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絵文字萌え [p a l i n d r o m e]



  • 猫は小さな扉をあけて、最初のとそっくりの廊下に招き入れたが、その廊下はこれまたさきほどよりいくぶん広い中庭に通じていた。片隅に、「乳を吸う蝸牛」「糸巻玉を作る猫」「月の練り粉」などと書かれた古い看板が山積みになっていた。エキゾチックな植物と色あせた木蔦の茂みが一茎の小さなゼラニウムの脇で、壁の一部分を覆っていた。さし示された扉は、黒の鋼鉄製で、まだ新しかった。扉が開かれ、薄暗い部屋に踏み入れた。ユーカリの樹の匂いが鼻につき、ちょっとびっくりした。突然、強烈な明りが壁一面を照らし出した。そして私はその部屋が美術館になっているのに気づくのであった。最初の眼もくらむほどの明りも薄れ、一堂にあつめられている猫を描いた世界中の絵や版画に、私は見入った。私を案内してきた猫が、まずは嗄れた叫び声をあげ、つぎには長ながと「にゃーお」と鳴き、それもやがて甘えたようなしかもゆっくりした調子に変わり、最後はため息で終わった。すると絵がいっせいに動き出したのである
    レオノール・フィニ 『夢先案内猫』


  • □ 猫は「にゃあ!」と、絵売りは定価。画家が描いて貼り、上戸彩にはコネ?
    S画廊に展示される作品の値段は看板ネコのバディ君が決める。「にゃあ!」と一声鳴くと10万、「にゃあ、にゃあ」で20万‥‥画家が描いたネコの絵を1点ずつバディ君に見せて評価してもらう。ネコは値付けをして、画家が値札を貼る。ここは古今東西のネコ名画を蒐集した「ネコ美術館」(レオノール・フィニの『夢先案内猫』の中で、雄猫オネイロポンプが道案内する)を彷佛させる「ネコ画廊」だったのだ。ネコ絵画だけではなく、ネコ写真やネコ彫刻にネコ陶器、ネコの縫いぐるみなど‥‥画廊内はネコだらけ。〈金子仲義 ネコ・ネクション展〉の初日には全国から多くのネコ・ファンが駆けつけたが、金子氏の大ファンだというネコ好きタレント・女優の上戸彩さんも訪れた。熱心に絵を鑑賞する彼女の足許に看板ネコが纏わり着いてゴロゴロと喉を鳴らす。バディ君が近寄って来てスリスリすると、表示価格から10%OFFになるのだった。ゴロニャン。

    □ 稲妻で感電死は神殿下でまずない
    神殿の落成式が行なわれた夜は生憎の雨模様だった。新宮殿を設計した神官のアハネ(1級建築士)が演説している。「新宮殿のセキュリティには万全を期した。東西南北にある4つの尖塔に「ヒライ神」を配しているいるので宮殿内に雷が落ちる心配は絶対ないし、その稲妻によって感電死する宮廷人は1人もいないだろう」‥‥「ヒライ神」とは古代インド神の1つで雷神の怒りを鎮める使命を負っている。ある嵐の夜、雷鳴に脅えた幼い王子が祈りを捧げると、宮殿の尖塔に「ヒライ神」(飛来神)が飛来して神殿を落雷から守ったという古代インド神話に拠る。「‥‥4体のヒライ神は結界を張ったバリアみたいなもので、雷だけではなく、あらゆる「魔物」の侵入から宮殿を護る守護神でもある」‥‥神官のスピーチが続く間に、次第に雲行きが怪しくなって来た。突然風雨が激しくなり、漆黒の暗闇に青白い閃光が走る。ピカッ、ゴロゴロゴロゴロ、ドッカ〜〜〜〜〜〜〜ン!‥‥果して4体の「ヒライ神」は落雷から宮殿を護ったのでしょうか?

