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スニンクス 7 0 0 [b l o g]



  • 「真に受けろ、などと本気でおっしゃるのかな」言っているのはサー・ウィルフリッドだった。「動物に人語を教えこむ方法を発見なさり、うまくいった第1号がうちの愛猫トバモリーですと?」「この17年ずっと手がけてきた研究課題でしてね」アピン氏だ。「ですが、ようやく出口が見えてきたのはつい8、9ヵ月前からです。むろん何千頭もの動物相手に実験を重ねてきましたが、ここ最近は猫に限っています。あのすばらしい生き物はわれわれ人間の文明にうまく同化しながらも、猫ならではの高度な野性をそっくり保っている。そして人類と同じく、猫にもずばぬけた知能を持つ個体いが散見されるのでして、1週間前にトバモリーの知己を得たさい、目の前の相手が頭脳抜群の『超猫』であるとすぐわかりました。最近の実験のおかげで研究がかなり進んでいた折も折、おたくさまの呼び名でいうトバモリーが画龍点睛になってくれたというわけです」アピン氏は内心の得意をなるべく抑え、この目ざましいひとくさりをしめくくった。
    サキ 「トバモリー」


  • ♭ 夢みるニーナ〔archives〕2006-08-26
  • 「アーカイヴス」は過去の手書き原稿を再録したシリーズ。ブログ用に大幅に加筆・改稿してあるが、今読み直すと恥ずかしくて穴があったら入りたい。そもそも「音楽」と「少女マンガ」を関連づけること自体が牽強付会だったという気もする。読者のことを念頭に置かない独り善がりな展開も若気の至りというしかない。当時考えていたのは一見関係ないものを組み合わせることで全く異なったものを生み出すマックス・エルンストのコラージュやマルセル・デュシャンの異化効果、ヴァージニア・ウルフの詩的文体やロラン・バルトの断章スタイルと文章を高密度に圧縮することだった。たとえば原稿(400字詰め)10枚分を5枚で書くことに心血を注いでいた。敢えて無茶な制約を課すことで、文体の強度を鍛えるという意味合いもあったのかもしれない。パソコンもインターネットもない手探りの時代の方が逆に自由度が高かったように思える。今はネット上に氾濫している膨大な情報を調べなければ何も書けない時代になってしまった。

  • ♭ 終わらない夏(2001)〔rewind〕2007-07-01
  • 2001年は21世紀の幕開けに相応しく、十数年後の今日まで愛聴されるエポック・メイキングなアルバムが揃った。Fenneszは終わることのない永遠の夏をメランコリックなノスタルジーと共に甘酸っぱく音楽化し、Bjorkはプライヴェートな体験(内面)を深化させることで、9・11のNY同時多発テロを幻視した。「アルゼンチン音響派の歌姫」と呼ばれたJuana Molinaは宅録、サンプリング・ループという方法論で、エレクトロニカ、エクスペリメンタル、ワールド・ミュージックの新たな可能性を示した。今年5月にリリースした7thアルバム《Halo》(Crammed Disc 2017)のカヴァとインナー・ブックレット(3つ折り歌詞カード4枚)には自らを下肢骨に擬人化した骨女キャラが多数載っていて、彼女のコミカルな一面を演出する。「ファナ・ボーンズ」とでも命名して商品化すれば、キモカワ人形のブライス(Blythe)みたいに売れるのではないかと思うほど魅力的で可愛い。

