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ネコ・ログ #41 [c a t a l o g]

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  • ノラネコ ── つまり自由ネコと、飼いネコを、地球を旅するたびに探します。ただ漠然と、どこかにネコはいないかなぁ‥‥だけではネコは見つかりません。いつもネコのきもちになっていて、どこがネコに居心地がいいかを、考えながら探して歩きます。目がその土地になれてくると、あそこの塀の上に、建物と建物との隙間にと、ネコが見つかってきます。まあ、そうしたところでは何を見てもネコに見えてしまいがちではありますが。/ ネコを見つけても、ネコはひっそりと隠れているつもりですから、ダァーッとは接近しないようにします。ネコちゃん、あなたはまだだれにも見つかってはいませんよ、といった顔で、からだを斜めにしながらジワジワ忍びよります。もうネコになってしまう、ということです。
    岩合 光昭 「ブルース・キャット」


  • #361│アク│飼い猫 ──「友達だよね」
    片耳折れのアクちゃんは黒ネコのソランと同じ家で女主人に飼われている。人懐っこくて社交的なソランとは対照的に、気難しくてセンシティヴなアクちゃん。初対面の時は余りにも妖艶で、ネコではない何か他の生き物の化身のようにも想えた。「ミャウ、ミャウ」と鳴いて近寄って来るけれど、体に触れられるのは嫌いらしく、下半身に触ると鋭く鳴いて威嚇する。とても繊細なネコなのだ。ロシアンブルー系の高貴な色合いとマリン・ブルーから淡いイエローにグラデーションする目の色が神秘的で麗しい。目の中に美しい地中海が広がっている。この界隈で2匹と出会う確率は3:7くらいで、断然ソランの方が高い。それだけにアクを見つけた時は心躍る。今日は機嫌が良いかしら?‥‥と、アクちゃんの顔色を窺いながら近づく。「友達だよね」と会話を交わしながら、カメラのシャッターを切る。

    #362│プー│飼い猫 ── デブ猫は小心者?
    動物全般に当て嵌まるのかどうかは分からないけれど、少なくともネコに関しては躰の大きさと気の強さは反比例するように想われる。チビ黒のピアは散歩中の犬へ物怖じせずに立ち向かっていたし、小さなトミー(♀)さんは大柄のサビ(♂)を威嚇して近寄らせなかった。女飼主の持つ赤いリードに繋がれたプーさんは巨漢なのに滑稽なほど臆病だった。地面に寝そべっているところを撮らせてもらう。至近距離からネコ目線でカメラのシャッターを2回切った。初対面の撮影者に驚いたのか、聴き慣れないシャッター音に怖れを抱いたのか、その体躯からは想像出来ないような物凄いスピードで一目散にアパートの外階段を駆け上がって行った。プーは強面や図体に反して極度の小心者だったのだ。女飼主も半ば呆れたように困ったように苦笑いする。1枚目は残念ながらピンボケだった。ブログに載せたプーの写真は2枚目である。

    #363│デラ│ノラ猫 ── 人間観察中
    ヒトがネコを見守っている以上にネコはヒトを観察している。野性を失って久しい人間どもがネコの気配を察知出来ないだけのこと。日本全国津々浦々に監視・防犯カメラが設置される遙か昔から、ネコは人間を注視して来た。大きな石の上に座って目の前を通り過ぎる二立歩行の動物たちを注意深く観察しているデラちゃん。その太々しい面構えは通勤、通学、買い物客、散歩人など‥‥毎日行き交う人々を雲の上から俾倪しているかのようでもある。最近は細長い蒲鉾の板を見つめ、指で弄りながら歩いている老若男女が多いにゃん。これではネコどころか、周囲の景色も目に入らないだろう。二輪車を漕ぎながら片手で蒲鉾の板を見ている不埒な輩もいる。それでもデラの存在に気づいて近づいて来る人たちには友好的で、ビロードのような光沢のある黒い毛並みを撫でても全然嫌がらない。女子供たちにも人気がある。毎日食事を運んで来るネコおばさんとも仲が良い。

