「別々な日にバラバラに作曲された8つの要素のスケッチを、フェアライトでグラフィカルに配列(キリバリ)してみる。結果的に出てきた音は、まるでディズニーのアニメーションの猫達の動きのようだ」。曲名の 「M.A.Y.」 は、当時の自宅の裏庭によく入り込んできた野良猫のあだ名、モドキ(M)、アシュラ(A)、ヤナヤツ(Y)より。/ 七曲目の 「羽の林で」 もミニマルな曲想の作品だが、このアルバムで初めて坂本龍一の歌が入っている。電子ガムランのバック・トラックは、『ピーター・ガブリエルIV』(1982年)と似た雰囲気がある(使用楽器が重なっているせいだろう)。
    佐々木 敦『「教授」 と呼ばれた男』


  • #658│ソン│飼い猫 ── ソンちゃん雲に乗る
    〈メモリアル・キャッツ〉は虹の橋を渡ったネコたちの想い出のアルバム。第3集はソンち ゃん。塀や門柱の上など高いところが好きなので、女飼主は觔斗雲に乗った孫悟空に因んで「ソン」と名付けたという。ある日の明け方、窓から外へ飛び出したまま行方不明に。二度と帰って来なかった。自ら近寄って来るほど人懐っこくないけれど、近づいても逃げ出したりはしない。どこか高貴な顔立ちと佇まいのネコらしいネコだった。「ネコは自分の死期を悟ると飼主の前から姿を消す」 という。ソンちゃんも自宅の縁の下で独り静かに息を引き取っているのではないかと女飼主が話す。動物行動学者のデズモンド・モリスは 「猫は自分自身の死という概念を持っていないので、どんなに気分が悪くても自分の死を予測できない」 「死の瞬間、猫は飼い主の気持ちなんか考えていない。これほどの苦しみをひき起こす目に見えない恐ろしい敵からどうやったら身を守れるかを考えているだけである」 と断じているが、彼女の見立ての方に深く同意したくなる。

    #659│ミラ│飼い猫 ── ミラクル・キャット
    ディアフーフ(Deerhoof)のアルバム《Miracle-Level》(2023)に収録されている先行シングル〈ボクの愛猫〉は2019年12月1日に亡くなったリル・バブ(Lil BUB)ちゃんに捧げられている。『LIL BUB’S LIL BOOK』(学研パブリッシング 2014)によると、マジカル・スペース・キャットのリルバブちゃんはバブアブバブ星から宇宙船を操縦して地球に不時着したことになっている。お魚を探しているところを男の人(マイク・ブライデイヴスキ ー)に保護され、ウェブに登場するや否や、世界一有名な子猫になった。映画 「Lil Bub & Friendz」(Vice Media 2013)にも主演。「徹子の部屋」 みたいなトーク番組 「Lil BUB's Big SHOW」(2013)のMCも務めていたし、音楽アルバム《Science & Magic》(2015)もリリースしている。ミラちゃんも 「ミラクル・キャット」 になれるかしら?

    #660│タキ│飼い猫 ── 都電沿線の茶トラ
    縞ネコのサカや三毛ネコのゴトちゃんが暮らす都電沿線から少し離れたところに茶トラがいた(写真の右上に見えるのが都電の線路です)。民家の玄関前で眠そうにしていて全く動く気配がない。このまま寝てしまうのかと暫く様子を見ていると、根負けしたのか漸く目を開けて動き出し、徐に近づいて来た。右耳先カットされ、首輪をしているので一目見て飼いネコだと分かる。人馴れしているので毛並みに触れても嫌がらない。茶トラを目で追って振り返ると良く似たネコがいた。どうやら兄弟姉妹ネコのようで、2匹共に仲睦まじく寄り添う姿が微笑ましい。お互いに沿線の暮らしが長いのか、時折ガタゴト音を立てて走り交う都電の騒音も意に介さない。後日、都電に乗車した時に車窓から2匹の姿を視認出来た。今まで気づかなかったのが不思議なくらい「見慣れた光景」だった。

    #661│ホク│飼い猫 ── ネコと自転車 3
    駐車場にいるネコたちは危険と隣り合わせである。いつ発進するのか分からないクルマの下に身を隠す。寝ていたらタイヤに轢かれる可能性があるし、エンジンルームに潜り込んで暖を取っていたら巻き込まれるリスクもある(冬場クルマを発車させる前にボンネットを叩くネコバンバンが奨励されている)。危険極まりない駐車場に比べると、駐輪場は比較的安全である。運転手がネコを視認出来るバイクや自転車に轢かれる危険性は少ない(ヒトも稀に自転車と衝突して死亡するケースもあるが、自動車事故死の比ではない)。座席シートやサドルの上で爪を研がれる被害の方が多いかもしれない。タイヤに鼻を近づけるのはゴムの臭いを嗅いでいるからだろう。民家の前に停まっている自転車の前の黒白ネコ。人懐っこいけれど、休みなくチョコチョコと動き回るので、なかなか写真が撮れない。今日のパトロールが無事に終わったのか、やっと静止してくれました。