    □ 1人立つ窓、ハゲ頭にまたアゲハ止まったり飛び‥‥
    開け放された窓から爽やかな初夏の風が吹き込む午後、1人の男性が窓辺に佇んでいた。都内では珍しい澄み切った青空にソフトクリームみたいな白い雲がポッカリと浮かんでいる。一生かかっても食べ切れないほど大きなソフトクリームに銀色に光る物体が近寄って来る。まるでアイスクリームを掬い取るためのスティックのような流線形の飛行船‥‥。その時、目の前を「黒い花びら」が横切った。一頭の揚羽蝶が風に誘われて飛んで来たのだ。ヒラヒラと優雅に舞う黒アゲハ。しかし、彼女は急に男の視界から消えてしまう。一体どこへ行ってしまったのか、室内に迷い込んだのか、それとも屋根で羽休めをしているのか?‥‥周りを見回しても黒アゲハの姿は見えない。公園でサッカーボールのリフティングして遊んでいた少年が不思議そうな顔をして男の顔を見つめている。暫くして黒アゲハが男の視界に戻って来た。どこに隠れていたのかな?‥‥雑踏の中で逸れてしまった恋人を発見した時のようにホッと安堵して、男は無意識に後頭部を撫でる。

    □ 素手、手づかみ、箸なしは身勝手です
    1492年にはイタリアの宮廷内で既に食事用のフォークが使用されていたらしい。この食事作法がヨーロッパに広まったのは、1533年フィレンツェ、メディチ家のカトリーヌがフランス王のアンリ2世の妃として輿入れした時に嫁入り道具の1つとして持参したのが始まりだったという。ナイフとフォークを自在に操るカトリーヌ王妃を見た王侯貴族たちは、さぞかし驚いたことだろう。それまでの彼らは手づかみで料理を食べていたのだから。日本では一体いつ頃から食事に箸を使っていたのかしら(5〜6世紀頃に百済から伝来したとも、7世紀初頭の遣隋使の頃とも言われる)。器用に箸を操る日本人も握り鮨やオニギリなどは相変わらず手づかみで食べているし、欧米人もサンドイッチやホットドックを食べるのにナイフやフォークは使わない。ある学生食堂のテーブルに食事マナーの注意書きが置かれている。今どきの日本人はエレガントな「箸文化」を捨て去って野蛮な狩猟民族に退化してしまったのかと危惧したけれど、この大学では数年前からクリンゴン星からの交換留学生が勉学に勤しんでいるのだった。

    □ 脱衣テント‥‥今、風が舞い、飛んで行った!
    ティーン向けのファッション誌Sの水着撮影がグアム島で行なわれている。サーファーや観光客も来ない人里離れたフライヴェート・ビーチには景観を損ねる「海の家」も建っていなし、ゴミ1つ落ちていない。人気のない白い砂浜にエレラルド・グリーンの海とコバルトブルーの空が広がっている。木陰に張った簡易テントの中でモデルたちが水着に着替える。地元の天気予報は台風が発生したことを伝えていたが、風が少し強いことと波が高いことを除けば快晴で、グラビア撮影には全く支障はなかった。ビーチに凄まじい突風が吹き荒れるまでは‥‥。突然の旋風だった。辺り一面に砂煙りが立ち、樹々が薙ぎ倒された。突風に煽られた脱衣テントが大空へ舞い上がって飛んで行く。まるで魔法の絨緞か、糸が切れた大凧のように‥‥。耳を劈く轟音に黄色い悲鳴が混じっていることに気づいたのは、空の彼方へ消えて行ったテントを見送った後のことだった。

