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猫のエミリー [c a t 's c r a d l e]



  • FRENCH SWINGING MADEMOISELLE 1967(Born Bad 2013)Clothilde
  • 1967年に4曲入りコンパクト盤2枚をリリースして忽然と消え去った元祖フレンチ・アイドロン、クロチルド(Clothilde)ちゃんのリイシュー盤。既出8曲にレア・トラック(イタリア語ヴァージョン2曲)と未発表曲1曲を加えてアルバム化された。〈猫のしっぽをふんじ ゃダメ〉(Fallait Pas Ecraser La Queue Du Chat)というエロ・グロ・ナンセンス曲に相応しい、4隅にネコのイラストを配したアルバム・カヴァも「ネコード」として洒落ている。ブックレット(12頁)に収録された元クロチルド(Elisabeth Beauvais)へのインタヴューのタイトルは「Clothilde, the «Emily Strange» of French Pop…」。赤いシャツの黒髪少女と4匹の黒ネコは「エミリー・ザ・ストレンジ」(Emily The Strange)を想わせなくもない。ネコ写真集『パリにゃん II』(産業編集センター 2012)の表紙の少女もエミリーと黒ネコの描かれた赤いキャミソールを着ていた。日本での知名度は低いけれど、「エミリー」 はフランスの女の子にも人気があるみたいですね。

  • LUCERO(Espa 2011)Aldo Saralegui
  • 黒地にアーモンド型の2つの青い目が映えるアルバム・カヴァ‥‥それだけで誰にも黒ネコと分かる明解さが愉しい。Squeezeの《Cool For Cats》(1979)と同じく、シンプルに図案化された黒ネコ・カヴァは究極の「猫ジャケ」なのかもしれない。しかも目を凝らして良く見ると、瞳がピアノの黒鍵になっているではないか。アルゼンチン・タンゴ楽団(Sexteto Tango)のメンバーとしても知られるピアニストのアルバムだから、ネコの目に鍵盤が映っているという洒落たデザインなのだ。Aldo Saraleguiのピアノとアコーディオンに、フルート、クラリネット、コントラバス、フリューゲルホルン、バンドネオン、ヴァイオリン、ギター、ベース、ドラムスなど13人編成バンドによるインスト・ミュージックだが、女性タンゴ歌手(Amelita Baltar)がゲスト・ヴォーカルで1曲だけ参加して華を添えている。Aldo Saraleguiが作曲、編曲、音楽監督までを務める「ネコード」である。

  • NAKED ACID(Kranky 2008)Valet
  • オレゴン州ポートランド出身の女性アーティストValet(Honey Owens)の2ndアルバム。Jackie-O Motherfuckerのメンバーというだけあって、エクスペリメンタル、ポスト・ロック、サイケ・フォーク、ドローン・ミュージック、スペース・ロックと呼ぶに相応しいサウンドが繰り広げられる。Adrian Orangeとデュエットし、Mark Evan Burden(ドラムス)と3曲でコラボレーション。Valetの儚げで虚ろなヴォイスと空間を揺蕩うギターが夢の中の光景のように流れて行く。タイの仏像みたいな黄金仮面(?)が海に浮かび、その右後ろに賢そうなシャム猫が泳いでいるという摩訶不思議なアルバム・カヴァ(絵の左半分に当たる裏カヴァには月光を浴びた奇妙な形の岩礁も描かれている)に強く惹きつけられる。Valetと同じくポートランドで生まれ育った画家マリア・ディクソン(Maria Joan Dixon)は北西太平洋の雰囲気をイメージしたそうだが、いわゆるロスやサンフランシスコなどの米西海岸とは別世界の風景が幻視されている。

