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ネコ・ログ #40 [c a t a l o g]

  
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  • 私の母親は当初、あまり猫が好きではなかった。/「猫なで声で甘えているくせに、背中を向けると舌を出している」/ と言って、猫に冷たかった。/ 私が小学生低学年のころ、二代目か三代目のコゾが深夜、二階の寝室の枕許に来て鳴いた。いつもとちがう鳴き声に目を覚ました私は、ふと異臭を嗅いだ。コゾは階段の上に行って、さらに鳴いた。コゾに引かれる形で階段の下り口に行った私は愕然とした。階下が烟っている。私は咄嗟に火事だと叫んで、両親や家族を叩き起こすと、階下に駆け下りた。/ 炬燵から朦々と煙を発しており、母は竃の上に水のあんばいをしてといであった米入りの釜を取って来て、米ごと炬燵にかけた。発見が早かったので、小火のうちに消し止められた。最後の訪問客の煙草の火が炬燵布団に残っていて、くすぶり始めたらしい。危ないところをコゾによって救われたのである。/ それ以後、母親のコゾに対する態度は一変した。大の猫嫌いであった母が、コゾを目に入れても痛くないような、文字通りの猫っ可愛がりをするようになった。
    森村 誠一 「運命の猫」


  • #352│ラス│飼い猫 ── 錆は決して眠らない(ニール・ニャング)
    ニール・ニャングの「錆は決して眠らない」(1979)はパンク・ムーヴメントに触発されたライヴ・アルバムである。「錆つくよりは燃え尽きたい」(It's better to burn out than it is to rust)という歌詞の一節が自殺したキャット・コバーン(ニャルヴァーナ)に遺書に引用されていたことでも知られる。類は友を呼ぶのか、黒と茶色のサビ模様のネコが錆びて変色した鉄柱に纏わりついていた。まるで昆虫の擬態や保護色のように鉄柱と同化している。錆と一体化するだけでなく、錆びた鉄の固まりを舐める。苦くないのか、それとも鉄分の補給なのか?‥‥ネコの行動は驚きと謎に満ちている。◯◯銀座商店街の道端。タバコ屋さんの看板ネコらしくて、通りがかったオバさんがネコの名前を呼ぶ。錆と同化したカメレオン・キャットのラスちゃんがニール・ニャングやキャット・コバーンのように「錆つくよりは燃え尽きたい」と思っているかどうかは分からない。

    #353│リン│ノラ猫 ── 不思議な眼差し
    「ふるさとのねこ」(渋谷ヒカリエ 2015)は青森県津軽のリンゴ農家で飼われているコトラと5匹の子ネコたちの1年間を撮った写真展。春・夏・秋・冬‥‥鮮やかに移り変わる東北の四季の中で成長する子ネコたち(リッキー、ハナ、オフク、シマ、吾輩はネコ)が生き生きと捉えられている。最終コーナーに展示されていたネコの表情が忘れられない。身籠ったハナの不思議な眼差し‥‥カメラを見つめて何かを岩合さんに伝えようとしているかのようだ。もしネコが人語を話せるのならば、もしヒトが猫語を解せるのならば何と言ったのか分かるのだが‥‥。I袋駅前公園のリンちゃんも一段高い植え込み縁に座って、不思議な眼差しでカメラを見つめる。左前脚を懐手にした変形箱座り。背景が綺麗にボケるのは一眼レフ(ミラーレス)で撮っているからです。

    #354│ミス│飼い猫 ── 三毛スコちゃんとの遭遇
    沿線の細い道から民家の建ち並ぶ路地に入ると茶色いネコがいた。黒目の大きな可愛いネコだったが、すぐに家と家の隙間の奥へ逃げてしまう。何気なく視線を手前に移すと、民家の前の鉢植えの陰に1匹の三毛ネコが隠れていた。警戒心と好奇心が相半ばした目で互いに見つめ合う。両耳が折れたスコティッシュ・フォールドの三毛だった。この写真のように初対面の時は近寄れなかったけれど、2度目からは打ち解けて仲良くなった。この種族は天然ではないかと思うくらい人懐っこく、無防備な性格なのだ。姿は見えなくても猫語で呼びかけると、どこからともなく魔法のように現われる。先日、そのミステリアスな現象が解明された。鉢植えのある家のネコではなく、斜め向かいの家の飼いネコだったのだ。飼い家の玄関ドアにはネコ専用の出入口が付いている。屋内で呼び声を聞いたミスちゃんがキャット・スルーから音もなく出て来ていたのだ。鉢植えのある家の飼い猫だと思い込んでいたので、ジバニャンのように不意に現われたように錯覚していたのである。

