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ネコ・ログ #29 [c a t a l o g]

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  • ペット好きには、猫派と犬派がある。よくそういわれる。/ ネコは自分の好き勝手にしている。それがなんともいえずいい。そう思う人が猫派なのだと思う。どういう人がそうなるのか。自分で好きにしたいけれども、浮世の義理でなかなかそうできない。年中どこか辛抱しつつ暮らしている。そういう人であろう。/ そういう人は、ネコに自分を託す。ネコに勝手に乗り移って、そのネコに好きにさせるのである。実人生で制約されている分を、それで心理的に取り戻そうとする。要するに「ネコになってしまう」のである。/ イヌは社会的な動物である。だから社会性が高い。犬派は猫派と違って、イヌに乗り移るわけじゃない。あくまでもイヌは他者である。ただし自分に依存させる。子どもが増えたようなものであろう。飼い主とイヌの関係は、基本的には社会的関係であり、猫派の場合のような心理的関係ではない。〔‥‥〕私は猫派である。だから猫派の気持ちはわかるが、犬派の気持ちはややわからない。大勢集まって騒ぐより、1人でコツコツ仕事をしたほうがいい。ネコのワガママが好きで、だから自分もワガママなのだろうと思う。
    養老 孟司 「猫派と犬派の違いについて」


  • ♯253│ハッカ│ノラ猫 ── 男前に撮れました
    老夫婦が営んでいたラーメン店の前に数匹の子ネコがいた。数年後、成長して大人になったネコたちの姿とは対照的に、民家の塀沿いに並べられた夥しいペットボトルの数々‥‥。水の入ったペットボトルにネコ避けの効果があるのかどうかは怪しいけれど、この近くにネコたちがいるという目印になる。近隣住民の無言の圧力も意に介さず、ネコたちは気ままに行動していた。しかし、ラーメン屋さんが昨年閉店すると一変する。ネコたちは宿無しのノラになってしまったのだ。裏手に住む老婆の話によると、夜は主人と一緒に寝ていたというほど可愛がられていたネコたち。ハッカは細面の白黒ネコ。人懐っこいミズの躰を撫でていると、遠巻で様子を窺っていたハッカも興味深そうに近づいて来る。手足の長いモデル体型というか、洋ネコ(ハーフ?)風の気品が漂う。

    ♯254│ミズ│ノラ猫 ── 飴色の目のネコ
    ある日、ラーメン店のネコたちを撮っていると、近所の主婦らしき女が「エサをやっていないでしょうね」と疑わしい目つきで言う。勢いづいた嫌ネコ派住人の仕業なのか、「猫に餌を与えないでください」という貼り紙が、いつの間にか電柱に出現していた。「大家さんが来て、あげているようですよ」と答えると気まずそうにソソクサと立ち去って行った。夜になると自転車に乗った男性が人目を忍ぶように現われて、ネコたちにゴハンをあげているのだった。白茶ネコのミズは飴色の目が魅力的‥‥何故か「亜麻色の髪の乙女」という歌を思い出す(色違いだが「飴色」と「亜麻色」の語感は似ている)。ラーメン屋の主人と一緒に眠っていたのはミズではないかしらと想うほど人懐っこく、近寄ってスリスリして来る。閉店した店舗の前に蹲って車道を走るクルマ(ヘッドライトの光芒)を眺める夜のネコたちは一体何を考えているのだろうか。

    ♯255│ピン│ノラ猫 ── チビの背後にも白黒ネコが!
    ピンちゃんは虎縞のチビ猫。ミズやハッカに比べると躰が小さいので子供のように見える。3匹が遊んでいる光景は仲の良い「3人家族」のように見えなくもない。人とクルマに埋め尽くされた都会の片隅では数匹のネコたちが疑似家族を形成しているかのように見えることが少なくない。ピンの写真の背後には白黒ネコのハッカの姿も写っている。ところが昨年の冬以来、なかなかネコ一家の姿を見かけなくなった。依然として周辺の民家の塀沿いには汚く変色したペットボトルの数々が、電柱にも嫌ネコ派の貼り紙があることから、ネコたちが一掃されてしまったわけではないことは想像出来るけれど、それでも少し心配になる。裏手に住んでいる婆さんが寒い冬期にノラになったネコたちを不憫に思って、家の中に保護しているという未確認情報もある。暖かい春になったら、3匹の元気なネコたちの姿が見られるかもしれない。