    半裸の娘たちが砂浜に蹲り、倒れ、転がっている姿は異様な光景だった。風に飛ばされて大怪我を負わなかっただけでも幸いと思うしかない。地元TV局でも「日本人のグラビア撮影隊一行がビーチで突風に遭って負傷!」というニュースが流れたらしい。一体何が私の身に起こったのか全然分からなかったわ。突然目の前のテントが消えたと思ったら、砂浜に転がっていたの。撮影用の水着も私服も私が着けていたビキニ・トップも手品のように見事に消えちゃった。周辺には折れた木の枝や葉っぱ、撮影用の機材やペットボトルが転がっているだけ。擦り傷や軽い打撲で済んだのが不思議なくらいよ。茫然自失して泣いていた半裸のモデルたち数人に男性スタッフのTシャツを着せたので、宿泊ホテルに辿り着いた私たちの格好は、女はTシャツ1枚、男は上半身裸という変なスタイルだったわ。ヴァカンスに来ていた中年の婦人に、まるでハリケーンに襲われてヌーディスト村から慌てて逃げて来た避難民みたいだって笑われちゃった。

    □ 絵描きに「キス・ミー!」。水着に着替え
    新進画家のキム・ミリアムは幻想的な美少女画で注目を集めるポップアートの旗手である。絵のモデルはティーンエイジャーの小娘たち。彼女たちが身に纏う衣裳はパンクにヒップポップ、グランジ、ゴスロリなどで、水着姿やヌードも少なくない。グラビア写真のようなスーパー・リアリズムではなく、デペイズマンを駆使したシュルレアリズム絵画である。レオノール・フィニとレメディオス・ヴァロを掛け合せてロック・スピリッツを混ぜたカクテルのような作風と言ったら分かり易いだろうか。世界中からキムの絵のモデルになりたいと望む小娘たちがNYブルックリンにあるアトリエを訪れる。もっともモデルを使って描いても、キムの絵の中の美少女たちは全員が同じ顔、同じ容姿の同一人物に見えなくもないのだが‥‥。キム氏がS画廊で開催される初個展のために来日した。もちろん、今回出品される絵画のテーマは「ネコと小娘」である。

    □「帰途発つわ。オカリナの鳴りが終わった時」
    強敵だった。今まで闘って来た「魔物」の中でも1、2を争うほど手強かった。あの時、リナがオカリナを吹いてドラゴンを呼んでくれなかったら、ボクは黒い魔女の鋭い爪で八つ裂きにされていただろう。龍神パワーが充填された雷電剣で斬ると閃光が走り、魔女の躰は雷に打たれたように黒焦げになったと思う間もなく、黒い灰と化して霧散消滅した。それまで空を覆っていた暗鬱な黒雲も消え去って、暖かい午後の陽射しが戻って来た。戦闘の余韻で熱く火照っていた躰から熱が放たれて、服に染み込んでいた汗が冷たく感じられる。教会に避難していた村人たちが見送りに出て来る。旅立ちの時が近づいて来た。リナが吹いているオカリナの美しいメロディが終わる頃、空の彼方に水先案内のドラゴンが現われて、ボクらの進むべき道を指し示してくれるはずだ。少女が駆け寄って来て、東の空を指差す‥‥「お姉ちゃん、ドラゴンよ」。

    □ 竜巻きスパイク、低いパス決まった!
    朝丘ユミが放つ必殺サーヴ「イナズマ落とし」は脅威だが、富士見高校バレー部には秘密兵器があった。春の高校選抜選手権決勝戦はフルセットに縺れ込む大熱戦となった。両チーム1歩も譲らず同点(14ー14)で迎えた、ラリーポイント制のマッチポイントに繋がる大事なサーヴ。コートに背中を向けた朝丘ユミが右腕をグルグル回す(赤いブルーマと白いジャージの間から小麦色の素肌が覗く)。「イナズマ落とし」が鮎原こずえを直撃!‥‥サーヴィス・エースが決まったかと誰もが一瞬思ったが、辛うじてボールは生きていた。コート上僅か数センチで鮎原が回転レシーヴ(低いパス)、早川みどりのトス、そして交替メンバーのアタッカーとして前衛に入っていた竜崎巻子の「竜巻きスパイク」が、椿麻理の巨乳に炸裂したのだ。まるでトルネードのように螺旋漏斗状に高速回転したボールが相手コートに突き刺さる「竜巻きスパイク」こそが富士見高の秘密兵器だった。