    #364│ミス│飼い猫 ── 申年(2016)もよろしくにゃん
    三毛スコのミスちゃんに魅了される。初めて出合った時の表情には脅えや警戒心が見て取れたものの、2度目からは打ち解けて仲良くなった。周囲に気配がなくても、猫語で呼びかけると女忍者くノ一みたいに突如として姿を現わす。家の中にいても呼び声が聞こえると、玄関扉の下にあるキャット・スルーを駆け抜けて来るという仕掛け。鉢植えのある民家の飼い猫だとばかり思い込んでいたら、斜め向かいの家ネコだった(鉢植えの家の飼いネコはビックリ眼の茶トラの方だった)。人懐っこくて無防備な性格はネコ族の天然系とも言えなくもないスコティッシュ・フォールド。石柱の陰から通りを窺っているミスちゃん。翳って暗くなって来たので、黒目が大きくなって可愛さ倍増にゃん。暫く会っていないけれど、忘れずに憶えていてくれるかしら?

    #365│シコ│ノラ猫 ── ミント・グリーン・アイズ
    I袋駅前公園のシコちゃんは目が合うと律儀にも挨拶しに来る。触れ合いのセレモニーが終わると、何事もなかったように離れて行ってしまう。人間の恋人たちのようにベタベタしないところがシコらしい。白と黒のツートン・カラーで、マズルから胸‥‥前肢だけが白い。口の下の黒い部分は「顎髭」のように見えなくもない。マンガやアニメ・キャラの次元大介やポップ・アーティストの村上隆を想い浮かべる人もいるかもしれない。シコのチャーム・ポイントはミント・グリーン色の目にある。大きくはないけれど、稀少な宝石のように光り輝き、森閑の湖水のように深く湛える。毛並みを撫でても平気だが、短い尻尾に触れられるのは嫌いらしく、素早く振り向いてミャーと鳴く。I袋駅前公園で暮らすネコたちの顔触れも月日の流れと共に変わって来た。今や古株となったシコちゃんにも貫禄が出て来た。

    #366│トイ│ノラ猫 ── ネコおばさんが来た!
    中央公園内に設置された公衆トイレの裏で屯していることの多いトイちゃん。絨毯のように枯葉が敷き詰められた空き地に木漏れ日が差す。気持ち良さそうにゴロニャンすると、枯葉や枯れ枝が体中に纏いつく。いつも眠たそうな半眼というか、近視の美男美女のように目を細めているせいで、トイちゃんの魅力は半減している。綺麗なエメラルド・グリーンの目が際立たないから。自転車に乗った人が舗装路を通りがかると、足早に駆け寄って行く。間違えちゃった!‥‥ゴハンを持って来るネコおじさんじゃなかった。落胆したトイが元いた場所に戻って来る。そろそろ夕食の時間ではないかしら。ボクの腹時計は正確なのだ。眠たげなトイが突然、目を瞠る‥‥「今度こそ、ネコおばさんが来た!」。その瞬間の生き生きとした表情が撮れたのは僥倖だった。見目麗しい目をしているでしょう?

    #367│ドミノ│飼い猫 ── 寒波で固まっちゃったの?
    狭い車道を隔てて向かい合った2軒の民家。数年前は数匹のネコたちが車道にいたのだが、今では見る影もない。T区立図書館へ向かう道すがら、旧ネコ屋敷を横目で窺うと1匹のネコが道端にいた。もしかして茶トラのドミノちゃんではないかしら?‥‥暫く見かけなかった間に少し痩せたような気もするけれど、健気にも往来へ出て来てテリトリー内に何か異常がないかどうかチェックしている。日本列島を襲った強烈な寒波に耐えているのか、ドミノちゃんは微動だにしない。固まってしまったネコは玄関に鎮座している犬の置き物や屋根や塀の上シーサーのようでもある。寒さに凍えながらネコ写真を撮っていると、民家の中から男性の声がした。飼主が家の中に入るように促しているのだった。徐ろに暖かい屋内へ戻るドミノちゃん。今日のパトロールは終了です。

