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ラピス・ラズリの追憶 [c o m m e n t s]



  • 解いた梱包材がでたらめに散乱した冬寝室の奥手にはうっそりとした気配を漲らせて棚を埋め尽くすものがあり、つくりものの千もの顔の群れが月明かりに敏感に反応して表情を持っていた。かさかさと冷たい音をたてて舞い込んでくるのは広葉の落葉枯れ葉、縮れた縁と葉脈を強張らせて、絨緞の毳に絡まりながらそれは一枚ずつ転げて黒い影になった。冷ややかな秋の鏡には防水外套のフードを深く下ろした伝染病者の姿が映っていて、この絵に描いたような場所にかつてじぶんが在ったことがあるような気がかれはしきりにしていたが、それがいつのことだったか思い出すことはできないのだった。/「眠くてたまらないからもう寝るよ ── あのね、この次に生まれ変わる時にはぼくはにんげんじゃなくて別のものになるんだ。それはもう決まっていることなんだよ」/ 倦み疲れたように少年は長い溜め息をついた。/「いつか冬の厚い毛皮に包まれて、じぶんのしっかりとした体臭と体温のなかで眠る。くるっと巻いた尻尾もあって、それは好きなように動かすことができるんだ。ああ、そうなればいいだろうな‥‥! ぼくはもうこれ以上考えることをやめにするよ」
    山尾 悠子 「竈の秋」


  • ♭ 猫:カイエ:So-net blog
    lapisさん、はじめまして。〈猫ゆり〉のライヴァル記事現わる!‥‥という感じです。〈猫ゆり 3〉で紹介する「ネコ本」と被っちゃうかも(苦笑)。『ジェニー』は矢川澄子訳で読んで欲しいと思っていましたが、新潮文庫版の表紙(カヴァ)が白猫と茶猫(?)になりましたね。旧イラストは白猫2匹(本当は白猫と虎猫!)だったのだ。
                              by sknys (2006-02-28 13:00)

    ♭ 歴史マンガ好きさんに50の質問
    『闇の土鬼』‥‥lapisさん、渋いですね。影丸や赤影より地味ですが、手堅い「忍びマンガ」として印象に残っています。確か少年マガジンの連載('73 no.29〜'74 no.14)をスクラップ化した4冊が押入れの奥に眠っているはずです。『日出処の天子』と『ポーの一族』は「歴史 / 少女マンガ」の枠を超えた、戦後マンガ史に残る傑作だと思います。『どろろ』は手塚さんが当時の水木作品に対抗心を燃やして描いた(?)「妖怪もの」で、百鬼丸の設定が強烈でした。『高丘親王航海記』は、山口晃氏が『獏園』(ホラー・ドラコニア少女小説集【伍】)の「挿絵」で一部、ヴィジュアル〜マンガ化(!)しています。
                              by sknys (2006-05-13 16:24)

    ♭ 骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書
    世紀末芸術も好きですが、一番好きなのはシュルレアリスム絵画です。過去20年、都内の美術館で開催された「シュルレアリスム展」は殆ど観ています。カタログや画集は持っていませんが。最近では昨年の〈レオノール・フィニ展〉、3年前の〈フリーダ・カーロとその時代〉、東京ステーションギャラリー(TSG)の〈レオノーラ・キャリントン展〉や、伊勢丹美術館の〈レメディオス・ヴァロ展〉も強く印象に残っています。「フリーダ・カーロ」の記事をUPしようかな。生前のバルティスが京都でしか「回顧展」をやらないと言い放った際、悔しい想いをしたけれど、その後何年かしてTSGで密かに〈バルテュス展〉(1993)が開催された時は、ヘンクツ老人も流石に気が咎めたのかと思いました(単に、この小空間が気に入っただけだったりして?)。lapisさん、ご紹介のデルヴォーやマグリットも大好きです。『マグリットと広告』(リブロポート 1990)という本は刺戟的でした。
                              by sknys (2006-05-18 21:25)

