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Ram 2015
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大病をしたという病み上がりのラムちゃんは可哀想なくらい痩せ細っていて、目ぢからもなかった。不用意に手を出して毛並みに触れようとすると、果敢にネコパンチを繰り出した元気な頃とは別猫28号のような変わりように愕然とした。飼主ならずとも健康状態を気に懸けていたのだが、久しぶりに会ったラムちゃんは少し肥って、目にも輝きが戻って来た。何よりも飼いネコらしい穏やかで生気のある表情に安堵した。ネコに限らず動物は我が儘で自己中心的な人間たちのように、躰の...
#333
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Kono 2015
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S神井川沿いの遊歩道は桜が開花する季節になると花見客や散歩者などで溢れ返る。K区では区役所から板橋(という地名の由来となった橋)までの区間、約6.5kmを往復する「桜ウォーク」を毎年4月第1日曜日に開催しているが、今年も満開のタイミングを逃してしまった。春爛漫の桜と秋絢爛の紅葉。花の散る春は諸行無常に想いを馳せ、落ち葉の舞う秋はメランコリ ックな物思いに耽る。NY州北部の山岳地帯、トバイアス山の中腹の家で暮らしている小手鞠るいの愛猫プーは舞い...
#331
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Mashuro 2015
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黒ネコを見かけることは時々あっても、真っ白いネコに出会うことは稀である。I袋駅前公園のマシュロはノラにしては珍しい白ネコで、両耳と鼻先のピンクが逆に目立つほど。子ネコの可愛さと相俟って愛らしく美しい。しかもマシュロの存在は謎めいている。駅前公園で暮らしているノラたちは耳先カット( 不妊手術済み)しているので、彼らから産まれたとは考え難い。捨てネコの可能性も高いのだ。しかし、こんなに綺麗で可愛い子ネコを捨てるだろうか?‥‥という疑念も湧いて...
#329
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Nil 2015
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耳先カットのラピはノラだが、同じくS井開運稲荷の広場で見かけたニルちゃんは首輪をしているので、一見して飼いネコと分かる。写真で見る以上に大きな黒ネコで、ヴェルヴェットのような毛並みの色艶も良好。きっと飼主や家族に愛されているのでしょう。黒ネコ特有の高貴そうな気品も漂う。開運稲荷には総勢5〜6匹のネコたちがいるのではないかと思われるが、お互いに縄張り争いもせずに平然と暮らしている。開運稲荷の出口から露地を左折した裏には秘密の空き地もある(...
#328
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Lapi 2015
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「S井開運稲荷」では飼いネコとノラたちが共存している。薄緑色の目をした灰白ネコのラピちゃんは左の耳先がカットされているので、一目瞭然でノラだと分かる。赤い鳥居、左右に鎮座する黒白2匹のキツネに護られた祠。開運稲荷自体は小さな佇まいだが、その左奥が中庭風の広場になっていて、数匹のネコたちが屯している。周囲の民家やアパートの住人にとっては顔馴染みのネコたち、見慣れた風景なのだろう。開運稲荷への入口は意外と狭いので、通行人や買い物客たちの多く...
#325
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Coo 2014
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茶トラ模様の美しい毛並み、南海のプライヴェート・ビーチのように青く澄み切ったターコイズ・ブルーの目の色‥‥クーち ゃんは人懐っこくて可愛い。いつも対面した時は少し驚いて後退りするけれど、名前を呼んで手招きすれば直ぐに近寄って来て足許に纏わりつく。腰を屈めて躰を撫でると、横たわってゴロニャン状態になる。何度も寝返りを打って魅惑の表情を見せる。お腹に触れると前肢や後脚で果敢に戯れつく。撫でていた指に爪が刺さって抜けなくなってしまった時にはクー...
#324
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Mau 2014
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O無親水公園のマウちゃんは色っぽい表情でネコ・ウォッチャ ーたちを魅了する。強面顔や笑い顔、ビックリ顔の人のように 、たまたま妖艶な風貌に見えるだけでネコ自身が意識的にセクシーに振る舞っているわけではないし、ある種の女性のように媚び諂って科を作っているわけでもない。いつもは間合いを詰めようとして接近すると、踵を返して遠ざかってしまうのだが 、今日は珍しく逃げ去らない。運良くネコおばさんが夕食を運んで来た時に居合わせれば、ネコたちもリラックスし...
