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音楽のあなた SFのわたし [a r t]


  • SF Artworks © 2016 Hagio Moto


  • 小学生の頃からSFが好きでした。でも、お友達にSFを薦めようとしても10人のうち9人はひいてしまう。だからたまに「私もSFが好き」という人に会うととても嬉しかった。/ 私がプロになった頃、少女マンガではSFはあまり描かれていませんでしたし、私がSFマンガを描いても読んでくれる読者はあまりいなかったのではないかと思います。/ それでも描き続けている間には、私のマンガで初めてブラッドベリを知りました、というような読者も現れました。そんな人には「ぜひ原作を読んでみて!」と薦めます。アメリカの短編だったら、O・ヘンリーからポーにいき、ブラウンにいき、ブラッドベリへ、という流れをたどると、だんだんSFに近寄っていきます。/ そうして1人また1人とこちらの世界に来てくれたらいいですね。どんどん新しいSF小説が翻訳されているので、私はいつでも楽しみに読んでいます。/ SFのイラストを描くのは萌えます。好き放題に妄想を飛ばすことができますから。いろいろなものが出てきたり、踊ったり、頭の中が活火山のようになります。
    萩尾 望都 「萩尾望都 SFアートワークス」


  • ● 萩尾望都SF原画展(武蔵野市立吉祥寺美術館)
  • 萩尾望都の「SF原画展」に行って来た。高校時代は三鷹に住んでいたので、吉祥寺は「裏庭」みたいなものだったが、引越してからは疎遠になってしまった。新宿から中央線快速で三鷹まで行って一駅戻れば時間的には早い。しかし、長距離移動なので交通費は嵩む。旧伊勢丹FFビル(コピス吉祥寺A館7階)にある吉祥寺美術館。小さな画廊のようなスペースにカラー原画、カラー・イラストなど約200点を展示(途中でメモを録りたくなって、受付で鉛筆を借りた時に「後期展示リスト」を手渡された)。入館料は100円。「萩尾望都原画展」(池袋西武本店・別館2階=西武ギャラリー 2009)とは対照的に商業主義は控え目。併設されている「ミュージアムショップ」の物販品(ポストカード、クリアファイル、Tシャツ、トートバッグ、著作物など)も少ない。新刊の『一瞬と永遠と』(朝日文庫 2016)も見当たらない。ジュンク堂書店(B館6階)に立ち寄って、新装版 萩尾望都作品集『なのはな』(小学館 2016)を購入しました。

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  • ● CHAPTER I 1970s SF初期
  • 「あそび玉」(1972)の予告カット、原稿(3点)、オリジナル原稿紛失のため、ゲラ刷りから起こしてホワイトで修正したという「あそび玉についてのエピソード」(1980)。「6月の声」(1972)の扉絵と原稿(6点)。「精霊狩りシリーズ」の扉絵(3点)、「精霊狩り」(1971)の原稿(4点)、「ドアの中のわたしの息子」(1972)の原稿、「みんなでお茶を」(1974)の原稿(3点)。「ユニコーンの夢」(1974)の扉絵と原稿(8点)、「キャベツ畑の遺産相続人」(1973)の原稿。「1ページファンタジア」(1973)。「11人いる!」(1975)前編のカラー扉絵と予告カット、パートカラー原稿。「続・11人いる!東の地平 西の永遠」(1977)中・後編のカラー扉絵。「スター・レッド」(1977-78)のカラー表紙、扉絵と第1話のパートカラー原稿(8点)、萩尾望都作品集第II期の表紙カヴァ(2点)、モノクロ扉絵(4点)、原稿(7点)。イラストポエム「追憶」(1976)。「フレア・スター・ペティコート」(1979)のカラー扉絵とパートカラー原稿(8点)。