    ♭ 世紀末愛好者に50の質問
    lapisさん、こんばんは。小学生時代、ホームズの探偵小説に夢中になっていました。もちろん少年少女向けに翻案されたシリーズものでしたが。特に「バスカーヴィルの魔の家」のイラスト(横尾忠則!)は怖かった。『さかしま』は、デ・ゼッサントがイギリスに旅立とうと一大決心してフォントネエの家を出たものの、スゴスゴと帰って来ちゃう下りが、「元祖引きこもり」らしくて笑えます。モロー『オルフェウス』、ワォッツ『希望』、ミレイ『オフィーリア』‥‥は、ド真中の直球です。ウォーターハウスの『シャロットの女』はオリジナルを観てみたいなぁ。「亡き王女のためのパヴァーヌ」をBGMに記事を閲覧すると良い感じ。ファム・ファタル(宿命の女)──「処女なのに淫蕩」ではなく、「処女ゆえに淫蕩」(鹿島茂)というところに惹かれるんです。倉橋由美子は20世紀末を代表する作家になるかもしれません。首だけで生きている(頭でっかちな)ポポイ君‥‥『老人のための残酷童話』(2003)も凄かった。クノップフの『見捨てられた町』はマグリット絵画の「原風景」の1つだと思います。長々とコメントしちゃいました‥‥lapisさん、お疲れさまでした。
                              by sknys (2006-05-30 00:41)

    ♭ リーグ・オブ・レジェンドと世紀末紳士同盟・黄金の7人
    lapisさん、こんばんは。19世紀末の男性という縛りで「7人の侍」をキャスティングしてみました。
    • エドガー(吸血鬼)
    • オーランドー(アンドロギュヌス)
    • スターリング・ノース(幽霊になった男)
    • アンドレ・マルクイユ(超男性)
    • フランケンシュタイン(人造人間)
    • エゴン・シーレ(切り裂き魔)
    • ドジソン博士(ロリコン教師)
    7人のプロフィールはモバサムさんのコメント欄(リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い)にあります。
                              by sknys (2006-06-07 23:54)

    ♭ ヴァネッサ・パラディ
    lapisさんもヴァネッサ・Pのファンだったんですね。Lenny Kravitzがプロデュースした《Vanessa Paradis》は仏盤の方が1曲(全11曲)多く入っています。『白い婚礼』は劇場公開時に自由が丘武蔵野館まで観に行きました。COCO CHANELのCM(1992)──「鳥籠の中の網タイツ少女」はCG処理で脚を長くしています。『エリザ』の監督はイザベル・アジャーニの『殺意の夏』を撮った人です‥‥というような外コメントを付けていたんです、lapisさんの記事「ヴァネッサ・パラディ」の2日後に!‥‥そのコメントも含めた「外コメ集」を6月末にUPしました。『橋の上の娘』の前売りスペシャル・パックには、ル・シネマ入場券+サントラCD(17曲)+ブックレット(シナリオ+インタヴュー+写真集)が入っていました。『Atomik Circus』(邦題に恐れをなして未見!)は、Little Rabbitsが音楽を手掛けているので、サントラ盤は期待大です。
                              by sknys (2006-07-09 17:54)

    ♭ 頑張れ平凡社ライブラリー
    lapisさん、こんばんは。「頑張れ、平凡社ライブラリー!」──全く同じ思いから、サイド欄「FAVORITE ー BOOKS」で2冊を紹介しました(タイトルバーをクリックすると一覧出来ますよ)。ライブラリー版『鼻行類』(ハラルト・シュテュンプケ)はモバサムさんの記事に付けたコメントでも書いたように「ジェットハナアルキ」が未収録なのが惜しまれる。絶滅したはずなのに、何故かソネット共和国「リヴリー島」に棲息しているではないか‥‥『ロクス・ソルス』(レーモン・ルーセル)はシュルレアリスム小説の傑作の1つですね。『フローラ逍遙』(単行本)は本当に美しい函入り本。本棚の一番手前に飾ってあります。
                              by sknys (2006-09-22 23:32)

    ♭ CDショップバトン
    lapisさん、こんにちは。かなり無理っぽい企画ですが、アルファベット順なら出来そうです。【に】二重人格(ミレーヌ・ファルメール)──このアルバムは暗鬱で内向的なサウンドですね。個人的には《Anamorphosee》の方が好きですが。ミレーヌ姫ついては〈蜘蛛女のキズ〉に書きました(PV付き!)。最新シングル〈Peut-etre toi〉のPVは日本制作(Production I.G)のアニメですよ。
                              by sknys (2006-10-14 14:24)

