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スニーズ・ラブ 112 [s k n y s - l a b]

  • b あと何回の満月(2024-05-04)books
  • 『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社 2023)は『音楽は自由にする』(2009)の続編。冒頭の 「ガンと生きる」 はベルトリッチとボウルズ、外科手術前後(2021・1)や両親の死のことなど、「母へのレクイエム」 以降は時系列順(2009~23)に語られる。財津一郎の 「♪みんな まわるく タケモトピアノ」 のCMソングと振り付けがリピートされたという手術後の譫妄には不謹慎ながら笑ってしまう。「ラスト・エンペラー」 の映画音楽を二週間で作曲したとか、「死んでもやりなさい」 というパートナーの(心ない?)叱責とか、過度のプレ ッシャーとストレスが寿命を縮めたんじゃないかと邪推したり(「Last Days 坂本龍一 最期の日々」(NHK 2024・4・7)の中で、教授も自ら後悔していた)。死後出版されたため、「著者に代ってのあとがき」 は鈴木正文が代筆している。教授と最期に会ったのは死の20日前、『坂本図書』(バリューブックス・パブリッシング 2023)に収録するための対談だったという。巻末の 「フューネラル・プレイリスト」 の最後(死の3日前!)に追加された葬儀曲はローレル・ヘイローの〈Breath〉だった。

  • b スティーヴ・アルビニ(2024-05-11)event
  • 米インディ・ロック界の必殺録音請負人 「スティーヴ・アルビニ(Steve Albini)の急死」(2024・5・7)は寝耳に水だった。今までに〈ビッグ・ブラック〉〈レイプマン〉〈シェラ ック・ファンジン〉などをブログに書いた。〈マジカル・スペース・キャット〉で紹介した 「Lil BUB's Big SHOW」(Episode 3 2013)の中で、「どんな有名なバンドとレコーディングしたことがあるの?」 というリル・バブちゃんの質問に、「The Pixies、The Breeders、Nirvana、Bush、Jimmy Page & Robert Plant、PJ Harvey」 の名前を挙げて、イリノイ ・シカゴのスタジオ(Electrical Audio)に彼女を案内していたアルビニの笑顔が脳裡に浮かぶ。Sadie Dupuis(Speedy Ortiz)も彼に会って、エレクトリカルを見れたことは 「私にとってトップ10の瞬間だった」 と追悼している。ペンネームをBig Blackの曲名から採ったキティ・エンパイア(Kitty Empire)は 「うーん、文章が書けません。 アルビニ界隈の皆さんに哀悼の意を表します。クソったれ死(Fuck death)」 とSNS(X)に投稿した。RIP

  • b 可愛い少女たちのネコード(2024-05-18)music
  • ダブリンのポスト・パンク・バンドは性別を違えていたことなどから、Gilla Band(ex-Girl Band)への改名を余儀なくされたが、米イリノイ・シカゴの変態バンドLovely Little Girlsは確信犯だ。3rdアルバム《Effusive Supreme》(Skin Graft 2023)のカヴァにはアンリ ・ルソーのグロテスクな肖像画みたいな7人の男女が描かれている。手前の女性2人の左に薄緑のネコ、裏面にも異形のネコ4匹が描かれている 「ネコード」 である。このネコたちには既視感があった。Tropical Fuck Stormの4曲入りEP《Moonburn》(Joyful Noise 2022)の化け猫が脳裡に浮かぶ。LLGの女性メンバーはL. Wyatt(ヴォーカル、キーボード)と女装した男性Gregory Jacobsen(ヴォーカル、ミュージック)の2人。しかも超キモい 「アートワーク」 をフロントマンのジャコブセンが描いている。プログレ、ノー・ウェイヴ、ジャズ、アフロ、ラテンなどが渾然一体となった全10曲・36分。デジパック仕様、MOD CD。

