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タイヤキ焼いた [p a l i n d r o m e]

『またたび浴びたタマ』(文藝春秋 2000)に触発されて50編ほどの回文を作ってみました。流石に50音順のカルタ形式(44枚+友沢ミミヨ 画)という風には行きませんが、傑作・怪作・珍作・迷作・超難解作‥‥など次々に出来て結構ハマっています。村上春樹の回文集も総てが「名作」というわけでもなく、むしろ苦し紛れの「苦心作」の方が笑えたりする。この種の自動筆記的なエクリチュールは自然と作者の本性や嗜好が表に出て来ちゃうみたいで、野球ネタや下ネタ(潜在人格?)も面白いけれど、一番気に入っているのはアップル・ネタの 〈臨死のマック抱く、妻の心理〉でしょうか。女性Macユーザの中には愛機に名前を付けたりしてペット並みに可愛がっているクボケイ(久保恵子)みたいな人がいますから、マック(愛人?)の死はペット・ロスの喪失感に近いものがあるのかもしれません。

□ 悪い神田うのの脳、担架いるわ!
助手席の女性マネージャが「危ない!」と叫んだ時はもう既に遅かった。対抗車線の車を避けようとしてハンドルを切ったものの衝突し、勢い余ってガードレールに激突!‥‥たまたまシートベルトを着用し忘れていた女マネージャー嬢は罅割れたフロント・ガラスから車外に投げ出されて奇跡的にカスリ傷だけで済んだが、車は横転大破し、運転席で仰向けのまま首を仰け反らせて失神している、うのチャンの頭からは流血が夥しい。雨上がりの深夜3時半、呆然と立ち竦む女マネージャに回転する赤いランプと惚けたサイレン音が近づく。一瞬何が起こったのか皆目見当も付かなかった。普段は大人しい性格の彼女にしては珍しく大声で、駆けつけた救急隊員に叫ぶ‥‥。ところが、頭部の損傷が酷くて普通の担架じゃ運べない。10分後、Q救急病院の急患搬送口に救急車が到着──〈多機能担架で神田うの来た!〉

□ ミズスマシの島涼み
湖の畔でスイスイと軽やかに水面を滑っていたミズスマシ君も遊び疲れたのか近くの小島で一休み。その姿を暫く前から眺めていた麻美さんも、今年の夏はクソ暑かったなぁ‥‥と高原の避暑地で夕涼み気分を満喫。秋は、もうすぐそこまで来ています。たまには回文も、こんな風に奇麗に決めたいものですね。この種の回文は一瞬で出来上がります。殆ど偶然の産物と言っても良いくらいです(「創作」というよりも「発見」に近い?)。艱難辛苦して時間を掛けて作った回文ほど、あれこれヒネクリ回した痕跡が露な不自然で妙に歪んだものになってしまい、余り美しくありません。P.McCartneyが〈Yesterday〉を作曲した時も余りにも短時間で完成してしまい、不安に駆られて過去に似た曲がなかったどうか周囲の人に訊き回ったという有名なエピソードがあります。もちろん永遠のスタンダード・ナンバーと一回文を軽々しく比較は出来ませんが〈ミズスマシ‥‥〉もオリジナル作品です。

□ ゴミ喰う、床の間の後藤久美子
元祖・国民的美少女として騒がれたゴクミの暗さ(幻想性)に注目したのは写真家・篠山紀信だった。その結実の1つが『少女夢 ゑほん・後藤久美子』(扶桑社 1988)という大型版シノラマ写真集だった訳だが、惜しむらくは映像作品に恵まれなかった。《ガラスの中の少女》(1988)──吉永小百合主演作(1961)のリメイク版や寅さんシリーズ(1989〜92)のような文芸路線ではなく、ホラー&オカルトもので1本映画を撮って欲しかったよね。本来、佐伯日菜子(黒井ミサ)→ 栗山千明 → 加藤夏希‥‥といった魔少女の系譜に属するキャラなのに、「国民的‥‥」という冠と全国民的人気が純日本風の保守的イメージを強要したのかもしれません。確かSFものの企画もあったように記憶するのですが──何しろデビュー作がCG合成の『TVの国のアリス』(NHK 1986)だものね──、今から想うと返す返すも残念でなりません。あの薬師丸だってセーラ服が似合ったのは、ほんの一時です。『痛快!ロックンロール通り』(TBS 1988)で共演した沢口靖子(CM)や『夢千代日記』(NHK アーカイヴス)の緑魔子(知ってる?)のセーラ服姿も捨て難いけれど。