  • DEAD DOG(This Will Be Our Summer 2012)Dead Dog
  • Dead Dogはジョージア州アセンズを拠点に活動する3ピースのパンク・バンド。紅一点のElla Sternberg(ヴォーカル、ベース)、John McLean(ギター)、Lexie Gay(ドラムス)という最小編成で、喧しくてノイジーで可愛いロックを演奏する。デビュー・アルバム(2008)の初CD化に際してボーナス・トラック3曲(ノン・タイトル)を追加しても全11曲、20分という潔さ。それにしても一体何故、「死んだ犬」というセルフ・タイトル・アルバムのカヴァにデブ猫ちゃんのイラストが描かれているのだろうか。『犬のことば』(青土社 2013)の表紙カヴァに2本足で直立する白いネコとセーラー服の少女が仲良く肩を組んでいたように。もしかしたら「小鳥遊」(猛禽類の鷹がいないので小鳥たちが遊ぶ)と書いて「たかなし」と読むという珍名や判じ物に近いのかもしれない。「子猫遊」(獰猛な犬が死んだので子猫が遊ぶ)と書いて「いぬじに」と読む?

  • BETWEEN THE WHILES(Table Of The Elements 2010)Zeena Parkins
  • Bjorkのアルバムに参加していることでも知られるZeena ParkinsはJoanna Newsomのような歌うハープ奏者(SSW)ではない。しかし、「ハープ界のジミヘン」とも称される彼女のパフォーマンスは独創的。ハープだけでなく、ムーグ・シンセ、グラス・ハーモニカ、メロディカ、フォイル(アルミ箔?)、紙、金属ボルト、缶の蓋、ブラシ、ペットボトルなどの楽器や日用品を使ったサウンドは暴力的なほどにノイジーだったり、不穏なアンビエント風だったりする。Bjork以上にエクスペリメンタルやフリー・インプロヴィゼーションの要素が強烈なのだ。アルバム・カヴァに採用された少女画家エレン・ベーケンブリット(Ellen Berkenblit)の「cat riding above city」は蝸牛らしき生物に乗ったネコが都市の上空を浮遊するファンタジックな絵画。ネコとカタツムリの邂逅はヴァージニア・ウルフの「壁のしみ」(The Mark On The Wall 1917)のような意外性がある。

  • ANNIE IN WONDERLAND(Friday Music 2011)Annie Haslam
  • Annie Haslam(Renaissance)のソロ・デビュー・アルバムはRoy Wood(The Move、ELO、Wizzard)の全面プロデュースだった。ギター、ベース、チェロ、サクソフォン、バラライカ、ドラムス、クラリネット、ムーグ・シンセ、ピアノなどの楽器だけでなく、アルバム・カヴァまで描いている。もちろん「アリス」のパロディ《不思議の国のアニー》の表カヴァには「狂ったお茶会」に招待されたアリスのキャラたちが愉しそうに笑っている。帽子屋、三月ウサギ、眠りネズミ、ハートのジャック、ハートの女王(彼女だけはジャックにタルトを盗まれたので怒っている)、アリス(アニー・ハズラム)、チェシャ猫‥‥裏カヴァには代用ウミガメ、グリフォン、赤ん坊を抱いた公爵夫人、イモムシ(ロイ・ウッド本人)も登場する。1977年当時、恋人関係にあったというRoy Woodの愛に溢れたアルバムなのだ。輸入リマスター盤には新録(2010)のボーナス・トラック〈Flowers In The Rain〉(The Moveのヒット曲)が追加されている。紙ジャケット仕様の「国内盤」には未収録なので要注意!

  • SAY HI TO YOUR NEIGHBOURHOOD(Neoangin 2010)Neoangin
  • Neoanginはミュンヘン生まれのポップ・アーティスト(Jim Avignon)によるソロ・プロジェクト。NYブルックリンで作曲して、ベルリンで録音されたという本アルバムはユーモラスで愉しいエレクトロ・ポップ。左腕にミニ・シンセを抱え、右手にバッグを持ったネコ婦人、左手で帽子を脱いで挨拶する胴体がトランプ・カード(4枚のA)の怪人、筒状に紙幣を巻いた昆虫男などが道を行く‥‥本人が描いたシュールでコミカルなアルバム・カヴァやブックレット(24頁)のカラー・イラストもキモ可愛い。「曲を友人にコピーするのは良いけれど、自分で焼いたCD20枚をショーに持参して僕にサインを求めに来ないでね」という記述も可笑しい。4曲目に収録されている〈Bartleby〉はメルヴィルの小説「代書人バートルビー」(ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」にも収録されている)のことでしょう。Neoanginも「バートルビーと仲間たち」の1人だった?‥‥それにしては、数多くのアルバムを発表し続けているけれど。

