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パリンド・キャット 3(ネコ回文集) [p a l i n d r o m e]



  • 僕が好きなのは短い毛の猫で、人なつこいシャム系の猫、などと言っていたグレンでしたが、結局、迷いに迷って、もらうことに決めたのは、長い長い毛の猫。シャム系とは似ても似つかないノルウェジャン・フォレスト・キャット。ノルウェーの森の猫。こう書いただけで、心のなかに、ひとつの物語が浮かんできそうな気がします。この猫はその名のとおり、北欧のノルウェーにそびえるスカンジナビア山脈の森のなかで生まれた猫だそうです。ふさふさした長い毛と、まっしろな胸毛、アーモンド型をしたつぶらな瞳の持ち主。骨格、体格ともにがっしりとした大型猫で、寒さにはめっぽう強いとされています。雪国のイサカで暮らすには、ふさわしい猫だと言えるでしょう。ノルウェーに伝わる神話のなかでは、愛の女神を乗せた馬車を引っぱっているのがこの猫なのだそうで、あつとき、雷神がこの猫を地上から連れさろうとしたらしいのですが、猫の体が重すぎて、持ちあげることができなかったのだとか。
    小手鞠 るい 「プリンがわが家にやってきた」


  • ▢ 絆・ワイルド・キャット、彦根のネコ、1つ焼き獲る岩魚好き
    ワイルド・キャット異聞。K・K・P(ククル・クク・パロマ)の女諜報員・山猫ネネは久しぶりの休暇を利用して滋賀県彦根市へ旅行した。ひこにゃんに会って、伝説のワイルド・キャット(大山猫)との奇蹟的な邂逅を聞くために。五月晴れの彦根城に着くと、ひこにゃんが大歓迎してくれた。2人は初対面だったが、そこは気心の知れたネコ族同士‥‥直ぐに打ち解けて無二の親友になった。大山猫と日本狼が世紀の決闘をした神社の境内を散策しながら、ひこにゃんから詳しい話を聞く。手振り身振りを交えて2頭の闘いを語る様子は次第に熱を帯び、尾鰭もついて誇張されているのか、全身の毛を逆立てて日本狼を威嚇する大山猫はパンダほどの大きさだったという。歩き疲れた2人は境内の休憩所で昼食を摂ることにした。山猫ネネは友人の大好きなジンジャーエールを持参、ひこにゃんが用意した手作り弁当は紅鮭のおにぎりと岩魚の塩焼きだった。

    ▢ 南欧男、寝るネコと追う女
    ギリシャの青い空と白い家並みの対比が目にも鮮やかで眩しい。ラテン系プレイボーイと睡るネコと女ストーカー。褐色の肌の青年カメラマンはオッドアイの白ネコを追い求め、恋人の女性は南欧男を追う。男と猫と女の奇妙な三角関係から始まる物語‥‥。閑話休題。「ネコ回文」は「寝」という漢字と相性が良い。「猫」という言葉は「寝子」から由来したというから、親和性が高いのは当然かもしれないけれど。日向で気持ち良さそうに眠っているネコほど心和ませる動物はないと思う。古代エジプト時代からネコが人間のペットとして愛され、崇められていて良かった。もし地球上に1匹のネコも棲息していなかったら、人類の営為は味気ないものになっていただろう。独身者と暮らすネコ、家族で飼われている家ネコ、地域ネコやノラネコたち。男と女の間に1匹の猫がいることで、2人の関係も緩和されるのではないかしら?

    ▢ 利発サバ猫、良い子、根はサッパリ
    ガミッチ(Gummitch)は思慮深い天才子ネコである。飼主のハリー&ヘレン・ハンター夫婦を「馬肉のせんせい」「ネコちゃんおいで」という渾名で読んで憚らない。夫妻の赤ん坊を幼い娘シシーの魔の手から護り、飲み水の入ったボールを引っくり返してポロックみたいな抽象画を床に描き、UFOから降り立った異星人スフィンクスと接近遭遇するのだ。私の実家で飼っているサバ猫もIQ160のガミッチほどではないけれど、意外と賢い。襖を前肢で器用に開けて出入りするし、冷蔵庫のドアを開けて鶏肉のササミやチーズを漁って行く。毎日外出してテリトリー内をパトロールするし、時々はネズミや昆虫などの獲物を口に咥えて自慢げに持って来たりもする。ベッドの枕元で飼主と一緒に眠り、朝になるとミャオ〜と鳴いて起こしてくれる。性格も明朗活溌で、些細なことで悩んだりもしない。万が一失敗や粗相をしてしまった時には一心不乱に毛繕いをして心を落ち着かせ、忘れることにしている。

