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大島さん家のニャンコたち 2 [c o m i c]



  • 78年に彼女は、擬人化した猫を主人公に、ファンタジックな世界観を持つ『綿の国星』の連載をスタートした。猫との暮らしを作品に昇華しはじめたのだ。その後、実際の飼い猫 "サバ" との生活を綴ったエッセイマンガ『サヴァビアン』も始まる。『グーグーだって猫である』もまた、作者と猫の日常を描いた作品だ。主人公・グーグーは、初代愛猫サバが天寿をまっとうしたあとにやって来た2代目の飼い猫。"サバロスしょうこうぐん" になっていた作者が、子猫のグーグーによって癒され、日常を取り戻す話は、何度読んでも胸に迫る。/ 物語の妙手である大島さんが生活エッセイを描くなんて意外だった。しかし、もともと萌芽はあったのだ。少女誌の雑談ページがなんともおもしろかったから。当時の雑談ページによく登場していたのが、作者の自画像キャラ "ユーミン" だ。げじげじ眉で天然パーマ。ふっくりと下ぶくれで、 "逆さ食パン" と自ら称した顔かたち。このキャラは、サバやグーグーの猫まんがシリーズにも引き続き登場する。時を経て、髪が短くなったり、眼鏡をかけたりしながら。
    福田 里香 「猫とお茶のサンスーシ」


  • ▢ 大島弓子にあこがれて(ブックマン 2014)福田 里香・藤本 由香里・やまだないと
  • ロックと少女マンガの関係のように、お菓子と少女マンガも親和性が高い。〈オレンジとレモン〉という記事を書いていた時に関連資料を参照しようとして「オレンジとレモン」で検索すると1冊の本がヒットした。『オレンジとレモンのお菓子』(文化出版局 1995)はマザー・グースの唄やXTCのアルバムとは一切関係ないレシピ本、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、蜜柑、文旦、柚子、金柑‥‥など、シトラス系の果物を使ったお菓子の本なのに、なぜか福田里香という著者のことが気になっていた。それから暫くして、T島区中央図書館のリサイクル本市(新中央図書館への移転に伴う旧蔵書一斉処分!)で、料理本の棚に『オレンジとレモンのお菓子』を見つけた時は嬉しかった。CDアルバムを2回りほど大きくした可愛い造本も気に入った。その時は後に著者が「フード理論」で少女マンガを考察することになろうとは夢にも思わなかったけれど。

    サブ・タイトルに「お茶をのんで、散歩をして、修羅場をこえて、猫とくらす」とあるように「大島弓子的生活」に憧れる3人の女性、お菓子研究家、マンガ研究家、マンガ家による共著。藤本由香里の評論、著者たちへのインタヴューと対談がメインだが、LaLaや別冊少女コミックなどから再録した単行本未収録のカラー・イラスト、イラスト・エッセイ(1頁コラム)、付録(チビ猫グリーティングカード、レターパッド)、予告カット、広告欄の穴埋めコラム、欄外コメントの「おたよりください」など‥‥200点以上のカットを網羅。雑誌付録のレターパッドやカード、詩集などを今でも大切に持っているという福田里香の大島弓子愛(ユーミンおたく?)が爆発している。もちろん大島弓子作品からイメージした「リンゴのスープ」「バナナとブレッドのひんやりプディング」「苺パフェとブラックココアビスケ」「食パン型のサンドケーキ」のレシピもカラー頁で紹介。いわゆる作家の「研究本」というよりも、熱心なファンたちが作るファンジンに近い。

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  • ▢ ちびねこ絵本 くりまん(白泉社 2011)大島 弓子
  • 『ちびねこ絵本』(白泉社 2010)の完結編。未収録だった50篇に描き下ろし3篇を加えた文庫オリジナル版である。平仮名とカタカナだけで表記された文章にパステル・カラーのイラストを添えた可愛い絵本で、「綿の国星」の須和野チビ猫が「ちびねこ」という3人称視点で描かれる。ちびねこは女性の訪問客にキスされたり、アクリル毛布の繊維を躰中に付けたり、近所のノラネコたちと遊び、流れ者ネコとデブ猫キアヌ(キアヌ・リーヴス?)との闘いを見守る。ある日、ちびねこは草叢で1匹の仔ネコ(あかちゃんねこ)を見つける。下水ホールの網目に嵌まってしまったり、カラスに襲われそうになった仔ネコを保護して須和野家へ連れて行く。お母さんにミルクを飲ませてもらった仔ネコは栗饅頭に因んで「くりまん」と名付けられた。くりまん中心のストーリになるが、物語は急転直下!‥‥元の飼主だという女性が突然現われて、くりまん(カステラちゃん?)を連れ去ってしまう。ところが「女飼主」は情が移って譲ってくれないかと追い駆けて来ることを見越した金目当ての詐欺師だったのだ(この予想外の展開は往年の大島作品を彷彿させて感慨深い)。

