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さようなら WAVE [c u l t u r e]



池袋WAVEが閉店(2009/1/12)する。都市再開発による六本木(1999)、店鋪縮小による渋谷(2001)に続いて、池袋WAVEまでが消えてしまうとは!‥‥80年代のWAVEは洋楽愛好家の聖地だった。WAVEでしか入手出来ない輸入盤も多く、最先端の音楽、ワールド・ミュージックの発信基地でもあった。明治通りを挟んだ旧スポーツ(現イルムス)館の前に池袋WAVEがオープンしたのは1989年4月のこと。西武百貨店10Fに入っていた前身の「ディスクポート池袋」で、Talking HeadsのCD《Naked》(EMI 1988)を購入した記憶がある。WAVE館は6階建てビルの1F、B1~2がレコード売り場。池袋WAVEの開店日(4/21)に買ったのは、Julia Fordhamの限定盤CD(デビュー・アルバム+ライヴ6曲)だった。これで陸の孤島の六本木やイモを洗う渋谷まで足を伸ばさずに済むと喜んだものの、蜜月は長く続かなかった。

その後、西武デパート内の最上階(12F)へ移転してからは、輸入盤から国内盤主体にシフトされてWAVE本来の個性が失われてしまった。たとえば、殆ど日本で無名だったSufjan Stevensの輸入盤《Michigan》(Athmatic Kitty 2003)を一早く紹介しても、1年遅れで国内盤がリリースされると、それ以降の新作は国内盤だけの入荷になってしまう。買う側にとっては輸入盤の方が安いけれど、売る側にとっては国内盤の方が利益が大きいのかもしれない。しかし、同じ国内盤ならば全国どこのCDショップでも買える。WAVEは自らの個性を手放してしまったのだ。デパートの最上階(西武美術館を訪れた金井美恵子が「屋根裏部屋」と呼んだ)という立地条件の悪さを指摘する向きもあるが、階下のLOFT(9~11F)は賑わっているのだから、やっぱり音楽CDが売れなくなったということなのでしょう。CDが10分の1の値段(¥263)でも、百貨店内の新年初売りセールのような大混雑にならないところに、「音楽CDをレコード店で買う時代」の終焉を感じますね。

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◎ Birgit Lystager(Pulp Flavor 2002)
デンマークの歌姫、ビアギッテ・ルゥストゥエアの同名アルバム(1970)のリイシュー盤。Lennon & McCartney〈Fool On The Hill〉、Burt Bacharach〈Close To You〉〈I 'll Never Falling Love〉、Bobby Hebb〈Sunny〉、David Gates(Bread)〈Make It With You〉‥‥など、60年代の名曲をデンマーク語でカヴァ。彼女のヴォイスはソフトでパンチも効いている。その美貌(当時24歳)と相俟って「名盤」の誉れ高い。ミュージシャンの演奏もジャズ臭くないし、アレンジも洒落ている。中学の文化祭で、Brenton Woodのヒット曲〈Gimme Little Sign〉を熱唱した男子がいたなぁ。リイシューした仏レーベルの倒産で、現在は入手困難。アナログ起こし(?)のスクラッチ・ノイズが気になる人は、国内リマスター盤(Production Desinne 2008)を「定価」で買いましょう。

◎ Monsieur Gainsbourg revisited(Barclay 2006)
銀色のコスチュームに身を包んだJane BirkinとSerge Gainsbourgが妖しく光る。タイトルに「revisited」とあるように、23組のミュージシャンによるトリビュート・アルバム。Jane B.、Francoise Hardy、Carla Bruniなど、フランス勢も参加しているが、仏語圏外で広く聴かれることを想定してか、全14曲が英語でカヴァされている。最初と最後の2曲、Franz Ferdinand & Jane Birkinのロック〈Sorry Angel〉とCarla Bruniのギター弾き語り〈Ces Petits Rien〉を除き、意外にもトリップホップ色が濃厚で、アルバム全体が頽廃的で気怠いムードに覆われている。Cat Powerの喘ぎ声が可愛い〈Je T'aime Moi Non Plus〉、Micheal Stipeが真面目に歌う〈L'Hotel Particulier〉、Marianne Faithfull & Sly and Robbyのレゲエ〈Lola Rastaquouere〉も渋く決まっているけれど、白眉はダークで破壊的なPortisheadの〈Anna〉、原曲を脱構築したTrickyの〈さよならエマニュエル夫人〉、Marc Almondの妖しい魅力に惹き込まれる〈I'm The Boy〉でしょうか。

