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コンフェデ杯の夜(2 0 0 3) [s o c c e r]

日本中が熱狂したW杯日韓共催(2002)‥‥あれ程までに高度なサッカーを連日丸1ヵ月間も見せつけられてしまうと、もうJリーグ(低レヴェル)の試合なんてバカバカしくて観てられませんね。高級ブランド牛の味を知ってしまったら、氏素性の怪しい「国産黒毛和牛」(BSE疑惑!)なんか見向きもしなくなっちゃった俄かグルメみたいに?‥‥。ボールへの反応の速さ、トラップ(ボール・コントロール)の巧さ、フェイントの華麗さ、パスのスピードと精度、シュートの精確性、状況判断の速さ、躰でシュート・コースを消すディフェンダの捨て身の執念‥‥どれ1つ取ってもJリーグとは大違い。舌の肥えた国内サッカー・ファンの渇望に応えてか、地上波TVでも伊セリエAや英プレミア・リーグなど、欧州サッカー・リーグの中継(録画)を定期的に放映するようになって来た。日本人プレーヤの所属するチームを優先させたマッチアップだが、その試合に必ずしも目当ての日本人選手が先発出場する保証はないし、内容が面白いとも限らない。

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欧州チャンピオンズ・リーグ 2002ー2003(Champions League)の決勝戦、ユヴェントス対ACミランの闘いも熾烈を窮めた(5/28深夜)。CL史上初のイタリア勢同士の対決は、お互いに手の内を知り尽くしたためか延長戦でも決着が付かず0ー0のまま、2年振り7度目のPK戦に突入‥‥双方とも疲労困憊していたのか10人中5人までが失敗し、3ー2の僅差でACミランが辛勝した。この結果は個人的には良かったと思っている。前半9分のFWシェフチェンコのゴールをオフサイド判定されてしまう不運もあったが、試合内容は終始ミラン側の攻勢だったから。あの「誤審」がなかったら順当(1ー0)に勝っていたはず‥‥もっとも、その後ユヴェントスが1発奮起して逆転(1ー2)したかもしれないので、結果はサッカーの女神のみぞ知るところですが‥‥。ユヴェントスとしては累積警告による中盤の要ネドヴェドの出場停止とMFトゥドルの試合中の負傷(肉離れ?)──既に3名の選手交代枠を使い切っていたので実質上1人少ない(ただピッチ上に立っているだけ)状態になってしまった──が痛かった。しかも、その弱体化した右サイドからミランが決して攻めて来ようとしない「フェアプレー精神」には更に驚きましたね。

ただ1つ不満を述べると、延長戦の最中トートツに「真に申し訳ありませんが、あと10秒ほどで放送を終えなければなりません」という寝耳に水の尻切れトンボ宣言!──2時間近く前から「前フリ特番」で煽っておいて、これは無いんじゃないのT・ブー・S。完全中継出来ないのなら、その趣旨を最初にアナウンスしろよ!‥‥眠い目を擦りながら明け方近くまで見続けている視聴者の身になったら、こんな詐欺みたいな仕打ちは絶対に赦せない!(これに比べたらロシアのレズ風コギャル・デュオ、t・A・T・u の生歌番組歌唱拒否騒動なぁんて可愛いもんです)‥‥というわけで延長戦の後半とPK戦を見逃してしまった。後日再放送(ダイジェスト版)があったとはいえ、悔しさ腹立たしさは今も収まらない。1ヵ月後のコンフェデ杯の決勝戦は最後(延長〜PK戦?)まで完全衛星中継してくれるのでしょうか。

