茅葺きの里、美山に暮らすおじいちゃんとオスネコの義経。訪ねるたびに、ヒトとネコはどこまで深く結ばれるのだろうと考えます。竹林でふたりは出会います。真っ白で毛並みが良く、おじいちゃんにむかって鳴いた義経、野良ではなく迷いネコだったようです。すでに成猫でした。置いていくのが忍びなくなったおじいちゃんは彼を家に連れ帰ります。痩せていて、スッとした切長の目、色白男前だったので「義経」と名付けたそうです。残念ながら、現在は幸せ太りされておられますが(笑)。ふたりは毎朝、散歩をします。おじいちゃんが「義経、行くか」と声をかけると、すくっと立ち上がりついて行きます。その姿は忠犬(忠猫?)そのもの。一緒に田んぼ道を歩き、橋も渡ります。ふたりの絆の深さにただただ驚きます。初夏、1匹のメスが現れました。義経は彼女を気に入った様子でしたが、すでに身重だった彼女は納屋で子を産むと、子ネコの成長を待たずに死んでしまいます。困惑するお家の方々を前に、義経は出ないオッパイを子ネコに与えようとします。義経の子ではないのですが、その時から数ヶ月、義経は子ネコたちの母のようでした。
岩合 光昭 「ねこの京都」
岩合光昭写真展
「ねこの京都」(日本橋三越本店)は1年5カ月かけて撮った京都のネコたち約150点を展示(今回は「自慢のネコ写真」を提出すると、入場券と交換してくれるサーヴィスは残念ながらなかった)。青森のネコたちの四季を撮った
「ふるさとのねこ」と同じく、春・夏・秋・冬の4部構成。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪‥‥白ネコ、黒ネコ、斑ネコ、トラ縞、三毛、子猫、スコティッシュ・フォールド、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、ベンガル種など、京都で暮らす飼いネコたちは気品があって綺麗だった。お寺や神社、神苑、社務所、置屋、町屋、水田‥‥二つ折りの屏風に見立てた写真も雅な趣きがある。特設ブースに設置されたTVモニターから流れていたインタヴューの中で岩合さんも語っていた、美山の茅葺き屋根の家で暮らすおじいちゃん(91歳)とオスネコ・義経の深い結びつき。真っ赤な紅葉に映える黒ネコ(クロベイ)やサビネコ(ジョネ)の佇まいは息を呑むほど美しい。
*
▢ ねこの京都(クレヴィス 2017)岩合 光昭「ねこの京都」の図録を兼ねた写真集。展示作品を全て網羅しているわけではないが、単体でもネコ写真集として愉しめる。写真展と同じく春・夏・秋・冬の4部構成。満開の業平桜を従えて屋根を歩くジョネ、桜の木に登るツキ、十輪寺の渡り廊下を歩くジョネ、祇園の芸妓さんからミルクを飲む子ネコのトラ、神苑の茶室へ向かうツキ、黒ネコのロク、芸妓さんと遊ぶスコティッシュ・フォールドの小雪、おじいちゃんと欄干のない橋を渡る義経。住職の肩に乗る三毛ネコのテル、天橋立を眺めるツキ、置屋さんのブル、松の木の枝のツキ。京都大学・吉田寮のアレク(アレクサンダー)、紅葉を見つめるシマ、社務所の屋根のソラ、境内の散策するクロベイ、ブロンズネコに興味を示すえきちゃん、紅葉に映えるジョネ、巻尾のミーナ、落葉を捕らえるシマ。時計屋で暮らすチョビ、幼顔のチョコ、鴨居から芸妓さんを見送るバル(ハッブル望遠鏡から名付けられた)、道案内するゴマ、木地師に飼われているノルウェージャン・フォレスト・キャットのバサラ、短足のタン、ジャンプするチナ、テルの子の3姉妹、散歩に出かけるハナ、家に迷い込んできたクロを向かい入れる義経‥‥。
▢ ネコとずっと(辰巳出版 2017)岩合 光昭隔月刊誌「猫びより」に連載中の「岩合光昭の猫」に未掲載写真を加えて再構成したネコ写真集。山口・笠戸島の海上で生まれて海上で暮らすチーちゃんとドラミちゃん母娘。山口市昭穂漁港のネコたち。島民約15名に対して100匹以上いるという愛媛・青島のネコたち。静岡・伊豆(下田市)の人里離れた山で出会った母子ネコ。本州最北端の地・下北半島(大間町津鼻崎)の母ネコ。島民約18人に100匹以上が暮らす大分県最南端の深島で流し素麺を啜るネコたち。神戸・北野オランダ坂界隈。愛知・佐久島のブッチーとハナ。徳島・牟岐町の漁港。神奈川・真鶴岬のチャコ(20歳)。青森・弘前のリンゴ園で5匹の仔猫を産んだ母コトラと子ネコたちの春・夏・冬‥‥最後の3つのパートは津軽のリンゴ園で暮らすネコたちの四季を撮った写真展
「ふるさとのねこ」(2015)として実を結ぶ。大型本から野外で暮らすワイルドなネコたち(耳先カット・キャットもいる)の生態が生々しくと伝わってくる。ネコと岩合さんの距離も近いように感じられる。
