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スニーズ・シンクス 2 0 1 6 [b l o g]



  • 警官が立直った時には、賊はもう十メートル程向こうを、矢のように走っていました。後手に縛られたままの奇妙な姿が、今にも転がりそうな格好で森の中へと飛んで行きます。森の入口に、散歩の帰らしい十人程の、可愛らしい小学生が、立止って、この様子を眺めていました。二十面相は走りながら、邪魔っけな小僧共がいるわいと思いましたが、森へ逃げ込むには、そこを通らぬわけにはゆきません。ナアニ、高の知れた子供達、俺の恐しい顔を見たら、恐をなして逃げ出すにきまっている。もし逃げなかったら、蹴散らして通るまでだ。賊は咄嗟に思案して、かまわず小学生の群に向かって突進しました。ところが、二十面相の思惑はガラリとはずれて、小学生達は、逃げ出すどころか、ワッと叫んで、賊の方へ飛びかかって来たではありませんか。読者諸君はもうお分かりでしょう。この小学生達は、小林芳雄を団長に頂く、あの少年探偵団でありました。少年達はもう長い間、博物館のまわりを歩き廻って、何かの時の手助をしようと、手ぐすね引いて待ちかまえていたのでした。
    江戸川 乱歩 「怪人二十面相」


  • 11年目のスニンクス(sknynx)は64本の記事をアップした(2015.12~2016.11)。回文シリーズは新年恒例の「回文かるた」を含めて4本。「ネコ・ログ」も4本。洋楽記事は年間ベスト〈キャリーとローウェル〉、タワレコや山手レコードのクリアランス、ブラジル音楽やインディ・レーベルの紹介など計12本。石ノ森シリーズは「スカルマン」や「気ンなるやつら」など4本。アート関連は「萩尾望都SF原画展」と「山岸凉子展」。猫ゆりシリーズは〈猫のコズモ〉〈猫のプリン〉の2本をアップした。番外編〈シューゲイザーの猫〉〈マサルさま〉は音楽ライターとマンガ家を追悼した記事だった。「LaLa40周年記念原画展」に展示されていた「WILD CATS」から派生した〈ネコなのにライオン〉や女装デュオ〈ジェミニとクロディーヌ〉から降りて来た〈2人の女の子〉などにも思い入れがある。れなぴょん(河井玲奈)が地下アイドルから地上へ躍り出たのも嬉しかった。

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    回文シリーズは〈サルと踊るさ〉〈澄み真水〉〈再選・精査〉〈苦汁ザリガニ〉の4本をアップ。〈回文かるた 2016 ー 2007〉は10周年を記念したリンク集。「パリンデックス」のレイティング(5段階評価)で5つ星を付けたのは〈逃げた石原さとみ。シジミとさらば、椎茸煮〉〈茄子・味噌・白滝・鱈・紫蘇・水菜〉〈銀盤審判員半信半疑〉〈喜多嶋舞、夜這う日々。乳母酔い、ママ下着〉〈黒V字ビキニ着る姉、クネクネ歩きに厳しいブログ〉〈土産屋、私語・寝言男。「猫ジャケ」病み?〉の6回文。〈メイド、引っ込み思案。バナナパン味見、小っ酷い目〉はシャルロット・ゲンズブールが主演した映画『小さな泥棒』、〈不動くん、ディスク・ユニオン。鬼行く水天宮、飛ぶ〉は「デビルマン」のイメージを借りている。〈マサルさま〉の記事で紹介した『ダンスがすんだ』(新潮社 2004)が『キネマへまねき』(徳間オリオン 1994)の渾身リニューアルだったことは感慨深い。

    I袋駅前公園の植え込みに三毛がいた。1年前に生まれたネコだというけれど、まだ子猫の面影が残っていて可愛い。初対面なのに人懐っこくて、植え込みの縁に座っていると膝の上に乗ったりもする。先月撮った写真を見ていて、左耳に小さなV字の切れ込みがあることに気づいた。いつ耳先カットされたのか?‥‥そう言えば思い当たる節がある。呼びかけても姿を現わさない日があったのだ。最初に写真を撮ってから約2週間の間に処置(避妊手術)されたのだろう。〈赤い馴鹿〉を飾った写真は耳先カット前の貴重なものになった。S井霊園の中を歩いていたら、1匹のネコが視界に入った。脇道に逸れて墓地へ入ると、茶白、白黒、黒、白、虎縞‥‥どこからともなく、数匹のネコが集まってくる。どうやら夕食の時間らしい。少しすると犬を連れたネコおばさんがキャットフードを運んで来た。墓石や卒塔婆や塀の上を跳び歩く、一際大柄な白黒ネコに目を惹かれる。霊園の守護神ネコのような悠然とした佇まい。「ネコ・ログ」で紹介したいネコたちです。

    石ノ森シリーズは〈骸骨男の復讐譚〉〈江美子ストーリー〉〈霧と薔薇と星と〉〈マリッペと6ベエ〉〈赤い馴鹿〉の5本をアップ。「仮面ライダー」の原型となったダーク・ヒーロー「スカルマン」、お金持ちの娘が不幸な人間たちを救う少女マンガ「江美子STORY」、萩尾望都が「ポーの一族」の着想を得たという「きりとばらとほしと」、屋根伝いに行き来する幼馴染みの男女2人が事件に巻き込まれる「気ンなるやつら」、60年代東西冷戦時の核戦争の恐怖を描いた破滅SF「赤いトナカイ」‥‥。「石森章太郎選集」(18冊)は直ぐに見つかったけれど、『気ンなるやつら』(虫コミックス 1968)を捜し出すのに苦労した。どこにあるのか分からない所在不明の本を何時間も捜し回るよりも、十進分類された本が整然と並ぶ図書館で借りて来た方が手っ取り早いと達観したけれど、古い雑誌やコミック本は家の押入れや物置きの中を捜索しなければならない。