キリン・カップ(2003)のアルゼンチン戦で思わぬ大敗(1ー4)を喫したジーコ・ジャパンは続くパラグアイ戦で先発メンバ9人を入れ替える荒療治に出た。日本代表の得点力不足は一向に解消されていないものの、中盤でパスも回り始め、コンフェデ杯に向けて好感触を掴んだ。4→0人、つまりジーコ監督が仔飼いの鹿島アントラーズ所属選手への執着を捨て去ったことが結果的に良かった。しかし「国際Aマッチ」を名乗っても所詮はホームでのお気軽な親善試合(交代選手枠5人までという事前合意も著しく緊張感を削ぐ)。10回の親善試合よりも1回のガチンコ真剣勝負の方が遙かに得るものが大きい。一連のSARS騒ぎなどで当初予定していたアウェイ戦が中止に追い込まれたのは残念だったが、W杯日韓大会で優勝候補の最右翼と目されながら予選リーグ敗退という屈辱を味わったアルゼンチン代表が「本気モード」で挑んで来たのは不幸中の幸いだった。もし彼らが観光気分の手抜き試合をしていたらと思うと本当にゾッとする。アルゼンチンの御蔭でジーコ・ジャパンの弱点が焙り出されたと言っても良い。日本のサポータは地球の裏側から遙々やって来たアルゼンチン一行に感謝しなくてはならない。

11日のパラグアイ戦は不快な大絶叫アナと大嫌いなM木某の解説に辟易して副音声にしていたら、実況中継中のアナ男が何を血迷ったか、ヒデが観戦に招待したとかいう女優のミラ・ジョヴォヴィッチ(Milla Jovovich)に自ら話題を振って「私は彼女の大ファンで出演した映画は全部観ています」などと得意げに吹聴した後で、頻りに羨ましがっていたのには笑っちゃいました。お前はミラ・ジョヴォ嬢の初主演作『Blue Lagoon』(1991)や、女子高生役の『Dazed & Confused』(1993)、デビュー・アルバム《The Divine Comedy》(SBK 1994)も聴いているんだろうなって、ついTV画面に向かって突っ込みたくなりました。マンチェスタUからRマドリードへの移籍騒動の渦中、CMプロモーションのためという良く分からない名目で突如来日したベッカム&ヴィクトリア夫妻の線をヒデは狙っているのでしょうか。ベッカムの移籍はマンUのファーガソン監督との確執が一番の理由なんでしょうね。ベッカムさまの最新ヘア・スタイルは変形ポニーテール‥‥それにしてもNHKの定時ニュースでトップ項目に、朝日新聞の1面に掲載されるなど、マスコミ&ファン総動員の大フィーヴァ旋風でしたね。

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世界5大陸の王者やW杯の優勝国など全8ヵ国が参加するコンフェデレーションズ・カップ(Confederations Cup)──出場計8チームがA・B組に分かれて予選リーグを闘い、両組1・2位の4チームが決勝トーナメント(準決・決勝)へ進む──がフランスで開催された(6/18〜29)。アジア杯優勝(2000)の日本代表は初戦のニュージーランドにこそ快勝(3ー0)したものの、20日のフランス戦(1ー2)では終始互角に闘いながらディフェンスの致命的なミスで惜しくも敗れた。最初の失点シーンは、まるで1年前の再現ヴィデオを眺めているようなデジャヴに陥った。自陣での不用意なミスパスから相手ボールになってしまいコーナーキック→失点というパターンは、2002年W杯トルコ戦の決勝点、DF中田浩二のミスパス→KC→ユミトダバラのヘディング・シュート→失点という悪夢の再来以外の何物でもない。今回のDF宮本恒靖のミスパス→KC→稲本のペナルティエリア内のファウル→PKという様なケアレス・ミスを守備陣が繰り返しては勝てる試合も負けて当然、サッカーの女神も微笑まない。続く22日のコロンビア戦(0ー1)でも自陣内で宮本→MF遠藤保仁の連係ミスから相手にボールを奪われて失点した。