▢ 日本のねこみち(朝日新聞出版 2015)岩合 光昭北海道から沖縄まで、日本全国1都1道2府43県(47カ所)のネコたちが登場する写真集。表紙カヴァの栢君(奈良・明日香村)、にゃん吉ちゃん(山梨・小淵沢)、みぃちゃん(静岡・富士市)、チビ(長崎・福江島)など、過去の写真集の表紙や写真展のチケット、チラシになった顔馴染みのネコたちも少なくないけれど、決して二番煎じではないネコの魅力に満ちている。見開き2頁にネコ写真と解説文(約200字)、写真展と同じようなキャプションも付いている。巻末にある4つのコラム「猫旅のすゝめ」「猫撮影7つの極意!!」「猫島の歩き方」「佐久島のいい猫」。1. 猫に声をかけましょう。2. ゆっくり距離を縮めましょう。3. リラックスしましょう。4. 望遠レンズを使いましょう。5. 背景の風景も取り込むべし。6. カメラのアングルを猫目線に。7. 自分なりのポイントを定めましょう‥‥岩合流「猫の撮り方」はネコ写真を撮っている人には必読です。
▢ 世界のねこみち(朝日新聞出版 2017)岩合 光昭写真(見開き2頁)に解説文(左・右どちらか一方)とキャプション(写真下の余白)を添えた写真集。『日本のねこみち』(2015)の海外編で、ヨーロッパ(イタリア、スペイン、英国・スコットランド、フランス、ギリシャ、クロアチア、ノルウェー、マルタ、ベルギー、チェコ、ポルトガル、ルーマニア、ブルガリア)、中東・アフリカ(トルコ、エジプト、モロッコ、マダガスカル)、南北アメリカ(キューバ、エクアドル、ウルグアイ、チリ、英国領フォークランド諸島、アメリカ)、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)、アジア(タイ、マレーシア、インドネシア、台湾、中国)‥‥世界各国、51カ所で撮られたネコたちが登場する。撮影地の多くは有名な場所(イタリア・アルベロベッロ、ヴェネツィア、ポルトヴェーネレ)なので、観光案内書としても使えそう。巻末のスペシャル撮り下ろし「岩合さんの撮影に密着!」(8頁)には京都・梅宮大社での1日(朝6時から午後3時まで)の撮影ドキュメントが掲載されている。
▢ ネコへの恋文(日経BP社 2016)岩合 光昭見開き2頁にネコ写真と文章という構成のフォト・エッセイ集。7つのテーマに分かれた50通のラヴ・レターには見憶えのあるネコたちも散見されるが、ネコの写真に「恋文」という親密で私的な文章を添えることで新鮮に感じられる。日本(宮城、青森、島根、群馬、神奈川、広島、北海道、鹿児島、埼玉、沖縄、長崎、山口、熊本、大分、岐阜)、米国(バーモント州、ニューハンプシャー州、ミシシッピ州)、モロッコ(エッサウィラ、シャウエン、マラケッシュ)、ブルガリア(ロドピ地方)、イタリア(パレルモ、シチリア島)、キューバ(コヒマル、ハバナ)、クロアチア(ロヴィニ、ドゥブロヴニク郊外)、スペイン(シエラネバダ)、トルコ(イスタンブール)、フランス(ルシヨン)、ギリシャ(サントリーニ島)、台湾(台北市)で撮られたネコたちは優雅で愛くるしい。「ネコへの恋文」というよりも、ネコ好きの読者へ宛てた手紙のように想われる‥‥「僕もネコになりたい」。
▢ 岩合さんの好きなネコ(辰巳出版 2016)岩合 光昭「オスらしい大きな顔、大きな体の雄々しさに惹かれる。ミケネコの品の良い美しさにも見惚れてしまう。子ネコの愛らしさはもちろん、影の中にいるクロネコの瞳にドキッとさせれる時もある」‥‥と語る「岩合さんの好きな日本のネコちゃん」を集めた写真集。ミケ(鹿児島・薩摩川内・入来)、デブ君(大分・日田)、クジ(香川・佐柳島)、弥哉ちゃん(高知・野市)、クロマメとハナ(山口・萩・雲林寺)、タビちゃん(山口・周南・粭島)、ハチ(広島・宮島)、ガッチャン(広島・庄原)、タマ(広島・福山・鞆の浦)、ニャン太君(兵庫・篠山)、ミケ(兵庫・篠山・籠坊温泉)、ポンズ(京都・丹後・伊根)、ミースケ君(奈良・柳生街道)、栢君(奈良・明日香村)、まる君(愛知・豊田・足助)、ブーちゃん(岐阜・白川村)、ウィリー(石川・金沢)、クロちゃん(新潟・関川村)、クロコちゃん(長野・塩尻・奈良井宿)、なつちゃん(山梨・富士吉田)、ハナ(群馬・みなかみ)、ハートのしっぽ(宮城・田代島)、タヌキ(山形・朝日町)、トラ(岩手・遠野ふるさと村)、オニャン(青森・弘前)‥‥1府24県(33カ所)のネコたちが登場する。
*