    ♭ 澁澤龍彦『フローラ逍遥』
    lapisさん、こんばんは。1987年5月刊で第13刷‥‥結構売れていたんですね。自室の本棚に飾ってある『フローラ逍遙』は初版本ですよ。数年前、新宿でシーボルト・コレクション〈日本植物図譜展〉を観ました。150年以上前の植物画なのに色鮮やか!‥‥「ロシアの科学アカデミーコマロフ植物研究所が所蔵する約900点のコレクションから厳選し約150点を一堂に展示」‥‥日本国内には1点も残ってないのかな?‥‥生前の澁澤龍彦が、駅の自動券売機で切符が買えたと龍子夫人に自慢したという「おバカさん」なエピソードには笑いました。
                              by sknys (2006-11-23 22:44)

    ♭ Best of 2006
    lapisさん、新年おめでとう。「年間アルバム・ベスト10」を何とかUPしました。「活字」と「ヴィジュアル」は数に満たず、ベスト10が作れません。年末に行った〈ダリ回顧展〉は凄かった!‥‥人人人人人人の混雑で。その前日、1時間半待ちと聞いて、寒空に並ぶのもバカバカしいので帰って来ちゃったよ。その奇抜な髭や奇行が揶揄されましたが、本当は真面目な人だったのではないでしょうか。細密画の小品に惹かれます‥‥この大きさなら自室の壁にも飾れるのではないかと。
                              by sknys (2007-01-06 21:26)

    ♭ 澁澤龍彦『胡桃の中の世界』
    lapisさん、こんばんは。『胡桃の中の世界』の復刊は嬉しいけれど、図版の収録された本書は単行本で復刊して欲しかったなぁ‥‥とは言っても、書架にある「胡桃」は『ビブリオテカ 澁澤龍彦 I』(胡桃の中の世界 / 黄金時代)なんですが。アナタシウス・キルヒャーの「地下世界」だけでなく、マーシャル・B・ガードナーの「地球空洞説」(種村季弘『アナクロニズム』)も面白いですよ。
    • 「わたしは幼年時代 メリー・ミルクというミルクの
    •  罐のレッテルに 女の子がメリー・ミルクの罐を抱え
    •  ている姿の描かれている」
    •  その罐を抱えている屋敷の女の子を眺めながら
    •  わたしは水疱瘡に罹っていた
    • どんぐりやさやえんどうの豆になる
    •  田舎の日々
    •  体操する少女のはるかなる視点で
    •  わたしは矮小し
    • 「動物と植物の中間に位置する
    •  貝殻や骨や珊瑚虫」
    •  それら石灰質の世界へ
    •  通過儀礼を試みる
    •                       吉岡 実 「示針影」(グノーモン)
    詩人ウイリアム・ブレイクは常人には見えないものが見えてしまう「幻視者」です。〈ウィリアム・ブレイク展〉(国立西洋美術館 1990)の絵画や版画もインパクト大でした。
                              by sknys (2007-01-21 21:51)

    ♭ 庵野、行定、樋口による『スカイ・クロラ』予告編祭り
    lapisさん、こんにちは。C★NOVELS の繊細なイラスト(草薙水素のヌード!)に馴れちゃたので、アニメ・キャラには異和感があります。ストーリも単純化されていないと良いけれど‥‥森博嗣の原作は謎が多いなぁ。『スカイ・クロラ』『ナ・バ・テア』『ダウン・ツ・ヘヴン』『フラッタ・リンツ・ライフ』の整合性が『クレィドゥ・ザ・スカイ』で引っくり返されちゃう。番外編の『スカイ・イクリプス』で、幾つかの謎が明かされる。草薙瑞季は「娘」ではなく「妹」だった !?
                              by sknys (2008-08-02 17:07)

    ♭ サイボーグ009のブログパーツ
    lapisさん、こんばんは。今年が「009年」とは知っていましたが、ブログパーツがあったとは!‥‥セクシーな「ミレーヌ時計」も作って欲しいなぁ。「009ノ1年」は西暦10091年まで待たなくても「009-1」(2009年1月)で良いのでは?‥‥今月が千年に1度の「ミレーヌアム月間」です。
                              by sknys (2009-01-17 19:41)

