メタモルフォシス展 [a r t]
山岸 凉子 「画集刊行記念特別インタビュー」
入館者は1階展示室の壁沿いのガラス越しに鑑賞することになる。「山岸凉子ベストセレクション10」には「日出処の天子」(1980)、「常世長鳴鳥」(1985)、「黄泉比良坂」(1983)、「ハーピー」(1978)、「アラベスク 第2部」(1975)のカラー原画5点を展示(後期展示の5点「ひいなの埋葬」「日出処の天子」「妖精王」「テレプシコーラ 舞姫」は複製画が飾られている)。自選したカラー原画は深く沈んだ色合いで耽美的、華やかさや煌びやかさは抑えられている。「『日出処の天子』誕生」の6点は厩戸王子のバイセクシャルな妖しさが匂い立つ。5点のモノクロ原稿はクライマックス・シーン「雨乞い儀式」のカットである。カラー3、モノクロ1点の「山岸凉子セレクション」は額装されて壁に架けられている。手前のガラスケースには懸賞景品の「手鏡」や「アトマイザー」「色紙」や「馬屋古女王」(1985)の扉絵(印刷)などが出品されている。
「『アラベスク』を描く」は第1部(りぼん 1971)のカラー原画4点、2色原稿4点を展示。扉絵(1972)のネヴァ河を挟んだ市街地の背景は作者の家に遊びに来た萩尾望都が描いている。「当時はペンタッチが丸い線が主流で、私も初めは太く描いていたのです。第1部がヒットしていろんな制約がはずれて、〔‥‥〕本来の細い線に戻った」第2部(花とゆめ 1974)の7点。生原稿を間近で見られないことを考慮してか、原画を拡大コピーしたパネルも掲げられている。1階展示室中央のガラスケースには「短編名作選 1976-1979」が展示されている。『リリカ』の仕様(左綴じ・横書き)を知らされずに描いてしまったので絵を反転させたが、着物の打ち合わせが左右逆になって描き直したという「落窪物語」のカラー原画、「ひいなの埋葬」(1976)の予告カット、「天人唐草」「スピンクス」(1979)、「メタモルフォシス伝」(1976)、「妖精王」(1977)の表紙・扉絵6点がある。「美しい娘プシュケー」(1975)の2点はNHKの紙芝居風アニメのために描かれたという。
2階展示室には「女性を描く I」が展示されていた。「黒のヘレネー」(1979)、「あやかしの館」(1981)、「ハトシェプスト」(1995)の3点。「漫画家デビューと初期作品 1969-1971」には「夏の貴賓席」「ラグリマ」(1970)、「雨とコスモス」(1971)。「短編・口絵名作選 1973-1977」には「幸福の王子」(1975)、「シュリンクス・パーン」「カテリス(優美の女神)」(1976)、「愛天子(セラピム)」(1977)、「パニュキス」(1976)、「ラプンツェル・ラプンツェル」(1974)。「『ASUKA』での仕事」には「シークレット・ラヴ」「神かくし」(1986)、「如月」(1989)、「時じくの香の木の実」(1985)、「月読」(1986)。「モノクロームの美しさ」には「アラベスク 第2部」(1975)、「セイレーン」「幻想曲」(1977)、「木花佐久夜毘売」(1986)、手前のガラスケースには「笛吹き童子」(1986)の扉絵校正見本とエッチング、湯呑みもある。
「1981-1998 名作選」には「鏡よ鏡‥‥」「鳥向楽」(1986)、「天鳥船」(1985)、「ダフネー」(1981)、「月氷修羅」「二口女」(1992)、「蛇比礼」(1985)、「ヤマトタケル」(1987)、「封印」(1994)、「牧神の午後」(1989)、「青青の時代」(2000)、「ツタンカーメン」(1996)、「イシス」(1997)。「女性を描く II」には「メデュウサ」(1979)、「ハーピー」「ドリーム」(1978)、『ASUKA』表紙〈天細売命〉(1986)。「日本美術に傾倒」は「鬼来迎」(1981)、「海の魚鱗宮」(1985)、「笛吹き童子」(1986)。「様々な題材」には「星の素白き花束の‥‥」(1986)、「緘黙の底」「パイド・パイパー」(1992)、「鬼」(2002)、「白眼子」(2000)。「エッセイ漫画」は「蓮の糸」(1993)、付録カレンダー「雪降らし観音」(1981)、「トマトとアサリのむき身のスパゲティ」(1983 c.)を展示。
「テレプシコーラ 舞姫」(2000-2006)から7点(カラー3、モノクロ4点)、第2部(2007-2010)から3点(カラー2、モノクロ1点)。「2000年代の作品」は「ヴィリ」(2007)、「コミックスピカ」の表紙(2014)、「レベレーション -啓示-」(2015-)から5点(カラー1、モノクロ4)。細い描線とカラーインクの滲み、細密に描かれたモノクロームの美しさは雑誌や単行本や画集などの印刷物では分からない。90年代以降の作品は熱心に読んでいませんが、リアルタイムで愛読していた「妖精王」や「日出処の天子」、ギリシャ神話をモチーフにした一連の短篇には思い入れがある。「ハーピー」「天人唐草」「狐女」‥‥厩戸王子の負の遺伝子を継承した「馬屋古女王」(1985)や「わたしの人形は良い人形」(1986)も怖すぎる。本人が登場するエッセイ・マンガもギャグ風の絵とのギャップが可笑しいけれど、心底から笑えません。デビューから47年‥‥作者がメタモルフォーゼ(変容)したように、読者もメタモルフォシス(転身)したかしら?