    ▢「ネコに金星」マジ本気2個ね
    『ネコに金星』(新潮社 2013)は宮崎、三重、和歌山、山梨、富山、白川郷、茨城、山口、千葉、徳島‥‥など、日本各地で出会ったネコたちの写真集。インタヴューの中で岩合光昭さんは、ある坂の多い町で見た光景‥‥坂の途中の踊り場のようなところで陽射しを浴びながら休んでいるヒトとネコが余りにも仲良く見えて、邪魔をする(写真を撮る)のが気恥ずかしくなるような、心温まる思いがしたと語っている。《もはやネコはネコではなく、ヒトはヒトではなく、まるで生きもの同士でやさしく体温がふれあうような気配が伝わってきます。そのふれあいの瞬間のシャッターチャンスは見とれて逃してしまいます。が、すてきな場面として目に焼きつき、まさにネコに金星をやりたいとそのとき思います。ネコとの出会いは楽しい限りですが、一瞬カメラに収めることはやっぱり金星をとるくらいに難しくもあります》。『岩合光昭のネコ』(2014)の「文庫版あとがき」にある、赤レンガの上からジャンプする『ネコに金星』の表紙カヴァを撮った山口県・粭島を再訪した時のエピソードも心温まります。

    ▢ 賄い従妹、寝る嫁。夜、猫と良い仲間
    GM中のある日、池袋駅前公園でネコの写真を撮っていた時のこと。数人の男性が水天宮参りに来ていた。両手を合わせて参拝するだけでなく、賽銭を投げ入れる信心深い人もいたりして‥‥。子宝に恵まれない「残念な夫」の切実な思いなのでしょうか。本殿はネコたちが雨風を凌ぐ絶好の避難場所、手水場もネコたち専用の水飲み場と化していただけに、公園内に少しだけ畏まった空気が漂う。ネコたちに全く動じる気配はないけれど‥‥。プータローの従妹を家政婦として雇った回文夫婦の家庭にも子供はいない。神社の参拝に訪れる男たちは周囲のネコたちには目も呉れない。孤児の里親になる気もなさそうなのだから、ノラネコなどは始めから眼中にないのでしょう。参拝者が去ると、駅前公園は穏やかな日常に戻る。ネコたちに興味を持って足を止めて毛並みを撫でたり、写真を撮ったりする男女で場が和む。ネコおじさんも「夜ゴハン」を運んで来る。

    ▢ 鰯あるわ!‥‥「タコキャット」1つ焼き、こだわる味わい
    タコスはメキシコのクレープなのか、鯛焼き、それとも生春巻きなのかしら?‥‥。クレープは口の中で甘く蕩けるけれど、タコスは歯応えがあってピリッと辛い。「タコキャット」という名称のタコスが実際に存在するのかどうかは不明だが、同名のバンドは実在する。Tacocatは米シアトルで結成された男女混成の4人組(男1女3)。2ndアルバム《NVM》(Hardly Art 2014)のカヴァは赤・青・緑・黄・ピンクのカラー・ボール(キャンディ、風船ガム?)で埋め尽くされ、白いボールで形作られた「NVM」(Nevermindの略)の3文字が色覚テストのように浮かび上がる。Tacocatは甘いだけのバブルガム・ポップではない。グランジやパンクの隠し味(香辛料)が効いているのだ。そもそも「英回文」の「ネコ」なのだから,これほど本ブログで紹介するのに相応しいバンドもないでしょう。

    ▢ 虚しく泣く甥っ子、ネコ追憶、亡くし南無
    「ペットロス症候群」をテーマにしたネコ回文。吉本隆明は子供の頃、鼻から垂らした鼻汁を飼い猫に舐めて貰っていたというほどネコと親密な関係を保っていた。『なぜ、猫とつきあうのか』(河出書房新社 1998)はネコに関するロング・インタヴュー集(1987~93)で、「猫の家出」「猫のイメージ」「猫の死、人間の死」「猫探し」「猫ブーム」「猫の予感」「猫の 「なれ」」「猫の聴覚」「猫と擬人化」「猫のわからなさ」「孤独の自由度」などのテーマに則した聞き手(男女2人)の質問に「戦後最大の思想家」が自由気儘に答える。《あんまり親しくないような人の死と、しょっちゅうかわいがっていた猫とか犬、その他の動物の死でもいいんですけど、その悲しさと比べたら、こっちの方が切実だぜっていうことは、たぶん普遍的な気がするんです》という率直な発言もある。

    ▢ 来た孫、寝そべり。尻・臍、猫またぎ
    足に纏いつくネコを誤って踏んづけてしまうことが稀にある。その時のネコは今まで聞いたことのない悲鳴を上げて逃げて行く。でも直ぐにネコの頭を撫でて真摯に謝れば、お互いの信頼関係が揺らぐことはない。不慮の事故が2度と起こらないように細心の注意を心懸けているのに、ネコの方は知ってか知らずか、お構いなしにプニョプニョした肉球で人間の足を踏んで歩く。その柔らかな感触が逆に気持ち良かったりもするのだが‥‥。「猫跨ぎ」とは「魚の好きな猫でさえも跨いで通り越すほどまずい魚」(新潮国語辞典)のこと。ネコは自己中心的で騒がしいだけの子供は大嫌い。遊び疲れて眠っている寝相の悪い孫(幼児)のことを飼いネコが一体どのように思っているのかは分からないけれど、洟も引っかけずに素通りして行く様子を見る限り、興味がないことだけは確かです。