ジーコ・ジャパン予選リーグ敗退の主因は国際試合の経験不足だろう。3ー5ー2のフラット3から4ー4ー2へのシステム変更、アレックスの左DF起用、2試合で3得点と今大会絶好調だった中村の負傷欠場と稲本の累積警告による出場停止(コロンビア戦)、中1日の超過密日程、連日30℃以上の異常気象‥‥と理由は色々挙げられるけれど、「黄金の中盤」と称される海外組に対して欧州リーグで揉まれたDFが1人もいないことが案外大きいのかもしれない。23名の登録選手を入れ替えて5日で3試合という超過密日程を凌ぐ──例えばフランス戦は先発メンバを大幅に入れ替えて(主力級を休ませて)引き分け狙い、次のコロンビア戦に全力を賭ける──フランス代表監督のような「大人の采配」がジーコにもあって然るべきだったのではないか。嘗ての「名選手」が必ずしも「名監督」とイコールで結べないところにサッカーの難しさの一端が覗く。日本代表にとっては1勝2敗で予選リーグ敗退という成績以上に、あと2試合の真剣勝負が出来なかったことの損失の方が遙かに大きい。

26日のカメルーン対コロンビアの準決勝戦では信じられない「悲劇」が起こった。長年サッカー中継を見続けて来たが、こんな不幸なアクシデントに遭遇するのは初めてだ。2002年CL決勝戦の後半キックオフ直前にピッチ内に闖入して観客の大失笑を買ったストリーキング──変テコな帽子を被ったフルチン男がボールをドリブルしてゴールに見事シュート!──の「勇姿」が不謹慎にも目に浮かぶ。何と対照的な光景か!‥‥後半27分過ぎ、グラウンド中央奥のボールの無いところで突然カメルーンのFWマルクヴィヴィアン・フォエ選手が倒れた。直ちに試合が止められ担架でピッチ外へ運び出されたものの、明らかに肉体的な負傷(打撲、捻挫、骨折)とは異なる、意識不明の生死の危ぶまれる状態だった。しかも、その直前にDFチャト選手が2枚目のイエローカードで退場してしまい1人少ない非常事態。しかしカメルーンは冷静沈着だった。残りの時間を守備に徹し、巧妙に時間稼ぎをしてゲーム開始直後の虎の仔の1点を守り切った。

それから1時間後、約500km離れたサンドニ競技場で行われた準決勝フランス対トルコ戦(3ー2)では半旗が掲げられ、国歌斉唱の前に急逝したフォエ選手へ黙祷が捧げられた。代表選手の中には泣いている人もいた。伝えられたところに依ると死因は「心臓マヒ」だと言う。早くも現地では過密日程を非難する声が挙っている。これが、もし日本代表選手だったら‥‥と想うと遣り切れない。「メンバの入れ替え」は戦術面だけではなく選手の疲労〜健康面から看ても必要な処置だったと今にして思い知る。トルコのスピーディなサッカーは愉しい。試合は序盤から激しい点の取り合いになったが、FWアンリやMFピレスの活躍で地元のフランスが辛うじて乱戦を制した。もっとも後半、FWオカンイルマズの同点PKが決まっていたら、どちらに転がっていたか分からない僅差のゲームだった。これで29日の決勝はフランス対カメルーンに決まったけれど、試合中の選手の急死という「不測の事態」に陥ったカメルーンが決勝戦を棄権する可能性も出て来た。

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28日のトルコ対コロンビアの3位決定戦(2ー1)──こんなに律儀にパスを繋がなくても良いのにって呆れるくらいコロンビアは中盤〜ペナルティエリア内での細かいパス交換に固執した。これがオレたちのスタイル、美意識なんだと言わんばかりに。キックオフ早々GKコルドバのクリアミスからトルコFWトゥンジャイに先制されても涼しい顔で、この攻撃パターンを蜿蜒と繰り返すコロンビア。誰もが、もういい加減にして遠くからでも良いからシュートしたらどうなんだ!‥‥と痺れを切らせていた矢先、苔の一念岩をも砕く歓喜の瞬間が後半18分に訪れようとは‥‥。まるで絵に描いたような華麗で素速いパス回しで同点ゴールを奪ってしまうのだから、全くサッカーは分からない。最後はフランス戦でPKを外し途中出場に甘んじたオカンイルマズが汚名返上名誉挽回のミドル・シュートを鮮やかに決め、2002年のW杯と同じく3位を手中に収めた。確かにトルコは強い。今大会にはイルハン王子もハカンシュキュルも不参加だったのに、トゥンジャイという弱冠21歳の長身(ヴィジュアル系)FWが鮮烈なデビューを飾った。トルコがアジアの一員でなくて本当に良かったですね。

