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音速青年ソニック [m u s i c]



  • 私が大学を卒業したのはソニック・ユースがファーストEPをリリースしたのと同年であり、私のいたニューヨーク大学は、彼らが最初期のショーを何度もやっていた所と同じ地域にあ った。最初に手にしたこのバンドのアルバムは《バッド・ムーン・ライジング》で、それは私を困惑させた。タイトルが、聴きなじみのあるクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの古い歌から来ていることはわかったものの、どういう意味で使われたのかが理解できなかった。皮肉な流用なのか? あるいはロナルド・レーガンの再選を考えれば、おそろしいほどの真面目さからくるものなのか? 彼らはまったくもって見た目は凡庸だった。とりわけそう見えたのは、道を踏み外しながらも、それでも本当は善良なカトリックの青年のように見える背の高いギタリストである。しかし、燃え上がるカボチャ頭のカカシのカバー・ジャケットは、ホラー映画やSF映画を観て育った人にとってさえ薄気味悪いものだった。
    デイヴィッド・ブラウン 『ソニック・ユース』


  • ◎ Bad Moon Rising(Goofin' 2015)Sonic Youth
  • 夕暮れのNYを背景にして、燃え上がるカボチャ頭(Jack-o'-lantern)の案山子のシルエット‥‥写真家ジェームズ・ウェリング(James Welling)の撮影したアルバム・カヴァが不吉な月夜(Bad Moon Rising)を暗示する。3rdアルバムはMartin Bisiとの共同プロデュース。Lee Ranaldo(ギター)、Kim Gordon(ベース、ヴォーカル) 、Bob Bert(ドラムス)、Thurston Moore(ギター、ヴォーカル)の4人でレコーディングされたエクスペリメンタルなノイズ・ロック。Lydia Lunch(ヴォーカル)とコラボしたラストの〈Death Valley '69〉はパンク・ロックだが、B面の3曲〈Ghost Bitch〉〈I'm Insane〉〈Justice Is Might〉はスポークン・ワードである。LPは全8曲、CDはシングル〈Satan Is Boring〉〈Flower〉〈Hallowe'en〉〈Echo Canyon〉の4曲を追加収録した全12曲・53分。「ハロウィン」はカボチャ頭を想わせるし、イントロとアウトロに短いインスト曲を配したCDの方が統一感がある。ジュエルケース、歌詞ブックレット(16頁)入り。

  • ◎ Evol(Goofin' 2015)Sonic Youth
  • 4thアルバムは映像作家トニー・アウスラー(Tony Oursler)の 「EVOL」(1984)から採られている。「Love」 を逆綴りしたカヴァには〈Death Valley '69〉のPVを撮ったリチャード ・カーン(Richard Kern)の映画 「Submit To Me」(1986)に出演したLung Legのスチル写真が使われている。解雇したBob Bertの代わってSteve Shelley(ドラムス)が加入。Tom Verlaine(Television)の名前を捩った〈Tom Violence〉。Minutemenのメンバーを自動車事故で失って落ち込んでいたMike Watt(ベース)が参加した〈In The Kingdom #19〉、Kim Fowleyのカヴァ〈Bubblegum〉(CDボーナス・トラック)。Thurstonがノーマン・メイラーの伝記『マリリン』(Marilyn: A Biography 1973)を読んだことから生まれた〈Marilyn Moore〉はLydia Lunchとの共作。〈Expressway To Yr. Skull〉は裏カヴァに〈Madonna, Sean And Me〉、歌詞シートに〈The Crucifixion Of Sean Penn〉と表記されている。全10曲・39分。ジュエルケース、歌詞ブックレット(16頁)入り。

  • ◎ Sister(Goofin' 2016)Sonic Youth
  • 「シスター」という5thアルバムのタイトルはフィリップ・K・ディックの生後6週間で早世した二卵性双生児のジェーン(Jane Charlotte Dick)に由来するという。土星、3頭の雄牛、芝生を歩く裸の子供(Leeの息子コディ2歳)、流れ星、2頭のハウンド犬、板張りの床に寝そべる半裸の女性など‥‥全11点をコラージュした表・裏カヴァにはリチャード ・アヴェドン(Richard Avedon)が撮った12歳の少女サンドラ・バーネットとディズニーランド(マジック・キングダム)の写真も含まれていた。リリース後に使用停止を求める文書が届くと、訴訟を怖れたレーベル(SST)は黒塗りにした。メジャー(Geffin)からの離脱後にインディ時代のアルバムは自主レーベル(Goofin' Records)からリイシューされているが、2点の写真は黒塗りのままで、表・裏カヴァが逆になっている。ThurstonとKimがデュエットした〈Schizophrenia〉〈Kotton Krown〉、Leeの〈Pipeline/Kill Time〉、初期パンク・バンドCrimeのカヴァ〈Hotwire My Heart〉など‥‥全10曲・37分。ボーナス・トラック〈Master-Dik〉は未収録。透明ジュエルケース、歌詞ブックレット(16頁)入り。

