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2011年のMacBook Pro [a p p l e]



Mac OS XにはCheetah(10.0)、Puma(10.1)、Jaguar(10.2)という風に、ヴァージョンごとにネコ科の動物のコード・ネームが付けられている。単純に「足が速い」という意味が隠されているだけなのかもしれないが、俊足のCheetahは不安定で使いものにならなかったという。Mac OS Xが実用に耐えるようになったのは半年後に無償ヴァージョンアップしたPumaの総合アップデート(10.1.5)以降のことだった。そのPumaから約10年‥‥ Panther(10.3)、Tiger(10.4)、Leopard(10.5)などのネコ科動物がゼロ年代を駆け抜けた。iBookはPumaから1度もアップデートすることがなかったので、その間の変貌については分からない。10年ぶりに買い替えたMacBook ProにはSnow Leopard(10.6)ではなく、OS X Lion(10.7.2)がインストールされていた。見違えるほど豹変しているのではないかという期待と不安を抱いていたが、UNIXベースの基本は変わっていなかった。ウインドウがグニャリとドックに吸い込まれるギミック(ジニーエフェクト)も健在だし、FinderやMailやiPhotoなど10年前と同じアイコンも多数残っている。

大きく変化したのは2本指で縦横スクロールしたり、3本指でスワイプ出来ることではないだろうか。iPhoneやiPadのタッチパネル操作をガラス製のトラックパッド上で実現するマルチタッチジェスチャには最初こそ戸惑ったものの、慣れると軽快で愉しい。スマホ風の操作性はiPhoneユーザをMacBookへスムーズに乗り換えさせるための(バリアフリー設計の家のように敷居を低くして窓族を招き入れる?)戦略だと思われる。液晶パネルと黒いベゼルをガラス面で覆って段差をなくしたMBPのデザインは洗練されている。いわゆるツルピカ画面(光沢ワイドスクリーン)は写真や動画が綺麗に映る反面、映り込みや目の疲れなども報告されているが、余り心配するほどのことはなかった(大画面液晶TVに買い替えた時のように、目が慣れてしまっただけかもしれないが)。ディスプレイの解像度(1280×800px)が上がった分だけ相対的に文字が小さくなってしまったので、TextEditのフォント・サイズを12ptから13ptへ変更した。

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MacBook Proが梱包されている手提げ箱はiBookの半分くらいの厚みしかなかった。スタイリッシュなスリム・ケースからMBPを慎重に取り出し、本体を覆っている透明シールドを剥がす。外函に「128/SD」と記載されていたので、シルバーに白いアップルロゴが映える液晶パネルを開いて、USキーボードに換装されていることを確認する。日本語(JIS)キーボードが気に入らないのはローマ字入力者にとって平仮名表示が目障り以外の何ものでもないこと。右端にある「return (enter)」キーの形状も醜い。しかし、USキーボードに換えるだけで海外発注(CTO)になってしまうシステムには改善の余地がある。USキーボード仕様の在庫もあるらしいMacBook Airのように、MBPも店舗で自由に選択出来るようにして欲しい。ユーザ各自で簡単に行なえるHDDの交換やメモリの増設とは異なり、アルミ・ユニボディに穿たれたキーボードの換装は難しいと思うから。トリセツ(84頁)の付録「かんたん日本語入力ガイド」(ことえりクイックリファレンス)もUSキーボード対応版を用意するくらいの配慮があっても良かった。

