◆ MY FRIENDS ALL DIED IN A PLANE CRASH(Sober & Gentle 2007)Cocoon抱いた子ネコの頬にキスする女性‥‥いかにも愛くるしい
「猫ジャケ」だが、一部しか見えない周囲の写真によって、数多く撮られた古いポラロイドの1枚であることが分かる。フランスの男女デュオ、Cocoonの音楽はアクースティック・ギターが優しく奏でるフォーキーな世界。男=楽器・作曲、女=ヴォイス・作詞という男女デュオの役割分担に反して、Mark Daumailがリード・ヴォーカルとギター、Morgane Imbeaudがコーラスとキーボートを担当する。Sufjan Stevensを想わせる中性的なヴォイスにギター、バンジョー、ウクレレ、グロッケン、チェロ、オーボエ、フルートなどを配したサウンドは軽やかで爽やかに聴こえるけれど、「私の友達は全員飛行機事故で死んでしまった」というアルバム・タイトルに採られた歌詞を含む〈Take Off〉や「鳥は大っ嫌い」と執拗にリフレインする〈Tell Me〉、「登山で爪先を失った」と歌う〈Cliffhanger〉‥‥など不吉さや気味悪さや喪失感に覆われている。全曲英語詞なのにフレンチっぽい雰囲気も漂う。1曲多い国内盤
(P-VINE 2008)や3曲を追加した仏盤
(Discograph 2011)も出ています。
◆ BATBOX(Nobody's Bizzness 2007)Miss Kittinネコとフクロウが似ているように、ネコとコウモリも親戚関係にあるらしい。Miss Kittinの2ndアルバムはタイトルとDJ名に因んでか、ネコとコウモリが合体した妖怪ネコウモリたちが跳梁跋扈している。ウェブ画像ではグレー地に飛び交う黒ネコウモリが見えるけれど、オリジナル・カヴァは黒いマット地に光沢のある黒ネコウモリという「闇夜の黒猫蝙蝠」で、光を当てて反射させないと何が描いてあるのか判然としない。この凶暴そうな黒ネコウモリたち‥‥どこかで見たことがあるかもと思った人は目が鋭い(ネコやコウモリ並みの耳の持ち主と言うべきか)。黒髪と黒いドレスのゴス少女と4匹の黒ネコたちが登場する絵本
「エミリー・ザ・ストレンジ」(Emily The Strange 2001)の作者の1人ロブ・リーガー(Rob Reger)のアートワークなのだから。コズミック・デプリ(Cosmic Debris)は米サンフランシスコのアート集団だが、「エミリー」 のマット地に光沢色を使った視覚トリックのアイディアや黒猫サバス、ニーチェ、マイルス、ミステリ?の黒ベタ・イラストが《BatBox》にも生かされている。6枚綴りの歌詞カードの裏に描かれている30階建て
「ゴシック屋敷」も圧巻!‥‥もちろん黒猫蝙蝠館の主人はキトゥン嬢王である。
◆ SOUNDS FROM THE KITTEN CASINO(Hammondbeat 2008)ModusModusはスコットランド・エジンバラ出身の5人組。60年代モッズ・スタイルで決めた男4人に、紅一点のMiss Modus
(Sarah Kennedy)のレトロ・ミニスカ・ファッションが映える。「Hammondbeat」 というレーベル名の通り、ハモンド(オルガン)が大活躍。Stock Hausen & Walkmanの
《Organ Transplants Vol.1》(Hot Air 1996)は「臓器移植」という駄洒落タイトルのラウンジ・コラージュ・ミュージックだったが、Modusはジャズ・フ ァンク〜レア・グルーヴ系のバンドである。飛び跳ねうねるハモンド、疾走するベース、軽快にコードを鳴らすギター‥‥ソウルフルで力強いSarah嬢のヴォイスに悩殺される。アルバム・タイトルに「子ネコのカジノ」とあるように、グリーン地の賭場にトランプやサイコロやチップ($1000)が置かれ、カードや配当金を配る長い杓文字のような柄の先が妖艶な牝猫の顔になっている(CD盤面はルーレット盤を模している)。こんな素敵なカジノが本当にあったなら、一晩中遊んじゃうかもしれない。もちろん恋人ネコと同伴で。