                        *

  • 〈ティーン・エイジ・ライオット〉はJ・マスキスの名前には触れていないが、ムーアは、この歌は、大統領選挙に立候補するようマスキスによびかけたものだと、よく言っていた。この歌の「ストーミー・ウェザー(暴風雨)」への言及は、しかし、より直接的に、1988年に共和党が政権を維持することを期待して、国中で集まっていた群衆を暗示している。《デイドリーム・ネイション》は、まるで腐敗が国家の骨組みの永続的な要素のように思えた瞬間を捉えた。アルバムの曲に登場する人物は、死んだか死にかけたか、堕落したか若々しい理想主義が剥ぎとられたかのどれかだ(ゴードンの〈エリミネーターJr〉の歌詞は、ニューヨーク市の80年代ヤッピー文化の暗部を露呈させた、ジェニファー・レヴィンがロバート・チェンバースの手にかかった「フレッピー・マーダー」に関する、ベールで隠された再構築である)。だが、このアルバムは決して絶望しているのではない。それどころか、活気にあふれた戦闘態勢である。「それは声明なんだ」と。ムーアは言う。「僕らが、音楽を、行くべきところへ連れて行こうというね」
    デイヴィッド・ブラウン 「蜂起」


  • ◎ Daydream Nation(Goofin' 2014)Sonic Youth
  • インディ時代の集大成的な6thアルバム(アナログ2枚組)。カヴァにはドイツ人画家ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の 「ケルツェ(蝋燭)」(Kerze 1983)が使われ、タイトルは〈Hyperstation〉の歌詞の一節から採られている。CD盤面に記された4つのシンボル(∞、♀、Ω、スティックを持った悪魔天使)は《Led Zeppelin IV》(1971)のパロディ(Four Symbols)だという。ZZ Topのアルバム名から採った〈Eliminator Jr.〉、アンディ・ウォーホルの映画 「チェルシー・ガールズ」(Chelsea Girls 1966)に出演したエリック・マーソンのラリった独白を引用した〈Eric's Trip〉、Mike Wattの留守番電話メッセージをサンプリングした〈Providence〉、ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』(Neuromancer 1984)に触発された〈The Sprawl〉、ジミヘンのカヴァなどで知られる〈Hey Joe〉とJoni Mitchellへのオマージュから生まれた〈Hey Joni〉、〈Trilogy〉の3曲〈The Wonder〉〈Hyperstation〉〈Eliminator Jr.〉を含む全14曲・71分。透明ジュエルケース、三連綴りライナー・ノーツ入り(2007年リマスター盤)。

  • ◎ Whitey Album(Goofin' 2014)Ciccone Youth
  • Madonnaの本名(Louise Ciccone)を捩った変名アルバム。カヴァは彼女の顔を拡大した白黒写真で、タイトルはThe Beatlesの《ホワイト・アルバム》を全曲カヴァするという無謀な試みに由来する。The Royal Tuff Titty(Thurston)、SS Beat Control(Steve)、The Sigh(Lee)、Fly Fly Away(Kim)というメンバー名も巫山戯ている。Leeが「僕らの《Licensed To Ill》を作ろうと思った」と言うように、ドラムマシンとサンプラーを使ったアルバムはヒップホップ色が濃く、コラージュ・アートに近い。〈(silence)〉(1分間の空白)はJohn Cageへのトリビュート。〈Two Cool Rock Chicks Listening To Neu〉にはJ Mascis(ギター)がゲスト参加。Robert Palmerの〈Addicted To Love〉はKimがカラオケ ・ブースでレコーディング。Madonnaの〈Burnin' Up〉はMike Wattが宅録(4トラック・カセット)したデモ、同じく〈Into The Groovey〉では彼女の声をサンプリング。CDボーナス・トラックの〈MacBeth〉はSteveによるダブ・ヴァージョン‥‥全17曲 ・54分。透明ジュエルケース、6つ折りライナー・ノーツ入り(2005年リマスター盤)。