Keyboard-Viewer-Hiragana.png

右上のパワーポタンを押すと機械音ギミックとジャーンという起動音が鳴り、「Welcome」という言葉が世界各国語でスクロールする。MacBook Proのセットアップで試みたいことが1つあった。ログインパネルの英語表示化である。Mac OS Xのログイン・ウィンドウには中央にユーザ・アイコンと名前、「パスワード」、下部に「スリープ」「再起動」「システム終了」という日本語が表示される。シンプルで美しい英語表記で使いたいのに、このパネルだけはユーザ(管理者)権外の範疇らしく、後から変えられない。もちろん「Terminal」で変更可能なはずだが、「System」は弄りたくない。では、どうすれば良いか?‥‥Mac OS Xはマルチ言語に対応しているため、「設定アシスタント」で利用する国または地域を最初に選ぶことになる。この時にデフォルトの「日本」ではなく、「すべてを表示」にチェックを入れて「アメリカ合衆国」を選択する(英語圏であればイギリスでもオーストラリアでも構わない)。すると、それ以降の表示が英語に変わるので、ログインパネルも自動的に英語に変わるというわけ。次の「キーボード入力環境」は「ことえり」を選んでも問題ない。

セットアップを簡単に終える秘訣は後から変更出来ない「アカウント名」以外の入力項目をスキップさせて、最短でログインパネルを表示させること。「Sleep」「Restart」「Shut Down」になっていることを確認したら、パスワードを入力してデスクトップを表示させよう。上部のアップルメニューが英語になっているはずである。このまま英語表示の方が使い易いけれど、インターネットやメール、各アプリケーションの設定は日本語で行ないたいという場合は「System Preferences」→「Language & Text」を開いて、2番目にある「日本語」を「English」の上へドラッグする(たとえばフランス語表示にしたいユーザは同じように「Francais」を最上位にドラッグさせる)。「Finder」だけは強制終了するか、一度ログアウトする必要がある。アップルメニューの「ファイル」「編集」「表示」‥‥という日本語表記は分かり難い。パソコン初心者や英語を習っている小学生にとっても、「移動」と「Go」とで、どちらが直感的で分かり易いかは言うまでもないだろう。

TextEditで文章を入力している時に「Dictionary」を開いておくと便利。英語辞書や日本語辞典だけでなく、ネットに常時接続ならばブラウザを立ち上げることなく「Wikipedia」を自在に利用出来る。この種の利便性はLionで徹底されていて、写真や文書などのファイルも全てサムネイルで表示される。アイコンを選択してスペースキーを押すだけでファイルを開かずに内容を確認出来る「Quick Look」は利用度が高いし、検索ボックスにキーワードを入力するだけで該当ファイルのサムネイルから同じように内容を見れる「Spotlight」もある。文書ファイルのアイコンは皆同じじゃないかと思うかもしれないが、良く見ると保存した文章がミニチュア表示されている(何も書かれていない文書は空白のままだし、カラー文字には色が付いている!)。さらにLionには作業中の状態を自動保存する機能まで備わっているのだ。文章を書きながらcommand+Sキーで保存する必要がなくなったし、バックアップ機能の「Time Machine」のように過去のヴァージョンに戻したり、別のヴァージョンに複製したりすることも可能になった。

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必要最小限のアプリしか入っていないシンプルさがMac OS Xの美点。Lion以降の「iLife」からiWebとiDVDが消えてしまったのは不可解だが、iPhotoやiMovie、Garage Bandは標準装備している。Photo Boothという超バカ・アプリが入っているのもアップルらしくて笑える(警告音には「Sosume」もある)。ユーザの嗜好に合わせて、お気に入りのアプリをインストールするのが林檎主義。ただし、ヴィデオや動画の視聴ではサードパーティのプラグインを入れる必要がある。現状ではQuickTime Xが殆ど役に立たないからだ。たとえば、Adobe Flash Playerを入れないとYouTubeなどのヴィデオを視聴出来ないし、さらにWMVをQuickTimeで再生可能にするためにはFlip4Macが必要になる(7.7はLionにインストール不可能なので、QuickTime 7.6.6をダウンロードしなければならない)。Lionのマルチタッチジェスチャに対応したMPlayerXも使い勝手が良い。個人的にはヴィデオを視るよりも音楽を聴くことが多いので、一部の動画が視れなくても困ることはないけれど。