◆ KRAZY LOVE(Sunnyside 2009)Luba Masonベージュ色のソファの上で横坐りするブロンド・ヘアの女性と行儀良く坐っている白黒ツートン・カラーのネコちゃん。左側と右端という微妙な距離が2人の関係を暗示している。スロヴァキア出身の歌手、Luba Masonのジャズ・ヴォーカル・アルバムだが、ブラジル風の味付けが施されているので、ワールド・ミュージックの棚に紛れ込んでいたとしても異和感がない。Pedoro Caetanoの〈E Com Esse Que Eu Vou〉では旦那さんのRuben Bladesとデュエット。少女時代を過ごした家を回想する〈This House〉はサンバ風のアレンジになっている。「猫ジャケ」率が一番高いのはジャズ・アルバムだと思う(2番目は邦楽かしら?)。かつてジャズ・ミュージシャンが「CAT」と呼ばれていたことと関係があるのかもしれない。ネコと人間の「クレイジー・ラヴ」。裏ジャケではソファは折り畳まれて、Luba Masonが下手に立ち去ろうとしている。既に恋人の姿も消え去り、使用済みのティッシュのような白い紙屑がソファの前に落ちている。「恋の破局」は洋の東西を問わず涙なくしては終わらない。しくしく。
◆ ELIZA DOOLITTLE(Parlophone 2010)Eliza Doolittle墜落した飛行船に跨がり、右手でタワーに掴まり、左手に持った赤いダイスを放り投げようとしている女の子、溶けたアイス、白煙を上げる火山、稲妻を受けたロンドン時計台、巨大なラジカセ、東洋風の少女の顔が映し出されたビル、バースのストーンヘンジ、ロンドン・タワー・ブリッジ‥‥などをコラージュしたアルバム・カヴァの中に、緑色の液体(スライム?)で顔の半分を覆われたロシアンブルーがいる(右端には一輪の黄水仙を咥えたライオンの姿も)。英国の新人娘、Eliza Doolittleのデビュー・アルバムも
「ネコード」に認定しても許されるだろう。「マイ・フェア・レディ」のヒロイン名から採ったという名前(子供時代からの渾名)からも想像出来るように、ドリーミングでノスタルジックなポップスが鏤められている。彼女の強みは同世代の心情を体現しているSSWというところにあるのだろうか。ミニ柄パンツにスニーカというファッション・センスは垢抜けていないけれど。
◆ SURFING THE VOID(Rinse 2010)Klaxons「KLAXONS」というネームやトレードマークを胸や袖に縫いつけたオレンジ色の飛行服に身を包み、フルフェイス・ヘルメットを右手に持ったネコ宇宙飛行士。灰色ネコの顔は白いヒゲの1本1本が数えられるくらい鮮明に写っている。精悍な面構えには強い意志も感じられる。インナーの左頁に歌詞、右頁にネコと同じコスチューム&ボーズで決めた4人のメンバーが載っている。ネコにコスプレさせたわけではなく、猫頭人身の合成写真‥‥それにしても何故ネコなのだろうか。東日本大地震(3・11)による福島第一原発事故で漏れ出た放射線の人体に与える影響について、TV解説者は飛行機に乗って欧米の都市へ往復しても約0.1ミリシーベルト(mSv)の被曝量になるし、スペースシャトルに乗って宇宙へ飛び立ったNASAの飛行士たちは1日約1mSvの放射線に曝されている‥‥などと語っていた。自ら放射線で被曝する覚悟のある宇宙飛行士と福島原発から20〜30km圏内の住民や東北〜関東地方の住人たちを同列に扱って欲しくないですね。島民よりも棲息する個体数が多いという宮城県・田代島(猫島)で暮らす人々やネコたちの安否も気になります。
