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夜廻り猫の日々 [c o m i c]



  • 夜回りする野良猫の遠藤平蔵が心のなかで泣く人に寄り添い耳を傾ける ── 。そんそんな設定で描かれ、ツイッターなどで人気の漫画「夜廻り猫」。作者の深谷かほるさん(57)が、阪神大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区を歩いた。深谷さんは福島県出身。東日本大震災で故郷は被災した。震災後の家族の病気を機に、「苦境にある人は水面下で頑張っているということが伝わる作品を描きたい」と生み出したのがこの作品だ。阪神も東日本も、多くの人の心に傷痕を残した。「25年前に被災された方々が何を感じ、いま何を伝えたいのか知りたい」案内役は住民の河合節二さん(58)。41人が犠牲になった野田北部地区に生まれ育ち、街の再建を住民有志と取り組んできた。〔‥‥〕深谷さんは問いかける。「いま一番知ってほしいことは?」「ひとりでは生きていかれへんで、ってことやね」消防署も被災するなか、当初救助にあたったのは顔見知りの住民だった。「日常のつながりを大切に生きてほしい」。それが河井さんのメッセージだ。
    「夜廻り猫、長田を歩く」(朝日新聞 朝刊 2020・1・17)


  • 「夜廻り猫」原画展(京王百貨店新宿店 7階イベントスペース 2020)に行って来た。頭の上に猫缶を載せ、縦縞半纏の懐に片目の子ネコ重郎を抱いて「泣く子はいねが〜」と呼ばわりながら夜の街を徘徊して「涙の匂い」を嗅ぎつける強面灰色ネコの遠藤平蔵‥‥「夜廻り猫」 はツイッタから生まれた深谷かほるの8コマ・マンガである。丸善書店の一劃に、単行本の表紙などに使われたカラー原画16点、特大サイズの「梅見の猫」「花見の猫」、8コマ原稿12点を展示。物販コーナには、よまわりTシャツ(グレー・ネイビー・白)、キャンバス複製画(自筆サイン入り)、紺ポーチ、缶バッジ、タオルハンカチ、ポストカード、クリアファイル、単行本『夜廻り猫』(講談社)、『エデンの東北』(竹書房)などが並んでいた。単行本のカラー口絵にも掲載されている描き下ろし「夜廻新聞」(ポストカード)は無料配布。深谷かほるは東日本大震災後の家族の病気を機に「苦境にある人は水面下で頑張っているということが伝わる作品を描きたい」と夢見て‥‥「夜廻り猫」を生み出したのだ。

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    「カレーと牛丼」(第1話)はコマ枠はフリーハンド、ネーム(吹き出し)も投げ遣りで、絵柄も荒涼としている。貧乏青年の涙の匂いを嗅ぎつけた夜廻り猫の遠藤平蔵は安アパートの部屋に上がり込んで「無職で資格も手に職もなくて、恋人も友達もいなくてバカでブサイクで、松屋のカレギュウ食う金もないんだけど」と話す若者の愚痴を聞くだけで、頭の上の猫缶も手渡さずに去って行く。老夫婦の飼い猫わがままモネ(第15話)や隻眼の自由猫ニイ(第32話)なども登場するが、「夜廻り猫」が水面下の深みを増すのは片目の仔猫が仲間に加わってからである。姑獲鳥(カラス)に襲われて震えていたた仔猫は平蔵に救出され、最長老(千匹を倒した "中央線の牛")から「重郎」の名前を継ぐ(第68~72話)。平蔵の縦縞半纏の懐に抱かれている重郎は宇宙少年ソランの肩に乗るチャッピーや鬼太郎の目玉親父を想わせる。母子家庭の小さな息子が母親に「くもりも、あめもいい天気だよ」と言う「心配いらない」(第67話)は平蔵が瀕死の仔猫(重郎)に出会う直前のエピソードである。