    □ 麻薬課の間合い計る刑事、ジジイ蹴る、庇い、天の香具山
    新・土曜ワイド劇場「麻薬課の女刑事、香具山紫子の事件簿17、天の香具山老人ホーム人質立て籠り殺人事件、麻薬ネコが嗅ぐ犯罪の臭い」‥‥2時間ドラマのクライマックス(文字通りの山場です)。山頂に追いつめられた犯人は血迷ったのか、院長を人質に取って無理難題を要求する。自衛隊の高速ヘリコプターと現金2億円を用意しろ!‥‥と、凄んで片腕で院長の首を絞めながらナイフを胸元に突きつけ、足許に倒れている老看護士の躰を蹴る。老人ホーム「天香荘」は入居した老人たちに大量の麻薬を投与して痴呆化させただけでなく、ベッドに縛り着けて殴る蹴るの虐待行為を繰り返していたのだ。犯人は養老院から脱走した罰で集団リンチされた後に、焼き殺された老人の孫だった。負傷した同僚を庇いながら、ジリジリと間合いを詰める香具山刑事。ネコの真玻璃奈(マファリナ)が全身の毛と尻尾を立てて、シャーシャーと威嚇する。

    □ 問:好きな作品・人物は?‥‥得度8分、神秘。草薙水素
    スニンクスの読者にアンケート調査を実施。メールで100人に聞きました。「あなたの好きな作品・人物は?」‥‥大方の予想に反し、第1位の栄光に輝いた好きな作品は『スカイ・クロラ』、好きな人物の第1位は草薙水素だった(ちなみに第2位は綾波レイ、第3位はミレーヌ・ホフマン)。この意外な結果には、先日ヴァーチャルTVで生中継された緊急記者会見の模様が少なからず影響しているのかもしれない。「草薙水素・緊急記者会見!」‥‥今までの罪を深く懺悔した草薙水素はスピード出家して、スキンヘッドの尼僧へと身も心も変身していたのだ。「得度・剃髪パフォーマンス」(8分)のドキュメント映像もYouTubeで同時に公開された。草薙水素(押井守のアニメではなく、鶴田謙二のイラストをイメージしてね)の穏やかな表情からは、とても3人の男女を射殺した3つの顔を持つ「悪女」の面影は窺えない。まるで奈良・興福寺の阿修羅像のような神秘のオーラに包まれていた。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 箸とフォークと起源についてはWikipedia「作法心得」などを参照しました

    • 水素回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #15」の解答です^^

     スニンクスなぞなぞ回文 #16

     鳴いた◯▢△◇△◇☆る☆◇△◇△▢◯たいな

     回文作成:sknys

     ヒント:里親になりました


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    夢先案内猫

    夢先案内猫(L'Oneiropompe 1978)

    • 著者:レオノール・フィニ(Leonor Fini)/ 北嶋 廣敏(訳)
    • 出版社:工作舎
    • 発売日:1980/11/15
    • メディア:単行本


    アタック No.1(DVD-BOX)

    アタック No.1(DVD-BOX)

    • 出演:上戸 彩 / 酒井 彩名 / 遠野 凪子 / 加藤 夏希 / 宮地 真緒 / 山口 由香里
    • メーカー:ポニーキャニオン
    • 発売日:2005/09/21
    • メディア:DVD(6DVD)


    スカイ・イクリプス(Sky Eclipse)

    スカイ・イクリプス(Sky Eclipse)

    • 著者:森 博嗣
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日:2008/11/25
    • メディア:新書(C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
    • エピグラフ:雪のひとひら / ポール・ギャリコ
    • 収録作品:ジャイロスコープ / ナイン・ライブス / ワニング・ムーン / スピッツ・ファイア / ハート・ドレイン / アース・ボーン / ドール・グローリィ / スカイ・アッシュ

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