  • ● CHAPTER II 1970s・1980s コラボレーション
  • 「百億の夜と千億の夜」(1977-78)のパートカラー扉絵、表紙カヴァ、扉絵(2点)、原稿(2点)。「ブラッドベリ傑作選」(1977-78)「みずうみ」のカラー扉絵、「ぼくの地下室へおいで」の原稿、「ウは宇宙船のウ」のカラー扉絵、「びっくり箱」のカラー扉絵と原稿、「集会」の扉絵と原稿、萩尾望都作品集第II期第6巻の表紙カヴァ。野阿梓『兇天使』(1986)のカラー口絵と挿絵(10点)と「花狩人」(1979)の挿絵(3点)。ゴードン・R・ディクスン『ドラゴンになった青年』(1977)、トマス・バーネット・スワン『薔薇の荘園』(1977)、ディ・キャンプ&プラット『妖精の王国』(1980)、タニス・リー『闇の公子』(1982)、『惑乱の公子』(1986)、ジャック・ヴァンス「魔王子シリーズ」(1985-86)、ロジャー・ゼラズニイ『光の王』(1985)、光瀬龍『猫柳ヨウレの冒険』(1984)、『あいつらの悲歌』(1987)、佐藤茂『∀ガンダム』(1999-2000)の表紙カヴァ。イメージ・アルバム『星の光と伝説』(1982)のカヴァ。ペーパームーン「大予言と奇蹟ファンタジイ」(1980)。木下司「ピアリス」(1994-95)の口絵(11点)。

  • ● CHAPTER III 1980s・1990s SF中期
  • 『銀の三角』(1982)のカラー口絵と上製本の表紙カヴァ、カラー口絵(2点)、原稿(8点)。「緑柱石(ベリル)」(1982)のカラー口絵。「モザイク・ラセン」(1982)のカラー扉絵。一角獣シリーズ「A-A'」(1981)、「4/4カトルカース」(1983)、「X+Y」(1984)のカラー扉絵(4点)。「マージナル」(1985-87)のカラー扉絵(8点)と表紙カヴァ(5点)、原稿(3点)。「ハーバルビューティ」(1984)のカラー扉絵。「あぶない丘の家」(1992)のカラー扉絵(2点)。「海のアリア」(1990-1991)のカラー扉絵と原稿(5点)。「西風のことば」のカラー口絵(1995)。90年代のSF作品が少ないのは「残酷な神が支配する」(1992-2001)を長期連載していたから。「銀の三角」はストーリも絵も萩尾望都SF作品の到達点の1つだと思う。

  • ● CHAPTER IV 2000s SF近作
  • 「バルバラ異界」(2002-04)のカラー扉絵、予告カット、原稿(5点)。ケイト・コンスタブル『トレマリスの歌術師』(2008-09)の表紙カヴァ。「AWAY」(2013-14)のカラー扉絵、原稿、予告カット。「宇宙運転免許証」(2006)の扉絵、原稿。シリーズここではない★どこか第4話「ゆれる世界」(2006)の原稿(2点)。「11人いる!」のアニメ映画DVD(2002)、ドラマCD(2013)、アメコミ誌(1995)。「スター・レッド」連載開始時の『週刊少女コミック』(1978)、下敷き(1980年代)。イメージ・アルバム『百億の夜と千億の夜』(1984)、連載開始時の『週刊少年チャンピオン』(1977)。トマス・バーネット・スワン、ゴードン・R・ディクスン、ディ・キャンプ&プラット、光瀬龍、タニス・リー、ロジャー・ゼラズニイ、ジャック・ヴァンス、野阿梓、佐藤茂の文庫本。『ペーパームーン』『S-Fマガジン』‥‥関連資料や原稿がガラス・ケースの中に収まっている。

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  • ● 萩尾望都SFアートワークス(河出書房新社 2016)
  • 萩尾望都SF作品のカラー・ページやイラストなどを再録した大型原画集。「1970年 SF初期」「1980~90年 SF中期」「1980~90年 SF中期」「2000年 SF近作」「1970~2010年 SFマンガの世界」(モノクロ原画)の年代順に「11人いる!」「スター・レッド」「百億の夜と千億の夜」「銀の三角」「マージナル」「モザイク・ラセン」「海のアリア」「バルバラ異界」などの長編や短篇50作品を網羅。序文(プロローグ)に「SFのイラストを描くのは萌えます」と書いているように、パステル・カラーに彩られた原画は美しく、溜め息が出るほど。扉絵、表紙カヴァ、口絵、挿絵、ポスター・予告カット、カラー原稿‥‥「フレア・スター・ペティコート」は手書きネームなので読み難い(モノクロ・ヴァージョンは「文藝別冊 萩尾望都」(2010)に掲載)。雑誌連載時にリアル・タイムで読んでいた「スター・レッド」が表紙カヴァ(裏カヴァは阿修羅王)に使われたのは感慨深い。イラストに添えられた作者のコメントも愉しい。巻末に「萩尾望都の主なSF関連仕事年表」を併録。

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    • 原画展の記事なのでコミック〔comic〕ではなく、アート〔art〕に分類しました