◆ KING OF THE BEACH(Fat Possum 2010)WavvesBest Coast、MGMT、Klaxons‥‥2010年は「猫ジャケ」の当たり年だった。その中でもWavvesの3rdアルバム・カヴァは椰子の木のある極彩色の海辺を背景にしてマリファナを決めるサイケな「猫王」とでも称すべきもので異彩を放っていた。3ピースのバンド編成になっているけれど、ヴォーカルに加えて、ギター、キーボード、ヴィブラフォン、パーカッション、プログラミングなど‥‥リズム隊(ベースとドラムス)を除く殆どの楽器を1人で演奏しているNathan Williamsのプロジェクトという面も強い。Dinosaur Jr.の甥っ子みたいな爆音パンク。狂ったようなスライド・ギターが轟くアルバム・タイトル曲〈King Of The Beach〉。〈When Will You Come〉や〈Convertibale Balloon〉などのメロディアスなポップ・ソング。〈Baseball Cards〉や〈Micky Mouse〉では一転してアニコレ風のサイケデリアに誘う。Best Coastの
《Crazy For You》(Mexican Summer 2010)とペアで聴くべきアルバムだと思う。
◆ LIVE RECORDINGS, TV-CLIPS & ROADMOVIE(KRS 2010)Kleenex / LiLiPUT1978年、スイス・チューリッヒで結成されたKleenexはメンバー・チェンジを繰り返した後、キンバリー・クラーク社(Kimbery-Clark)から訴えられてバンド名の変更を余儀なくされた。1982年に英ラフ・トレードからLiLiPUT名義のデビュー・アルバムをリリース。しかし、2ndアルバム
《Some Songs》(1983)を最後に解散してしまう。10年後、地元のレーベルからKleenex / LiLiPUTの2枚のアルバムを含む全音源を網羅した回顧アルバムを出すものの廃盤に。そして、ライオット・ガルーの総本山とでも言うべき米インディ・レーベル(Kill Rock Stars)からリイシューされたアルバムが
《LiLiPUT》(2001)である。全46曲、139分(2CD)。グリール・マーカスのライナー・ノーツで、Kim Gordonも一文を寄せている。カヴァ・アートはMarlene Marder(ギター)と共にバンドの屋台骨を支えたKlaudia Schiff(ベース)の手による。「魚の骨」を添えることでネコの横顔だと分かる「ネコード」は彼女たちのライブ録音24曲(1979年 ビエンヌ、1983年 チューリッヒ)とTV出演時やツアー映像をコンパイルした2枚組(CD+DVD)アルバム。
◆ SUN BRONZED GREEK GODS(Astralwerks 2011)DOMDOMはDominic(ヴォーカル&ギター)を中心とする米マサチューセッツ出身の4ピース・バンド。
《Sun Bronzed Greek Gods》(Burning Mill 2010)のアナログ盤はEP(6曲入り10インチ)扱いになっているものの、全7曲19分のCDはミニ・アルバムと看做して良いかもしれない。このリマスター再発盤が注目されるのはオリジナルとはジャケが異なるところ。Lady Gagaの顔写真を切り抜いたカヴァが差し換えられた事情は分かる気もするが、なぜカシオ製キーボードの前で寛ぐピンボケ子ネコちゃんの写真に変更されたのかは良く分からない(Best Coast、Wavvesに続く3匹目のドジョウネコを狙ったのかしら?)。ドミニク君のヴォイスは女性が歌っているのかと思うほど可愛らしい。暖かい陽射しが降り注ぐ青春ギター・シンセ・ポップス集。
「オリジナルEP」がPitchforkで8.0の高得点を獲得したのも紛れではない(2010年のベスト・アルバム50には漏れたものの、70位圏内には入っている)。フル・アルバムも「猫ジャケ」になるのかしら?