    #662│タキ&ニシ│飼い猫 ── 仲良しネコ良し
    同じ場所に暮らしている2匹のネコが必ずしも仲良しとは限らない。三毛の母親から産まれた近所の兄弟姉妹ネコの仲も良好とは言えない。黒白ボブテイルが白茶長シッポに手を出して首に噛みつく。最初の頃は挨拶ほどの軽い戯れ合いだったのに、最近は黒白スワちゃんが来ると白茶ペタは足早に逃げるようになってしまった。一早く見つけると足許に擦り寄って来て歩行困難となる(ネコの脚を踏みそうになるので容易に歩けない)スワちゃん。お尻を軽くタップすると長い尻尾を高く上げて引っくり返るペタちゃん。どうやらスワちゃんはペタと仲睦まじくしているのが気に入らないらしい。「私(俺)の彼(女)に手を出すな!」 みたいな感じだろうか。都電沿線に暮らす兄弟姉妹は二人暮らしの老夫婦のように仲が良い。タキと親交を深めてもニシは全く気に留めない。亀の甲より年の功でしょうか?

    #663│サカ│飼い猫 ── AI キャット
    Google XのエンジニアチームがAIアルゴニズムを開発した。1万6000台のプロセッサに、1000万のYouTube画像を見せた時、アルゴニズムが最初に試みたのはネコの認識方法を自分に教えることだった。開発者は「これがネコというものだ」とコンピュータに教えていない。ネコの外見さえ伝えようとしなかった。しかし、インターネット上に大量のネコ画像があったため、コンピュータは自分で答えを出したのだ。なぜ、そんなことが起こったのか? 1つの仮説として、コンピュータのプログラマーにネコ派が多いので、彼らが作るコンテンツにネコ愛が反映されているという説がある。〔‥‥〕ネコは実世界を征服したのと同じ方法で仮想空間も支配した。その理由は私たちがネコを愛しているからに他ならないと、キャリ ー・アーノルドは『ネコ全史』(日経ナショナル ジオグラフィック 2023)の中で書いている。アビゲイル・タッカーの『猫はこうして地球を征服した』(インターシフト 2017)も同じ趣旨である。近い将来、AIキャットが地球を征服するかもしれません。

    #664│アル│地域猫 ── ビッグ・ブラック
    ビッグ・ブラック(Big Black 1981-87)は米インディ・ロック界の必殺録音請負人スティ ーヴ・アルビニ(Steve Albini 1962-2024)率いる3ピース・バンド。2ギター&ベースという編成で、ドラム・マシン(Roland TR-606)を使用している。みやわき心太郎の劇画 「THE レイプマン」(1986)から借用した2ndアルバム《Songs About Fucking》(Touch & Go 1987)のカヴァとタイトル、「デカくて黒い」 というバンド名は下卑た下半身を想わせる。英紙 「The Observer」( 「The Guardian」 日曜版)にアルバムやライヴ評などを寄稿している音楽ライターのペンネームは収録曲〈Kitty Empire〉から採られた。スティーヴ ・アルビニは2024年5月7日に急逝した。キティ・エンパイアは 「うーん、文章が書けません。アルビニ界隈の皆さんに哀悼の意を表します。クソったれ死(Fuck death)」 とSNS(X)に投稿した。一足早く虹の橋を渡った永遠の子猫リル・バブ(Lil Bub 2011-2019)ちゃんと天国(アルビニ本人が望んだ地獄ではなく)で再会していることでしょう。

    #665│エア│飼い猫 ── 室外機の上のネコ
    都電沿線から坂を登ったところにある民家の室外機の上に茶白ネコがいた。大人しそうな顔立ちなのに用心深く写真を撮ろうとして近づくと。コソコソと逃げてしまう。人懐っこいツリ目のサカちゃんとは好対照。ネコの性格も見た目では分からない。何度か通ってマスク越しの顔を憶えてもらい、エアちゃんとの距離を縮める。お気に入りの場所で暖を取っているのかもしれないが、ジメジメした梅雨やエアコンの稼働する夏季でも室外機の上にいるのだろうか。猛暑の真夏は強い陽射しを避けて、風通しの良い日陰に身を潜めているのではないかと想像する。それとも涼しい室内で寝ているとか?‥‥S**図書館の前庭に毎日通って来たセンちゃんはエントランスの自動扉から館内に入ると涼しいということを覚えた。もう少しで 「図書館猫」 になるところだったのに、女飼主に連れ去られて門外出禁となってしまった。図書館に通うのは何か理由があるはず。老齢三毛なのだから好きなように行動させれば良いのにと思うけれど。

