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ネコ・ログ #22 [c a t a l o g]

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  • イタリア語には野良猫という言い方はなくって、"自由猫" と言うんです。/ 世界中のネコを見て回る仕事をしていて感じるのは、ネコが幸せに暮らしている風景は実に平和で、日本国憲法のめざす世界平和に通じるところがある。/ ネコはヒトがひとりひとり異なるように、各地でいろいろな暮らし方をしています。そしてネコを見ているとつくづく平和主義者だな ぁと思うんです。/ 普段、ネコや生きものの姿を探していて、ときには雨の中腹這いになって撮影していて警官から不審がられて職務質問されたりしたこともありますが(笑)、撮影をしながら日本国憲法のことをいつも考えているかといえば、そうではない。でも、自分が海外に出たとき、日本人であることを感じるわけです。そのとき自分のアイデンティティーの1つとして日本国憲法が空気のように自分を包んでいるように感じることがあるんです。
    岩合 光昭 「山猫母・岩合光昭 わいわいニャンニャン対談」


  • ♯190│トミー│飼い猫 ── お迎えでニャンス
    駐車場付近をテリトリーにしているトミーは姿が見えなくてもネコ声で呼ぶと、どこからともなく姿を現わす。訪問者を出迎える家の女主人のように‥‥。ゴムや皮革の匂いが好きなのか、スニーカーに顔を擦りつける。いつもは毛並みに触らせてくれるのに、最近は擦り抜けるように躰を躱す。先日、珍しく鋭く鳴いて拒否権を発動した。その声を聞き留めた女飼主が体調が思わしくなくて、躰に触られるのを嫌がるという。人間も風邪で寝込んだり、気分の悪い時は「放っといてくれ!」(Leave me alone!)と苛立って、声を荒げたくなる。トミーは体調を崩していても呼べばミャーと鳴いて近寄って来るのだから、見上げたネコではないだろうか。近所の家に立ち寄ってはゴハンを貰っている要領の良いメタボ体型のサビくんとは対照的に、彼女はスキニーなチビ痩せタイプ。夏バテしないで順調に恢復して欲しいなぁ。

    ♯191│ミメ│ノラ猫 ── 見上げてごらん、夜空の星を
    ネコの顔を下から見ると笑っているように見えると書いたのは大島弓子だった。某アパートに通じる車道に面した鉄の門には「関係者以外立入禁止」の札が架かっている。ここに数匹のネコたちが暮らしていた。まだ幼さが残る子猫ちゃんをフラッシュ撮影。iPhotoで白黒変換したら、夜露に濡れたような光沢感が増した(サムネイルはカラー)。日中ネコが空を見上げているのは白い雲を眺めているわけではなく、飛ぶ鳥の姿を追っていることが多いけれど、夜空を見上げているネコは何を見つめているのかしら?‥‥煌めく星々や黄色い月だろうか。〈見上げてごらん夜の星を〉は〈上を向いて歩こう〉と並ぶ名曲だが、つい最近まで〈見上げてごらん夜空の星を〉だと思い込んでいた。〈雨上がりの夜空に〉が無意識裡に干渉していたののかしら。「半分人間──半分妖精」の中島らも氏ならば、〈雨上がり‥‥〉の歌詞に隠されたダブル・ミーニングについて熱く語るところだが‥‥。

    ♯192│サラ│捨て猫 ── イタレスは閉店しちゃったけど‥‥
    廃校となったT島区立小学校の跡地に某大学が建った。校庭の併設を義務づけられていない大学校舎は巨大な鉄筋コンクリートの建造物にしか見えない。その裏手に一軒のイタリアン・レストランがあった‥‥と過去形で書いたのは2010年末に閉店してしまったからである。そのイタレスには1度も入ったことはないけれど、入口左に犬小屋風のネコ舎があって1匹のネコが飼われていた。いつの間にかパスちゃんは姿を消して、その代わりに可愛い三毛猫が棲みついた。白ネコや黒ネコの姿も見かける。サンリオ・キャラのニョッキとペンネ(Nyokki & Penne)はイタレスの主人に飼われている2匹の子猫が旅に出るという設定らしいが、現実世界では店鋪(マスター)の方が消え去ってしまった。それでも近所の住人が世話をしているようで、ネコの姿は見えなくてもキャット・フードの入った容器がネコ舎の前に置いてある。一瞬たりとも静止しない(疲れを知らないサイドバック選手のような)サラは最も撮り難いネコである。1時間以上粘って撮った1枚‥‥会心の写真ではないが、辛うじて撮れただけでも良かったと思うことにしている。