□ 断髪魔を待つパンダ
ディズニーランドやハウステンボスといった遊園地やテーマパーク内に出没しては若い女性の髪を切る「断髪魔」なる暴漢が巷を騒がせている。憎きハサミ男が狙う獲物は何故か必ずロング・ストレートの黒髪娘と決まっている。近頃は日本全国津々浦々、何処を眺め回しても老若男女茶髪・金髪・銀髪・斑‥‥(ちなみに笙野頼子氏の髪はブルー!)と緑の黒髪女を捜す方が難しい位だが犯人は余程、古式懐しき純和風の資質の持ち主とみえる。変態男に大事な髪を切られるよりは‥‥と思い余って自らの手で長い髪を断髪してしまう20代の女性や、一体何を想ったのか逆上してスキンヘッドに丸めてしまう瀬戸内寂聽命の俄か尼僧、これで大っぴらにパツ金に染められると狂喜乱舞する校則の厳しい私立女子校に通うコギャル娘(学校側も渋々黙認した)。昼のワイド・ショーでも連日この話題で持ち切りで、人体を殺傷する凶暴な通り魔や幼女誘拐犯とは若干タイプが異なるからなのか、半ば面白がりながら全国のウラ若き女性にパニックが広がっていると煽っている。

この騒動を、ただ指を銜えて見ている訳にはいかない。警視庁行動科学課特捜班・主任の合田雄一郎は奇抜極まりないオトリ捜査を思いつく。ミス交通課のミニパト・ポリス森下婦警をミニスカ・コギャルに仕立て上げ、某ネズミーランド内に送り込んだ。パンダの着ぐるみの中に入った腕利きの捜査官が見張り役として彼女を監視する。数年前、リスちゃんの着ぐるみ姿で女の子に近寄りワイセツ行為を繰り返していたロリコン痴漢のイタズラ手口を逆手に取ったのだ。オトリ捜査を開始して既に2時間余り。3月上旬にしては真冬並の気温だというのに、パンダ着の中は汗でビショビショだ。今が真夏でなくて良かった、後1ヵ月遅かったら、この作戦は使えなかっただろう‥‥アメリカの「イラク攻撃」時期を睨んだ国連内外の攻防宜しく独り呟くパンダ刑事だった。果して「断髪魔」は現われるのだろうか、ミニスカポリス・千里姫の運命は?‥‥(以下次回へ続く)

□ 済んだ規定は痛手、退廃的ダンス
世界中の女性で彼女1人しか出来ない4回転サルコウも練習では軽々と決めてしまうフィギュア少女・安藤美姫ちゃん、眞鍋かをり似の笑顔が愛くるしいですよね。ジュニア大会のSPでは連続ジャンプ(2回転)が課せられているので、回転し過ぎに悩んじゃう程の実力派美少女。この日(03/1/28)もフリーの4回転は失敗して尻餅ついちゃったけど、見事に逆転優勝(SP2位)を飾りました。新聞記事によると今後の「課題は表現力」で、《ただ踊るのではなく、心で表現出来るようになれば》とコーチも期待を賭けている。と言っても美姫ちゃんは、まだ中学3年生。「退廃的ダンス」を踊るには10年早いかもしれません。2月の世界ジュニア(2003)、トリノ冬期五輪(2006)に向けて新しい「回文」を作らなくちゃね(次回掲載予定)

□ コルシカ・トマト齧る子
世界的に著名な写真家アンドレ・ケルテス(Andre Kertesz)のポートレイトに〈コルシカの少女〉という作品がある。地中海に浮かぶコルシカ島(フランス領)はナポレオンの生地として名高い。第2次大戦後、島の入り江でコルシカ産の真っ赤なトマトを頬張る少女の屈託ない笑顔に世界中の人々が涙しました。その写真を見たラウシェンバーグが「トマトの赤が眩しい」(白黒なのに!)と言ったという逸話は有名です(全部ウソですよ)。ところで対岸のイタリアではルネッサンス以前、トマトという食材が全く存在しなかったという歴史上の事実を知っていますか。イタ飯のパスタ料理といったら真紅のトマトソースが定番ですよね。当時のイタリア人はスパゲティに一体何を韲えて食べていたんでしょうか?