  • ▢ ディーゼルカー(飛鳥新社 2012)大島 弓子
  • オール・カラー左綴じ横書きのマンガ月刊誌「リリカ」(1978年10月号)に掲載された絵本(白泉社 1979)の復刻本。著者も「あとがきマンガ」の中で触れているように、現在の絵とは大きく異なるけれど、ポスターカラーや水彩絵具ではなく、色鉛筆で描かれた淡く柔らかいタッチは「ちびねこ絵本」にも継承されている。ある日、相思相愛の君太(くんた)と黄野子(きのこ)は町に嫁入りして来た女性の花嫁衣裳の麗しさに感動する。自分たちも「白い着物」を身に纏って結婚したいと思って婚約する。2人の花嫁による結婚式?‥‥黄野子の母親から「日本全国、花婿と花嫁はひとりずつです」と諭された子供たちは、どちらが花嫁に相応しいか1週間の適性テストで競うことにする。お互いに悪口を言い合い、柳のムチウチに忍従する「忍耐」。女らしく美しく誤摩化す「お化粧」。子供に寝物語を聞かせる「創作童話」。近所の赤ん坊を借りて来て「子育て」‥‥。

    ある日、廃線になるディーゼルカーの記念写真を撮りに来た従兄を好きになった黄野子は君太に別々に花嫁募集の人を探して婚約すれば競い合うこともないと話す。君太は近所に住む男子高校生と婚約したものの、黄野子と従兄の仲睦まじい様子を目にして即座に婚約を解消する。両親が仕組んだ電撃見合いで従兄と相手の女性が互いに一目惚れして、黄野子も失恋する。最後の1日に2人はディーゼルカーに乗って終点まで行く度胸試しの旅に出る。車中で君太が通り過ぎた森へハイキングに来た時のことを黄野子に話している間に2人は寝入ってしまう。駅員たちが騒ぎ、両親たちが終着駅に駆けつけた時も、君太と黄野子は手を握り合ったまま目を覚まさなかった‥‥。今年23歳になるセールスマンの君太とフリーライターの黄野子の結婚式。新郎がブーケを持ち、新婦が手袋を持って登場した。お色直しで互いの衣裳を交換した2人は花嫁になりたいという子供のころの夢を叶えたのだった。

  • ▢ キャットニップ(小学館 2014)大島 弓子
  • 愛猫グーグーの死と共に突然終わってしまった『グーグーだって猫である』(1996~2011)の続編。掲載誌も「本の旅人」から「きらら」(2012~)に移って、その後の著者とネコたちの暮らしぶりがエッセイ・マンガとして綴られて行く。グーグーがいなくなっただけで内容は変わり映えしないのではないかと思うかもしれないが、読後感は大きく異なる。特別な存在だったグーグーの不在が他のネコたちの個性を際立たせているからだ。新連載スタート時、大島さん家のニャンコたちはクロ、ビー、トラ、ミケマル、モーモー、キジタロー、ルチル、ヒマラヤ、なっちゃん、ジミヤマの12匹で、食事に来るヒゲちゃん、ガスマスク、ヤン君、クロシロ、ウリちゃんなどのノラ猫たちも登場する。いきなりタマの左目の疾患〜摘出手術、クロの死へと続く新シリーズのオープニングはショッキングかもしれないけれど、ビーの閉所恐怖症(PTSD)や粗相、添寝など、ネコたちの生態が生き生きと描かれている。大島さんだけでなく、近隣の住人も外ネコ用の寝床(ダンボールや発砲スチロールで作った防寒箱)を庭に置いたりしてノラ猫たちにも優しく接している。

  • ▢ 綿の国星 ケーキの本(復刊ドットコム 2014)大島 弓子・今田 美奈子
  • お菓子作りに凝っていた時期があった。自分で作ろうと思ったきっかけは「きょうの料理」(NHK)だったかもしれない。苺のショートケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ、バナナブレッド、パウンドケーキ、アップルパイ、型抜きクッキー、プディング、アイスクリーム‥‥シュークリームの皮(シュー)以外の洋菓子は一通り作った記憶がある。その際にレシピ本として使用したのが森山サチ子先生の『お菓子作り全科』(家の光協会 1972)だった。この本でババロアとブラマンジェの違いも知った。『綿の国星 ケーキの本』(白泉社 1981)はサブ・タイトルに「チビ猫のオリジナルお菓子ランド」とあるように、洋菓子研究家の今田美奈子が「綿の国星」からイメージしたお菓子の本。殆ど全頁に渡ってチビ猫や時夫、ラフィエルなど登場キャラのイラストやマンガのコマ(ネーム)が挿入されているが、基本的にはお菓子30種のレシピ本である。「須和野家のモーニングボックス」「凍ったお月様」「ホワイトフィールド」「お魚ケーキ」「時夫とみつあみのカップルケーキ」「星空クッキー」‥‥カラー口絵(8頁)やネーミングを見ているだけでも愉しくなっちゃう。

