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ネコ・ログ #38 [c a t a l o g]

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  • 猫は、飼い主の足音や車のエンジン音など、耳慣れた音を覚えるし、食事時の、ナイフやフォークの入った引き出しが開く音や缶切りの音がすれば飛んでくる。耳に届くすべての音にいちいち反応していたら、猫の脳は膨大な量の情報で常にあふれてしまい、危険や食べ物、問題を意味する音を判別できないだろう。そこで猫には、重要でない音、聞き慣れた音は背景音として弱め、同時に耳慣れない音は聞こえるままにすることができる。ちょうど、電車の線路近くに住んでいる人は電車が通るのに気づかないけれど、訪ねてきた人は、いったいどうしたらこんなひっきりなしの轟音にここの住民は耐えられるのだろう、と不思議に思うようなものだ。白猫のなかには生まれつき耳が聞こえないものがいる(毛の色と関係した遺伝的な特徴である)し、年寄りの猫は晩年、耳が聞こえなくなることもあるが、その他の感覚器官のおかげで、かなり普通に生活を続けることができる。
    クレア・ベサント 『ネコ学入門』


  • #334│アナ│ノラ猫 ── 別宅の前でポーズ
    青空駐車場に屯する数匹のネコたち。I袋へ行く途中にある場所なのだが、昼間は駐車中のクルマの陰や下で微睡んでいることが多い。灰色ネコのアナちゃんは瀟洒な邸宅の前で、まるで自宅か別荘でもあるかのように前肢を揃えてポーズを取る。背後の石塀と保護色になっている。中庭には別のネコの気配もあるけれど、敷地内の様子は目隠しフェンスで仕切られていて見渡せない。飼いネコがいるのかもしれない。ここのネコたちは家族(親子、親戚、兄弟姉妹)なのか、毛色は黒、茶トラ、灰色‥‥と異なるものの、顔立ちも似ていて仲も良さそうだ。朝夕のゴハンを運んで来るネコおばさん(おじさん)もいるのでしょう。リラックスして満ち足りているネコたちを見るほど心和むことはない。彼らの夜の顔も見てみたいにゃん。

    #335│ロン│ノラ猫 ── ようこそ、スニンクスへ。
    雨の日、今日はロンに声をかけるのは止めて、中央図書館裏の遊歩道を黙って通り過ぎた。すると、どこからともなく聞こえて来るビャービャーと鳴くネコの声‥‥いつの間にかロンちゃんが足許で鳴いている。「どうして、黙って行っちゃうの?」と訴えているようだ。呼びかける声に反応して来るのかと思っていたのだが、どこかで往来する通行人や散歩者を見張っていたのだろうか。雨に濡れた長い毛並みを撫でて、濡れないように雨傘でネコを守る。内藤陳に似た痩身痩躯のネコ・ウォッチャーはゴハンをあげないと近寄って来ない。人に馴れていないと言うのだが、ロンちゃんはゴハン目当てで会いに来るわけではない。雨の降る日に傍まで来てくれたのは挨拶のつもりなのか、それとも別の理由があるからなのか。ネコの行動は謎に包まれている。伏せのポーズは「書肆吾輩堂」の口上ロゴに似ていなくもない。新年の挨拶‥‥「ようこそ、スニンクスへ」。

    #336│クリ│飼い猫 ── 尻尾も太いのよ
    青い眼の洋ネコ。顔と尻尾、前肢の一部だけがグレーで、躰は白い。ブルーとグレー、マズルの黒との配色が美しく気品が漂う。クリちゃんと道端でバッタリ出会う。これから外回りのパトロールに出かけるのだろうか。近づいても逃げ出したりはしないけれど、自分からは擦り寄っては来ない。適度に人馴れした大型の飼いネコ。人間とのスキンシップに飽きると毛繕いを始めたり、駐車中のバイクのタイヤの匂いを嗅いだり、飼主の家の玄関ドアの方へ行ったり(家の中に入りたい?)‥‥。動作は機敏というわけではないけれど、ちょっと目を離した隙に視界から忽然と消えていたりする。少し離れた民家の塀にジャンプして奥へ進む。戻って来る時も、戻って来ない時も‥‥。行動範囲は意外と広そうだ。某クリーニング店の看板ネコちゃんである。