  • ♭ FAVORITE ー BOOKS 3〔favorites〕2008-05-16
  • サイドバーに表示した本を20冊ずつ纏めて紹介して行く、お気に入り本シリーズの第3集。1冊ごとの個別記事にしないで20冊まで更新することにしたのは徒に記事数を増やしたくなかったから。シークリット・ヌーネスの「ミッツ」(水声社 2008)はヴァージニア・ウルフ夫妻の飼っていたマーモセットの視点で描いた半生記。エイモス・チュツオーラの「ブッシュ・オブ・ゴースツ」(筑摩書房 1990)はBrian Eno & David Byrneのアルバム・タイトル(My Life In The Bush Of Ghosts 1981)に使われただけでなく、大江健三郎の「個人的な体験」の中でも言及されていた。「犬身 k e n s i n」(朝日新聞社 2007)は著者の松浦理英子が犬好きなので仕方ないが、「猫身 b y o s i n」でも良かったような。レイチェル・ヘイルの「S M I T T E N」(グラフィック社 2006)は子猫の写真集としては出色ではないかしら。アルフレート・クービンの「対極」(法政大学出版局 1985)は「裏面」(白水社 2015)として復刊されている。タイトルと訳者は異なるけれど、内容は同一です。

  • ♭ 猫のノリータ〔cat's cradle〕2008-11-01
  • お気に入りの「猫ジャケ」を10枚ずつ紹介するネコード・シリーズ第2集。第1集〈猫のスリスリ〉の10枚は手持ちのアルバム(CD)で難なく賄われたけれど、第2弾にして早くもストックが尽きて、猫ジャケ目当てにアルバムを物色する陥穽に嵌まってしまった(クリアランス・セールでネコードを探している人は珍しいかもしれません)。猫ジャケ・アートとして麗しく完成度が高いのは2匹のネコが若い女性の手から擦り抜けるヴァネッサ・ダ・マタ(Vanessa Da Mata)のアルバム。壁面に描かれた大きなチェシャ猫やネコパンチが炸裂する小さな木版画のネコもコミカルで面白い。車に轢かれた哀れなネコとキャット・フードを無視された万力男の2枚は黒いユーモアで塗られている。白い招き猫と10弦ギターの取り合わせにも意外性がある。色盲のフランス人に頬擦りする子猫のポートレイト「男と猫」は最高に可愛い。2016年12月28日に急逝したピエール・バルー(Pierre Barouh)氏のご冥福をお祈りします。

  • ♭ 乳出しモンチ(1996)〔rewind〕2009-04-01
  • 「リワインド」は年間ベスト・アルバム10を遡って行く巻き戻し記事。1988年で一時停止しているのは、ちょうどアナログ(LP)からCDに移行した時期で、古いアナログ盤を引っぱり出して聞き返すのが億劫だから。然りとて、LPレコードをCDで買い直す甲斐性もないけれど、10枚を選ぶ作業は愉しいし、記事を書くことにも吝かではない。超高いデラックス・リイシュー・ブームが去って、Neil Youngのような廉価盤リマスター・アルバムのカタログが充実すれば、CD10枚を買え揃えて70年代まで遡れるはず。Marisa Monteの《Barulhinho Bom》(EMI)はカヴァ・イラストのオリジナル(閲覧注意!)を描いたカルロス・ゼフィロ(Carlos Zéfiro)のことを知っていると感慨深い。軍事独裁政権下のブラジル国内で密かに読まれていたエロ・マンガの作者が実は労働省移民局の公務員だったこと、ブラジル盤が半透明ピンク色のシュリンクを纏っていたことなどを考え合わせると、軍政時代を生き抜いたブラジル国民の複雑な憶いも伝わって来るだろう。

  • ♭ トーマの深層〔comic〕2009-11-11
  • 昨年5月、40年振りに発表された「ポーの一族」の最新作「春の夢」と「訪問者」「湖畔にて」(1976)を併録した別冊付きの月刊フラワーズ7月号が完売して、増刷されたことも記憶に新しい。萩尾望都の「ポーの一族」や「トーマの心臓」が世代を超えた多くの読者に広く深く浸透していることに今更ながら驚かされた(朝日新聞「天声人語」でも取り上げられた)。「トーマの心臓」を初めて読んだ時の印象は薄かったが、3度目に読み直して身震いした。雑誌連載時にリアル・タイムで読んでいた少女たちも編集者も「トーマの心臓」の真価が分からなかったのではないかと思う。真に革新的な作品は同時代人の許容度を超えているのではないか。MoMAが草間彌生のアートを認めるのに30年以上かかったように。発表から43年経ってもユーリ、オスカー、エーリクたちは瑞々しく息衝いている。ちなみに手許にある『トーマの心臓』(小学館 1995)は数年前にBOOK・OFFの100均棚で入手した文庫版で、奥付には「2010年4月20日 43刷発行」とある。