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医学部志望の大田原一は融通の利かない典型的なガリ勉タイプ。新田忍や蘇我要にライヴァル心を燃やしている。期末テストで学年トップになったが、夏休み明けの模擬試験の成績が思わしくなく、焦りから不眠症〜ノイローゼに陥ってしまう。四つ子の姉たちの中で育った小山金四郎はチビで運痴。ナヨナヨした優柔不断な性格で、大西久美の親友・紅子から「オヤマ」と揶揄されている。音楽クラブで趣味のヴァイオリンを弾いている時が一番好き。編入生の蘇我要は文系科目は全然ダメだが、理数系の成績は抜群でスポーツも得意。学業や進路、家庭問題などに悩む大西久美、新田忍、大田原一、小山金四郎たちに夢や幻覚を見せて「転身」させる。秋の学校祭でマージャン同好会を立ち上げ、枯葉舞う風と共に消えてしまう。現実世界に蘇我要(天使?)が舞い降りる「メタモルフォシス伝」は、妖精の国(ニンフィデア)に忍海爵が彷徨い込む「妖精王」(1977-78)とは真逆の設定である。
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- 原画展の記事なのでコミック〔comic〕ではなく、アート〔art〕に分類しました
- 1枚のチケットで2回(前・後期と中期)観覧出来るようにして欲しかったですね
- 記事タイトルは「メタモルフォシス伝」(花とゆめ 1976)のモジリです^^;
- 『メタモルフォシス伝』(潮出版社 2014)に描き下ろし新作「続・恐怖の甘い物一家」が収録されています
cloudbusting / superstar / metamorphosis / sknynx / 669
- アーティスト:山岸 凉子
- 会場:弥生美術館
- 会期:2016/09/30 -12/25
- メディア:コミック
- 展示構成:山岸凉子ベストセレクション10 /「日出処の天子」誕生 /「日出処の天子」モノクロ原画 /「日出処の天子」~山岸凉子セレクション /「アラベスク」を描く /「アラベスク」~2色原稿より~ /「アラベスク」第2部の連載 / 短編名作選 1976-1979 / 女性を描く I / 漫画家デビューと初期作品 1969-1971 / 短編・口絵名作選 1973-1977 /「ASUKA」での仕事 / モノクロームの美しさ / 1981-1998 名作選 /「テレプシコー...
- 著者:山岸 凉子
- 出版社:河出書房新社
- 発売日:2016/09/24
- メディア:大型本
- 目次:プロローグ / 山岸凉子ベストセレクション / 1969‐1975 / 1976‐1979 / 1980‐1985 / 1986‐1999 / 2000‐2015 / イラストエッセイ / モノクロームの美しさ / 対談・インタビュー / 画集刊行記念特別インタビュー / 山岸凉子 略年譜
メタモルフォシス伝 (山岸凉子スペシャルセレクション XIV)
- 著者:山岸 凉子
- 出版社:潮出版社
- 発売日:2014/04/19
- メディア:コミック
- 目次:メタモルフォシス伝 / ネジの叫び / 恐怖の甘い物一家 / 続・恐怖の甘い物一家
2016-11-21 00:13
コメント(2)
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山岸涼子さんの原画展、いいですね。
ものすごく美しいでしょうね。
漫画家さんのカラー原稿って、ため息が出るほどきれいですよね。
私は最近、ちびまる子ちゃんの作者の原画展を見ました。
まるこちゃんはあんな絵だけど、
おしゃれにイラスト風にかかれた周りの絵は本当にきれいでした。
まして山岸涼子さん!
アラベスクも大好きでしたが、なんといっても日出処の天子、
夢中で読みました。^^
by ぶーけ (2016-11-27 18:28)
「私も20歳までにデビューできなかったら漫画家になれないと思って、
死ぬほど焦りました。デビューできるまでの4年間は地獄のようでした。
毎年、歳をとることを恨みながら、18歳になってしまった、
19歳になってしまったと半泣きでした」
山岸さんは遅咲きだったためか、作品に賭ける思いには熱いものがある。
「アラベスク」の扉絵を描くのに1週間(以上)かかったとか、
男性キャラの顔が8マンになっちゃうとか‥‥そうか、毛人って、
東八郎(コメディアンではありません!)だったのか^^;
スクリーントーンやホワイト(修正)のない綺麗な原画でした。
展示入れ替えが多数あるので、後期も見に行く予定です^^
by sknys (2016-11-27 19:59)