◎ Has Been(Shout! Factory 2004)William Shatner
ウィリアム・シャトナー(77歳)というより「スター・トレック」のカーク艦長の2nd アルバムと紹介した方が話が早いかもしれない。アルバムを仕切っているのはBen Folds(プロデュース、アレンジ、作曲、ヴォーカル)で、William Shatnerも全幅の信頼を寄せている。「歌」というよりも「語り」に近いヴォイスをゲスト・ヴォーカルが彩る。冒頭を飾る〈Common People〉(Pulpのカヴァ曲)ではJoe Jacksonが、〈That's Me Trying〉ではBen FoldsとAimee Mannが歌う。ロック、ゴスペル、スポークン・ワード、エレクトロニカ、ポップス、マカロニ・ウェスタン、カントリー‥‥と多彩。Joe Jackson、Lemon Jelly、Aimee Mann‥‥というゲスト陣はBen Foldsの人脈なのだろうか。象使いのオジさんと全身刺青男、Adrian BelewとHenry Rollinsも参加しています。

◎ In My Mind All The Time(Tigerbeat6 2004)Numbers
ギター、ムーグ(シンセ)、ドラムという変則トリオの2ndアルバム。しかも紅一点のリード・ヴォーカル、Indra Dunis嬢がドラマーだというのだから驚く。基本はパンク+ディスコ(テクノ)だが、アナログ・シンセのブヒョブヒョ感やギター・リフのヘナヘナ感が脱力したDevoやThe B-52'sを想わせなくもない。もし彼女たちに高度なテクニックがあったならばDeerhoofに、探究心とインテリジェンスがあったならばStereolabになったかもしれないけれど‥‥。全12曲、28分という収録時間にNumbersの潔さが良くも悪くも表われている。インナーの謝辞欄には親交のあるErase ErrataやThe Exの名前もある。子虎ちゃんのイラスト・ロゴが可愛い「Tigerbeat6」からのリリース。

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◎ All Back To The Mine(Echo 2001)Moloko
英トリップホップ・男女ユニットの2枚組リミックス・アルバム(1995-2000)。Molokoはデビュー・アルバム《Do You Like My Tight Sweater?》(1995)が最高だと思っているので、Disc2の方が愉しめる。ラップ / ヒップホップ化した〈Lotus Eater〉、変態性がアップした〈Party Weirdo〉、ジャズっぽいアレンジの〈Fun For Me〉、ファンク度が増した〈Day For Night〉。Luke Vibert(Plug)の〈Lotus Eater〉はドラムンベースに。Disc1ではMatthew Herbertの〈The Flipside〉が流石に聴かせます。素材が良くないと名リミクサーも腕が揮えないのは食材と調理人の関係と同じ。凡庸な原曲を換骨奪胎して、全く別のものに作り変えてしまう人もいますが‥‥。「音楽」の羊頭狗肉は刺戟的なスパイス(香辛料)が効いていて美味しい。そうか、○ートホープの擬装表示は「リミックス加工食品」だったのか!

◎ Fever. special edition(Parlophone 2002)Kylie Minogue
Kylieさんの大復活アルバム。〈Can't Get You Out Of My Head〉の超エロすぎるPVや、〈Come Into My World〉の1人5役のイメージが脳裡にチラついてしまうが、大ヒットしたのは楽曲そのものに魅力があったから(2曲ともCathy Dennis / Rob Davisのコンビが手掛けている)。ディスコ・ビートに乗ったKylieのヴォイスはコケティッシュで可愛い。「special edition」とあるように7曲入りのボーナス・ディスクが付いている。注目すべきは、New Orderの代表曲と合体した〈Can't Get Blue Monday You Out Of My Head〉が収録されていること。元歌は〈Blue Monday〉だったのか?‥‥と想わせるくらいにピッタリとハマっている。PV32曲を集大成したDVD《Ultimate Kylie》(2004)に入っている「The BRIT Awards」のライヴ・ヴァージョンも必見。原曲を解体した〈Can't Get You Out Of My Head〉と〈In Your Eyes〉のダブ・ミックスも面白い。