    ♯256│ロン│ノラ猫 ── 帰って来たふわふわにゃんこ
    長毛種のロンちゃんは気まぐれニャンコ。中央図書館裏の遊歩道周辺にいることが多いけれど、暖かい日差しが降り注ぐ冬の日は階段を昇った上に建つマンションの駐車場で日向ぼっこしていることもある。すぐ近寄って来てスリスリするので、写真に撮るのは結構難しい。ロン自身は遊んでいるつもりでも、デッキの下や金網フェンスの向こう側など、人の入れないところまで行ってしまう。それでも姿が消えた方向へネコ語で呼びかけると、思いがけない場所から出て来る。遊歩道沿いの植え込みの陰に隠れるようにネコ用のダンボール・ハウスが3つあった。キャット・フードや飲み水も用意されているし、雨風を凌げるように頭上の木の枝にビニール傘も掛かっている。持って来たカリカリをベンチの下に置いた老婦人が「食べないの?‥‥贅沢なのねぇ」と苦笑して、別のキャット・フードを与える。ロンの写真はiPhotoで自動補正(Enhance)しました。

    ♯257│エル│ノラ猫 ── 未来を見つめる目
    エルも中央図書館裏にある遊歩道の植え込みの中の隠れ家(ダンボール・ハウス)の住民の1人だろうか。仲間の長毛種ロンちゃんほどには人馴れしていないので、撮ろうとして近づく前に逃げられてしまうことも少なくない。それでも鉄柵の向こう側は安全地帯と心得ているらしく、ネコとヒトの間に障害物がある時には近寄っても逃げ出す気配はない。ありがとう、隔たり!‥‥被写体との間ある距離や障害が撮影を可能にするのだ。背後に陽の沈む夕暮れ時、綺麗なアーモンド形の目を瞠って児童公園の方を見つめているエルの姿は海辺の見晴し台から泳ぐ人たちを観察しているライフセーヴァーを想わせる。スベリ台や迷路など公園の遊具に興じている子供たちを見守っているかのように。透視能力のあるというボイオテイア大山猫や未来を見通す力を持つ「仔猫の予言者」のように。

    ♯258│スリ│地域猫 ── 寝‥‥眠たいにゃん
    H山通りと平行して走る細い裏道、民家の建ち並ぶ住宅地に4〜5匹のネコたちが棲んでいる。耳先カットした白茶ネコ、麗しい美形ネコ、チビ黒ネコ、白灰サバネコなど‥‥特定の飼主はいないけれど、隣り近所の住人が世話をしている「半飼い・半ノラ」の地域ネコなのだ。茶トラのスリちゃんは襲って来る睡魔に抗えないのか、気持ち良さそうに目を細める。「お目々パッチリ開けてね!」という撮影者の声が聞こえているのかどうか、警戒する素振りも見せず地面に寝そべっている。ネコにはその気がなくても、愛くるしい表情や可愛らしい仕草に人は和み癒される。仔ネコを川に投げ捨てた男を絶対に赦さないと、ある女性ヴォランティアは語気を強めて語る。人間が近づいて来ても逃げようとしない人懐っこい性格のスリちゃんは緑がかった目の色の綺麗な「美形ネコ」なんですよと言っておこう。

    ♯259│キシ│ノラ猫 ── 動かないでね(1/10秒の世界)
    用心深かった黒ネコのキシちゃん(ぶーけさんに名付け親になってもらいました)が珍しく逃げないのはエルと同じく鉄柵の内側にいるという安心感によるものだろうか。既に夕暮れて暗くなり、手ブレ・マークも液晶モニタに表示されているので、カメラを下に固定してスロー・シャッター(1/10秒)で撮った。ピントはDMFで微調整したと思う。手ブレしないでピントが合っていても、撮影中に被写体が少しでも動くとブレてしまう。そんな時は「動かないでね!」とネコに向かって念じるしかない。「高感度番長」という異名もあるミラーレス(NEX-5N)の魅力は暗闇でもフラッシュ無しで撮れることだが、付属のキット・レンズ(標準ズーム)に泣きどころがある。もう少し明るいズーム・レンズが欲しいと思っていても、Eマウントの「レンズロードマップ」に載っているCarl ZeissレンズやGレンズが発表される気配は今のところない。2013年中に高性能標準ズームは出るのでしょうか。