◆ COOL FOR CATS(A&M 1997)Squeeze「猫ジャケ」というと、Squeezeの2ndアルバムを想い浮かべる洋楽ファンも少なくないのではないか。紫色の地に黒いフライングVみたいに図案化された黒ネコの顔。「COOL」 という緑色のアルファベットの「O」がネコの目になっている。これだけ簡略化されたデザインなのに、世界中の誰もが「黒ネコ」だと視認出来るところが素晴しい。Glenn Tilbrook(ギター、ヴォーカル)やJools Holland(キーボード)を擁する5人組は英国を席巻していたパンクとは異なる明快なロック(パワーポップ)を演っている。ニュー・ウェイヴ臭くないところも潔い。オリジナル・アルバム(1979)に2曲を追加したデジタル・リマスターEU盤だが、さらにシングルのB面など5曲のボーナス・トラックを収録した紙ジャケ仕様の国内盤
(Strange Days 2007)には当時、英アナログ盤で流通していたという
「4種類の色違いスリーヴ」(青・緑・黄・ピンク)も同梱されているという。
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- お気に入りの猫ジャケ10枚を紹介する「ネコード」シリーズ第5集です
- 記事タイトルの右に一覧カタログのリンク・ボタン(肉球アイコン)を付けました
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necord / 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / sknynx 320
My Friends All Died In A Plane Crash
- Artist: Cocoon
- Label: Discograph Int'l
- Date: 2008/07/15
- Media: Audio CD
- Songs: Take Off / Vultures / On My Way / Seesaw / Christmas Song / Tell Me / Owls / Paper Boat / Cliffhanger / Chupee / Hummingbird / Microwave
BatBox
- Artist: Miss Kittin
- Label: Nobody's Bizzness
- Date: 2008/03/04
- Media: Audio CD
- Songs: Kittin Is High / Batbox / Grace / Solidasarockstar / Barefoot Tonight / Play Me a Tape / Pollution Of the Mind / Wash N Dry / Metalhead / Machine Joy / Sunset Strip / Playmate Of the Century / Mightmaker
Sounds From The Kitten Casino
- Artist: Modus
- Label: Hammondbeat Records
- Date: 2009/03/17
- Media: Audio CD
- Songs: Go-Go Shake / The Snake / How Do You Do? / Soul Of The Zodiac / One More Time / Club Soul Magic / llusion / Soul Time / Some People Say / Looking Over My Shoulder
Surfing The Void
- Artist: Klaxons
- Label: Polydor UK
- Date: 2010/08/31
- Media: Audio CD
- Songs: Echoes / The Same Space / Surfing The Void / Valley Of The Calm Trees / Venusia / Extra Astronomical / Twin Flames / Flashover / Future Memories / Cypherspeed
Krazy Love
- Artist: Luba Mason
- Label: Sunny Side
- Date: 2009/01/27
- Media: Audio CD
- Songs: Krazy Love / From Me To You / Lovely / A Summer Night / E Com Esse Que Eu Vou / Olhos nos Olhos / This House / Gorgeous Fool / Reunion / Xmas In July
King Of The Beach
- Artist: Wavves
- Label: Fat Possum Records
- Date: 2010/08/03
- Media: Audio CD
- Songs: King Of The Beach / Super Soaker / Idiot / When Will You Come / Post Acid / Take On The World / Baseball Cards / Convertible Balloon / Green Eyes / Mickey Mouse / Linus Spacehead / Baby Say ...
Sun Bronzed Greek Gods
- Artist: DOM
- Label: Astralwerks
- Date: 2011/02/15
- Media: Audio CD(EP)
- Songs: Jesus / Living In America / Rude As Jude / Bochicha / Burn Bridges / Hunny / I Wonder
Live Recordings, TV-Clips & Roadmovie
- Artist: Kleenex / LiLiPUT
- Label: Kill Rock Stars
- Date: 2010/03/23
- Media: Audio CD+DVD
- Songs: Geierwally / Pink Hit / Ain't You / Beri-Beri / 1978 / Madness / Lust / Nice / Ü / Hedi's Head / In A Mess / Do You Mind My Dream / Terrified / Might Is Right / Étoile / Boatsong / Take A Taste Of My ...
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