◎ Love. Angel. Music. Baby.(Interscope 2005)Gwen Stefani
No Doubtの紅一点、Gwen姐さんのソロ・デビュー・アルバム。タイトルに「天使」「音楽」、インナー・スリーヴに日本人イラストレータを起用するなど、日本のサブカルチャーと親和性が高い。ピアノの弾き語りライヴかと一瞬想わせる1曲目の〈What You Waiting For?〉からヤバい日本語が飛び交う。極めつけの〈Harajuku Girls〉では「ホコ天」「原宿」「いらっしゃいませ」「有難う」「東京」「ちょー高い」「可愛い」「美少女」‥‥という日本語や、ヒステリック・グラマー、コム・デ・ギャルソン、ヴィヴィアン・ウェストウッド‥‥などのブランド名も出て来る。Nellee Hooper、Dr. Dre、The Neputunes、Jimmy Jam & Terry Lewis‥‥曲ごとにプロデューサを立てる贅沢なアルバムで、ヒップホップ度も変態性も、ちょー高い。Bernard SumnerとPeter Hookがバック・コーラスとリード・ベース・ギターで参加した〈The Real Thing〉はNew Orderそのもので、ちょー最高。リミックスやダブ、ライヴ・ヴァージョンなど7曲を収録したボーナスCD付き。

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CD・DVDセールの特徴は他のバーゲン・セールと較べて趣味性が高いこと。音楽の好みは十人十色なので、Aにとっては掘出し物でも、Bにとっては無価値な円盤に等しい。興味のない音楽(CD)は、たとえ¥100でも買わないでしょう。そこがブランド品の半額セールに群がる女性たちとの大きな違い。たとえば、Antonella Ruggieroの3枚組ボックス・セット《Souvenir D'Italie》(Libera 2007)はイタリア・ポップスに関心のない人にとってはカサ張る箱にすぎない。逆に興味はあっても、元Matia Bazarの歌姫という情報を持っていないと価値が分からない。つまり、どういう音楽を好むかという嗜好性と情報量の有無が、この種のセールの勝敗を左右するのだ。Manu Chao(Mano Negra)のファンでも、彼とWozniakのコラボ絵本『Siberie M'Etait Conteee』(Actes Sud 2004)に音楽CD(23曲72分)が付いていることを知らなければ、目の前の宝に気づかずに素通りしてしまう。

池袋WAVEの閉店セール(2008/11/11~2009/1/12)はCD(¥525)、DVD(¥1050)で始まったが、12/22からCDは半額(¥236)に値下げされた(実は10月以前から別の名目で密かにセールは行なわれていた)。対象外の輸入・国内盤は30%OFF(一部除外品あり)。「45枚ゲットしたけれど、まだ全然見ていない」とケータイで興奮気味に話している男性客や、連日通っているらしい常連客(セール品は毎日補充される!)も少なくない。かつて定価で買ったCDが¥236で売れ残っているのを発見した時ほど切ないことはない。〈さようなら WAVE〉で紹介したCDは全部¥525です(Manu Chao+Wozniakのコラボ絵本は閉店セール以前に70%OFFでゲット)。沢山買い漁ったので、Part 2(¥236)もあるかもしれません。閉店セールも残すところ、あと2日!‥‥鬼安〜投げ売りの「昇天峠」は越えたような気もするけれど、今からでも遅くはない?

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WAVE 池袋

WAVE 池袋

  • 所在地:東京都豊島区南池袋 1-28-1(西武百貨店 池袋本店 12F)
  • 営業時間:平日・土曜(10:00~21:00)/ 日曜・祝日(10:00~20:00)
  • 定休日:01/01
  • 閉店セール:~2009/01/12


Birgit Lystager

Birgit Lystager

  • Artist: Birgit Lystager
  • Label: Vivid Sound
  • Date: 2008/11/05
  • Media: Audio CD
  • Songs: Vores Eget Lille Sted (Pretty World) / Manden Pa Hojen (Fool On The Hill) / Naer Ved Dig (They Long To Be Close To You) / Jeg Venter Pa Et Vink (Gimme Little Sign) / Birger (Sunny) / Ga Din Vej (Wight Is Wight) / Christina (Tristeza) / Pa Regnbuevej (Make It Wit...