    遠藤平蔵、重郎、ニイ(道彦)、ワカル、モネ、元・重郎、らぴ(パピヨン犬)、宙(ちゅう)、おこそずきん白猫(布美)、カラーとメロディ姉妹、集会猫(全部 / ゼン)‥‥『夜廻り猫 2』(講談社 2017)のカラー口絵には登場する主要登場人物(ネコたち)が29個の缶バッジに模したイラストで描かれている。「宙さん邸の "庭の野良猫" 一家」はネコではなくタヌキ一家、カラーなので布美がオッドアイなのも分かる。フリーハンド風に引かれていた黒いコマ枠は途中(第148話)から綺麗な直線に変わる。ネコたちはヒトと会話出来るという設定のフィクションだが、作者の友人・松阪志都の実話(第192~194、200~203話)やエピソード公募に寄せられた実話(第209~221、223~224話)を元に制作された話もある。「夜廻り猫」10話を加えた文庫版『ニャンニャンにゃんそろじー』(講談社 2020)の中で、作者は「落ち込むことがあったら、寂しい時があったら、そして、人は皆いずれ死ぬのだと愕然としたら、読んでみて下さい。解決はないけれど私は仲間です」と書いている。

    「昔々あるところに重郎という子供がおりました。重郎は遠藤とニイさんとくらしておりました。ニイさんがおいしい魚をもって来てくれました。みんなで食べて眠りました。ぬくぬくと眠りました」‥‥ニイが鮭おにぎりや魚を咥えて来る。重郎は発熱して食べられない。平蔵が「おはなし」を聞かせても回復しない。このままでは死んでしまうと思った平蔵はパピヨン犬らぴと妹ネコのラミーが暮らす永沢家に助けを求めるが、熱を出して3日も寝込んでしまったのは平蔵の方だった。平蔵は重郎を永沢家に託すことにした。ところが後を追って来た重郎が横断歩道の向こうで鳴く。平蔵は重郎を見捨てて去る。重郎を咥えて来たニイが樹の下で消沈する平蔵に諭す‥‥「生きられりゃ、いいってもんじゃない。俺たちには心があるんだ」。連れ戻しに来た永沢夫婦、らぴとラミーは家族がいることを知って、そのまま引き返す(第126~132話)。ネコたちが桜吹雪の中で花見をする。元・重郎は「桜は散るが、また来年咲く」と、花見の自粛を提言した山中伸弥教授のように語る(第133話)。

    「僕は誰の世界にも入れなかった。だったら、誰かの世界に入らないか? 眠れない猫なら仲間だよ。君は何がうれしい? 君は誰かを好いて好かれたことがあるかい?」‥‥1人集会猫には名前が無かった。公園のドーム型トンネルの上で集会を開こうとしていたが、聴衆はブランコに乗っている平蔵と重郎だけだった(第106話)。ある日、メロディが集会に来る。「僕の今夜の話は‥‥君がいて僕はうれしい。君は僕を見ている。僕は君を見ている。生きものはいてくれるだけで、他の生きものの力になるんだ」(第134~137話)。集会猫に思いを寄せるメロディは彼に似合う素敵な名前をつけようとする。家に帰って、姉のカラーに相談すると、リヴァー・フェニックスが載っている雑誌を見ていた高慢デブブサ猫は「river、rain、rainbow、leaf、liberty」という名前を挙げる。全部似合っているので困惑するメロディに姉は毒舌を吐く‥‥「恋があなたの貴重な脳みそを破壊したようね」。1つに決められなかったメロディは集会猫に「全部」(ゼン)くんという名前を贈る(145~148話)。