    #368│ヌル│ノラ猫 ── 真正面キャット 2
    カメラを構えて照準を定めると、横を向いて目線を外してしまうネコたち。真正面から撮れるチャンスは意外と少ない。『日本のねこみち』(朝日新聞出版 2015)には北海道から沖縄まで、1都2府43県のネコたちが登場する。写真集や写真展で見たことのある顔馴染みのネコたちも少なくないけれど、決して二番煎じではないネコの魅力に満ちている。巻末コラムの「猫撮影7つの極意!!」も必読です。「1.猫に声をかけましょう。2.ゆっくり距離を縮めましょう。3.リラックスしましょう。4.望遠レンズを使いましょう。5.背景の風景も取り込むべし。6.カメラのアングルを猫目線に。7.自分なりのポイントを定めましょう」‥‥殆ど実践していることですが、4と5だけは実行していない。ネコに気づかれないように遠くから「盗撮」するのは気が引けるし、撮影現場が特定されるのは出来るだけ避けたいと思うから。都会(東京23区内)の雑然とした風景もネコの容姿に見合うほど美しくないしね。

    #369│パル│ノラ猫 ── 撫で撫でしてね
    毎年夏になると薮蚊に刺された鼻先や耳の後ろが赤剥けになって痛々しかったパルちゃん。ネコおじさんに軟膏を塗ってもらっていたのに、爪で引っ掻き過ぎて毛根細胞が死滅してしまったという。子ネコの頃のような純真無垢な可愛さはないものの、呼びかければ駆け寄って来たし、顔馴染みの人には挨拶に来た。パルが回復の見込みのない病に冒されていることは、動物病院で診てもらったというネコおじさんやネコおばさんから聞いていたけれど、今年1月に容態が急変して亡くなったのはショックだった。「ミャーミャー」と鳴いて甘えて来た。ゴロニャンして白くて柔らかい腹部を見せるので、何度も何度も撫でてあげた。パルには最期に何か言いたいことがあったのかもしれない。体の変調を訴えてたかったのか、それとも別れの挨拶をしたかったのか‥‥パルちゃん、今まで一緒に仲良く遊んでくれて本当にありがとう。合掌。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第41集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ360匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第41集の常連ネコはアク、シコ、パルちゃん。三毛スコのミスちゃんも2度目の登場です。「猫は三年の恩を三日で忘れる」「猫は3日で主人を忘れる」と言われて来ましたが、ロンやソラン、レイなどは1カ月逢わなくても猫語で呼べば駆け寄って来ます。もちろんゴハン目当てでも、写真を撮って欲しいからでもありません。足許に纏いつき、頭を擦りつける‥‥彼らはネコ流の挨拶をしに来るのです。ネコとの交歓‥‥「空前のネコ・ブーム」も人間たちが騒いでいるだけにゃん。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    日本のねこみち

    日本のねこみち

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:朝日新聞出版
    • 発売日:2015/12/07
    • メディア:単行本
    • 目次:北海道・東北地方 / 関東地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国・四国地方 / 九州・沖縄地方 / コラム・猫旅のすゝめ / 猫撮影7つの極意!! / 猫島の歩き方 / 佐久島のいい猫 / あとがき


    「いい猫だね」僕が日本と世界で出会った50匹の猫たち

    「いい猫だね」僕が日本と世界で出会った50匹の猫たち

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:山と渓谷社
    • 発売日:2015/12/04
    • メディア:新書
    • 目次:記憶のネコ / ふるさとのネコ / 一瞬の出会い / ご主人思いのネコ / 相棒とネコ / ジャンプ! / 王様たち / 街のネコ / 海辺のネコ / 古都のネコ / 母と子 / あとがき


    ブルース・キャット ネコと歌えば

    ブルース・キャット ネコと歌えば

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:筑摩書房
    • 発売日:2015/11/11
    • メディア:文庫
    • 目次:ブルース・キャット / あとがき / 文庫版あとがき

    タグ:catalog cats iwago
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    コメント 2

    ぶーけ

    どの子もかわいいですね。^^
    それにしてもsknysさんの周りにはどうしてこんなにネコさんたちがいるのかしら?
    花粉、おさまりましたか?
    by ぶーけ (2016-04-02 21:46) 

    sknys

    「ネコを探すには歩く、ひたすら歩く、それしか方法がありません」
    と岩合さんは書いています。
    ノラ、飼いネコを問わず、可愛い表情を撮りたいと思っていますが、
    「ハイ、チーズ!」と声をかけてもネコは笑ってくれません^^;
    皮膚科で「帯状疱疹」と診断されちゃいました。
    by sknys (2016-04-03 01:13) 

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