#322
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Be 2014
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黒ネコには特別な想いがある。外を歩いていても黒い影が視界を過ると、黒ネコではないかと思って立ち止まり、ネコの後ろ姿を目で追ってしまう。多くのネコは猫語で呼びかけても戻って来ないが、振り返って不審気に見つめるネコもいる。腰を落として「ネコちゃんおいで」とヘレン・ハンター(ガミッチの女飼主)のように声をかけてみる。O無親水公園にも大小2匹の黒ネコがいる。お互いに仲睦まじいので兄弟姉妹、あるいは親子関係なのかもしれない。置き石や丸木橋の上から...
#321
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Itsuki 2014
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スズちゃんの飼主からの情報‥‥「近所に良く似た飼いネコがいる。無愛想で可愛げのないウチの子とは対照的に、人懐っこくて大人しい」。スズは長年一緒に暮らしている飼主に対しても素っ気ない態度を貫いているらしい。家の中に姿を消してしまったスズのことは潔く諦めて、女飼主に「良く似たネコ」のいる場所を訊く。図書館裏手の教えられた民家へ行くと、鉢植えの前に1匹のネコが鎮座していた。スズと同じようなサバトラ(シルヴァー・タビー)でマズル部分と胸の一部だ...
#319
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Rei 2014
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室内飼いのネコは兎も角、放し飼いのネコやノラにとって自分たちのテリトリー内を巡回するパトロールは毎日欠かせない日課である。雨の日も雪の日も、暑い日も寒い日もネコは外へ出かけていく。飼いネコのレイちゃんも玄関前で周囲を見渡し、異常がないかどうかの確認作業を怠らない。青空駐車場だった右隣には新築マンションが建って、視界は悪くなってしまったけれど、狭い車道を挟んだ向こうには新たな駐車場も出来た。周辺の環境が変化してもネコは何事もなかったように...
#316
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Rin 2014
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I袋駅前公園は改装工事が行なわれて、駐輪場(I袋駅東自転車駐車場)が地上にも拡張された。地下駐輪場の出入口付近にいるリンちゃんは気が向くと膝の上に乗ったりするほど人馴れしている。でも駅に近く人通りが多い場所なので、時には緊張も強いられるのだろう。工事現場に置いてあるような「A型バリケード」(「自転車・バイク放置禁止」というサイン看板が付いている)の中に一時避難して、目の前を通る通行人や自転車を注意深く見つめていた。地元では「うなぎ公園」...
#313
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Moto 2014
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陽が暮れる頃になると、周辺の繁みや物陰に身を隠していたO無親水公園のネコたちも姿を現わす。世話係の女性が運んで来る「夜ゴハン」を待っているのだ。彼女と一緒に居合わせることが出来れば、ネコたちに逃げられる心配はない。食事を終えたネコたちと戯れていると、モトちゃんはゴロニャンして恍惚状態に陥った。好物のマタタビ(マリファナ?)でラリっちゃ ったようなトリップ状態?‥‥瞳孔が開いて焦点も定まらず、どこかへ飛んでイッちゃったのか。世話係の女性は「...
#311
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Marple 2014
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鋭い視線で遠くを見つめている三毛ネコのマープルさん。テリトリ内で何か異状が発生していないかどうか確認を怠らない。同僚のレイちゃんほど人懐っこくはないけれど、機嫌が良い時は柔らかい毛並みに触れても嫌がらない。しかし、虫の居所が悪い時は他人行儀で、馴れ馴れしい素振りは一切見せない。鉢植え花壇の陰に隠れて出て来なかったり、飼主宅のベランダ( 2階)に昇ったまま降りて来なかったりする。調子に乗って腹部を撫でていると突然ネコパンチに見舞われる。頑固...
#310
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Psy 2014
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サイちゃんは活溌で好奇心旺盛な飼いネコ。綺麗な毛並みを撫でると気持ち良さそうにゴロニャンする。お腹に触れると指を舐めて手をガシガシと噛む。皮膚の薄い手の甲に歯を立てるので痛いし、噛み痕も赤く残るけれど、決して血は出ないという絶妙な力加減である(ネコの愛情表現?)。これが飼いネコではなく馴れたトラやライオンなどの大型ネコ科動物ならば、戯れているつもりでもムツゴロウ(畑正憲)さんのような大怪我になってしまうだろう。幸いネコはマーモセットのミ...