  • ♭ シナモン・ガール〔music〕2010-02-01
  • Neil Youngのオリジナル・リマスター・アルバム《Official Release Series Discs 1-4》(2009)をレヴューした記事。ボーナス・トラックなどの余計な特典は一切省いた高音質の廉価盤シリーズという潔いコンセプトが気に入っている。第2弾、第3弾と続けてリリースされるものと期待していたのに、その後音沙汰が全くなかった。昨年12月に突然発売された《Original Release Series Discs 8.5-12》(2016)という5枚組ボックスはアナログ盤のみ!‥‥昔から気紛れなニールらしいと思いながらも、不可解で割り切れなかった。ところが今年9月に《Original Release Series Discs 5-8》(4CD)だけでなく、《Original Release Series Discs 8.5-12》のCDボックスもリリースされるという。これで名作と称される《On The Beach》(1974)や《Tonight’s The Night》(1975)、《Rust Never Sleeps》(1979)など、9枚のオリジナル・リマスター・アルバムが一挙に出揃うことになるのだ。バラ売りはしないのかしら?

  • ♭ ネコの海(kai)ちゃん〔art〕2010-03-21
  • 岩合さんのネコ写真集と写真展のブログ記事を書いてから7年経ったが、空前のネコ・ブームは沈静化するどころか大フィーヴァー!‥‥ふてニャンやチャルメニャ(広瀬すずの黒ネコ耳コスプレ)など、ネコと何の関係のないTVコマーシャルにもネコたちが登場している。岩合さんのネコ写真集も手を替え品を替えて、毎年新刊が何冊も出版されている。2017年4月に入ってからも『ネコとずっと』(辰巳出版)、『世界のねこみち』(朝日新聞出版)、『とらねこ』『ねこの京都』『ねこ科』(クレヴィス)‥‥ネコ写真集の勢いは衰えるどころか加速度的に増進している。写真展「ねこ」「世界ネコ歩き」「ふるさとのねこ」「ねこの京都」も日本各地を巡回中。「世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム)も放送中。でも全国のネコ好きファンは分かっている‥‥岩合さんの目指すところは写真やヴィデオに留まらず、ネコ(海ちゃん)の映画を撮ることだと。

  • ♭ サキ短篇傑作集〔comic〕2011-02-21
  • 1960年代後半から70年代初頭の少年マガジンは黄金期を向かえる。創刊号から購読している愛読者の年齢層も上がって、青年や大人でも面白く読める週刊マンガ誌に成長していた。上村一夫、川本コオ、真崎・守、旭丘光志、辰巳ヨシヒロ、松本零士の6人のマンガ家による「オリジナル・ショート・シリーズ」(1970)や永井豪、川本コオ、石森章太郎、山上たつひこ、松本零士の5人による競作短篇シリーズ「未来がまつ落し穴」(1971)、ジョージ・オーウェルの原作を石森章太郎がマンガ化した「アニマル・ファーム」(1970)など、劃期的な企画を掲載。その中でもサキの7つの短篇を真崎・守、松本零士、辰巳ヨシヒロ、上村一夫、川本コオ、池内誠一、石原春彦が競作する「異色作家サキ短編」(1970)シリーズは異彩を放っていた。サキの原作ではイタチの王「スレドニ・ヴァシュタール」と人語を話す猫「トバモリー」、マンガでは上村一夫の「灰色の森」が秀逸。銅版画家の林由紀子さん(@PsycheYukiko)がツイッターで記事を紹介してくれました。ありがとう。