    ♯260│ロリ│ノラ猫 ── I袋水天宮のネコ
    白っぽい塀で覆われていたI袋駅前公園の改修工事が今年(2013年1月)になって漸く終わった。目立った外観の変化としては従来の地下に加えて、地上2階に駐輪場を増設したことだろうか。これによって駅前や公園内の不法駐輪が少しでも減ることを願うが、長かった工事期間中は公園で憩う人たちや暮らすネコたちには不便極まりないものだった。2012年は公園内で花見さえ出来なかったのだから。いわゆる公共事業‥‥同じ場所を何度も掘り返す道路工事や神経を逆撫でする騒音には腹が立つ。公園の改修工事よりも高層マンションの方が速く建ったりしていないだろうか。それとも邪魔な塀が取り払われて視界が開けた(背後の埼京線が見渡せるようになった)だけでも良しとすべきなのだろうか。元の景観に戻っただけなんですが‥‥。いつまでも駅前公園がロリたちネコにとって暮らしやすい安楽の聖地であることを願って止まない。

    ♯261│レイ│飼い猫 ── 新参者でにゃんす
    2011年11月にトミーちゃんが亡くなったという。あれほど人に懐いていたネコが躰に触られるのを嫌がるようになったのは余程体調が悪化していたからに違いない。ネコに限らず動物(ペット)は気分や体調が悪いとか、頭や腰が痛いとか周囲の人間に訴えたりしないからね。もっと優しくトミーに接していたらと悔やまれる。逝ってしまった彼女の代わりに新入りネコを2匹迎い入れたと女飼主が言う。茶トラのレイちゃんは友好的な反面、デジカメのシャッター音にも驚いて一瞬ビクッと躰を震わせるほど繊細で敏感耳のネコ。黄味がかったオリーヴ色の大きな目がチャーム・ポイントで、遊んで欲しいのか何度も引っ繰り返ってはゴロニャンする。もう1匹の三毛ネコは姿が見えず、その日は写真に撮れなかった。不用意に近づいてはトミーに威嚇されて神妙にしてしたサビくんは相変わらず元気です。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第29集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、♯ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ260匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。29集の常連ネコはロンとエルちゃん。新顔ネコも7匹初登場!‥‥『まる文庫』(講談社 2013)は『そこのまる』(ランダムハウス講談社 2010)に撮り下ろし写真を加えて再構成した文庫オリジナル写真集。養老研究所営業部長まるの写真は増えているが、安野モヨコの愛猫「ジャック」や「暁花メモ」などは省かれている。スコティッシュ・フォールドは人懐っこくて警戒心が皆無。「ネコ・ログ」で紹介したペタちゃんも、いわゆる「天然系」じゃないかと心配するくらい無邪気で無防備だった。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の横縦比は3:2ですが、サムネイルは4:3にリサイズしています
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    まる文庫

    まる文庫

    • 著者:有限会社養老研究所(養老 孟司 / 養老 暁花)
    • 写真:関 由香
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2013/02/15
    • メディア:文庫
    • 目次:まるギャラリー / 猫とまるに関する6つの考察

    タグ:cats catalog maru
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    コメント 2

    ぶーけ

    こんにちは。
    花粉はいかがですか?ピークは超えたと思うのですが。。

    キシちゃん、お名前つけてくださったのですね。^^
    名実共に強くなってもらわなくては。

    ハッカちゃんは美猫ですね。^^怪盗ハッカなんちゃって、黒マントなんかが似合いそう。^^
    by ぶーけ (2013-04-01 15:27) 

    sknys

    ぶーけさん、コメントありがとう。
    花粉の飛散量は減って来たようです^^
    東京は花冷えが続いているので、桜も持ち堪えています。

    飼い猫以外のノラには適当な名前を付けていますが、
    ピッタリのネーミングだったので、名付け親になってもらいました。

    「怪盗ハッカ」が狙うのは鰹節ではなくて、金銀・宝飾品かしら?
    黒マントを翻して逃走する貴公子ネコの姿が目に浮かびます。
    by sknys (2013-04-02 01:03) 

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