    〈音楽のあなた SFのわたし〉は「萩尾望都SF原画展」(武蔵野市立吉祥寺美術館)、〈メタモルフォシス展〉は「山岸凉子展 光(てらす)」(弥生美術館)の記事。タイトルは「萩尾望都対談集」と「メタモルフォシス伝」のモジリになっている。吉祥寺美術館までの道程は遠いけれど、 破格の入館料(100円!)に誘われて観に行った。近場の弥生美術館は展示方法(ガラス越しに鑑賞、入れ替え展示品の多さ)などに違和感もあったが、文句なく美しく素晴しい原画だった(後期は12月25日まで開催中です)。『山岸凉子画集 光』(河出書房新社 2016)に収録された「対談・インタビュー」も充実している。40年ぶりに発表された「ポーの一族」の最新作は掲載誌「月刊フラワーズ7月号」が完売して、天声人語で取り上げられるほど大きな話題となった(同誌には萩尾望都と山岸凉子の対談も掲載!)。エドガーやアランと共に長く生きて来た読者は感涙ものでしょう。

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      Uncut's Top 10 Albums Of 2016
    • Blackstar - David Bowie
    • A Moon Shaped Pool - Radiohead
    • Skeleton Tree - Nick Cave & The Bad Seeds
    • You Want It Darker - Leonard Cohen
    • Golden Sings That Have Been Sung - Ryley Walker
    • The Hope Six Demolition Project - PJ Harvey
    • A Sailor's Guide To Earth - Sturgill Simpson
    • Hopelessness - Anohni
    • Here - Teenage Fanclub
    • Lemonade - Beyoncé


      The Wire's Best Releases Of 2016
    • Blackstar - David Bowie
    • Lodestar - Shirley Collins
    • Fetish Bones - Moor Mother
    • elseq 1-5 - Autechre
    • Skeleton Tree - Nick Cave & The Bad Seeds
    • Blood Bitch - Jenny Hval
    • Arbina - Noura Mint Seymali
    • Serpent Music - Yves Tumor
    • Security - Gaika
    • Yermande - Mark Ernestus’ Ndagga Rhythm Force


      Pitchfork's The 10 Best Albums Of 2016
    • A Seat At The Table - Solange
    • Blonde - Frank Ocean
    • Lemonade - Beyoncé
    • Blackstar - David Bowie
    • The Life Of Pablo - Kanye West
    • Coloring Book - Chance The Rapper
    • We Got It From Here... Thank You 4 Your Service - A Tribe Called Quest
    • Hopelessness - Anohni
    • My Woman - Angel Olsen
    • A Moon Shaped Pool - Radiohead

    クリアランスの記事はタワレコ新年恒例の〈クリアランス・セール 2016〉〈真夏のクリアランス 2016〉、1年に1日だけのリアル店舗〈山手レコーズ(2016)〉、半期に一度の〈ラティーナの夏〉の4本。〈喘息のキティちゃん〉と〈ジャグジャグウォー〉の2本は米インディ・レーベルの紹介記事。〈ブラジルのポスト・ロック〉というタイトルは羊頭狗肉かもしれない。音楽記事の中では〈ジェミニとクロディーヌ〉が特に気に入っている。正真正銘の〈2人の女の子〉も悪くないと思っているのに、ブロガーの意に反して人気がない。毎年年末の愉しみは海外各音楽メディアの「年間ベスト・アルバム」をチェックすること。今年(2016)の上位はDavid Bowie、Beyoncé、Frank Ocean、Nick Cave & The Bad Seeds、Radiohead、Angel Olsen、Anderson .Paak、 Solange‥‥チャートを眺めながら同じ音楽嗜好のメディアに共感したり、未知のアーティストに出会ったり、師走の慌ただしさの中で聴き浸る洋楽は味わい深い。

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    • 各メディアの「年間ベスト・アルバム」は「AOTY」「Metacritic」でチェック!

    • 某タワレコ・クリアランスでリル・バブ(Lil BUB)ちゃんを捕獲・保護しました

    • 「春の夢」は2017年1月28日発売の月刊フラワーズ3月号から連載されるそうです
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    s k n y s - s y n k s

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    • Author: sknys
    • Articles: 672
    • Date: 2016/12/11
    • Page View: 2,556,487
    • Media: Internet


    怪人二十面相 私立探偵 明智小五郎

    怪人二十面相 私立探偵 明智小五郎

    • 著者:江戸川 乱歩
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2016/09/28
    • メディア:文庫
    • 目次:はしがき / 鉄の罠 / 人か魔か / 魔法使 / 池の中 / 樹上の怪人 / 壮二君の行方 / 少年探偵 / 仏像の奇蹟 / 陥穽 / 七つ道具 / 伝書鳩 / 奇妙な取引 / 小林少年の勝利 / 恐しき挑戦状 / 美術城 / 名探偵明智小五郎 / 不安の一夜 / 悪魔の智恵 / 巨人と怪人 / トランクとエレベーター / 二十面相の逮捕 /「わしが本物じゃ」/ 二十面相の新弟子 / 名探偵の危急 / ...怪盗の巣窟 / 少年探偵団 / 午後四時 / 名探偵の狼藉 / 種明し / 怪盗捕縛 / 解説・辻村深月

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