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  • ▢ まんがキッチン(アスペクト 2007)福田 里香
  • お菓子研究家・福田里香は少女マンガや映画の中に描かれた食べ物から作品や登場キャラたちを読み解く「フード理論」の発案者である。「ハチミツとクローバー」「のだめカンタービレ」「笑う大天使」「D班レポート」「はみだしっ子」「西荻夫婦」「くちびるから散弾銃」「いちご物語」「グーグーだって猫である」「天然コケッコー」など、30篇の少女マンガからイメージしたお菓子のレシピだけでなく、エッセイ、対談(羽海野チカ、くらもちふさこ、よしながふみ、萩尾望都)、マンガ(やまだないと)なども併録。「つぶれたいちごのクランブル」「さかさ食パン型のケーキ」‥‥大島弓子のマンガの中で描かれる苺はトラウマで、フードの多くはオブセッションとして登場し、エッセイ・マンガのフードは「この世の至福のアイコンだ」という。本書は大型本だったので、文庫版『まんがキッチン』(文藝春秋 2014)はレイアウトも変わってカラー頁も減ったが、単行本未収録だった1品を特別収録している。羽海野チカの「表紙カヴァ」も可愛い。

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    大島弓子にあこがれて~お茶をのんで、散歩をして、修羅場をこえて、猫とくらす

    大島弓子にあこがれて お茶をのんで、散歩をして、修羅場をこえて、猫とくらす

    • 著者:福田 里香・藤本 由香里・やまだないと
    • 出版社:ブックマン社
    • 発売日:2014/07/15
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:珠玉のカラーイラスト / 生活を感じるエッセイ / レターパッド、カード、詩集 / 吉祥寺の友達 やまだないと / ユーミンのお茶会 福田里香 / 大島弓子作品年表 / チビ猫のガラス玉~大島弓子の“自由"をめぐって 藤本由香里 / 私たちは大島弓子を愛す 西荻キッチン / 私にとっての大島弓子は「私の伯母さんです」福田里香インタヴュー / 記憶に残る予...


    キャットニップ

    キャットニップ

    • 著者:大島 弓子
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2014/10/01
    • メディア:単行本
    • 目次:タマの日 / クロ / ケア / 寒さ対策 / トラ / ガスマスク / 16年の不思議なできごと / 2012年6月のビー / 猫のフード / ふたたび ごはんの風景 / なっちゃん病院に行く / ビーのPTSD / みず・ごはん・おしっこ・うんち / 金針水晶(ルチルクオーツ) / ルチル逝く / ビーとルチル / ヤン君 / 虫歯・口内炎・歯周病 / ビー16歳の異変 / おしっこふとん / ...


    ちびねこ絵本 くりまん

    ちびねこ絵本 くりまん

    • 著者:大島 弓子
    • 出版社:白泉社
    • 発売日:2011/11/15
    • メディア:文庫
    • 目次:おきゃくさまのキス / せいでんき / くびわ / かがみ / しっぽ ある?/ なわばりあらそい / キアヌ やられる / キアヌの エリザベスカラー / のらねこ せっけん / ひげの てんきよほう / みんな おひるね / あかちゃん あらわる / ちびねこママ / ぶじ とうちゃく / みんな おなかが すいている / おとこのこ? おんなのこ?/ あかちゃんは じぶんで うんちが...


    ディーゼルカー

    ディーゼルカー

    • 著者:大島 弓子
    • 出版社:飛鳥新社
    • 発売日:2012/12/26
    • メディア:大型本
    • 内容紹介:1978年、カラー漫画誌「リリカ」で発表された大島弓子の絵物語『ディーゼルカー』が単行本で復活! 幼い頃、婚約をした黄野子と君太は、どちらが「花嫁さん」になるかで大勝負をはじめる。お化粧に子育て…いろんな競争に興じるふたりの行く末は…!? パステル、透明水彩、ポスターカラー、色鉛筆と、たくさんの画材で描かれた、大島弓子の貴重なカラー絵物語!


    綿の国星 ケーキの本

    綿の国星 ケーキの本

    • 著者:大島 弓子・今田 美奈子
    • 出版社:復刊ドットコム
    • 発売日: 2014/02/18
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:やさしいあなたへ(今田 美奈子)/ チビ猫のプチ・デジェネ / つめたいたいけん / 午後のお茶会 / バスケットにゆられて / カーニバルナイト / お星様といっしょに / お菓子作りの基本知識13選 / あとがき(大島 弓子)

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