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    頭の上に鮭缶を載せて「泣く子はいねが〜」と呼びかけながら夜廻りして、「涙の匂い」を嗅ぎつける遠藤平蔵と片目の子ネコ重郎。8コマ・マンガ(前後編・3話連続あり)の全90話(282~371話)を纏めた『夜廻り猫 4』(講談社 2018)も読み応えがある。巻頭カラー口絵(3頁)と「夜廻新聞」。見開きの左頁に8コマ・マンガ、右頁に表題と扉絵(8コマとは画風の異なるリアルな猫や人物画も味わい深い)という構成。心の中で泣いているヒトやネコたちの悩みを聞き出す平蔵。隻眼のニイ、我がままモネ、夜廻り見習いのワカル、老作家先生と一緒に暮らす宙(ちゅう)、永沢家の飼い犬らぴの妹ラミー、集会猫ゼン‥‥ネコ仲間たちだけでなく、捨て犬ラブやタヌキ一家、カエル、カメ、翼の折れたカラス(ヒダリとミギ)なども登場する。その中でも片目の子猫・重郎はネコの魂が顕現化したような神聖で愛おしい存在である。「いい天気」(第371話)で、「曇りも雨もいい天気だぞ」と重郎が話すと、平蔵は「忘れていた‥‥重郎はいいことを知っているな。偉い!」と褒める。

    遠藤平蔵と重郎はノラネコなので、生きるための食料は自分で調達しなければならない。夜廻り中に出合ったヒトの話を聞きに上がり込んだ家で食事を振舞われたり、空腹時には仲間のネコたちからの差し入れなどで食い繋いでいる。「夜廻り」は見返りを要求しないヴォランティアなのである。「夜廻り猫」には平蔵や重郎だけでなく、魅力溢れる個性的なネコたちが多数登場する。隻眼のニイ(道彦)は無用之介みたいにクールな1匹ネコ。我がままモネは飼主の老夫婦に気を遣っている。夜廻り見習いのワカルは食いしん坊で料理が上手い。縞ネコの宙は老作家先生と一緒に暮らす。永沢家のパピヨン犬らぴの妹ラミーは心配性で気が小さい。ゼンは1人で集会を開く。飼い猫ティモは右前脚がなく左前足指も1本しかないのに明るい。最長老の元・重郎は "中央線の牛" という異名を持つ。姉カラーは高慢で、妹メロディは健気。おこそずきん白猫(布美)は平蔵や重郎にお裾分けする。暴走族風の雑巾野郎たち(モエル、サトル、ショゲル、ビビル、グレル)は街中を清掃して回るのだった。

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    • 「夜廻り猫 原画展」 と 「夜廻り猫 4」(「いい天気」 改題)は〈スニーズ・ラブ〉の再録

    • Webコミックサイト「モアイ」で読めますが、一部(第50~224話)は未掲載‥‥昨夜(4/10)更新された 「猫スタイル」(第600話)もコロナ惨禍が反映されています

    • 『ニャンニャンにゃんそろじー』に 「第26、140、181、234、280、326、333、401、541、553話」、『猫の扉』(扶桑社 2020)に 「第15話」 が再録されました

    • 写真は 「夜廻り猫」 原画展(京王百貨店新宿店 2020)で撮った垂れ幕の下部です。遠藤平蔵の左から時計回りに、ニイ(道彦)、宙(ちゅう)、ワカル、重郎^^;
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    「夜廻り猫」 原画展

    「夜廻り猫」 原画展

    • アーティスト:深谷 かほる
    • 会場:京王百貨店新宿店 7階イベントスペース
    • 会期:2020/02/13~25
    • メディア:コミック
    • 展示作品:「夜廻り猫」 カラー原画 / 8コマ・マンガ原画


    夜廻り猫

    夜廻り猫

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 更新日:2020/04/10
    • メディア:Webコミック
    • 内容:ある夜、それはツイッタから始まった──。夜廻りをする猫・遠藤平蔵が心を癒す大人気の8コマ漫画が「モアイ」で連載開始。毎週月・金曜日の夜(平日のみ)に『夜廻り猫』の新作をお届けします


    夜廻り猫 1(ワイドKC)

    夜廻り猫 1

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2017/03/23
    • メディア:コミック(ワイドKC)
    • 目次:カレーと牛丼 / ぶり大根 / あたま / いい香り / 一人では死なせない / カレー / 一周年 / 自己責任 / 母じゃない / 覚えておきます / みそ / ほんとに大丈夫? / 許すな / 織田尚十七歳 / わがままモネ / 言葉 / 君のためにできること / はたらくおじさん / 「にっこり」 / 誕生日おめでとう / おさななじみ / 笑えぬ日々に / 王子様 / 五年間 / おかね / 家族 / ...