  • ♭ 子猫にも貼れる YouTube mini 2〔original skin〕2012-05-16
  • ネコの目のようにクルクル変わるYouTubeの仕様変更には悩まされて来た。試行錯誤した甲斐もあってか、サイドバーに設置されたYouTube miniは正常に表示されている。その一方で、お気に入りの動画20本を纏めた〈FAVORITE ー VIDEOS〉の重さは依然として解消されていない。新しいヴィデオを貼ることを躊躇う理由の1つにもなっているのだが、リンク動画ではなく画像を貼る方法を見つけた。サムネイル画像は動画のID(×××××××××××)をURL(http://i.ytimg.com/vi/×××××××××××/×××××××.jpg)に入れるだけで取得可能。画像サイズ(×××××××.jpg)は大(hqdefault)、中(mqdefault)、小4種(default、1、2、3)から選べる(「Lil BUB's Big SHOW 3」のサムネイル中サイズ)。画像にリンクを埋め込めば、クリックするとYouTubeのサイトが開いて動画が自動再生される。この方法ならばアルバムや本を纏めた記事と同じように重くなることはない。

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    スニンクスの記事数が700本に達しました。100本記念の時は「ACCESS RANKING TOP 10」、500本記念の時は「TOP 50」の記事について「自作解説」したので、今回も70位以内に入った記事の中から過去6回と被らないように10本を選んで自作解説しました。41字×10行の段落を10ブロック並べるのが「スニーズ・スタイル」(skny-style)。写真や動画を貼っただけの空疎な泡沫ブログに抗って、長い記事を書くように心懸け、徒に記事数を増やさないという方針で、漸く700本に辿り着きました。昨年(2016)の12月で丸11年になりました。ソネ風呂は1つの記事に5万字も書けるのだから、短い記事(文章)はブログにアップするまでもなく、TwitterやFacebookなどのSNSで事足りるでしょう。サイドバーの「ACCESS RANKING」にトップ7を表示。タイトルが記事別総閲覧数の一覧表「ACCESS RANKING 70」へのリンクになっています。

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    s k n y s - s y n k s 7 0 0

    s k n y s - s y n k s 7 0 0

    • Author: sknys
    • Articles: 702
    • Provider: So-net
    • Date: 2017/05/16
    • Media: Internet


    Official Release Series Discs 1-4

    Official Release Series Discs 1-4

    • Artist: Neil Young
    • Label: Warner Bros UK
    • Date: 2012/06/19
    • Media: Audio CD(4CD)
    • Albums: Neil Young (1969) / Everybody Knows This Is Nowhere (1969) / After The Gold Rush (1970) / Harvest (1972)


    Halo

    Halo

    • Artist: Juana Molina
    • Label: Coast To Coast
    • Date: 2017/05/05
    • Media: Audio CD
    • Songs: Paraguaya / Sin dones / Lentísimo halo / In the lassa / Cosoco / Cálculos y oráculos / Los pies helados / A00 B01 / Cara de espejo / Andó / Estalacticas / Al oeste


    クローヴィス物語

    クローヴィス物語

    • 著者:サキ(Saki)/ 和爾 桃子(訳)
    • 出版社:白水社
    • 発売日:2015/04/02
    • メディア:新書(白水Uブックス)
    • 目次:序文 A・A・ミルン / 月下氷人 / トバモリー / ミセス・パクルタイドの虎 / バスタブル夫人の逃げ足 / 名画の背景 / ハーマン短気王──大涕泣の時代 / 不静養 / アーリントン・ストリンガムの警句 / スレドニ・ヴァシュタール / エイドリアン / 花鎖の歌 / 求めよ、さらば / ヴラティスラフ / イースターエッグ / フィルボイド・スタッジ──ネズミの助っ人 / 丘の上の音楽 / 聖ヴェスパルース伝 / 乳搾り場への道 / 和平に捧ぐ / モーズル...

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