    ♯193│グー│飼い猫? ── グーだってネコである
    陽も落ち、バッテリーの残量も少なくなって来た。8年間愛用しているデジカメ(Cyber-shot)はフル充電しても30分くらいしかバッテリーが持たない。人懐っこく傍らで動き回る落ち着きのないネコほど撮り難い被写体はない。いつまで待っても静止してくれないネコへの最終手段‥‥出来るだけネコの嫌がることはしたくないのだが、この機会を逃したら2度と撮れないかもしれないという予感が強制行動を促す。グーちゃんの右耳を左手で押さえたまま、右指でシャッターを切る。ネコはベロを出してアッカンベーならぬイヤイヤの意志表示?‥‥ごめんね、ネコちゃん。でも、この写真を撮ってから4ヵ月近く経つのにグーと再会していない事実が「予感」の正しさを証明している。S川緑地公園で遊んでいたグーはノラではなく、飼いネコかもしれない。今日会えても、明日再び会えるとは限らないネコとの一期一会‥‥また、どこかでグーに会えるかな?

    ♯194│ユミ│地域猫 ── 見えない春
    「見えない秋」(1974)は樹村みのりの短篇マンガだが、今年(2011)の春は寒い日々が続いて、なかなか暖かくならなかった。「見えない春」‥‥もちろん、東日本大震災や福島原発事故(放射能漏れ)による絶望感や心理的なストレスと無関係ではない。大地震後、気になったのはネコたちがマグニチュード9.0の揺れや地面の震れを一体どのように感じて、どんな反応を起こしたかということである。人語でネコに話しかけても当然ネコは答えてくれない。ユミの写真は駐車場と空地の間にある金網フェンス越しに撮った‥‥見えないフェンス、見えない放射能。自分(被写体)とカメラ(撮影者)の間に障害物があることを本能的に分かっているらしくネコは逃げようとはしない。この周辺に棲むネコたちは民家のオバさんがゴハンをあげているけれど、警戒心が強くて人には懐かない。本来ならば蒼々としているはずの草地も半分は白っぽく冬枯れしたままである。

    ♯195│クー│飼い猫 ── 今日も良いネコに出会えた
    この民家の飼いネコたちも2匹が病死して個体数が減ってしまったが、元気なクーちゃんは「ネコちゃんおいで」と呼ぶまでもなく、手招きするだけでトコトコと近寄って来る。脚にスリスリすると茶色い毛がパンツに付着して毛だらけになっちゃう。お腹を見せてゴロニャンして寝返りを打つ。距離感が取り難く決してやすり易いネコとはいえないけれど、辛抱強く待っていればシャッター・チャンスは確実に訪れる。適当に人馴れしていて静止してくれるのが撮影者にとっての理想のネコ。警戒心が強くて逃げ去るネコも、逆に躰を擦りつけて来る親密すぎるネコも被写体としては好ましくない(撮影を諦めれば膝の上に乗って来るネコほど可愛いものはない)。毎回決まったベスト・ショットが撮れるのはカメラマンの腕よりはモデルの良さにあると思う。動物写真家の岩合光昭さんによると、牡ネコは気分が乗って来ると自ら進んでポーズを決めるというけれど‥‥。

    ♯196│ラブ│ノラ猫 ── 黒ネコはミステリィ?
    絵本『エミリー・ザ・ストレンジ』(メディアファクトリー 2003)にはロスゴリ少女エミリーと4匹の黒ネコたち‥‥サバス、ニーチェ、マイルズ、ミステリが登場する。黒ネコはミステリ?‥‥原作者でもあるロブ・リーガーの描く黒ネコたちはヤンチャで野性味溢れるだけでなく、キュートでキモ可愛い。コミック風にデフォルメされているものの、擬人化された動物キャラのように人語を喋らずネコとして存在する。アメリカでは大人気の「Emily The Strange」シリーズ。『エミリーの記憶喪失ワンダーランド』(理論社 2010)というゴシックSF風の小説も翻訳出版されているのに、なぜか日本では話題になっていない‥‥というよりも、エミリーの存在さえ知らない若者たちが多いような気がする。「絵本」を某人気女性歌手が訳したことで「際もの」と看做されてしまったのだとしたら残念である。いつの間にかS川緑地に棲み着いた黒ネコもミステリアス。ワイルドで精悍な面構えが逞しい。

