《Salt》(Righteous Babe 2004)以来、実に13年振りのソロ・アルバム。長いインターヴァルを感じさせないのはTonoやLourenco Rebetezなどのプロデュースが記憶に鮮明だから。ノン・チューニング・ギター(チューニング出来ないくらい耳が良い?)とブラジル音楽の融合アヴァンポップを体現・体感する音楽で、Simon Fisher Turnerにも相通じる甘美なヴォーカルに魅惑される。ドラムンベース風の〈Grain By Grain〉、9拍子の〈Ilha Dos Prazeres〉、ノイズ・ギターが炸裂する〈Unpair〉、Marisa Monteと共作した〈Pele de Perto〉など全11曲・38分。日本先行発売(P-VINE)から遅れること3カ月!‥‥米インディーズ(Northern Spy records)からのリリースだったが、入手した紙ジャケ仕様のイタリア盤(Ponderosa)には収録されていないボーナス・トラック名〈Nobody Standing In That Door〉が歌詞カードに記載されている。
オルダス・ハーディング(Aldous Harding)はニュージーランド・リトルトン出身の女性SSW。彼女のヴォーカルとピアノ、ギター、John Parish(prod.)のピアノ、ギター、シンセ、ドラムス、イタリア人マルチ奏者Enrico Gabrielliのバス・クラリネット、サクソフ ォン、ローズ・ピアノという3人編成で、「ゴシック・フォーク」 と自称するサウンドを奏でる。フレンチ・ポップスみたいに可愛い〈Blend〉、エキセントリックな少女っぽいヴォーカルの〈Party〉、挿入される少女たちの叫び声が強烈な〈Imagining My Man〉、ピアノの伴奏で強靭なヴォイスを披露する〈Horizon〉、Mike Hadreas(Perfume Genius)とデュエットした〈Swell Does The Skull〉‥‥怖そうな顔からは想像し難い変幻ヴォイスは狂気も内に秘めている。2丁拳銃のセクシー・カウガールに扮したAldous Hardingが仏頂面で踊る〈Blend〉のPVも必見です。
1989年10月、英レディングで結成されたSlowdiveは3枚のアルバムをリリースして1995年に解散。Neil Halstead(ヴォーカル、ギター、キーボード)、Rachel Goswell(ヴォーカル)、Ian McCutcheon(ドラムス)の3人は新たにMojave 3を結成。Simon Scott(ドラムス)やChristian Savill(ギター)もバンドやソロなどで活動していたが、2014年1月に再結成した。22年振りの4thアルバムはオリジナル・メンバー5人で録音されている。ノイジーなギターやシンセの驟雨から聴こえて来る囁くような男女のヴォーカルはシューゲイザーの王道。シングル・カットされた美メロのキラー・ソング〈Sugar For The Pill〉、サウンドとヴォーカルが渾然一体となって疾走する〈Everyone Knows〉、目頭が熱くなるほど美しい〈Go Get It〉‥‥豪雨のようなノイズが低周波マッサージのように強ばった躰を解きほぐし、夢見るようなヴォイスが荒んだ心を優しく愛撫する。今日のドリーム・ポップがシューゲイズから派生したことは感慨深い。
ローレル・ヘイロー(Laurel Halo)の3rdアルバムはヴォーカル入り。NYトロイのマルチ ・アート・センターEMPAC(Experimental Media and Performing Arts Center)の機材を使ってデモを制作した後、先進的なミュージシャンたちとコラボすることで完成させたという。彼女のピアノ、シンセ、ヴィブラフォン、ラメロフォン(guitaret) 、Eli Keszlerのドラムス、ダラブッカ(dumbek)、グロッケンシュピール、LafawndahとKleinのヴォーカル、Craig Clouse(Shit & Shine)のウーリッツア、Diamond Terrifier(Zs)のテナ ー・サックスなど9人がゲスト参加。アロルド・デ・カンポス(Haroldo de Campos)の詩を翻案した〈Sun To Solar〉、日本語で歌う〈Moontalk〉。1stアルバム《Quarantine》(2012)のカヴァに会田誠の「切腹女子高生」を用いて度肝を抜いた彼女は日本の音楽やアートにも精通している。ポップとエクスペリメンタルが共存するアヴァンポップ。シークレット・トラックは〈Who Won〉のアカペラ・ヴァージョン。
ワクサハッチー(Waxahatchee)は2010年に米アラバマ・バーミングハムで結成されたSSW、Katie Crutchfieldのソロ・プロジェクト。風変わりなバンド名は両親の実家のあるアラバマ州ワクサハッチー・クリークに由来する。4thアルバムはKatie Crutchfield(ベース、ギター、キーボード、パーカッション)とギター、ベース、ドラムス、ピアノなどによるバンド編成で、デビュー・アルバム《Tourist In This Town》(Merge 2017)をリリースした双子姉妹のAllison Crutchfieldもキーボードで参加している。写真家ダニエル・シェア(Daniel Shea)が撮ったKatie Crutchfieldのモノクロ・ポートレイト・カヴァは耽美風だが、いわゆるUSインディ・ロックである。ハスキーなヴォーカルがサウンドに陰影をつけている。全10曲・33分。デジパック仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。デビュー・アルバム《American Weekend》(Don Giovanni 2012)と2ndをコンパイルしたCD2枚組《Cerulean Salt》(Wichita 2013)も出ています。
Songs: Grain By Grain / Each To Each / Ilha Dos Prazeres / Tangles / Deck / Vao Queimar Ou Botando Pra Dancar / Seu Pai / Arto Vs. Arto / Uncrossed / Unpair / Pele De Perto
Songs: Blend / Imagining My Man / Living The Classics / Party / I'm So Sorry / Horizon / What If Birds Aren't Singing They're Screaming / The World Is Looking For You / Swell Does The Skull
Songs: Tonada De Luna Llena / Mechita / La Lambada (Chorando Se Foi) / Loca / Estranha Forma De Vida / Vestida De Nit / Ai, Ai, Ai / Gallo Rojo, Gallo Negro / Nao Sei / Corrandes D'Exili / Hallelujah
Songs: Sun To Solar / Jelly / Koinos / Arschkriecher / Moontalk / Nicht Ohne Risiko / Who Won? / Like An L / Syzygy / Do U Ever Happen / Buh-bye / Who Won (Acapella)
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