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ネコ・ログ #53 [c a t a l o g]

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  • わたしが取材した当時、ル=グウィンはパードという猫を飼っていた。彼女はこの猫の伝記『My Life So Far(我が半生、未訳)』まで書いている。「パードは、たいてい、パソコンの隣にある机の上で寝ています。ところが、わたしが手紙なり小説なり、そのとき書いているものに感情的に入り込みすぎると、あの子は落着かなくなるのか、わたしのところへやってきて、マウスの上に座り、ゴロゴロとのどを鳴らしはじめるのです。あなたもためしにマウスに猫を乗せたままパソコンで何か書いてみてごらんなさい」 と彼女は語った。/ 彼女がなぜ猫を愛するかというと、「美しくて、おもしろくて、自尊心が高くて、ミステリアスだから」 。一般に作家と猫は相性がいいと言われるが、その理由を問われた彼女は皮肉たっぷりにこう答えた。「だって物書きなら、手を止めて、犬の散歩に行きたいなんて思わないでしょう」
    アリソン・ナスタシ 「アーシュラ・K・ル=グウィン」


  • #469│バン│地域猫 ── エメラルドの誘惑
    水道管工事中の道を避けて脇道に入る。初めて歩く露地をジグザグに進むと、駐輪中のバイクの上に1匹のトラ猫がいた。淡いエメラルド色の目が麗しい。近づいても逃げないし、毛並みを撫でても嫌がらない。ネコとしては理想的な被写体である。十年以上前に撮ったことのあるトラ猫の面影が脳裡に甦る。スズメちゃんの母ネコならば、久し振りの再会ということになる。薄茶色の毛並みや人懐っこい性格もハッチに良く似ている。「猫の十年」に思いを馳せると、感慨も一入で胸が熱くなる。美しい目に惹き込まれる。レイチェル・ヘイルの写真集に準えば魅了される(smitten)のは子猫だけではないのだ。暫くすると急にバイクから飛び降りて、遠くから歩いて来る女性の許へ駆け寄る。ネコおばさんの運んで来る夕食を待っていたのだ。「待っていたようですよ」と声をかけると、高齢婦人の顔が綻ぶ。

    #470│ソン│飼い猫 ── 消えたソンちゃん
    十年以上に渡ってネコ写真を撮りつづけていると、外ネコたちの顔触れも移り行く。病気や事故で亡くなったり、消息不明になったネコたちも少なくない。先日、飼いネコのソンちゃんが失踪したという話を聞いた。女飼主が退院して3日目、同じく病院から帰って来て一緒に寝ていたソンちゃんが突然窓から逃げ出したまま帰って来ないという。近所を探したけれど見つからない。飼主は縁の下かどこかで死んでいるのではないかと思っている。ヒトに着かず離れずマイペース、高いところが好きだったソンちゃん(名前は觔斗雲に乗った孫悟空から採られた)。柄谷行人は「年取った猫が飼い主によって介護された上で死ぬケースが多い」という話を書評で紹介していたが、死に際を人間に見せないという意味でも、ソンちゃんはネコらしいネコだった。女飼主は人智の及ばないという意味で「魔物」と称していた。

    #471│ユカ│飼い猫 ── やっと撮れた三毛さん
    S鴨駅前周辺には数匹のネコたちが棲息している。しかし、前にも書いたように狭い地域に飲食店が密集しているので、店舗と店舗の狭い隙間に逃げられると後を追えない。たまたま店先や駐輪場いるところを撮るだけで、シャッター・チャンスは少ない。塀の上にいた三毛ネコを運良く撮れたが、隣の建物との隙間に逃げ込まれたら万事休すだった。しかも陽が落ちて薄暗くなっていたので、スロー・シャッター(1/20秒)を余儀なくされた。ところが不思議なことにダメ元で撮ったのにも拘わらず、モニタ画面で拡大すると、ブレることなくピントは目に合っている。iPhotoで明度を上げると、更に見映えも良くなった。駅前周辺には多くのネコたちが暮らしているはずなのに、明るい日中は殆ど姿を見せない。通行人や自転車、バイクなどの行き交う雑踏や喧騒を避けて、狭い露地(キャットウォーク)の奥で静かに眠っているのだろうか。昭和29年創業の丸十ベーカリー「クライス・ツェン」が突然閉店して、某たこ焼き居酒屋チェーンに変わってしまったのは大ショックです。