    #355│レイ│飼い猫 ── 真正面キャット
    ネコは真正面から見られることを極度に嫌う。人見知りとか、対人恐怖症というわけではなく、目の前の視界を遮られるのが嫌なのだろう。正面からネコの写真を撮ろうとしてカメラを構えると「あっち向いてホイ」みたいにプイと横を向く。左右に回り込んで対峙すると再び顔を逸らす。この繰り返しに悩まされる撮影者も少なくない。ネコが真正面から対象を見つめているのは初対面の相手に興味を持っている時(敵か、味方か、人畜無害か、品定めをしている)、あるいは遠くの方を見ている時である。「証明写真」のように目を瞠ったレイちゃんも至近距離のカメラではなく、視線の先にある何かを遠い目で見ている。意地悪してネコの視線を遮ると、姿勢を変えて遠くの対象物を凝視し続ける。これもパトロール行動の一貫なのか、テリトリ内に異変がないかどうかの確認を怠らない。

    #356│マープル│飼い猫 ── 駐車場の三毛にゃん
    レイが追い回すのでマープルは逃げる。常に追われる立場の彼女は2階のヴェランダの上に退避して、手招きしても下に降りて来ない。暫くレイちゃんの写真を撮っていると、用心深く遠巻きに近寄って来る。飼主の家の横にあった駐車場は先代のトミーやサビたちにとっては絶好の遊び場だったが、数年前に低層マンションが建ってしまった。その代わりにというか、狭い車道を隔てた向かい側が広い駐車場になった。駐車中の赤いクルマの前で腹這いになって寛ぐマープルさん。今日は幸いレイの姿が見えないのでリラックスしているのか、それとも機嫌が良いのか、三毛特有の柔らかい毛並みを撫でても嫌がらないし、逃げ去ったりもしない。気紛れキャットの彼女にしては珍しいことである。久々のシャッター・チャンス到来にゃん。

    #357│ロン│ノラ猫 ── 猫のアート
    名画の中に描かれた人物をネコに置き替えた「CAT ART 美術館」(西武池袋本店)に行って来た。カンヴァスにアクリルで描かれた原画は大きくて迫力がある。「ごあいさつ」の中でシュー・ヤマモト氏が引用している名言‥‥《人生の辛さから逃れる手段が2つある‥‥それは「音楽」と「猫」である》も胸に沁みた。内藤陳似のネコ・ウォッチャーが奥さんの亡くなった次の日に公園のネコたちを見に来たという不可解な行動も頷ける。長毛種のロンちゃんも「絵」(アート)になる。ソランやレイやミスなど‥‥顔馴染みのネコたちと同じく、姿は見えなくても猫語で呼びかけると駆け寄って来る。逆に呼んでも来ない時は、どこかで眠っているのか、声の届かない遠くにいるのか?‥‥と思うことにしているけれど、少し不安も過る。2週間以上見かけないと心配になってしまう。それだけに久し振りにロンと出会って、元気な姿を見ると嬉しくなるのだ。

    #358│マロ│ノラ猫 ── 白い妖精
    「白い恋人たち」はグルノーブル冬季五輪(1968)の記録映画、「白い妖精」はモントリオール五輪(1976)で3つの金メダルを獲得したナディア・コマネチの愛称、「白い婚礼」(1989)はヴァネッサ・パラディ主演の映画‥‥血統書付きの純血種は兎も角、野良(雑種)で真っ白いネコは珍しい。黒ネコは時々見かけるのに、白ネコには滅多に出遭わない。I袋駅前公園のマロちゃんは左頬の怪我も癒えて、表情も大人っぽくなった。鷹揚で高貴なイメージもある。人間ならば由緒正しい名家の子息・令嬢。今は零落しているけれど、生まれや育ちの良さは隠せない。貧乏から一代で成り上がって億万長者になっても、貧相な顔は一生拭えない。二代目、三代目にならなければ裕福な上流階級とはいえない。幼少期〜子供時代の生活が顔に刻まれれるのだ。ネコはヒトほど育った環境が露骨に顔に出ないところが良い。「金の亡者」と化していないからかもしれない。

    #359│タマ│飼い猫? ── 冬への扉?
    『夏への扉』のピートはジンジャー・エールが大好きなネコだった。真冬になっても夏へ通じる扉があると信じて、飼主のダン・デイヴィスに家のドアを開けるように促す。駐車場に停車しているクルマの下の空間は外ネコにとって絶好の隠れ場所だが、危険と隣り合わせでもある。眠っている間にクルマが発進しないとも限らないからだ。そうでなくても都会のネコは常に交通事故のリスクに晒されている(常日頃から注意している人間でさえ交通事故に遭って命を落とす)。目の前をクルマが通過すると、ネコは一体何者なのだと目を瞠る。悲しいかなネコはクルマという危険な存在、「走る凶器」を100年経っても理解出来ない。タマの好物は何なのか?‥‥クルマの下に身を隠しているネコを撮っていると、駐車中のクルマがデロリアン(タイムマシン)に見えて来る。タマちゃんがタイムワープした未来は「猫の惑星」になっていたりして?