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  • Sonic Youth Studio Albums
    • Sonic Youth(Neutral 1982)EP*
    • Confusion Is Sex(Neutral 1983)
    • Bad Moon Rising(Blast First / Homestead 1985)
    • Evol(SST 1986)
    • Sister(SST 1987)
    • Daydream Nation(Enigma 1988)
    • Whitey Album(Enigma / Blast First 1989)Ciccone Youth
    • Goo(DGC 1990)
    • Dirty(DGC 1992)
    • Experimental Jet Set, Trash And No Star(DGC 1994)
    • Washing Machine(DGC 1995)
    • A Thousand Leaves(DGC 1998)
    • NYC Ghosts & Flowers(DGC 2000)
    • Murray Street(DGC 2002)
    • Sonic Nurse(Geffen 2004)
    • Rather Ripped(Geffen 2006)
    • The Eternal(Matador 2009)
    • *Considered by the band to be their first studio album.

                        *
    • 「Goofin'」はメジャー・アルバム《Goo》とレーベル(Geffen)を掛け合わせている?‥‥ゲフィンへの当て擦りなのか「goofing」は「間抜け」という意味です^^;

    • Sonic Youthのアルバム(Goofin' Records)は自腹で、Ciccone Youthの《Whitey Album》は「RECOfan 渋谷BEAM店」(2020・10・11に閉店)で新品を購入しました

    • 《Daydream Nation》 は 「Deluxe Edition」(Geffen 2007)でリイシューされた
    • 延び延びになっていた記事ですが、なんとかハロウィン(2020)に間に合った^^
                        *

    Sonic Youth

    Sonic Youth

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2015/01/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: The Burning Spear / I Dreamed I Dream / She Is Not Alone / I Don't Want To Push It / The Good And The Bad // Hard Work / Where the Red Fern Grows / The Burning Spear / Cosmopolitan Girl / Loud And Soft / Destroyer / She Is Not Alone / Where The Red Fern Grows

    ソニック・ユース

    ソニック・ユース

    • 著者:デイヴィッド・ブラウン(David Browne)/ 岡田 正樹(訳)
    • 出版社:水声社
    • 発売日:2019/09/25
    • メディア:単行本
    • 目次:大人の暴動あるいはソニック・ユースに関する本の序文を書き始める七つの方法 / 蜂起 / 逆襲 / 避難 / 謝辞 / 索引 / 訳者あとがき

    Confusion Is Sex

    Confusion Is Sex

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2016/10/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: (She's in A) Bad Mood / Protect Me You / Freezer Burn/I Wanna Be Your Dog / Shaking Hell / Inhuman / The World Looks Red / Confusion Is Next / Making The Nature Scene / Lee Is Free

    Bad Moon Rising

    Bad Moon Rising

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2015/04/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Intro / Brave Men Run (In My Family) / Society Is a Hole / I Love Her All The Time / Ghost Bitch / I'm Insane / Justice Is Might / Death Valley '69 // Satan Is Boring / Flower / Halloween / Echo Canyon


    Evol

    Evol

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2015/07/24
    • Media: Audio CD
    • Songs: Tom Violence / Shadow Of A Doubt / Starpower / In The Kingdom #19 / Green Light / Death To Our Friends / Secret Girl / Marilyn Moore / Expressway To Yr. Skull / Bubblegum


    Sister

    Sister

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2016/05/06
    • Media: Audio CD
    • Songs: Schizophrenia / (I Got A) Catholic Block / Beauty Lies In The Eye / Stereo Sanctity / Pipeline/Kill Me / Tuff Gnarl / Pacific Coast Highway / Hot Wire My Heart / Kotton Krown / White Kross


    Daydream Nation

    Daydream Nation

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2014/06/10
    • Media: Audio CD
    • Songs: Teen Age Riot / Silver Rocket / The Sprawl / Cross the Breeze / Eric's Trip / Total Trash / Hey Joni / Providence / Candle / Rain King / Kissability / Trilogy (The Wonder / Hyperstation / Eliminator Jr.)


    The Whitey Album

    The Whitey Album

    • Artist: Ciccone Youth
    • Label: Goofin Records
    • Date: 2014/06/10
    • Media: Audio CD
    • Songs: Needle-Gun / (Silence) / G-Force / Platoon II / Macbeth / Me & Jill / Hendrix Cosby / Burnin' up / Hi! Everybody / Children Of Satan / Third Fig / Two Cool Rock Chicks Listening To Neu / Addicted To Love / Moby-Dik / March Of The Ciccone Robots / Making The Nature Scene ...

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