    #337│オキ│飼い猫 ── 玄関の前でポーズ
    三毛ネコのレナさんも昨年亡くなって、赤茶のクーちゃんも行方知れず‥‥寂しくなってしまった「ネコ横町」。飼主の表情も気落ちしているのか、いつもの生気がない。今でも健在な飼いネコは白黒のロブと老齢のオキの2匹。「憎まれっ子世に憚る」という諺もあるけれど、虐めの対象(レナ)を失ったロブの心中を慮ると複雑な気分に陥る。老ネコのオキは若い頃から老け役だった名俳優みたいで、若いのか年寄りなのか、黒と茶色の混じり合った顔の配色に紛れて本当の年齢が分かり難い。近づくと逃げてしまうことも少なくないが、撮影した日は機嫌が良いのか飼主の家の玄関前でポーズを取ってくれた。ここのネコたちは基本的に放し飼いで、小心者の家ネコ(まだ1度も撮れていない!)は室内に隠れていて、滅多に姿を現わさない。クーちゃん、帰って来ないかな?

    #338│タバス│ノラ猫 ── T端のネコたち
    JRT端駅は東口と西口、山手線の外と内では高低差がある。K込からT端方面へ歩いて行くと、駅前近くに金網フエンスで囲まれた空き地があった。立入禁止の広い区画に数匹のネコがいる。向かって左に茶トラ、右に白黒ツートン・カラー。横並びの2ショットに見えるけれど、ピントが合っているのは左のネコだけで、右の方はピンボケ‥‥白黒ネコは後方で寝そべっているのだ。閑話休題。「たばた〜、たばた〜」という駅のアナウンスには違和感がある。SF映画の影響なのか、いつの間にか「アバター」と聞こえるようになってしまったからだ。「うえの〜」「しぶや〜」のアクセントは語尾、「たばた〜」は語頭にあったはず。それなのに「たばた〜」はニュートラルに聞こえる。「くまモン」という突き放したような熊本県のアクセントにも違和感があるけれど、不思議なことに「ドラえもん」は昔から平坦なアクセントなのだった。

    #339│デラ│ノラ猫 ── ゾンビに注意してね!
    O無親水公園の黒ネコ2匹は躰の大きさ(大・小)で区別出来るが、単体で見分けるのは難しい。右耳先カットが大(♂)で左耳先カットが小(♀)と覚えておくと良いかもしれない。黒ネコ2匹は人懐っこい。でも、小の方は毛並みを撫でていると、不意のネコパンチに襲われることがあるので要注意。都内23区にもネコたちを虐待するゾンビどもが徘徊しているので、見知らぬ人には馴れ馴れしく近づかず、不審者には遠慮なくネコパンチで先制攻撃するべきである。「元少年A」もネコを殺していたというではないか。《あの神戸の少年のことが盛んに報道されていて、少年が猫を何匹もカッター・ナイフで殺した、ということも含まれていて、単純で猫好きのそば屋のオヤジには「中学生=猫殺し」というイメージが、ピッと焼き付けられてしまったのだっだ。オヤジがブツブツ言っているのが、すれ違いざまに聞えた。お前たち、ヤローの中学生みたら、逃げるんだよ、そばに寄ってったら、駄目だよ、わかった? 悪い子がいるんだよ。コワイ、コワイだよ、中学生は!》(金井美恵子)。

