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ブラジル音楽を聴こう 2 [r e w i n d]

  • MARE (Sony BMG 2008) Adriana Calcanhotto

  • 「Adriana Partimpim」 名義の少女マンガのヒロイン風デカ目 (アイ・マスク)カヴァから一転して、「蒼いゾンビ女」 に変身?‥‥サンバ・カーニヴァルの仮装メイクをイメージしているのかもしれないが、ちょっと怖いなぁ。サンバ、タンゴ、カリプソ、ボサノヴァなどの共作やカヴァ曲をMPB新世代トリオのMoreno、Domenico、Kassinがバックアップ。選曲も最高ならば、アレンジも絶妙で微に入り細に入る。Bebel Gilbertoの〈Mulher Sem Razao〉には感涙しました。快晴の青…#16



  • PRESENTE (Dubas 2010) Delia Fischer

  • Delia Fischerの2ndアルバムはブラジル音楽とジャズの混じり合いが絶妙で、ヨーロッパの香りも漂う。激しいインスト曲を聴くとジャズ・ピアニストのような気もするが、清冽で脹よかな彼女のヴォイスに包まれる。ピアノ、チェロ、ヴィオラ、アコーディオン、ヴィブラフォンなど、生楽器主体のチェンバ ー ・ポップで、プログラミングやスクラッチが隠し味になっている。スイミング・プールの水の撥ねる音をパーカッションにした〈Das Aguas〉という実験的な曲もある。ゲスト…#17



  • ANTONIO LOUREIRO (Independente 2010) Antonio Loureiro

  • ミナス出身のSSW、Antonio Loureiroはドラムス、ピアノ、ギター、マリンバ、ローズ・ピアノ、ヴィブラフォン、グロッケンシュピールなどを操るマルチ奏者。Caetano Velosoを想わせる中性的なヴォイスとエクスペリメンタルなサウンド‥‥冒頭の変則5拍子曲〈Voo A Dois〉を一聴するだけでも、並大抵の才能でないことが分かる。トロンボーン、フルート、クラリネット、チェロ、アコーディオン、ハープなどの奏でる優雅なチェンバー・ポップはSufjan Stevensと共振する…#18



  • SONHANDO DEVAGAR (Coqueiro Verde 2011) Kassin

  • Domenicoの《Cine Prive》に続いて、MPB新世代トリオの1人、Kassinのソロ・アルバムがリリースされた。本来はベーシストだが、彼がリード・ギターを弾いている曲ではAlberto Continentino(2曲を共作)にベースを任せている。Neil Young風のノイズ・ギターが後半に炸裂する〈O Que Voce Quiser〉、Sean O'Hagan(The High Llamas)と共作した〈Lua Do Sol〉、DomenicoとMorenoの2人がドラムスとコーラスで参加した〈Em Volta De Voce〉‥‥。浮游…#19



  • MACAXEIRA FIELDS (Mares 2012) Alexandre Andres

  • ミナスジェライスの若きSSW、Alexandre Andresの2ndアルバム。音楽監督を務めるAndre Mehmari(ピアノ、ヴォーカル)のスタジオにRafael Martini(アコーディオン、ピアノ)やAntonio Loureiro(ドラムス)などが集結。Alexandreのヴォーカル、フルート、ピッコロ、ギター(violao) にヴィブラフォン、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。Tatiana Parra、Monica Salmaso、Leonora Weissmann、Juan Quintero(A…#20



  • SO O AMOR CONSTROI (Tratore 2012) Gustavito

  • Gustavito(Gustavo Amaral)は遅れて来た「新ミナス派」の才人。デビュー・アルバムには音楽大学出のインテリで学究肌という「新ミナス派」のイメージを覆す人懐っこいイナタさがある。Antonio Loureiroと同じようなマルチ奏者だが、ギター、ベース、4弦ギター(cuatro venezolano)、10弦ギター(viola caipira)に加えてマリンバ、ハーモニウムなども弾く吟遊詩人風のSSWである。Alexandre Andres(フルート)、Rafael Martini(アコーディオン)、Irene Bert…#21



  • DERIVA (Tratore 2013) Kristoff Silva

  • 《Em Pe No Porto》(Jardim Producoes 2009)から深化したアルバム。Kristoff Silvaのヴォーカル、ギターにRafael Martini(ピアノ、ローズ)、Alexandre Andres(フルート)、Antonio Loureiro (ドラムス、ヴィブラフォン、パーカッション)が参加。トランペット、サックス、ヴァイオリン 、ヴィオラ、チェロ、フルート、オーボエ、ファゴット、クラリネットの入ったチェンバー・ポップもあるが、他のミナス勢とは印象が異なる。変則ビートがドラムンベースへ雪崩…#22