Fever

Fever

  • Artist: Kylie Minogue
  • Label: EMI
  • Date: 2002/10/08
  • Media: Audio CD(2CD)
  • Songs: More More More / Love At First Sight / Can't Get You Out Of My Head / Fever / Give It To Me / Fragile / Come Into My World / In Your Eyes / Dancefloor / Love Affair / Your Love / Burning Up // Can't Get Blue Monday Out Of My Head / Love At First Sight (Scumfrog mix) / ...


Love. Angel. Music. Baby.

Love. Angel. Music. Baby.

  • Artist: Gwen Stefani
  • Label: Universal
  • Date: 2005/11/01
  • Media: Audio CD(2CD)
  • Songs: What You Waiting For? / Rich Girl / Hollaback Girl / Cool / Bubble Pop Electric / Luxurious / Harajuku Girls / Crash / The Real Thing / Serious / Danger Zone / Long Way to Go / The Real Thing / Serious / Danger Zone / Long Way To Go / The Real Thing (Slow Ja...


Souvenir D'italie

Souvenir D'italie

  • Artist: Antonella Ruggiero
  • Label: Edel
  • Date: 2007/03/19
  • Media: Audio CD(3CD)
  • Songs: Ti Parlerò D'Amor / Tornerai / L'Uccellino Della Radio / Parlami D'Amore Mariù / Valzer Della Povera Gente / Il Pinguino Innamorato / Ma L'Amore No / Non Dimenticar Le Mie Parole / Mattinata Fiorentina / Crapa Pelada / Tu, Musica Divina / Non Ti Scordar Di Me / Canzone F...

タグ:culture wave Music
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モバサム41

最近はリアル店舗は全く利用せず、Refino(石丸のWEBショップ)でほとんど用を済ませてたんだけど(ポイントの効率が良かったから、常時15%ポイント、イベント時17~20%付与)、そのRefinoが年末に呆気なく閉鎖…
これからどこでCD買えばいいのか、ちょっと戸惑ってます。
by モバサム41 (2009-01-13 00:51) 

sknys

モバサムさん、コメントありがとう。
全部で70枚くらい買っちゃった!
欲しかった旧譜、入手困難の限定盤、レアもの、フレンチ、猫ジャケなど
‥‥色々とゲット出来ました^^;

ネット通販でCDを買ったことはありませんが、
AmazonやHMVを利用しているブロガーが多いみたい。
仏サイトから直接購入しているフランス通の方もいらっしゃいます^^
by sknys (2009-01-13 20:32) 

tumuzi

こんばんわ〜。
ぼくはWAVEはあんまり利用が無かったのですが、池袋西武には「アール・ヴィヴァン」の頃、半分あこがれなどもありちょくちょく通った覚えがあります。
あれ?あの頃はレコードだったのかな?「小島録音」というところから出ている現代芸術やら何やらの音源が、ナッカナカ高くて眺めるだけだった…。
by tumuzi (2009-01-14 00:16) 

sknys

tumuziさん、コメントありがとう。
「アール・ヴィヴァン」にも現代音楽や民族音楽のCDコーナーがあったなぁ。
レコメン系のCD棚をチェックしたり‥‥^^;
〈蜷川実花展〉(東京オペラシティ)の帰りに寄った「ギャラリー5」に、
「アール・ヴィヴァン」と同じような匂いを感じます。
by sknys (2009-01-14 01:42) 

9th

御訪問下さいまして有り難う御座いました。
カスタムは昨夜、始めての経験でちゃんと見れているのか不安ですー。ー
sknysさんの記事とブログの方々の記事、参考にさせて頂まして
本当に感謝しております。
 また、勉強させて頂たく おじゃましたいと思います。
by 9th (2009-01-18 20:08) 

sknys

9thcrewはMac OSX+Firefoxという環境でも綺麗に表示されています。
カスタマイズというと装飾過多のイメージがありますが、
余計な機能やダサい広告を非表示化するのは「カスタマイナズ」かな?
新機能ばかり付加されると、逆にシンプル化する方が難しいのかもしれない。
「付け焼き刃剣法」なので、達人の技に教わることが多かったりします^^;
by sknys (2009-01-18 23:46) 

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