□ 寝つきのいい野ギツネ
「どぉ〜する?」の清水章吾じゃないけれど動物ものは和みますよね。村上版回文集でも表題作の「ネコ」の他にも〈さっきの駱駝、鞍のきつさ〉とか〈トナカイ好きな鱚、いか納豆〉とかいう‥‥珍獣・奇獣が空想動物園宛らに賑やかに並んでいます。寝床に入った途端にバタンキューしてしまうキツネは、まだ子供なんでしょう。何ともアット・ホームなメルヘン世界です。姉妹編として〈寝た縞リス揺すりましたね〉も挙げておきましょう。きっと隣の、寝つきは良いけれど寝相の悪い野ギツネが寝惚けて揺すったに違いありません。特別にヒネクリ回し過ぎて意味不明になってしまった駄作(ボツ)の悪例も恥を忍んで特別に公開しておこう。〈長靴まで脱いだ犬でマックかな〉──「長靴を履いた猫」は聞いたことがあるけれど、これは全然ダメですね。子供の頃に噛みつかれて以来、ワンワンは苦手です。

□ 遺体痛めつけ、冷たい医大
患者の取り違え、薬品の誤投与、血液型の誤認、誤診手術‥‥等、病院(医師・看護婦)の不祥事や医療事故が続発しています。ことが病人の生死に直接関わる事件なだけにケアレスミスでは済まされない深刻な事態です。それに加え近年は生体肝移植も始まって、脳死判断や臓器提供者(ドナー)に纏わる諸問題も俄に現実のものとして浮上して来ました。脳死状態の「遺体」を解剖している医大のイメージは冷たく無気味な感じが漂う。最新クローン技術や遺伝子組み換え操作も内外で話題を集めている今日、「象牙の塔」で一体何が行われているのか(クローン人間?)、財前五郎(田宮二郎→中居正弘)やブラック・ジャックならずとも大いに気になるところ。『パラサイト・イヴ』(1995 瀬名秀明)の腎臓移植手術の描写も超キョーレツでしたね。

□ 2月5日、5月5日に
「ボクの誕生日は5月5日、こどもの日」「私は2月5日なの」「2月5日、5月5日に‥‥エッ、もしかしてボクたちって、あの幻の回文カップル? 超ラッキー、こんな偶然は2度とないよ。即結婚だ!」「ちょっと待ってよ、本当にこの組み合わせしかないの? あなた何か書くもの持ってない?‥‥ほら、こんなに沢山あるじゃない、全部で9通りの組み合わせが。私は2月5日生まれだから、5月5日でなくても4月5日か9月5日の男と結ばれれば良いのよ。2月2日生まれなら4月2日、5月2日、9月2日の人と、同じく2月20日生まれでも4月20日、5月20日、9月20日の人とならOKよ」「じゃあ、ボクは‥‥エ〜ン、どうして5月5日のボクちゃんだけ選択肢が1つしかないの!‥‥やっぱり俺には、お前が最後の女〜♪(山本譲二かよ)」「誰がド演歌醤油顔のアンタなんかと結婚するもんですか!‥‥これから私はキムタク似の4月5日か9月5日生まれの男を探すわ。5月5日の男はもう懲り懲りね、バイチャ」

□ 役立たずだ、拓哉!
キムタク主演の高視聴率連ドラ『GOOD LUCK !!』(TBS 2003)は初回しか観てませんが、岸部一徳扮する御節介オヤジと絡むFMVのシリーズCFは毎回愉しみにしています(これがMacだったらなぁ)。若い頃の梶芽衣子(松島ナミ)みたいな深海魚系の柴咲コウはどうでも良いけれど、黒木瞳さんは相変わらず可愛いですね。20代の頃、銀ブラすると擦れ違った男たち全員が振り返ったという伝説が残っている位ですから。こんな女性に目の前で泣かれちゃったら‥‥。先日、深夜枠で放映された『バカヤロー!2』(1989)というコメディ風オムニバス映画の中の人の良さそうな堤真一のアホ馬面には久しぶりに大笑いさせて貰いました(昔は3枚目だったのね)。何時からシリアスな役者に転身したの?‥‥。何だかドラマの中の鬼上官の科白みたいな回文ですね。〈黒木瞳跳び、記録!〉という回文も今回のCA役にピッタリで気に入っています。高校時代、走り高跳びの選手だったという設定でどうでしょうか?