  • I WAS A CAT FROM A BOOK(Domino 2012)James Yorkston
  • スコティッシュSSWの5thアルバムは正真正銘の「猫ジャケ」である。あら、可愛いと欣喜雀躍して手に取った女子も少なくないでしょう。クレア・ビートン(Clare Beaton)の手縫いコラージュは古い布切れやフェルトなどの素材をを組み合わせて画面上に再構成するもので、動物や草花をモチーフにした児童向けの絵本やエコバッグなどのデザインもしている。ヴィンテージの布地や白いレースをコラージュした枠組みの中に小鳥やトンボが飛び、葉っぱや羽根、楽譜がレイアウトされた中央にフェルトの茶ネコが鎮座する(CD盤面にもネコがプリントされている)。アルバム・タイトルの通り、クレア・ビートンの絵本の中から抜け出て来たようなネコちゃんです。James Yorkstonの素朴なヴォーカルとギター、女性コーラス、コントラバス(Double Bass)、ドラムス、ピアノにヴァイオリン、ハープ、ヴィブラフォン、クラリネット、ヴィオラなどを加えたアクースティック・サウンドも、ハンドクラフト・コラージュの肌触りと同じように耳に優しい。

  • THE SEER(Young God 2012)Swans
  • 黒地に浮かび上がる茶色いネコの顔、眼の中は空っぽで開いた口には人の歯が生えている。4面デジパック仕様のインナーには頭部(旋毛?)や尻尾なども描かれている。この異形の動物は本当にネコなのか?‥‥と訝しむ人もいるかもしれない。しかし、レーベル・サイト(Young God Records)でMichael Gira本人が「スワンズの仲間は一流の男たち。彼らがいなければ僕は幼い子猫ちゃん」(My friends in Swans are all stellar men. Without them I’m a kitten, an infant. )と語っているように、人と融合したネコなのだ。Roisin Murphyのアルバム・カヴァ(Ruby Blue 2005)やKanye WestのPV(Love Lockdown 2008)などで知られるサイモン・ヘンウッド(Simon Henwood)の表現主義的なアートは気味悪くグロテスクでさえあるが、つい細部に魅入ってしまう。彼はアートワークや写真だけでなく、3枚組スペシャル・エディションに同梱されているライヴDVD(約100分)の監督、撮影、プロデュースもしている。
  • TRIUMPH OF A HEART(One Little Indian 2005)Bjork
  • 《Medulla》(2004)に入っている〈Triumph Of A Heart〉はミャ〜ミャ〜と鳴く声帯模写がネコっぽい曲だなぁ‥‥と思っていたら、PVもネコものだった。ネコ亭主との倦怠期。ベッドから抜け出して外出したBjorkは一晩中、街の酒場で遊び仲間たちとバカ騒ぎに興じる。朝帰りの途中、ネコが車で迎えに来た。真夜中のアカペラ大会、宙に舞い飛ぶピンクのハート、踊るネコちゃん‥‥Bjorkがキスすると等身大のネコ男に変身して一緒に踊り出す。某携帯電話会社のTVCMみたいなシュールな設定ですが、ネコ好きには堪らないPVでしょう(監督は(Being John Malkovich 1999)のスパイク・ジョーンズ)。凛々しいネコちゃんの顔に「triumph of a heart」というモノクロのフォント(判読し難いロゴタイプ)が重なる。PVの画像をカヴァに使ったDVDシングルには〈Triumph Of A Heart〉と〈Oceania〉〈Desired Constellation〉の別ヴァージョン(オーディオ2曲)が収録されている。「ネコード」ではないけれど、「ネコ・ヴィデオ」ということで許してにゃん。