アップルのブラウザSafari(5.1.2)はLionに最適化されている。フルスクリーン表示やマルチタッチジェスチャにも対応しているので、軽快にサイトやブログを閲覧出来る。気になったページを一時的にクリップして後で読める「Reading List」や最近アクセスしたページをサムネイルで一覧表示する「Top Sites」などの新機能も備わっている。タッチパネルで写真をスライドさせるように2本指で左右にスワイプする操作はスムーズで気持ちが良い。その一方でブログの下書きや編集中に突然フリーズするなど不安定なところもある。四隅が丸くなった「検索ボタン」は洒落たデザインだが、左の入力ボックスとのバランスが悪い。この表示はFirefoxでも変わらないので、SafariというよりもLionの仕様なのだろう。操作性よりも安定性を優先させてFirefox(9.0.1)をメイン・ブラウザとして使っているが、この1ヶ月余りの間に8.0→8.0.1→9.0‥‥というヴァージョンアップのスピードは凄まじい。安定性が向上し、表示が高速化され、セキュリティが強化されるのに越したことはないけれど、6週間ごとにメジャーアップデートして、2012年の8月末にはFirefox 15ですか。

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MacBook Pro(2011 Late)がサイレントアップデートされた直後から、早くも次期新モデルの噂がウェブ上で飛び交っている。アルミに代わるリキッドメタルやカーボンの新素材筐体、次世代CPU「Ivy Bridge」、光学式ドライヴの廃止、ストレージのSSD化など‥‥興味は尽きないが、新MBPが限りなくMacBook Airに近づいてしまうところが悩ましい。ProとAirの違いを見い出すことが難しくなって来るのだ(起動用に高速なSSDを採用するという折衷案も囁かれている)。いずれにしても、2008年に登場したアルミ・ユニボディは一新されるかもしれない。「蔦橋」を搭載した新MBPが発表される前(第1四半期?)にMBA 15"の出る可能性も高い。さらにスティーヴ・ジョブズが死の直前まで構想していたというiTVも控えている。アップル製のテレヴィジョンなのだから、並の液晶ワイドTVであるはずがない。iPadやiPhoneの新モデルも投入されるという。2012年もジョブズがCEOだった11年間と同じように、アップル新製品の発表をドキドキ、ワクワクしながら待ちたいと思う。

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MacBook Pro 13.3 / 2.4GHz(MD313J/A)

MacBook Pro 13.3 / 2.4GHz(MD313J/A)

  • Processor: 2.4GHz dual-core Intel Core i5
  • Memory: 4GB 1333MHz
  • Storage: 500GB 5400-rpm
  • Graphics: Intel HD Graphics 3000
  • Display: 13.3 inch LED-backlit 1280 x 800 resolution
  • Maker: Apple Inc.
  • Media: Personal Computers


Mac OS X Lion START GUIDE ── 別冊Mac Fan Vol.08

Mac OS X Lion START GUIDE ── 別冊Mac Fan Vol.08

  • 著者:栗原 亮 / 中村 朝美
  • 出版社:毎日コミュニケーションズ
  • 発売日:2011/08/08
  • メディア:ムック
  • 目次:Mac OS X Lion 目玉新機能ガイド / Mac OS X Lion インストールガイド / Mac OS X Lion オペレーションガイド / Mac OS X Lion システム環境設定ガイド/ Mac OS X Lion 応用ソフトウェアガイド / Mac OS X Snow Leopard バックアップガイド / Mac & Windows 連携ガイド


すぐにできる! OS X Lion

すぐにできる! OS X Lion

  • 著者:野沢 直樹
  • 出版社:ソーテック社
  • 発売日:2011/08/04
  • メディア:単行本
  • 目次:Lionの世界にようこそ! / Macの基本操作を覚えよう / インターネットに接続しよう / アプリケーションを使ってみよう / システム環境設定でMacを使いやすく / ネットワークを使った各種共有 / デジタルライフを楽しもう / ユーザ管理とデスク管理

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