こんな決勝戦は未だ嘗て観たことがない。カメルーン代表は26日に急逝したフォエ選手の遺影(大パネル写真)を手にフランス代表と一緒に入場。22人の選手全員が黒い腕章を巻いている。そして両国選手たちが交互に肩を組んで黙祷〜国歌斉唱という一種異様な試合前のセレモニー‥‥同じようなシチュエーションなのに、両チームが混じり合って互いの健闘を笑顔で讃え合った2002年W杯韓国対トルコ戦(3位決定戦)の試合後の光景と何と異なることか!‥‥双方がフェアプレーに徹した一進一退を繰り返す静謐な緊張感に貫かれた試合だったが、延長前半7分に今まで張り詰めていた空気が呆気なく破られる。一瞬の隙を衝いたアンリのVゴール(右膝で軽く合せただけ)で開催国のフランスがコンフェデ杯2連覇を成し遂げた(トルコ戦終盤のアンリの露骨な時間稼ぎが余りにも嫌らしく不快だったこともあって、決勝戦はカメルーンを応援していたから、この結果は無念だ)。準優勝のカメルーン代表に笑顔はない。試合後フォエ選手のレプリカ・ユニフォーム(背番号17)を全員が着て表彰式に臨むカメルーン選手たちの何とも言いようの無い表情(勇姿)は、今まで熱い声援を送って来た全サポータの記憶に苦く長く残るだろう。

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  • 本稿〈コンフェデ杯の夜〉は2003年6月の時制で書かれています

  • 『Dazed & Confused』(1993)は残念ながら未見です(この邦題は酷いなぁ)。英THE FACE誌のスティル写真でミラ嬢はマンドリンを弾いていましたが

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2003 FIFA Confederations Cup

2003 FIFA Confederations Cup

  • Host Country: France
  • Dates: 18 June - 29 June
  • Teams: France / Brazil / Japan / Colombia / United States / Cameroon / Turkey / New Zealand
  • Venue(s): Saint-Denis / Lyon / Saint-Étienne


The Blue Lagoon

The Blue Lagoon

  • メーカー:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2007/06/27
  • メディア:DVD


Dazed & Confused

バッド・チューニング(Dazed & Confused)

  • メーカー:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 発売日:2007/09/13
  • メディア:DVD


The Divine Comedy

The Divine Comedy

  • Artist: Milla Jovovich
  • Label: SBK
  • Date: 1994/04/05
  • Media: Audio CD
  • Songs: Alien Song (For Those Who Listen) / Gentleman Who Fell / It's Your Life / Reaching from Nowhere / Charlie / Ruby Lane / Bang Your Head / Clock / Don't Fade Away / You Did It All Before / In a Glade

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モバサム41

耽美主義全開の私ですが、秋の恒例行事「祭り」参加で忙しいんです(笑)

…おっと、コンフェデ?
ここは、いつのどこの時代の話だ?
sknysさんも、タイム・マシンを操れるようになってきましたね。
by モバサム41 (2007-10-14 19:30) 

sknys

モバサム41さん、コメントありがとう。
こちらも秋の3大収穫祭!‥‥「記事100」「回文100」「100000pv」の
記念行事でドタバタ(ジタバタ?)しています。

2003年コンフェデ杯の記事で、お茶を濁してしまいました^^;
従来通りなら今年(2007)はコンフェデ・カップの年ですが、
前回からW杯のプレ大会(2009)という位置付けに変更されちゃったのよね。
by sknys (2007-10-14 21:18) 

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