  • COISA BOA (Pommelo 2014) Moreno Veloso

  • Moreno+2名義の《Maquina De Escrever Musica》(Rock it! 2000)以来、実に14年振りのソロ・アルバム。Morenoのヴォーカル、ギター、コンガ、チェロ、ベース、パーカッションにPedro Sa(ギター)、Domenico(ドラムス)、Kassin (シンセ、べース)、Rodrigo Amarante(ウーリッツァ)、Alberto Continentino(ベース)、Daniel Jobin(ピアノ) 、Dadi(マンドリン)、Davi Moraes(ギター、カヴァキーニョ)、Melvn Gibbs(ベース)、Arto Lindsay(ギタ…#23



  • BRINQUEI DE INVENTAR O MUNDO (Maravilha 2015) Jozi Lucka

  • 緑の植物が生い繁るジャングルの中を裸足で歩く金髪の白人女性。左肩には青い鳥が止まっている‥‥サニ・グエッラ(Sani Guerra)が描いたアルバム・カヴァに強く惹かれる。デジタル配信もされているけれど、思わずジャケ買いしたくなる見開き紙ジャケ仕様のアルバムです。ジョジ・ルッカ(Jozileide de Oliveira Fernandes)はリオデジャネイロ州ノーヴァ・フリブルゴ生まれの女性SSW。3rdアルバムはMoreno Velosoのプロデュースで、彼女と共作しているNenung(ヴォ…#24



  • BOA NOITE PRA FALAR COM O MAR (Tratore 2016) Joana Queiroz Sexteto

  • 2ndアルバムはカルテット名義の《Uma Maneira de Dizer》(2013)から、Joana Queiroz、Beth Dau(ヴォーカル) 、Bernardo Ramos(ギター)、Rafael Martini(ピアノ)、Bruno Aguilar(コントラバス)、Felipe Continentino(ドラムス)の6人(Sexteto)編成となった。全8曲中ヴォーカル入りは2曲だけだが、JoanaとBeth Dauの2人が自由奔放にスキャットしているので「インスト・アルバム」という感じはしない。彼女が率いる管楽六重奏団、Inventosのメン…#25



  • CUIDADO MADAME (Ponderosa 2017) Arto Lindsay

  • 《Salt》(2004)以来、実に13年振りのソロ・アルバム。長いインターヴァルを感じさせないのはLourenco RebetezやTonoなどのプロデュースが記憶に鮮明だから。ノン・チューニング・ギター(チューニング出来ないくらい耳が良い?)とブラジル音楽の融合。アヴァンポップを体現・体感出来る音楽で、Simon Fisher Turnerにも通じる甘美で繊細なヴォーカルに魅惑される。ドラムンベース風の〈Grain By Grain〉、9拍子の〈Ilha Dos Prazeres〉、ノイズ・ギターが炸裂…#26



  • VEM (Sony Music 2017) Mallu Magalhaes

  • 2015年12月28日に女児ルイザ(Luísa)ちゃんを出産したブラジル・サンパウロ生まれのSSW、マルー・マガリャエスの4thアルバム。15歳の誕生日に祖父母から贈られたキャッシュで録音した自作曲を「MySpace」にアップしたことで注目を集めた少女も9年経って母親になったのだ。ジョルジュ・ベンジョール調の〈Você Não Presta〉や〈São Paulo〉、シングル・カットされた〈Casa Pronta〉や〈Culpa do Amor〉などの乾いたサーフ・ギター・サウンドは旦那のMarcelo…#27



  • HARU (Independente 2017) Alexandre Andres / Rafael Martini

  • Alexandre Andres(ギター、フルート)とRafael Martini (ピアノ、シンセ)によるデュオ名義のアルバム。Alexandreの《Macieiras》(2017)はカルテットによるインスト・アルバムだったが、《Haru》は2人だけでレコーディングされている。Alexandre Andres4曲、Rafael Martini3曲、共作2曲という構成で、嬉しいことに全9曲中6曲はヴォーカル曲。インストにもスキャットが入っている。カルテットのアンサンブルやインプロヴィゼーションよりも、秋の夜長(ブラ…#28



  • ALICE (Universal 2018) Alice Caymmi

  • 日本古来の流儀で緊縛された花嫁アリス(縛り甲斐のある体型?)は「神聖と冒涜」の象徴 ‥‥彼女を包むハート型のネオンの標示は「ALICE」という名前だけが黄色く点灯されて、「CAYMMI」の文字は消えている。アリーシ・カイミの3rdアルバムはバルバラ・オハナ(Barbara Ohana)のプロデュース。エクスペリメンタル系のエレクトロニカだが、ダークで退廃的な色合いから半歩抜け出し、ヴォーカルがネオンのように妖しく色づく。ラッパーのRincon Sapienciaがゲスト…#29