    #472│ロン│ノラ猫 ── 亥年(2019)もよろしくにゃん
    嵐、木枯らし、大雪‥‥冷たい雨や北風が吹き荒む悪天候の冬は外で暮らすネコのことが気懸かりになる。屋内に避難出来ない外ネコたちは一体どこに身を隠しているのだろうか。雪山の遭難者のように低体温症で凍死しないだろうか。大型颱風が上陸した時に中央公園のネコたちを一時的に倉庫内に避難させたとか、風雨を避けられる庇のある図書館のエントランスにキャットフードを置いてネコを留まらせたというエピソードを思い出す。「Norwegian Forest Cat」で画像検索すると、ロンちゃんに良く似た長毛種のネコたちが次々に表示される。そうか、ロンちゃんは小手鞠るいの愛猫プリンと同種の「ノルウェーの森のネコ」だったのか、厳寒の北方地域でも生き抜けるような長毛種だったのかと少し安堵した。房々の冬毛になって、丸々と太った姿は野性のタヌキのように見えなくもない。

    #473│ドミノ│飼い猫 ── 女性上位時代到来?
    T区図書館近くの横道にドミノちゃんがいる。飼主家の前で大人しく鎮座していることが多い。従順なトラ猫で、毛並みを撫でると寝転がったゴロニャン状態になる。定期的に新調される首輪がアクセントになっていて、見た目も愉しい。2年前の首輪は唐草模様のリボンと金色の鈴と小判チャームが付いた「猫に小判唐草模様」だった。ネコが唐草模様の風呂敷を首に巻いて背負っているという見立てらしい。この写真では金色の鈴だけになっていたが、先日出会った時には可愛い縁飾りのあるエプロン風の首輪に替わっていた。飼主には1度も会ったことがないけれど、飼いネコへの愛情が窺われる首輪である。美人モデルが最新流行ファッションに着替えたようで、写真を撮る方も気分一新して嬉しくなる。洋楽界は女性上位時代到来!‥‥若い女性SSWが次々とデビューしている。ネコ科動物界では大昔から女性上位ですけれど。

    #474│カル│ノラ猫 ── メタボ体型になっちゃった
    久々に図書館裏の遊歩道で見かけたカルちゃん。昨年(2018)の4月に撮った時はミステリアスなネコちゃんだったのに、いつの間にかメタボ体型になってしまった。どこかの家で鱈腹食べているのだろうか。白い毛並みも綺麗なので、どこかの家ネコになった可能性も否定出来ない。ネコを注意深く観察していない人の目には同じネコとは思えないほどの激変ぶり。まさに別人28号ならぬ「別猫28号」である。人間は体型を気にして自らダイエットしたりするけれど、襖を開けるネコはいても閉めるネコがいないように、ネコに「ダイエット」という概念はない。食事を与えている飼主の責任ではないかしら?‥‥カルちゃんが滅多に姿を現わさないのは図書館裏の遊歩道が古株のロンちゃんのテリトリだからかもしれない。広いスペースが拡がっているのに、2匹の仲は余り良くないのだ。長毛種ロンちゃんとの縄張り争いのストレスで激肥りしたとは思いたくないけれど。

    #475│ミミ│飼い猫 ── 車輪の向こう
    三毛ネコの産んだ3匹の子猫は瞬く間に大きく成長して、今では母ネコと変わらないまでの大きさに成長した。ところが子育てが終わったからか、子供たちを見守っていたミミさんも足早に逃げる去るようになってしまった。ノラ猫を手懐けて飼い猫にすることは可能だと思うが、いつまで経っても懐かないネコもいる。三毛のアンちゃんのように膝の上に乗りたがる人懐っこいノラ猫もいる。都内23区内では耳先カットされたノラ猫が目立つ。ジョン・ブラッドショーは『猫的感覚』(早川書房 2014)の中で「去勢はきちんと世話をされているネコにほどこされるので、理論的に、今後繁殖していくのは人間にもっともなれないネコになる。その多くは遺伝的に非社交的なままでいるだろう。去勢の長期的な影響については、慎重に考慮しなくてはならない」と危惧する。訳者(羽田詩津子)も「あとがき」で「人間につかまるおとなしく飼いやすいネコはみな去勢されて遺伝子が絶え、世の中には人間を信用しない野性の血の濃いネコしかいなくなる可能性もあるだろう」と問題提起している。