    #340│アク│飼い猫 ── 片耳折れニャンコ
    ネコと喧嘩した時の後遺症で左耳が折れたままになってしまったというアクちゃん。左耳が聴こえているのか心配です。「没後20年展三原順 復活祭」(明治大学米沢嘉博記念図書館)に行った時のこと。K華公園横の坂道を降りて行くと、どこからともなく大きな鳴き声が聞こえて来た。こんなに大声で鳴くのは尋常でない。公園前の車道を隔てた車庫のクルマの下で蹲っていた白い子ネコ。屈んで宥めても鳴き声は全く止まない。人間ならば悲鳴に近い叫び声。SOS信号を必死に発しているのに誰も援けに来ないのかと憤っていたら、近所のネコおばさんがゴハンを持って来た。1週間も見かけなかった、死んだと思っていた‥‥大声で鳴き続ける白ネコを公園へ誘導して食事を与える。「真っ白いネコは珍しい。劣性遺伝だから」と言うと、ネコおばさんは「耳が聴こえないのよ」と捨てネコの身の上話を始める。大声で鳴くのが面白いのか、子供たちが白ネコを虐める。喫茶店のオヤジも棒を持って追い回す。先天的に耳が聴こえないから、必要以上に大きな声で鳴いてしまうのだ。大人も子供も障碍のある弱者を日常的に虐待しているのだった。

    #341│マロ│ノラ猫 ── 左頬の怪我は治ったの?
    ネコ同士の激しい諍いで負傷したのか、マロちゃんの左頬がザックリと抉り取られていた。その部分だけ白い毛もなく、赤黒い皮膚(内部組織)が露出していて見るからに痛々しい。このまま治療せずに放置していて大丈夫なのかと不安で堪らなかったが、その後、マロの傷口は日々追うごとに小さくなって行き、この写真では殆ど目立たなくなるまでに恢復した。その間、1〜2週間ほどだろうか。今更ながら野生動物の自然治癒力には驚く。ノラネコも人間が思っている以上に逞しいのかもしれない。I袋駅前公園には数多くのネコたちが仲良く暮らしている。新入りのアクちゃんは性格も大人しくて、立ち振る舞いも優雅。匂い立つような気品もある。耳先カットしていないので、捨てネコの可能性も否定出来ないけれど。

    #342│ダイ│ノラ猫 ── エメラルド・グリーンの眼差し
    I袋駅前公園のダイちゃんは栄養満点の食事に恵まれているのか、いつの間にかメタボ体型になってしまったが、エメラルド・グリーンの目は相変わらず麗しい。都内23区に棲むノラネコたちにも地域格差があるらしい。大声で鳴いていたK華公園の白ネコから分かったのは中心部よりも周辺区の方が未だしも手厚く保護されているのではないかということ。C代田区やM区は住民もネコも高級そうに見えるけれど、その実体は真逆なのかもしれない。区民数も少ないし、自治会もヴォランティアも機能していない。ネコおばさんが公園のネコたちが怖がるからと注意しても(ネコがいるのなら止めようよと、子供も困惑しているのに)、聞く耳を持たない親は残りの花火を打ち上げる。そんな大人を見て育った子供たちも平気でネコを虐めるようになる‥‥ネコおばさんがの話を聞いているうちに、暗澹たる気分になってしまった。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第38集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ300匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第38集の常連ネコはロン、クリ、ダイちゃん。今回も長毛種や洋ネコ、黒と白‥‥など個性的なネコたちが集まりました。今年(2015)の梅雨は長く日照時間も少なく、低温で降雨量も多い。連日の雨模様で趣味の「ネコ撮り」も中休み状態。雨の降る夜は『ネコ学入門』(築地書館 2014)や『猫的感覚』(早川書房 2014)を読んで、ネコへの知識を深めたい。外ネコたちは冷たい雨を凌いで眠っているかしら?

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    ネコ学入門 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2014/09/16
    • メディア:単行本
    • 目次:プロローグ / 違う世界 / 猫の言語 / 猫と暮らす / 猫との関係 / 猫の性格 / 知能と訓練 / 問題解決法 / 訳者あとがき / 索引


    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2013/08/22
    • メディア:単行本
    • 目次:遊興一匹 迷い猫あずかってます トラ! トラ! トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 /「トラー」とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には7軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖...


    没後20年展 三原順 復活祭

    没後20年展 三原順 復活祭

    • 主催:明治大学 米沢嘉博記念図書館
    • 会場:米沢嘉博記念図書館1階展示コーナー
    • 会期:2015/02/06 - 06/14
    • メディア:コミック(原画)
    • 展示品:「はみだしっ子」 原画お蔵出し(全会期展示替えいたします)/ 遺された原画 / 書籍 / 付録 / グッズ / 愛用品

    タグ:catalog cats
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