    ♯197│ホク│地域猫 ── 某女子大のキツネコ
    K政大学の敷地内にも数匹のネコたちがいるらしい。車道に面した校内は鉄柵で仕切られているので、外から眺めるしかない。中の様子は歩道からは窺い知れないが、恐らく野良ネコたちなのだろう。鉄柵近くに屯しているのはゴハンを運んで来る女性を待ち侘びているのかもしれない。毎日大量のキャット・フードを撒いて行く人がいるのだ。ネコ好きのオバさんに写真を見せると、哀しそうな目をしている‥‥と同情する。同じ並びにある某区水道局(給水所)の敷地内で優雅に毛繕いをしているネコたちの方が満ち足りた表情をしているような気もする(人気のない広大な場所で暮らすネコの方が幸せなのかしら?)。飼いネコと野良ネコの違いは目の表情に表われるのだろうか。優しい目で見つめる飼いネコ、鋭い目で睨む野良ネコ、哀しそうな目で訴える地域ネコ‥‥ホクの哀しげな目はソラリゼーション処理しても決して消えることはなかった。

    ♯198│ジュン│飼い猫? ── 青い目が綺麗だね
    ネコの毛色のカラー・ヴァリエーションは白、黒、灰、茶系の4色しかないけれど、グリーン、イエロー、ブルー、コッパー(銅)など‥‥目の色は多種多彩で惹きつけられる。ペルシャ系のネコだろうか、S川緑地で初めて見かけたネコも水色の目が涼しげで魅了された。目の表情が穏やかで優しげなので、もしかしたら飼いネコなのかもしれない。そこを縄張りにしている野良ネコならば今までに何度も出会う機会があった。初対面のネコは警戒心と好奇心が相半ばしている。いつでも逃げ出せる準備は出来ているけれど、同時に近寄って来ようとする気配も感じられる。もし、これが若い女性ならば、本人に美人で可愛いという自覚も生まれて、周囲の男たちも放って置かないだろう。しかし、ネコはネコとして存在するだけで、人間の気を惹こうとして愛想を振り撒いているわけではない。彼らに関心のある人だけが立ち止まって、美しい生きものに目を奪われる。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第22集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下にあるナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、#ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ200匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第22集の常連ネコはトミーとクーちゃん。他にも名前を変えて再デビューしているネコがいるかもしれません。『日本国憲法前文お国ことば訳 わいわいニャンニャン版』(小学館 2010)は日本全国各地の方言で憲法前文(正文)を平易に読み替えたネコ本。発案者は高知県香南市のニラ農家主婦・山猫母。コラボしたのは動物写真家・岩合光昭。ブログやフリーペーパーなどで日本全国の一般人から「お国ことば訳」を募り、5年間で90以上集めたという。見開き左頁に「全訳」と「一文訳」(『われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する』)、右頁にネコ写真‥‥47都道府県のネコちゃんが読者を癒します。

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    • 『日本国憲法前文お国ことば訳‥‥』の表紙は山猫母家の牝ネコ・弥哉。岩合家の三毛ネコ・柿右衛門ちゃんも登場します^^
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    日本国憲法前文お国ことば訳 わいわいニャンニャン版

    日本国憲法前文お国ことば訳 わいわいニャンニャン版

    • 編者:勝手に憲法前文をうたう会
    • 写真:岩合 光昭
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2010/06/20
    • メディア:単行本
    • 目次:開会宣言 わいわいニャンニャン版 / 日本国憲法 前文(正文)/ 日本国憲法 前文(英文)/ 高知 全訳 / 愛知 全訳 / 秋田 一文訳 / 長崎 一文訳 / 兵庫...

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