    ▢ 狩る鷹は寝ぼけ眼、ネコ怠け、「骨は語る」か?
    法医学サスペンス「BONES -骨は語る-」(Dlife)を再放送も含めて視聴している。地上波(TBS)で放映されていた時は日本語の吹き替えが砕けすぎではないかと思っていたが、字幕版で確認するとそうでもなかった。むしろ良く吹き替えられている。「BONES」の魅力は怪事件と並行して個性的な登場キャラたちの相関ストーリが同時進行して行くこと。オープニングのグロテスクな遺体は鬼面人を威すものだが、被害者の生前の回想や犯行シーンの再現が一切ないなど、刑事犯罪ドラマの常識を覆すストイックな拘泥りも感じられる。天才法人類学者テンペランス・ブレナンが人間としては万全でなかったり、FBI捜査官シーリー・ブースに幼少時や陸軍時代のトラウマがあることも、この海外ドラマに陰影を添えている。「ラボの王」ジャック・ホッジンズや所長のカミール・サローヤンなどキャラも立っているし、シンディ・ローパーやビリー・ギボンズ(ZZ Top)などゲストも多彩。「BONES」をテーマにした回文を作ろうとしたのに、なぜか動物版「骨は語る」になってしまった。

    ▢ 絵馬、消え薮?‥‥深夜に走るジバニャン、渋谷駅前
    「妖怪ウォッチ」(テレ東)は親子2代で愉しめるTVアニメ番組である。たまたま視た回はオープニング・クレジットからしてNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」のパロディだった。「3年Y組ニャンパチ先生」もシリーズ化しているらしい。元ネタを知らない子供たちは何のことだか分からないけれど、一緒に視ている大人(両親や年長の家族)たちには大受け間違いなし。かつては断絶していた親子世代が同時にアニメを愉しめる時代になったことの左証でもある。主題歌「ゲラゲラポーのうた」のAメロがZepの〈Dancing Days〉に瓜二つなのも決して偶然ではないはず(確信犯的パクリ?)。トラックに轢かれて死んだ飼い猫のアカマルが成仏出来ずに地縛霊となったというジバニャンの設定も泣かせるにゃん。迷宮入りしそうな「絵馬消失事件」‥‥ジバニャンとハチ公の2匹は怪事件を解決することが出来るでしょうか?

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 回文アンソロジー・シリーズ 5‥‥ネコ回文を集めてみました。各回文をクリックするとオリジナル・ストーリが読めます^^

    • 〈虚しく泣く甥っ子‥‥〉は『なぜ、猫とつきあうのか』の紹介文を改稿しました
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    愛しの猫プリン

    愛しの猫プリン

    • 著者:小手鞠 るい
    • 出版社:ポプラ社
    • 発売日:2009/10/10
    • メディア:文庫(『ノルウェーの森の猫』を改題)
    • 目次:窓の外はアメリカ / プリンがわが家にやってきた / プリン、ジマー先生のところへ行く / 猫の仕事と遊びの時間 / プリン、緊急入院&手術をする / 結婚するなら、猫の好きな人 / プリン、猫シッターのお世話になる / 猫とその女たち / プリン、ウッドストックの森の猫になる / 猫と私の仕事部屋 / 天使になったプリンへ / 解説・梯 久美子


    なぜ、猫とつきあうのか

    なぜ、猫とつきあうのか

    • 著者:吉本 隆明
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:1998/10/02
    • メディア:文庫
    • 目次:なぜおまえは猫が好きなんだ、というふうに言われたら、存外こっちのひとりよがりで… / 人間なんかになれているようなふりしているけど、絶対なれていないところがありますからね。/ 種族としての猫というのは、犬に比べたら、横に生活している気がするんです。/ 猫のほうはなにかやっぱり受け身のわからなさみたいなのがたくさんあってね。/ ...


    Nvm

    Nvm

    • Artist: Tacocat
    • Label: Hardly Art
    • date: 2014/02/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: You Never Came Back / Bridge To Hawaii / Crimson Wave / Stereogram / Pocket Full Of Primrose / Psychedelic Quinceañera / Time Pirate / This Is Anarchy / Hey Girl / Party Trap / F.U. #8 / Alien Girl / Snow Day


    Bones

    Bones

    • Genre: Crime procedural, Comedy-drama
    • Created by: Hart Hanson
    • Original release: 2005/09/13 – present
    • Original channel: Fox
    • Starring: Emily Deschanel / David Boreanaz / Michaela Conlin / Eric Millegan / T. J. Thyne / Jonathan Adams / Tamara Taylor / John Francis Daley / John Boyd

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