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ネコ・ログ #50 [c a t a l o g]

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  • フランスでは、毎月数千匹の猫が火あぶりにされ、サン=ジャン火祭りのときはその数はさらに増えました。この祭りのとき、村人たちは、捕まえた猫を投げ込むための火あぶり台を作りました。18世紀まで、フランス国王自身も、パリのグレーヴ広場(現オテル=ド=ヴィル広場)で行なわれたこの猫の火刑に参加しました。ルイ14世(Lois XIV)[在位1638〜1715]は1646年に、最後にこの火刑に加わりました。/ 建物や農家、大建造物を建築する際に、猫(できれば黒猫)を生きたまま壁に塗り込めるという残忍な行為も、珍しいことではありませんでした。当時の人々は、建築家や職人の能力に頼るよりむしろ、人知を超えるもの、またはそれに似たものにすがることを選んだのです。塗り込められた猫は、建物の頑丈さを保証し、不運から守り、神の庇護を引き寄せると言われていました。1950年、ロンドン塔の修復工事の際、ミイラ化した猫の群れが発見されたのは、こうした理由からです。その姿は、野蛮なしきたりの犠牲となって、むごい死に方をしたことを物語っています。
    ナタリー・セメニーク 「野蛮な祭典」


  • #442│ミス│飼い猫 ── いつもの三毛スコちゃん
    酷暑の夏はネコもヒトもバテている。毛皮を生来身に纏っている動物は体毛のない人間よりも暑いのだろうか。室内飼いの家ネコはエアコンの効いた涼しい環境で快適な日中を送っているが、外ネコは日陰でグッタリと伸びている。ヒトの体温を超える猛暑日に外から呼びかけても、ミスちゃんは玄関のキャットスルーから出て来ないかもしれない。そもそもミスちゃんの家まで行く途中で、熱中症で倒れてしまう危険も高い。救急車で病院へ緊急搬送されるのは避けたい。真夏の野外撮影は薮蚊との闘いでもある。長袖・長ズボンは必須の服装。それでも手や指先、顔や首筋など露出している肌が狙われる。ネコも毛で覆われてない鼻面や耳が標的になる。ネコが左右の耳をレーダーのように頻繁に動かしているのは虫避け対策だったりする。ミスちゃんの写真を撮りたいけれど、会えるかどうかは五分五分。長い期間会わないと顔を忘れられちゃう可能性もあるので、1カ月に1度は顔を見に行きたい。

    #443│スズ│飼い猫? ── 露地裏の黒ネコ
    露地から顔を出していた黒ネコと目が合った。左耳先カットされているが、黒い毛並みの色艶も良いので、もしかしたら飼いネコなのかもしれない。同じ露地で2匹の黒ネコを目撃したこともある。日本では幸福を呼ぶと信じられている縁起の良い黒ネコも、西欧では不吉な魔物として迫害された過去がある。ネガティヴな迷信が蔓延るのは仕方ないとしても、何の罪もないネコを大量虐殺したことは赦せない。映画「ブラック・パンサー」の大ヒット効果で、動物保護施設から黒ネコを引き取るアメリカ人が急増しているという微笑ましいニュースの一方で、毎年ハロウィンの時季には黒ネコの里親への譲り渡しを中止しているという。今でもネコが生贄にされたり、虐待されたりする怖れがあるからだ。もし彼らに人間並みの知性と強欲と残忍さがあったならば、ネコ族は人類を殲滅〜隷属させ、地球は「猫の惑星」になっていただろう。

    #444│バル│飼い猫 ── 横顔も素敵です
    バルちゃんは飼いネコの中では最も撮り難いネコである。俊足のフォワード選手のように動きが機敏で、シャッター・チャンスは殆どない。常に一定の距離を保ち、間合いを詰めようとすると、民家と民家の狭い隙間の奥へ逃げ込んでしまう。ところが何度も通っているうちに、バルの行動に変化が生じて来た。近づいても逃げる素振りは見せず、至近距離で対峙するようになった(写真も徐々にアップで撮れるようになった)。屈んでネコ目線でカメラを構えると、徐に右横まで歩いて来て腹這いになる。茶色い毛並みを撫でても嫌がらない。しかし、これで気心を許して親密になった思うのは大間違い。糠喜びだった。1度は来るようになったけれど、それ以降は2度と傍に寄って来ない。気心を許して懐いたわけではなく、挨拶に来てあげたから、もう良いでしょうという他人行儀の振る舞いなのだ。バルちゃんと仲良くなれる日は来るのでしょうか。