#309
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Kuri 2014
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クリーニング屋さんの看板ネコと久々に対面した。飼主以外の人間にも物怖じしない大柄なネコ。青い目と灰色の顔はシャミ ー系の血筋を想わせる。名前を呼べば徐に近寄ってくるけれど 、ベタベタ甘えたりしない大人のマナー。でも機嫌が悪いとネコパンチも繰り出す。敏捷な子ネコというわけではないのに、ちょっと目を離した隙に近所の家の塀の奥へ姿を消してしまう。直ぐに戻って来る時もあるし、待っていても一向に帰って来ない場合もある。自分のテリトリ内をパトロールし...
#308
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Emi 2014
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民家の玄関脇の「隠れ家」に身を潜めているエミちゃん。周辺の青空駐車場にネコの姿がない時は諦めずに鉢植えや室外機などで目隠しされている「隠れ家」を覗いてみると、ネコと目が合ったりする。ネコは見つかって少し驚いているけれど、「隠れ家」 から逃げ出したりはしないので、遠慮気兼ねなく写真を撮れる。真正面から興味深そうに見つめて微動だにしない。兄弟姉妹だろうか、良く似た容姿の2匹のネコが仲良く蹲っていたり、微睡んでいたりすることも少なくない。草木が...
#306
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Pal 2014
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うららかな春の日、暖かい陽が射す午後。日溜まりでパルが寝転がっている。気持ち好さそうな至福の一時、誰しもが心和む風景‥‥。ところが、ジメジメした梅雨の季節や蒸し暑い真夏になると辺りの景色は一変する。遊歩道の植え込みに大量発生する薮蚊は通行人だけでなく、ネコたちにとっても大敵である。長い毛並みで守られているロンちゃんは平気らしいけれど、パルの夏は悲惨である。毛の生えていない耳や鼻を薮蚊に狙われる。刺されると痒いらしく、その部分を爪でバリバリ...
#305
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Ron 2014
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陽が落ちて暗くなると、ネコの瞳は丸く大きくなる。昼間は眠たげなネコの目も爛々と光り輝いて、夜行性小動物の本領を発揮する。長毛種のロンちゃんは猫語で呼べば擦り寄って来て挨拶するけれど、お互いにスキンシップを深めると勝手に走り去 ってしまう。鉄柵に隔てられた敷地の向こう側やマンションの中庭へ姿を消してしまうが、暫くすると思い出したように帰って来る。もしかしたら、一緒に遊ぼうよと誘っているのかもしれないと最近になって気づいた。自分が通り抜けられ...
#304
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Munch 2014
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ミラーレス一眼の標準ズームで、ここまで寄れる。少しでも近づくと逃げ出してしまう用心深いネコはもちろん、逆にスリスリ擦り寄って来る人懐っこいネコも撮り難い。ムンクちゃんは気紛れネコ。近づくと思えば遠ざかり、躰を撫でようとするとニャーと鳴いて嫌がる。スレンダーな容姿で、始めて会った時はネコではない何か別のものの化身のように見えた。この世のものとは思えない謎めいた存在。音楽評論家のグリール・マーカスが「美は恐怖から抽出される」と書いたように、...
#302
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Son 2014
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高貴な王子さまを想わせるソン君‥‥もし若者ならば絶世の美男子だったかもしれない。ネコにしては面長の風貌は内田善美の作品に登場する美形キャラのような耽美的で妖しい雰囲気も湛えている。詩人ウィリアム・ブレイクは「夜の森で虎が燃えて輝いている」と詠ったが、街中のネコも煌めいている。動物は水鏡に映った自分自身に恋したナルキッソスみたいに自分の可愛さや美しさを自覚していないので、自意識過剰な美少女や美少年よりも純度が高い。高いところが大好きなネコ...
#300
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岩合光昭のネコ
- 著者:岩合 光昭
- 出版社:新潮社
- 発売日:2014/05/28
- メディア:文庫
- 目次:北海道・東北 / 関東・中部 / 近畿・北陸 / 中国・四国 / 九州・沖縄 / あとがき / 文庫版あとがき / 取材地一覧
みんなかわいいですね~。^^
我が家の近くでは殆ど猫をみかけません。
sknysさん、いい所にお住まいですね。^^
by ぶーけ (2014-12-29 14:22)
外ネコ事情にも「地域格差」があるみたい^^;
岩合さん撮った日本全国47都道府県のネコちゃんを見ていると心和みます。
冬はノラネコたちにも厳しい季節‥‥ぶーけさんも体調に気をつけて下さい。
by sknys (2014-12-29 18:43)