                    *

  • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

  • 第2弾〈ムカデが手噛む〉をUPしました。ミキティ回文も入っています

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またたび浴びたタマ

またたび浴びたタマ

  • 著者:村上 春樹 / 友沢 ミミヨ(絵)
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日: 2000/08/30
  • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
  • 収録回文:アリバイが苦いバリア / 伊良部、縞柄が増し、無頼 / 浦和で蒔いた、ははは、と母は大麻で笑う / A型がええ / おかしな梨顔 / 硬め、ためしに〆たメダカ / 記号はしるし、しるしは動き / 管を抜いた。ついに逝った犬を抱く / 心はマルクス、車はロココ / さっきの駱駝、鞍のきつさ / 知らぬことてつだって、床濡らし / 酢橘だす / 世界に乾物...


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コメント 8

miron

良くつくりましたねぇ。
しかも、できが素晴らしいので、感激しました。
すごいでゴス。
by miron (2005-12-19 19:35) 

こにゃ

ほんとですねぇ。
次回の更新が待ち遠しいです・・・^^
by こにゃ (2005-12-19 20:05) 

えみる

すごく面白いです。一気に読んでしまいました^^
by えみる (2005-12-19 20:59) 

sknys

・mironさん、見に来てくれてありがとう。
初コメントに舞い上がってしまいました。
回文シリーズは、取り敢えず10回(100篇)続きます。
もう1つ「村上もの」を用意しているので、期待していて下さい。

・こにゃさんも読んでくれて、ありがとう。
タッチの差で2番目のコメントになりました。
安藤美姫ちゃん残念だったなぁ……浅田真央って、まだ子供じゃないか!
前回紹介した「猫本」にリンクを張ったので、
『タンゲくん』の表紙だけでも見てね。

・えみるさん、はじめまして……nice!ありがとう。
〈Die Tödliche Dosis〉の記事10編を今読んで来ました。
北欧メタルには疎いけれど、洋楽ロックは好きですよ。
「2005年のベスト・アルバム」も目下検討中……
また後でコメントしに行きます。

by sknys (Original Comment 2005-12-20 00:28)
by sknys (2006-01-12 19:04) 

けろろ軍曹

こんばんは。miyucoサンの『mpmc』に寄生しているのは自分のBlogがないからで必然的にnice!はつけられない身の上ながらドウモお招ばれして下すった御様子なので図々しく御邪魔しに参りました。
             『中八日おいてお貞を買う夜かな』
手ぶらではナンですので御土産を御持ちしました。
ただこちら様のように手作りとは参りませんで既製品になりました。
'70年代から御活躍のコピーライター土屋耕一氏の作品です。
今は手元にありませんが確か新潮文庫で出ていた回文の本から記憶にあるものを引っ張り出しました次第。
本のタイトルもこちら様のお気に召すかと存じます。勿論これも回文で

             『軽い機敏な仔猫何匹いるか』

古本屋ででも巡りあう幸運をお祈りいたします。
by けろろ軍曹 (2006-01-14 00:49) 

ご訪問&コメントありがとうございました☆
ちょっぴり名誉に瑕をつけちゃう回文もありますが、状況説明が面白いです☆
sknysさんは「言葉」が大好きなんでしょうね。
言葉を重視する人は好きです。
断末魔を待つパンダ を見て「かわいそう」と思ったら、着ぐるみでした。
続きが気になるー。
by (2006-01-14 12:22) 

sknys

・けろろ軍曹さん、良く来てくれました!
一体どんな人なのかと興味を持って、Google検索してみても、
アニメやマンガ・キャラの「ケロロ軍曹」ばかり出て来て途方に暮れていたところだったので……。

土屋耕一氏の『軽い機敏な仔猫何匹いるか』は何とか見つけ出して、
今後の〈回文シリーズ〉のトップで紹介したいと思います
(ちょうど回文本のネタ切れだったので nice! タイミングでした)。

これからもsknys blogに取り憑いて色々と助言して下さい。
おんぶオバケというよりは「宇宙少年ソラン」の肩に乗っている
可愛いチャッピーのイメージです。
by sknys (2006-01-14 14:03) 

sknys

・no-where_now-hereさん、コメント& nice! ありがとう。
特に実名回文には気を使っていますが、
どうしても字並びによってはネガティヴな内容になってしまう場合がある。
そこを補うのが「説明文」……作者の腕の見せ所だと自負しています。

昨年、眞鍋かをりを「殺して」しまってフォローするのに大変でした。
何とか未遂(?)に終わらせましたが、
潜在的に「打倒眞鍋blog」という対抗意識があったのかも?

パンダ刑事の受難は続く……。
by sknys (2006-01-14 18:45) 

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