    夜廻り猫 2

    夜廻り猫 2

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2017/03/23
    • メディア:コミック(ワイドKC)
    • 目次:冬の樹 / 大丈夫だよ / 梅見 / あなたは成功する / 生きているかい? / 猫啼温泉 / 大仕事 / 二度と、会えないといい / 囲炉裏の夜 / お母さんは悪くない / 鯖と鰯 / 取り柄 / 綺麗夫人 / 消しゴム / 過去の男 / 庭の野良猫 / はらはへっておらん / バシ / ともあれご飯 / 返事 / 自分の心配 / 温かいチーかま / エンゼル / 澤のソーセージ定食 / おはなし / ...


    夜廻り猫 3

    夜廻り猫 3

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2017/11/22
    • メディア: コミック
    • 目次:家をなくした猫 / 翼の折れたカラス (ヒダリ) / 翼の折れたカラス (ミギ) / おまいさんは頑張っておる / ひとの幸せ / 減るんじゃないよ / 寒い夜 / いじめられた子 / 猫の選択 / 足し算じゃない / 名前をもらった子 / ママと娘 / 死ねばいいのに / 絶対絶命 / 応援 / 首の皮一枚 / ひと休み / 今日一日 / 信頼 / 何はなくとも / お願いします / やさしいポー ...


    夜廻り猫 4

    夜廻り猫 4

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2018/07/23
    • メディア:コミック(ワイドKC)
    • 目次:オール 1 / のぞみ / 34度 / 食べろ / わるもの / 夜道の夏 / わたしって / 雑巾野郎 / 忘れたら / 底辺猫 / 海水浴 / 歩 / えこひいき / 始業式 / ぽー、ごめん / 拭きまくれ / おうどん / 愚痴か自慢 / 乗り越える / 九つまで / 長生きしてね / 動かない / 秘密 / ワンルーム / 畑の肉食 / おはし / 朝帰り / ばかいぬ / 競走 / へんなかたち / 幸福の距離 / おで ...


    夜廻り猫 5

    夜廻り猫 5

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2019/04/23
    • メディア:コミック(ワイドKC)
    • 目次:恋をくれ / きけ / 負け / ご飯と味噌汁 / だめ〈前編〉/ だめ〈後編〉/ わるかったなあ / に / みぞれの春 / つるり / ともだち / チーズと食べラー / いい娘だベイベ / よしよし / ごらんあそばせ / 幸せみたい / おるすばん / 居場所 1 / 居場所 2 / 居場所 3 / 居場所 4 / そっくり / 偉いコンビーフ / 借金 / 遊び / 時 / タクシー乗り場の鳩 / 出前 / 1...
    夜廻り猫 6

    夜廻り猫 6

    • 著者:深谷 かほる
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2019/11/22
    • メディア:コミック(ワイドKC)
    • 目次:心の半分 / このクラスにいじめはない / 嬉しいこと / 冬眠の旅〈前編〉/ 冬眠の旅〈中編〉/ 冬眠の旅〈後編〉/ げんき?/ 泣くこども / 用事 / 先生の缶詰〈前編〉/ 先生の缶詰〈後編〉/ 今回はニイのあみぐるみをくだしました / 上から / アオバズクお父ちゃん / すいません すいません / アオバズクお父ちゃんの話 / 食べる / 手袋 / 味噌汁 / ひとつ ...

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