  • b 居酒屋ハルノ(2024-05-25)books
  • 『猫屋台日乗』(幻冬舎 2024)は深谷かほるの 「居酒屋ワカル」 を想わせる表題だが、猫マンガではないし、猫のための料理本でもない。「猫屋台」 は2012年に相次いで両親を亡くし、介護生活から解放された吉本家の長女が自宅を改装して、2014年12月に開店した完全予約制の居酒屋である。『猫だましい』(2020)では女将の乳がん、大腿骨骨折(人工股関節)、大腸がん(ステージIV)などの闘病生活も綴られたが、本書は脱腸入院、両親の手作り弁当、父(吉本隆明)の本で "狂った" オジサン客、人生初ピザの思い出、「得意料理」 のサンドイッチ、「馬尾神経症候群」 の飼い猫シロミの死(2021)、週刊誌の取材 「最後の晩餐」、早飲みハッピーアワーなど。コロナ下の東京オリンピック、コロナ騒動で政府(お上)が発令した自粛要請や 「緊急事態宣言」、市井の人々によるマスク警察や自粛警察を戦時中の憲兵国防婦人に重ね合わせて厳しく批判する。ネコの出番は少ないけれど、縞ネコ(著者のアバター)がレシピなどを図解するイラスト(36葉)が愉しい。

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    ぼくはあと何回、満月を見るだろう

    ぼくはあと何回、満月を見るだろう

    • 著者:坂本 龍一
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2023/06/21
    • メディア:単行本
    • 目次:ガンと生きる / 母へのレクイエム / 自然には敵わない / 旅とクリエイション / 初めての挫折 / さらなる大きな山へ / 新たな才能との出会い / 未来に遺すもの / 著者に代わってのあとがき 鈴木正文 / フューネラル・プレイリスト / 年譜


    To All Trains

    To All Trains

    • Artist: Shellac
    • Label: Touch & Go
    • Date: 2024/05/17
    • Media: LP / Audio CD
    • Songs: Wsod / Girl From Outside / Chick New Wave / Tattoos / Wednesday / Scrappers / Days Are Dogs / How I Wrote How I Wrote Elastic Man (cock & bull) / Scabby The Rat / I Don't Fear Hell


    Effusive Supreme

    Effusive Supreme

    • Artist: Lovely Little Girls
    • Label: Skin Graft
    • Date: 2023/08/25
    • Media: Audio CD(MOD)
    • Songs: Polyester And Saltwate / Breathing On The Back / Be Good To Your Shoes / Emphatic / Service / Be Quiet / (She Puts The) T & A In TA / Impractical Positions / Shadow Of Bees / Procreation Of The Wicked / Incomplete


    猫屋台日乗

    猫屋台日乗

    • 著者:ハルノ 宵子
    • 出版社:幻冬舎
    • 発売日:2024/01/24
    • メディア:単行本
    • 目次:「猫屋台」 というところ / リスクの偶然性 / 家庭の味 / "生" が好き / 名もなき料理 / 殺意の食卓 / 境界線上のオジサン / 星降る夜のピザ / 脱腸入院 / 脱腸入院・キョーフの夜 / 脱腸入院・ひにちぐすり / デイ・ドリーム・ビリーバー / 魔界時間で営業中 / Sさんはあきらめない / ピアノ・マン / コロナ下のあだ花 / 老舗の矜持 / Sさんは2度来る / オ...


    猫だましい

    猫だましい

    • 著者:ハルノ 宵子
    • 出版社:幻冬舎
    • 発売日: 2023/02/09
    • メディア:文庫(幻冬舎文庫 は-32-2)
    • 目次:ステージIV / ああっ!もっと奥まで / ま◯こからう◯こ1 / ま◯こからう◯こ2 / ニヤリ系の医者 / おひとりですか? / 病室人間模様 / 歩けない猫は猫じゃない / 崖っぷちな人 / 見舞われる / ネコノコシカケ / メシマズ病院 / ナースの敵 / 座敷童のいる病院 / 猫は逃げ足が早い / 臓物マニア / プラマイゼロ / 医師の役割 / タテ割り病院 / マウンティン...

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