    #360│アナ│ノラ猫 ── 駐車場のニャンコ
    記事のトップを飾るネコちゃんの写真は「月3枚」という暗黙のルールに則っている。3カ月経って9枚になると「ネコ・ログ」に纏めて、モデルになったネコたちのプロフィールやエピソードなどを紹介して来た。今回で連載第40回を迎えて、ネコ写真も360枚(常連ネコも含めて延べ360匹)となったが、諸般の事情で11月は2枚しかアップ出来なかった(7月が2枚になったのは6月に4枚アップしたから)。急遽の処置として、毎月26日に纏めてアップしている〈スニーズ・ラブ 10〉にネコ写真を載せることにした(マウスで画像に触れると「れなぴょん聖誕祭」に変わる趣向)。アナちゃんも駐車場を根城にしている外ネコで、黒やトラ縞の仲間と一緒にいる。みんな良く似た顔立ちなので、親子兄弟姉妹なのかもしれない。アナたちもクルマの下に隠れていることが多いので、駐車場を使用しているドライヴァーには注意を促したい。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第40集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ360匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第40集の常連ネコはレイ、マープル、ロンちゃん。姿は見えなくても、猫語で呼びかけると挨拶に来ます。『猫は迷探偵』(竹書房 2015)は『猫は魔術師』(2008)、『猫は音楽を奏でる』(2013)を再編集。「猫新聞」に寄稿された11篇を新たに加えた文庫本。恩田陸、長田弘、内田春菊、金井美恵子、斉藤由貴、赤瀬川原平、池田理代子、森村誠一、横尾忠則、小松左京、車谷長吉、浅田次郎、髙村薫、山田洋次、養老孟司、福原義春(資生堂名誉会長)など‥‥著名人51人の猫エッセイを収録。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    猫は迷探偵

    猫は迷探偵

    • 監修:月刊『猫新聞』
    • 出版社:竹書房
    • 発売日:2015/11/02
    • メディア:文庫
    • 目次:猫占い 恩田陸 / 猫という故郷 酒井順子 / 神社の猫 木内昇 / “さささっ”の猫 藤田宜永 / 吾輩は猫である。まだ、なめられてはいない 北村薫 / アメリカの小さな町の猫 長田弘 / 連れてゆきたい 浅生ハルミン / 今は猫がいません 内田春菊 / 猫のいない生活の良さについて 金井美恵子 / 愛しあっていたジョンとミケ 里中満智子 / 猫との春秋 佐野眞一 / ...


    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    • 会場:渋谷ヒカリエ
    • 会期:2015/07/25~08/31
    • メディア:写真
    • 構成:春 / 夏 / 秋 / 冬
    • 内容:世界を舞台に活躍する動物写真家・岩合光昭。彼が各国で撮影を続ける中で、見つめ続けている対象があります。それは私たち日本人の心の中の「ふるさと」です。四季それぞれの美しさが際立つ日本。春夏秋冬を通じて日本の原風景に出会う時、私たちはそこに「ふるさと」を感じるのではないでしょうか。青森県津軽地方。花咲く春、夏の祭り、リンゴ実る秋、そして深く長い冬。岩合はこの地に日本の原風景を見、1年をかけて子...ネコと人との暮らしを撮影しました。津軽の四季、そこに生きる子ネコたちの物語。それは私たちにどこか懐かしい「ふるさと」を感じさせてくれます。


    CAT ART 美術館

    CAT ART 美術館

    • 会場:西武池袋本店 7階 (南)=催事場
    • 会期:2015/12/27~2016/01/05
    • メディア:絵画
    • 構成:古代・中世 / ルネッサンス(ニャネッサンス)/ バロック / 新古典主義(ニャオクラシック)とロマン主義 / 写実主義 / 印象派とその時代 / 20世紀美術 / 日本の美術
    • 展示作品:真珠のイヤリングをした少女猫 / アオルフィニ猫夫妻の結婚 / モニャ・リザ / 猫ビーナス誕生 / 天文学者 / グランド・オダリスク / またたび拾い / 着物を着たミャネ婦猫 / 耳に包帯をした自画像 / スター〈舞台の踊子〉/ 叫び / キャッス / ゲルニキャット / 泣く猫 / 記憶の個室 / 赤黄青のコンポジション / 七五三子猫寶合 / 猫街道三拾三次

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