    #666│ゴト│飼い猫 ── ネコと自転車 4
    民家の2階から老婦人が高枝切りバサミで庭木の伸びた枝葉を斬っている。飼いネコたちも物珍しそうに見上げている。この都電沿線には数匹のネコたちが暮らしている。ツリ目のサカちゃんは人懐っこく、三毛のゴトちゃんは思慮深い。ネコ写真を撮ることに集中していて、O**図書館に返却する本を置き忘れてしまった。1冊少ないことに気づいた時は都電に乗っていた。次の停留所まで着く時間が長く感じられる(窓から飛び出して空中浮游したいほどだが、「飛ぶ男」 マリ・ジャンプみたいに飛行出来るはずもない)。慌てて二駅戻って回収した。枝を切っていた女飼主も気づかなかったという。先日ゴトちゃんの写真を手渡すと、サカちゃんのはないのと言われて、常に携行している無印良品の高透明フィルム・アルバム(L判20枚用)から2枚を抜き取った。お礼に 「カルゲンエース」(カルシウムイオン飲料)を2本もらった。献血ルームなどで提供されているカルシウム飲料らしい。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第74集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに660匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第74集の常連ネコは虹の橋を渡ったソンちゃん。新顔も多いけれど、ノラネコの写真が1枚もないのは「ネコ・ログ」で初めてのことです。それだけ外ネコの個体数が減少しているからではないかと思わざるを得ません。事故や病気を恐れて、飼いネコを室内に閉じ込め、ノラネコの耳先カット(TNR)が徹底されると、近い将来に街から外ネコの姿が消えてしまうのではないか。岩合光昭さんの「日本ネコ歩き」も難しくなっちゃうのではないかと危惧します。「日本ネコ覗き」 みたいになっちゃうのは不審者として警察に通報された寺山修司みたいで嫌だなぁ。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「9分割ナンバー表」 の背景画像を白黒からカラー(写真の左上部分)に変更しました

    • 「701匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました

    • 「Google Xのエンジニアチームが‥‥」 は引用者の判断で文章の一部を変更しています

    • リンクを知りたい時はサイドバーの 「SKIN SWITCHER」 で他の色に変えて下さい
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    「教授」 と呼ばれた男 坂本龍一とその時代

    「教授」 と呼ばれた男 坂本龍一とその時代

    • 著者:佐々木 敦
    • 出版社:筑摩書房
    • 発売日:2024/04/11
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:はじめに 「坂本龍一」 と私 / 「教授」 以前の彼 / 「イエロー・マジック」 との闘い / 「音楽図鑑の時代」 / 「J」 との遭遇 / 調べから響きへ / 彼の最後の歌 / おわりに 坂本龍一と私


    ネコ全史 君たちはなぜそんなに愛されるのか

    ネコ全史 君たちはなぜそんなに愛されるのか

    • 著者:キャリー・アーノルド(Carrie Arnold)/ 矢能 千秋(訳)
    • 出版社:日経ナショナル ジオグラフィック
    • 発売日:2023/05/31
    • メディア:ムック(ナショナル ジオグラフィック別冊)
    • 目次:INTRODUCTION / ネコの昔と今 / 人間とネコの絆 / 人類史の中のネコ / 図版クレジット


    Songs About Fucking

    Songs About Fucking

    • Artist: Big Black
    • Label: Touch & Go
    • Date: 1992/10/28
    • Media: Audio CD
    • Songs: The Power Of Independent Trucking / The Model / Bad Penny / L Dopa / Precious Thing / Colombian Necktie / Kitty Empire / Ergot / Kasimir S. Pulaski Day / Fish Fry / Pavement Saw / Tiny, King Of The Jaws / Bombastic Intro / He's A Whore


    飛ぶ男

    飛ぶ男

    • 著者:安部 公房
    • 出版社:新潮社
    • 発売日: 2024/02/28
    • メディア:文庫(新潮文庫 あ 4-25)
    • 目次:飛ぶ男(The Flying Man)/ さまざまな父(Fathers of Many Kinds)/ 解説・福岡 伸一

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