    #445│グリ│飼い猫 ── 寄り目になっちゃった
    某図書館裏の私道に数匹のネコがいる。白黒、白茶、三毛、黒ネコ‥‥飼いネコなのか、地域ネコなのか、みんな程好く馴れている。民家の前で初対面のネコと目が合った。寄り目がチャーミングな三毛だった。低姿勢で近寄ると警戒しているのか、向かいの家の一段高い中庭に逃げ込んだ。シャッターチャンスを逃したかと落胆していると、興味深そうに繁みの中から顔を出した。咄嗟にオート・フォーカス(AF)で撮ったのでピントが甘くなったけれど、幸いにもソフトフォーカスが瞬膜を目立たなくした、愛嬌のある写真になった。白・黒・茶の配色は千差万別で、同じ模様の三毛は2匹として世界に存在しない。茶と黒で左右に分かれた顔、白い口許、薄緑の目‥‥その複雑な幾何学模様は見飽きない。女飼主に名前を訊くのを忘れたので、イスタンブール・アヤソフィア博物館のキジトラ(オバマキャット)に因んで「グリ」ちゃんと名付けてみた。

    #446│ユビ│地域猫 ── 優しい目で見つめます
    周囲の明るさで瞳の大きさが変化するように、ネコの表情も一瞬で変わる。鋭い眼光で見つめていたネコが急に柔和で優しい目になる。ユビちゃんも誰何するような疑り深い視線を発していたけれど、敵ではなく味方、危害を加えるような輩でないと感得したのか、穏やかな表情になった。初対面のネコとの出会いはスリリングで心躍る。ネコは速やかに品定めをして即座に判断を下す。その場に留まるか、そこから立ち去るか、自ら近寄るか?‥‥警戒心の高い小心なネコは一目散に逃げ去り、人懐っこいネコは近づいて来る。ユビちゃんは「天国の階段」のように留まることを選んだようだ。岩合さんを真似て「いい子だね」「仲間だよ。味方だよ」とネコ撫で声で褒めながら、身も心も低姿勢のネコ目線でシャッターを押した。首輪はしていないけれど、白い毛並みも綺麗に手入れされているので、飼いネコなのかもしれない。ノラネコは決して優しい目で見つめたりはしないのだから。

    #447│シュン│地域猫 ── 里親募集中
    還暦を過ぎた人は保証人がいないと、ネコの里親になれないらしい。ヴォランティア団体から譲り受けた子ネコの寿命よりも早く飼主が亡くなってしまう可能性があるからだ。身寄りのなくなった飼いネコは路頭に迷う。過保護な家ネコにノラの野性は望むべくもない。ある民家の外壁に「里親さんを探しています!(しゅんちゃん・推定4歳・牡猫)」というポスターが貼ってある。グリちゃんの飼主に訊ねると、室内で飼われていた家ネコだったが、老飼主が亡くなってホームレスの外ネコになってしまったという。人懐っこく大人しい白黒ネコなのに引き取り手が見つからないのは成猫だからかもしれない。日本人の里親は子猫を欲しがる傾向があるそうだから。シュンちゃんの写真を見せると、従妹の娘も子ネコを飼いたいと呟く。「子猫時代は短い。1年経ったら、大人になっちゃうよ」と言い忘れたことを思い出した。近所の三毛も幼い顔立ちのまま、可愛い仔ネコを3匹産んだ。

    #448│オージ│ノラ猫? ── お前は誰にゃん?
    G現坂を下った先の某安売りショップの手前にサバトラが鎮座していた。ネコの気配を感じて気づいたのだが、早足で駆け降りていたら危うく見過ごすところだった。鋭い眼光で真正面から対象を見据える。対人ならば「ガン飛ばし」「メンチを切る」状態で、一触即発の事態になるところだ。ヤンキーの対マンとは異なり、不用意に近寄らなければネコパンチを喰らうことはない。もしトラやヒョウなどのネコ科の大型動物だったら、襲われて餌食になっていたかもしれない。このチャンスを逃したら次はないと思い、冷静を装ってシャッターを切った。見瞠いた黄色い目と伏せた左右の耳がネコの緊張状態を表わしている。ユビちゃんのように柔和な優しい表情に変わることは期待出来きそうもない。決してヒトを信用しないノラの気骨と気概が漲っている。敵愾心と猜疑心で充満した小動物は次の瞬間、俊敏な動きで車道を渡って逃げ去った。