  • TRANCA (Circus 2018) Ava Rocha

  • アヴァ・ホーシャの3rdアルバムは全19曲・62分。Alberto Continentino (ベース)、Domenico Lancellotti(ドラムス)、Rafael Rocha(パーカッション)、Tulipa Ruiz、Iara Renno(ヴォーカル) など、総勢35名のミュージシャンが参加した大作となった。彼女の自作曲は共作を含めた11曲に、夫のNegro Leo(ギター、ヴォーカル)が5曲、カヴァ3曲というアルバム構成。2016年6月6日、64歳で亡くなった友人の彫刻家トゥンガ(Tunga)に捧げた〈Pangeia〉、エン…#30


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    「年間ベスト・アルバム10」(1988~2018)の中のブラジル・アルバムから24枚、年末年始のリリースや入荷時、入手時の遅れなどから選出のタイミングを逸してしまったアルバム6枚を選んだ。リストアップは比較的スムーズに決まったが、元記事からの引用文(28字×8行)を空白部分のないようにレイアウトするのに腐心した。本文との修整の兼ね合いが難しくて、一部の文章表現を変更しなければならなかったことを断っておく(元記事の文章も一部加筆・改稿した)。「ミュージック・マガジン」(2019年5月号)の創刊50周年記念ランキングの「ブラジル音楽 オールタイム・アルバム・ベスト100」とは6枚、『21世紀ブラジル音楽ガイド』(Pヴァイン 2018)とは15枚重複している。この少なさがブラジル音楽の多様性を物語っているのかもしれない。令和元年のGW10連休を楽しむための「ブラジル音楽ガイド」や今後のアルバム購入の手引きとして役立ってくれたら嬉しい。

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    • ジャケ違いの国内盤《Macaxeira Fields》(NRT 2013)もリリースされています
    • 選出した上記の30枚に限らず、すべてのアルバム(輸入CD)を自腹で購入しています
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    ミュージック・マガジン 2019年 5月号

    ミュージック・マガジン 2019年 5月号

    • 特集:ユニコーン / ブラジル音楽 オールタイム・アルバム・ベスト100
    • 出版社:ミュージック・マガジン
    • 発売日:2019/04/20
    • メディア:雑誌
    • 執筆者:荒井めぐみ / 石川真男 / 石田昌隆 / 伊藤亮介 / ウィリー・ヲゥーパー / 江利川侑介 / 大石始 / 岡村詩野 / 荻原和也 / 河津継人 / 栗本斉 / ケペル木村 / 駒形四郎 / 佐藤英輔 / 宿口豪 / 染谷大陽 / 髙木慶太 / 高橋健太郎 / 塚原立志 / 寺下光彦 / 柳樂光隆 / 中原仁 / 成田佳洋 / 祢屋康 / noriji / 原田尊志 / 深沢美樹 / 藤本一馬 / 堀内隆志 / 松林弘樹、松山晋也、宮子和眞、宮沢和史、村田匠、山田光、山本幸洋、吉本秀純、若杉実...


    21世紀ブラジル音楽ガイド

    21世紀ブラジル音楽ガイド

    • 監修:中原 仁
    • 出版社:Pヴァイン
    • 発売日:2018/07/25
    • メディア:単行本(ele-king books)
    • 目次:+2とリオのインディー・ポップ / ノヴォス・コンポジトーレスとサンパウロ・シーン / ミナス新世代 / MPB / Samba Soul / Funky Groove/Urban / Hip Hop / Funk / Drum'n Bass / Electro / Reggae / Street Beat / Bahia(バイーア)/ Nordeste & Norte / Rock / Folk & Country / Samba / Instrumental / 90's 世代 / Maestro, Legend / International

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    sknys

    Music Magazine: Brasil Music Best 100 Albums 16-30
    http://musicmagazine.jp/mm/mm201905.html
    16. Construcao(Philips 1971)Chico Buarque
    17. Memorias, Cronicas E Declaracoes De Amor(EMI 2000)Marisa Monte
    18. Os Afro-Sambas(Forma 1966)Baden Powell E Vinicius DeMoraes
    19. Arthur Verocai(Continental 1972)Arthur Verocai
    20. Encontro Com A Velha Guarde(Philips 1976)v.a.
    21. Mundo Melhor(RCA Victor 1976)Beth Carvalho
    22. Poeta Da Vila(Rice1999)Noel Rosa
    23. A Procura Da Batida Perfeita(Chaos 2003)Marcelo D2
    24. Os Mutantes(Polydor 1968)Os Mutantes
    25. Toninho Horta(eMI 1980)Toninho Horta
    26. Terra Dos Passaros(EMI 1980)Toninho Horta E Orquestra Fantasma
    27. Feminina(EMI 1980)Joyce
    28. O Microbio Do Samba(Sony 2011)Adriana Calcanhotto
    29. Refavela(Philips 1977)Gilberto Gil
    30. Luz(CBS 1982)Djvan
    by sknys (2019-05-26 11:26) 

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