    • 「萩尾望都作品目録」に「萩尾望都SF原画展」の展示作品一覧があります

    • 新装版『なのはな』(小学館 2016)は「福島ドライヴ」、文庫版『一瞬と永遠と』(朝日新聞出版 2016)は「女心」「わが師の恩」の2篇を追加収録。文庫版によせて「道のり」で「トーマの心臓」の原稿料が倍に上がったエピソードを明かしている

    • 月刊フラワーズ7月号に「ポーの一族」の最新作「春の夢」(前編)が掲載されます

    • トップ画像(レッド・星、阿修羅王)をランダム表示にしました(2020-01-24)
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    萩尾望都SF原画展

    萩尾望都SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく

    • アーティスト:萩尾 望都
    • 会場:武蔵野市立吉祥寺美術館
    • 会期:2016/04/09 - 05/29
    • メディア:コミック
    • 展示構成:1970s SF初期 / 1970s・1980s コラボレーション / 1980s・1990s SF中期 / 2000s SF近作 / 関連資料


    萩尾望都 SFアートワークス

    萩尾望都 SFアートワークス

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2016/04/09
    • メディア:大型本
    • 目次:プロローグ 文・萩尾望都 / 1970s SF初期 / 1970・1980s コラボレーション / 1980・1990s SF中期 / 2000s SF近作 / 1970s-2010s SFマンガの世界 / 萩尾望都の主なSF関連仕事年表


    一瞬と永遠と

    一瞬と永遠と

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:朝日新聞出版
    • 発売日:2016/05/06
    • メディア:文庫
    • 目次:青緑色の池 / 先生の住所録 / 青の時代──「アイロンをかける女」/ 青のイメージ /「声」の通り道──天童大人「聲ノ奉納」/ 宙空漂う「なぜ」の問いかけ / 一瞬と永遠と / 地球の半分の雪 / 安里屋ユンナ / 私は生き物。同じ生き物。/ ガラパゴス・ハイ / 女心 / わが師の恩 / 食卓にはブラッドベリの幸福を / 単純な解答 / 幻想に帰すディック / クッ...


    なのはな 新装版: 萩尾望都作品集

    なのはな 新装版: 萩尾望都作品集

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2016/03/10
    • メディア:コミック
    • 目次:なのはな / プルート夫人 / 雨の夜──ウラノス伯爵 / サロメ20XX / なのはな──幻想『銀河鉄道の夜』/ 福島ドライヴ /「福島ドライヴ」について


    マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都 対談集 1970年代編

    マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都 対談集 1970年代編

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2012/02/21
    • メディア:単行本
    • 目次:手塚 治虫「SFマンガについて語ろう」/ 水野 英子「私たちって変わり者かしら」/ 石ノ森 章太郎「SFの話は延々尽きない」/ 美内 すずえ「親愛なるモー様へ」/ 寺山 修司「月で修学旅行の案内係」/ 小松 左京「絵の理想型とは?」/ 手塚 治虫+松本 零士「マンガ、SF、アニメーション」/ 羽海野 チカ「全部、萩尾作品から学びました」

    コメント(2)  トラックバック(0) 

    コメント 2

    PineWood

    本展示を見て来ました…。本展示リストや新装版の情報等貴重ですね。確かに物品コーナーが小さい為か光瀬龍氏原作本の新装版カヴァーの(百億の昼と千億の夜)等も並んでいなかったりー。ですが、SF に焦点を絞った濃密な展示空間で有った様です。本が自由に閲覧出来る様なスペースが取れると更に佳かったと思いましたー。SF を読んで頭の中が活火山の様に萌えた事で出来た作品の詩情に打たれましたー。また、3.11の衝撃で構想されたという新装版の(なのはな)も是非とも読みたくなりました。
    by PineWood (2016-05-30 05:33) 

    sknys

    PineWoodさん、コメントありがとう。
    SF作品に囲まれて、近未来や異世界にトリップしたような気分になりました。
    前・後期で入れ替えがあったのは展示スペースが狭かったから?
    「展示リスト」(4頁)は入館者の目に着くところに置いて欲しかった。

    新装版『なのはな』は「福島ドライヴ」(40頁)を追加収録。
    東日本大震災・原発事故後、「ここではない★どこか」シリーズが
    描けなくなったと、山岸凉子との対談(flowers 7月号)で語っています。
    「ポーの一族」の最新作も必読!
    by sknys (2016-05-30 12:13) 

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