    #449│カル│ノラ猫 ── 全て緑になる猫まで
    某中央図書館裏に現われた新参ネコ。長毛種のロンちゃんの縄張りなので、お互いに意識し合っている。遊歩道脇の植込みが絶好の隠れ場所になっていて、散歩者や通行人からネコの姿は見えない。ロンちゃんが植込みを一心不乱見つめている時は、その先の繁みの中にカルが隠れていることが多い。向かって右方向から西陽が射しているけれど、左側の白っぽい壁の照り返しがレフ板のように反射して、あたかも左から光を浴びているように見える。影になったネコの左半身(白い毛並み)が緑っぽく映っている。幻想的でSFチックな佇まいは手塚治虫の「緑の猫」(1956)を思わせなくもない。ロンちゃんとテリトリーの折り合いがつかなかったのか、先日表通りに面した集合住宅の前の中庭で寛いでいるカルちゃんを見かけた。食事運搬係のオバさんや通行人からゴハンを貰う時だけ、遊歩道に来るようだ。ちなみにキャプションは大島弓子の「全て緑になる日まで」(1976)のモジリです。

    #450│サン│地域猫 ── 目の中の林檎(スティーヴィー・ニャンダー)
    I袋サンシャインシティ裏の中央公園にネコがいるという情報を得て、足を運んでみた。決して広い敷地ではないけれど、夕暮れ時に数匹のネコたちが植込みから出て来て思い思いに寛いでいた。繁みの中に姿を隠すネコもいるけれど、概ね警戒心は少なく、毛並みを撫でさせてくれるネコもいる。耳先カットと首輪をしているので、ノラではなく地域ネコと呼ぶべきなのかもしれない。薄緑色の目と黒と灰色の縞模様の色合いが綺麗なサバネコは被写体として映える。スティーヴィー・ワンダーの名曲〈サンシャイン〉(You Are The Sunshine Of My Life 1973)の歌詞は「君は僕の人生を照らす太陽の光」「君は僕の目の中の林檎」(You are the apple of my eye)‥‥と続く。「apple of a person's eye」は「瞳、目の中に入れても痛くない大切なもの」という意味のイディオム。サンシャイン裏に棲むネコの目に当て嵌めれば「青い林檎」ということになるかしら?

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第50集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ450匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。今回の常連はミスとバルちゃん。スズ、グリ、ユビなど初対面で撮れたネコも少なくありません。ナタリー・セメニークの『魅惑の黒猫』(グラフィック社 2015)は黒ネコの魅力を余すことなく詰め込んだ大型本。中世の魔女狩りで火刑に処されたり、建設中の建物の壁に生きたまま塗り込められたり、高い塔から投げ落とされたり、ハロウィンで大量虐殺された黒ネコ受難の歴史にも大きくページを割いている。ネコを毛嫌いしたり、虐待する人間たちは無知で強欲で迷信深い「黒歴史」を忘れてしまったのでしょうか。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード

    魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード

    • 著者:ナタリー・セメニーク(Nathalie Semenuik)/ 柴田 里芽(訳)
    • 出版社:グラフィック社
    • 発売日: 2015/10/07
    • メディア:大型本
    • 目次:はじめに / 黒猫とボンベイ / 受難の歴史 / 伝説の猫 / 民間伝承と迷信 / フットライトを浴びて / キャバレー "黒猫" / 写真クレジット

    タグ:catalog cats
    コメント(2) 

    コメント 2

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    ぶーけ

    猫さんたち、受難の歴史があったのですね。
    酷過ぎます!
    特に、黒猫さんたち。
    かわいいのに。
    by ぶーけ (2018-07-23 13:58) 

    sknys

    動物を絶滅させた人間は他民族も虐殺している。
    石森章太郎は「青いけもの」(地球のメタファ)の中で
    稀少動物だけでなく、最後のタスマニア人女性を描いていた。
    今夏の西日本豪雨や殺人的な酷暑も「青いけもの」の悲鳴なのかもしれない。
    by sknys (2018-07-24 00:47)