    #476│アン│ノラ猫 ── 天才三毛猫(calicogenius)
    鰻の寝床のように細長い池袋駅前公園内に突如としてプレハブ小屋が建って、狭苦しく視界も悪くなった。ネコたちも姿を現わさず、公園に来た人たちも寛げない。「美術作家・植田志保氏がウイロード天井部へ設置するパネルに描画を行う」ためのアトリエらしいが、突然降って湧いた寝耳に水で、ネコにもヒトにも迷惑千万な事態である。「公開制作」に適した広い場所がT島区内になかったのでしょうか。公開制作期間は3月8日から5月までだが、仮設小屋の設置期間(予定)が2019年2月から10月までというから、春の花見どころか秋の紅葉まで9カ月間も、この鬱陶しくて居心地の悪い状態が続くことになる。天才三毛猫アンちゃんの姿も見えない。公園のネコたちは一体どこへ姿を消してしまったのでしょうか。仮設小屋が撤去された9カ月後に、ネコたちが公園に戻って来るかどうか心配です。キャリコジーニアス(calicogenius)は3人の女性SSWが結成したスーパーグループ、ボーイジーニアス(boygenius)のモジリです。

    #477│コスモ│ノラ猫 ── ニャンコ忍法舌出し隠れ
    石森章太郎の「変身忍者嵐」(週刊少年マガジン 1972)は「仮面ライダー」の時代劇版である。父親を殺害して化身忍法の秘伝書一巻を奪い去った血車党に嵐鬼十の一子ハヤテが戦いを挑む。父の仇を討ち、血車党化身忍群を根絶する旅に出る。主人公のハヤテも「鳥人」に変身して、山椒魚、蛞蝓、猿、猫、狐、馬、牛、蜜蜂、象、獺、虎などに化身した忍者たちと戦う。「鍋島の化け猫騒動」を題材にした第2話「青い猫の夜」には化身くノ一の猫魔が肥前(佐賀県)鍋島藩の城主・鍋島直茂を殺そうとする。「忍法猫目しばり」「忍法和毛の舞い」でハヤテと対決する。I袋駅前公園の水天宮のニャンコは化け猫でも化身忍者でもないが、「忍法舌出し隠れ」でカメレオンやナナフシのように姿を隠す。笑いだけを残して消えるチェシャ猫のように、ピンク色の舌先だけを残して‥‥というか、たまたま背後の台座と同系色なので、溶け込んでいるように見えるだけですが。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第53集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ470匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第53集の常連ネコはソン、ロン、アンちゃん。トラ猫のバンちゃんは十年以上前に撮ったことのあるハッチではないかという気もするけれど確証はない。『文豪の猫』(エクスナレッジ 2018)は『アーティストが愛した猫』(2015)と同じ著者による続編で、45人の作家と愛猫たちがABC順に登場する。日本からは2人の「文豪」が紹介されている。猫たちの食事を笑顔で見守る大佛次郎の白黒写真は見たことがあるけれど、「黒猫を抱く無精髭面の村上春樹」はインパクト大。表紙カヴァはトラ猫を抱くトルーマン・カポーティです。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 画像周りをプチ・カスタマイズ。外枠を点線から実線に変更して、四隅を丸めました
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    文豪の猫

    文豪の猫

    • 著者:アリソン・ナスタシ(Alison Nastasi)/ 浦谷 計子(訳)
    • 出版社:エクスナレッジ
    • 発売日:2018/12/02
    • メディア:単行本
    • 目次:アリス・ウォーカー / アレン・ギンズバーグ / アンジェラ・カーター / アン・M・マーティン / アヌージャ・チョーハン / ベリット・エリングセン / ベバリイ・クリアリー / 謝冰心 / カルロス・モンシバイス / チャールズ・ブコウスキー / チェスター・ハイムズ / コレット / ドリス・レッシング / イーディス・シットウェル / エリナ・グリン / エリザ...

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