    ♭ あなたの好きなフィリップ・K・ディックの作品は?
    lapisさん、こんばんは。気になって時々見に来ていたのですが、やはり亡くなられていたのですね。余り良い読者とは言えなかったけれど、澁澤龍彦や絵画展、ブログ・カスタマイズなどで何度かコメントしました。更新が途絶えた後‥‥丸1年経ってもテーマ別ランキング2位を保っていることを、ご存じですか?‥‥謹んで哀悼の意を表します。合掌。
                              by sknys (2011-01-08 23:25)

                        *

    2011年1月、1年前に亡くなっていたことが判明したlapisさんのブログ「カイエ」は全く更新されないのにも拘わらず、その後もテーマ別ランキング(本)で第1位に輝いていた。閲覧数を伸ばし、1つでも順位を上げることに躍起になっているブロガーを尻目にトップの座を譲らない「カイエ」の存在は逆に痛快ですらあった。ところが先日ランキングを見たら「カイエ」がない。ベスト3どころか、ブログそのものが丸ごと消えていたのだ。記事だけでなく、画像もコメントも何もかも悉く‥‥。幸いGoogleがキャッシュを取っているので、今のところ記事やコメントを読むことは辛うじて可能だが、いつまで残っているか分からない。「カイエ」はソネブロの殿堂入りとして遺すべきだし、その価値もあると思っていただけに喪失のショックは大きい。人気ブログの突然の消失はソネブロにとっても損失ではないだろうか。「カイエ」がブログ遺産として復元されることを願いつつ、lapisさんへのコメントを纏めてみた。全27本のコメントの中から14本(「スニ・コメ」の再録7、未収録7)を抜粋しました。

                        *




    ラピスラズリ

    ラピスラズリ

    • 著者:山尾 悠子
    • 出版社:国書刊行会
    • 発売日:2003/09/25
    • メディア:単行本
    • 目次:銅版 / 閑日 / 竈の秋 / トビアス / 青金石


    鼻行類 ── 新しく発見された哺乳類の構造と生活

    鼻行類 ── 新しく発見された哺乳類の構造と生活

    • 著者:ハラルト・シュテュンプケ
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:1999/05/15
    • メディア:新書


    フローラ逍遙

    フローラ逍遙

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:1987/05/15
    • メディア:単行本
    • 目次:水仙 / 椿 / 梅 / 菫 / チューリップ / 金雀児 / 桜 / ライラック / アイリス / 牡丹 / 朝顔 / 苧環 / 向日葵 / 葡萄 / 薔薇 / 時計草 / 紫陽花 / 百合 / 合歓 / 罌粟 / クロッカス / コスモス / 林檎 / 菊 / 蘭


    Best Of Vanessa Paradis

    Best Of Vanessa Paradis

    • Artist: Vanessa Paradis
    • Label: Universal
    • 発売日: 2010/01/26
    • Media: Audio CD
    • Songs: Il Y A / Pourtant / Marilyn & John / Dis Lui Toi Que Je T'Aime / Joe Le Taxi / Maxou / Sunday Mondays / Tandem / Natural High / Commando / Be My Baby / Divine Idylle / Dès Que J'Te Vois / Just As Long As You Are There / Que fait La Vie / L'incendie / I Love Paris / ...

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    寧夢

    はじめまして。
    私もカイエが大好きで、ROMでしたが仰ぎ見る気持ちで
    訪問させて頂いていた人間でした。
    時々訪れてはほっとため息、安らぎ、・・・。

    なのに、先日全く消されているのにショックを受け・・・。
    あれほど訪問者が多いというのに、
    残す価値がないというのでしょうか。
    別館も全て消され・・・。

    同じ思いの方がいらっしゃってつい、足跡を残したくなりました。
    私も復元というものが可能なら、切に願っています。

    by 寧夢 (2011-11-03 07:17) 

    sknys

    寧夢さん、はじめまして。
    最初の頃は訪問(コメント)していたけれど、
    次第に疎遠になったのが悔やまれます
    (lapisさんへのコンプレックスがあったのかも‥‥)。

    Googleのキャッシュや「別館」も消えてしまいましたね。
    「復元」を望む読者の要望を直接伝える方法がない。
    アーカイヴとして残すようにソネブロが家族の方と交渉するとか‥‥。

    死んだ後の自分のブログの処置について、
    「遺書」に一筆書いておくべきなのかもしれません。
    by sknys (2011-11-04 01:07) 

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