- 岩合光昭写真展「ねこの京都」は東京(2017年5月3日~15日)、京都(5月18日~6月4日)、札幌(8月2日~14日)、横浜(8月9日~21日)を巡回する予定です^^
- 劇場版「世界ネコ歩き」が2017年秋に全国で公開されるそうです
*
kai and me / cats and lions / walk with cats 1 / 2 / cat in home / iwago's cats / sknynx / 711
ねこの京都(岩合光昭写真展)
- 会場:日本橋三越本店
- 会期:2017/05/03~15
- メディア:写真
- 構成:春 / 夏 / 秋 / 冬
- 概要:ねこを通して京都を見る。京都の風土に生きるねこを撮影していたら、いつの間にか、敷居が高いと思っていたはずのこの都が、心地よくなっていた。彼らの生き様が古の都の文化を息づかせる。そう、ここはねこが案内してくれた「ねこの京都」。岩合光昭
ねこの京都
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:クレヴィス
- 発売日:2017/04/29
- メディア:単行本(ソフトカバー)
- 目次:春 / 夏 / 秋 / 冬 / あとがき
ネコとずっと
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:辰巳出版
- 発売日:2017/04/20
- メディア:大型本
- 目次:山口・笠戸島 / 山口(山口・粭島)/ 愛媛・青島 / 静岡・伊豆 / 青森・下北半島 / 大分・深島 / 兵庫・神戸 / 愛知・佐久島 / 徳島(牟岐)/ 神奈川・真鶴 / 青森・弘前 / 青森・津軽 / 青森(弘前・板柳)/ あとがき
とらねこ(IWAGO'S BOOK)
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:クレヴィス
- 発売日:2017/03/31
- メディア:単行本(ソフトカバー)
- 目次:まえがき / ドメニコ シチリア / ミコ アムステルダム / ブール パリ / ミスター・ウー ニューオーリンズ / コーラ シンガポール / パブの子ネコ イングランド / トラ 山口 / シキンニョ リオデジャネイロ / アリ スペイン・マドリード / パパライオン アンダルシア / ちくわ 沖縄 / リリー ポルトガル / バディ オーストラリア・ケ...
世界のねこみち
- 著者:岩合光昭
- 出版社:朝日新聞出版
- 発売日:2017/04/20
- メディア:単行本
- 目次:はじめに / ヨーロッパ / 中東・アフリカ / 南北アメリカ / オセアニア / アジア / 岩合さんの撮影に密着!/ あとがき
ネコへの恋文
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:日経BP社
- 発売日:2016/09/29
- メディア:単行本
- 目次:拝啓 ネコ様 / 大きくなったね / 気持ちいいね / 楽しそうだね / 仲がいいね / あったかいね / また会おうね / おわりに
日本のねこみち
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:朝日新聞出版
- 発売日:2015/12/07
- メディア:単行本
- 目次:北海道・東北地方 / 関東地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国・四国地方 / 九州・沖縄地方 / コラム・猫旅のすゝめ / 猫撮影7つの極意!! / 猫島の歩き方 / 佐久島のいい猫 / あとがき
岩合さんの好きなネコ
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:辰巳出版
- 発売日:2016/04/27
- メディア:単行本(ソフトカバー)
- 目次:ミケ(鹿児島・薩摩川内・入来)/ ふくちゃんとかねちゃん(佐賀・唐津)/ デブ君(大分・日田)/ クジ(香川・佐柳島)/ 弥哉ちゃん(高知・野市)/ クロマメとハナ(山口・萩・雲林寺)/ タビちゃん(山口・周南・粭島)/ ガッチャン(広島・庄原)/ ハチ(広島・宮島)/ タマ(広島・福山・鞆の浦)/ ニャン太君(兵庫・篠山)/ ミケ(兵庫・篠山・籠坊温泉)/ ポンズ(京都・丹後・伊根)/ ミースケ君(奈良・柳生街...
コメント 0