  • EL ULTIMO Y El PRIMERO(K Industria 2005)Gato Perez
  • ガトー・ペレス(Xavier Patricio Pérez Álvarez)はアルゼンチン・ブエノス・アイレス生まれのミュージシャン。1966年、スペイン・バルセロナに渡り、70年代に「ルンバ・カタラーナ」(Rumba Catalana)で人気を博した。ルンバ・カタラーナは「1950年代にバルセロナのロマーニ・コミュニティで発祥した音楽。フラメンコ・ルンバに由来し、キューバ音楽やロックンロールの影響を受けている」という。ガトー(gato)とはスペイン・ポルトガル語で「猫」の意味なので、「Gato Perez」という呼び名は「猫ひろし」のような芸名なのでしょう。CD2枚組の編集盤(全24曲)のカヴァには2匹のネコ(縞ネコとネコの置き物)の白黒写真がタイトルやアーティスト名、エビやタコのイラストなどと共にコラージュされ、歌詞ブックレットの見返しにもネコやネズミなどの可愛いイラストが描かれている。〈Nyigo Nyago〉というキャット・ソングも収録。2CDと豪華ブックレット(52頁)を化粧ケースに同梱。Gato Perez(1951-1990)は39歳の若さで早世した。

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    • お気に入りの猫ジャケ10枚を紹介する「ネコード」シリーズ第7集です

    • アルバム・タイトルの ◆ をクリックすると、拡大された 「猫ジャケ」 が表示されます

    • 記事タイトルの右に一覧カタログのリンク・ボタン(肉球アイコン)を付けました

    • クロチルドちゃんについては「なにゆえここに鳴り響く狩猟ホルン」を参照しました

    • 〈Triumph Of A Heart〉を〈素敵なキャット・ソングズ〉に移動、《El Ultimo Y El Primero》に差し替えました(2017-11-15)
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    Queen Of The French Swinging Mademoiselle 1967

    Queen Of The French Swinging Mademoiselle 1967

    • Artist: Clothilde
    • Label: Born Bad Records
    • Date: 2013/02/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Fallait pas ecraser la queue du chat / Je t'ai voulu et je t'ai bien eu / La chanson bete et mechante / Le boa / Saperlipopette / La ballade du bossu / 102 - 103 / La verite toute la verite / Des garçons faciles feat les charlots (inédit) / A ora sos'e / Qualcosa che non va


    Naked Acid

    Naked Acid

    • Artist: Valet
    • Label: Kranky
    • Date: 2008/03/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: We Went There / Drum Movie / Kehaar / Fuck It / Babylon 4 Eva / Fire / Streets


    Annie in Wonderland

    Annie In Wonderland

    • Artist: Annie Haslam
    • Label: Friday Music
    • Date: 2011/01/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: Introlise/If I Were Made Of Music / I Never Believed In Love / If I Loved You / Hunioco / Rockalise - To Alison / Nature Boy / Inside My Life / Going Home / Flowers In The Rain


    I Was A Cat From A Book

    I Was A Cat From A Book

    • Artist: James Yorkston
    • Label: Domino Records UK
    • Date: 2012/08/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Catch / Kath With Rhodes / Border Song / This Line Says / Just As Scared / Sometimes The Act Of Giving Love / The Fire & The Flames / A Short Blues / Spanish Ants / Two / I Can Take All This


    Ultimo Y El Primero

    Ultimo Y El Primero

    • Artist: Gato Pérez
    • Label: K Industria
    • Date: 2005/03/29
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Ay Cuanto Amor / Ahí Se Queda la Canción / Garrotín Con Tumbao / Quise Ser Tu Amigo / Mosaico Pérez / Gracias Corazón / Después de los Truenos / La Gran Ciudad / El Circo Caliente // Rumba de Barcelona / Ja Soc Aquí / Nyigo Nyago / Qué Rama Más Mala / ...

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